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福祉・介護職員処遇改善加算

処遇改善加算のキャリアパス要件とは?就業規則・給与規程との関係を解説

藤原行政書士事務所 行政書士 藤原英明
この記事を書いた行政書士
藤原行政書士事務所 行政書士 藤原英明
障がい福祉・児童福祉事業所の指定申請・運営支援を中心に取り扱っています。

はじめに

福祉・介護職員等処遇改善加算を算定する際、「キャリアパス要件」という言葉を目にします。新しい人事評価制度や昇給制度を、一から作らなければならないと感じる事業者様もいるのではないでしょうか。

実際には、主任の配置、役職手当や資格手当、職員研修など、事業所で既に行っている取組を活用できる場合があります。

まず確認したいのは、現在の仕組みが加算要件に沿っているか、規程と実際の運用が一致しているかという点です。

今回は、キャリアパス要件の基本から、就業規則・給与規程との関係、職員への周知、記録の残し方まで解説します。

1.キャリアパス要件とは何か?

キャリアパスとは、職員が経験を積み、知識や技術を身に付けながら、職場でどのような役割を担い、処遇がどう変わっていくかという道筋です。

例えば、就労継続支援B型事業所で、一般職員として採用された方が、経験を重ねて後輩指導を担当し、主任になる場合を考えてみます。主任に求める経験や能力、担当する業務、給与の変化を明確にすることが、キャリアパスの基本的な考え方です。

ただし、必ず主任や管理者への昇進制度を設けるという意味ではありません。資格取得や経験年数、能力評価などに応じた昇給の仕組みも含まれます。

処遇改善加算のキャリアパス要件は、次の5つに分かれています。

  • 要件Ⅰ:職位・職責・任用要件と賃金体系の整備
  • 要件Ⅱ:研修の実施や資格取得支援
  • 要件Ⅲ:経験・資格・評価等に応じた昇給の仕組み
  • 要件Ⅳ:改善後の年額賃金に関する要件
  • 要件Ⅴ:福祉専門職員等の配置に関する要件

必要な要件は、算定する加算区分によって異なります。今回は、就業規則や給与規程、日々の職員管理と関係が深い要件Ⅰ~Ⅲを中心に説明します。

2.まずは事業所にある仕組みを確認する

職員6名のB型事業所を例に考えてみます。この事業所では、次の取組を行っています。

  • 主任を1名配置し、役職手当を支給している
  • 資格を持つ職員に資格手当を支給している
  • 毎月の職員会議で研修を実施している
  • 年に1回、管理者が職員面談を行っている

主任の役割や任命条件は要件Ⅰ、研修や能力を振り返る面談は要件Ⅱ、昇給制度は要件Ⅲを確認する際の材料になります。

ただし、取組を行っているだけで、自動的に要件を満たすわけではありません。

例えば、主任手当を支給していても、主任の役割や任用条件が決まっていなければ、要件Ⅰに沿った整理が必要です。職員面談も、単に近況を聞くだけなのか、能力評価や昇給判定に使っているのかで、要件との関係が変わります。

まず現在の制度を書き出し、「規程に定めていること」「文書にする必要があること」「実際の運用を確認すること」に分けると、整備する内容が見えやすくなります。

3.就業規則・給与規程には何を定める?

キャリアパス要件Ⅰでは、職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を定め、書面で整備して周知することが求められます。

先ほどのB型事業所であれば、次の内容を確認します。

① 役割と任用条件
  • 一般職員:利用者支援や日常業務を担当する
  • 主任:利用者支援に加え、後輩指導や業務調整を担当する
  • 主任への任用条件:必要な経験、能力、資格等を定める
② 役割に応じた賃金体系
  • 基本給の決定方法
  • 役職手当の対象者と支給額
  • 資格手当の対象資格と支給額

例えば、給与規程に「主任手当は月額10,000円」と定めているなら、その規定を活用できます。主任の役割や任用条件が未整理であれば、規程と対応する職務分掌表やキャリアパス表などにまとめる方法も考えられます。

全てを就業規則の本文に書く必要はありませんが、役割・任用条件・給与の関係を、根拠となる規程で確認できることが大切です。

厚生労働省・こども家庭庁の「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年4月9日。以下「令和8年度Q&A」)問4-1では、法人全体の取扱要領や、就業規則の作成義務がない常時10人未満の事業場における内規等も想定されています。処遇改善計画書の別紙様式2・参考2には、キャリアパス・賃金規程例も掲載されています。

既存規程とモデル例を照らし合わせ、不足する内容を補う方法もあります。なお、就業規則の変更では、労働関係法令に沿った手続も確認が必要です。

4.研修や資格取得支援は、今の取組を活用できる?

