2024年4月の報酬改定で新設された「人員配置体制加算Ⅳ」。
これまで加算Ⅰ〜Ⅲを取得しにくかった事業所にとって、現場での丁寧な支援体制が適切に評価される可能性が高まったことをご存知でしょうか?
「人数が少ないから加算は難しい」と思われていた事業所様でも、体制を見直すことで51単位/日(≒月1万円超)の安定的加算が受けられるケースもあります。
今回は、加算Ⅳの仕組み・導入の背景・算定条件・注意点などを専門家の立場から分かりやすく解説します。
◆ 人員配置体制加算とは?
生活介護における人員配置体制加算は、国が定める基準よりも手厚く職員を配置している場合に、加算を受けられる制度です。
加算 | 配置基準(常勤換算) | 単位数(1日あたり) |
加算Ⅰ | 1.5:1(最も手厚い) | 121単位 |
加算Ⅱ | 1.7:1 | 85単位 |
加算Ⅲ | 2.0:1 | 51単位 |
加算Ⅳ | 2.5:1(令和6年度新設) | 51単位 |
この配置基準はすべて「常勤換算方式」で計算されます。
たとえば、常勤1名=1.0人、週20時間勤務の非常勤職員=0.5人と換算します。
◆ 加算Ⅳが創設された背景
従来の加算Ⅰ~Ⅲは、比較的規模が大きく人員配置が調整しやすい事業所にとっては取得しやすいものでした。
一方で、比較的利用定員が少なめで、職員数の増加が難しい事業所においては、実際に支援体制が手厚くても加算要件を満たさないという状況が多く見られました。
こうした声を受け、多様な運営形態における支援実態を適切に評価するために新設されたのが、**人員配置体制加算Ⅳ(2.5:1)**です。
◆ 加算Ⅳの特徴と他加算との違い
比較項目 | 加算Ⅰ~Ⅲ | 加算Ⅳ(新設) |
主な対象 | 比較的規模の大きな体制 | 利用者数に関係なく丁寧な支援体制を整えている事業所 |
単位数 | 最大121単位 | 51単位(加算Ⅲと同等) |
配置基準 | 1.5~2.0:1 | 2.5:1(最も緩やか) |
評価の視点 | 効率的な人員配置 | 実態に即した支援密度の評価 |
◆ 加算Ⅳの加算方法と収益への影響
加算Ⅳの**51単位/日は「1事業所1日あたり固定」**です。
つまり、利用者数に関わらず、1日につき51単位(=510円)が加算され、1ヶ月20営業日なら10,200円/月が加算されることになります。
これは、1名の利用者ごとに51単位が加算されるわけではなく、事業所単位で「加算要件を満たしているか」が基準になります。
💡 シミュレーション例(20日稼働の場合):
利用定員 | 日額加算(円) | 月額加算(円) |
5~20名 | 510円 | 10,200円 |
※どの定員数でも「1日51単位」は共通です。配置体制を満たしていれば同額が支給されます。
◆ 加算Ⅳの対象職員は「生活支援員だけ」ではありません
❌ よくある誤解:
加算は生活支援員の人数だけで決まるのでは?
✅ 正しくは…
厚労省Q&Aでは、「直接処遇職員」が対象とされており、生活支援員以外にも以下の職種が含まれます。
含まれる可能性のある職員(※実態に応じて):
- 看護職員(入浴・食事等に関与している場合)
- 機能訓練指導員
- 栄養士、理学療法士 など
含まれない職員:
- 事務職員
- 管理者(直接支援に従事していない場合)
- 送迎専門職員 など
📌 職種ではなく、実際に支援に関わっているかが重要です。
支援記録やシフトで「支援に関与していること」を証明できるようにしましょう。
◆ 届出と実務上の注意点
届出に必要なもの(例):
- 加算Ⅳに関する届出書(指定権者様式)
- 勤務表、常勤換算表等
よくある確認事項(運営指導時):
- 常勤換算の方法に誤りがないか
- 「支援に関与している職員」と書類上・記録上の整合性が取れているか
- 曖昧な記載(例:「支援に関与する場合あり」など)は指摘対象になる可能性あり
◆ 根拠資料・出所情報
以下の厚生労働省の公式資料で、加算Ⅳの新設や考え方が示されています。
◆ まとめ:加算Ⅳは“見逃しやすいけれど確実な評価手段”
- 利用者数に関わらず、支援体制の実態をしっかり整えていれば評価されるのが加算Ⅳ。
- 実際に1日あたり510円、月額で1万円を超える加算は、地道ながら大きな意味を持ちます。
- 記録整備と届出を行えば、安定的な加算収入の確保につながります。