キャリアパス要件Ⅱは、職員の資質向上に関する要件です。職員と意見交換しながら目標と具体的な計画を定め、研修等を実施し、その内容を周知します。

既に研修を行っている事業所なら、例えば「障害特性に応じた支援方法を身に付ける」という目標を設け、現在の研修を年間計画に位置付けることが考えられます。

  • 4月:障害特性と支援方法
  • 6月:利用者とのコミュニケーション
  • 9月:虐待防止と権利擁護
  • 12月:個別支援計画に基づく支援

研修を通じて要件を満たす場合は、研修機会の提供や技術指導に加え、職員の能力評価も確認します。

普段の面談で、職員自身の振り返りと管理者の評価を共有する方法もあります。令和8年度Q&A問4-4・問4-5では、資質向上計画に特定の様式や計画期間の定めはなく、能力評価の方法として個別面談等が示されています。

また、資格取得支援を通じて対応する方法もあります。研修受講のためのシフト調整、休暇の付与、受講費用の援助など、現在の支援内容を確認します。

研修や支援制度を新たに増やす前に、今の取組に目標・計画・評価などの不足がないかを確認することから始められます。

5.昇給制度はどう考える?資格手当や面談との関係

キャリアパス要件Ⅲでは、経験や資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づいて定期的に昇給を判定する仕組みを設けます。

例えば、次の方法があります。

  • 勤続年数や経験年数に応じて昇給する
  • 資格取得に応じて昇給する
  • 人事評価の結果に基づき、定期的に昇給を判定する

令和8年度Q&A問4-6では、要件Ⅰは任用要件と賃金体系の整備、要件Ⅲは経験・資格・評価に基づく昇給の仕組みを求めるものと整理されています。

「現在の役割にどの給与を支給するか」と「どの条件を満たすと給与が上がるか」を、それぞれ確認することが必要です。

資格手当を活用する場合は、資格取得により給与が上がる仕組みになっているかを確認します。入職時に既に資格を持っていた職員についても、昇給できる道筋が必要です。

また、面談の結果を昇給判定に使う場合は、評価基準、昇給条件、判定時期を明文化します。「毎年面談している」という事実だけでは、昇給の仕組みを確認できません。

なお、昇給の方法は基本給に限られません。令和8年度Q&A問4-7では、基本給による改善が望ましいとしつつ、手当や賞与による方法も認めています。

6.職員への周知と記録はどう残す?

制度を整備した後は、役割や任用条件、給与・昇給の決定方法、研修計画や資格取得支援の内容を、対象となる職員に周知します。

職員会議や資料配布、社内共有フォルダなど、普段の仕組みを活用できます。会議を欠席した職員や非常勤職員にも内容が届き、後から確認できるようにしておくことが大切です。

記録は、次の3つに分けると整理しやすくなります。

① 制度を確認する資料
  • 就業規則・給与規程
  • 職務分掌表・キャリアパス表
  • 昇給基準に関する規定
② 周知を確認する資料
  • 職員会議録
  • 配布した説明資料
  • メールや社内共有の記録
③ 実際の運用を確認する資料
  • 研修計画・研修実施記録
  • 職員面談・能力評価の記録
  • 昇給判定記録
  • 賃金台帳・給与明細

これら全てについて、加算専用の書類を新たに作るという意味ではありません。既存の会議録や面談記録に、確認に必要な内容を残す方法もあります。

例えば、研修記録には実施日、内容、参加者を残し、面談記録には振り返りと評価を記載します。昇給判定では、判定日、適用した基準、結果、給与への反映時期を残しておくと、運用を確認しやすくなります。

規程に定めた内容、職員への説明、実際の運用がつながっているかを、処遇改善計画書と併せて確認します。

7.今ある仕組みから、順に確認する

事業所で確認を進める際は、次の順序で整理できます。

  1. 算定している加算区分と必要な要件を確認する
  2. 就業規則・給与規程と、現在の役職・手当・研修・昇給制度を照合する
  3. 不足する規定や運用を整理する
  4. 職員への周知と、実施記録を確認する

なお、令和8年度には、一定の条件の下で、要件Ⅰ~Ⅲの整備等を誓約して算定する取扱いがあります。全ての事業所に一律に認められるものではなく、令和8年度特例要件への対応が前提です。この取扱いを利用する場合は、令和9年3月末までの整備等と、実績報告での報告が必要になります。

まとめ

キャリアパス要件は、職員の役割、資質向上、賃金の仕組みなどを明確にし、実際に運用するためのものです。

既にある就業規則、給与規程、研修、職員面談などを活用できる場合があり、必ずしも人事制度全体を一から作り直す必要はありません。

まず現在の仕組みと要件を照らし合わせ、不足する内容を明文化します。そのうえで職員に周知し、日々の運用と記録を確認することが、事業所で進める際の基本になります。

(参考資料)

1.「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年度分)(令和8年3月31日)(厚生労働省・こども家庭庁)

2. 「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問4-1~問4-7、問4-9(令和8年4月9日)(厚生労働省・こども家庭庁)

3. 「令和8年度福祉・介護職員等処遇改善計画書」別紙様式2・参考2「キャリアパス・賃金規程例(小規模事業所用)」( 厚生労働省・こども家庭庁)

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