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はじめに
障がい福祉サービスや児童通所支援の現場では、「サービス等利用計画」と「個別支援計画」という2つの計画書が登場します。どちらも利用者様の支援に関わる重要な書類ですが、作成する主体も、法的根拠も、果たす役割も異なります。 運営指導において、この「2つの計画書が適切に連携し、整合性が取れているか」は非常に重要な確認ポイントとなります。 本記事では、多忙な経営者や管理者の皆様に向けて、2つの計画書の違いを整理したうえで、事業所として対応すべき連携のルールと、最新の法令基準(児童の5領域等)に基づく確認ポイントを簡潔に解説します。
1.「サービス等利用計画」とは何か 【作成主体:相談支援専門員】

サービス等利用計画を作成するのは、指定特定相談支援事業所に所属する「相談支援専門員」です。障がい福祉サービスの支給決定を受けようとする利用者様に対して、生活全体を見渡した総合的な支援方針を立て、どのサービスをどの程度利用するかをまとめた「全体計画」となります。
※利用者様(または保護者)が自ら計画を作成する「セルフプラン」を選択することも認められています。この場合、相談支援事業所は関与しませんが、サービスを提供する事業所側の対応の基本は変わりません。
事業所としての関わり方
事業所側(サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者)は、サービス等利用計画の作成自体を行う必要はありません。しかし、利用者様がサービスを開始する際にこの計画書の写しを受け取り、自事業所の「個別支援計画」を作成するための土台(参考資料)として活用することが求められます。
2.「個別支援計画」とは何か 【作成主体:サービス管理責任者(サビ管)・児童発達支援管理責任者(児発管)】
個別支援計画を作成するのは、サービスを提供する指定事業所に配置された「サビ管」または「児発管」です。サービス等利用計画の方針を踏まえ、自事業所において「具体的にどのような支援を、どの程度の頻度で提供するか」を定めた詳細な計画書です。
【重要】早期に50%減算となる「未作成減算」のリスク
個別支援計画は、サービス提供開始前に作成が完了し、利用者様・ご家族の同意を得ていることが必須要件です。令和8年現在、計画書の未作成(更新漏れや同意の署名漏れ等のプロセス不備を含む)については、未作成期間が「3ヶ月未満の場合は基本報酬の30%減算」「3ヶ月以上の場合は基本報酬の50%減算」という事業所運営に大きな影響を与える減算規定が設けられています。そのため、定められた規定周期での確実な見直し(モニタリング)の仕組み化をご検討ください。
3.2つの計画書の違い(比較一覧)

実務上の違いを以下の項目ごとに整理しました。
- 作成者
- サービス等利用計画:相談支援専門員(またはセルフプラン)
- 個別支援計画:サビ管・児発管
- 根拠法令
- サービス等利用計画:障害者総合支援法
- 個別支援計画:各サービスの指定基準省令
- 対象範囲
- サービス等利用計画:支給決定を受けた利用者全員
- 個別支援計画:当該事業所を利用する方
- 作成タイミング
- サービス等利用計画:支給決定の前後
- 個別支援計画:サービス開始前
- 見直し頻度
- サービス等利用計画:モニタリング期間に基づく
- 個別支援計画:少なくとも6ヶ月ごと(※就労移行支援や自立訓練など、一部のサービスでは「少なくとも3ヶ月ごと」となります)
- 交付義務
- サービス等利用計画:あり(利用者・事業所等へ)
- 個別支援計画:あり(利用者・保護者へ)
最大の違いは「作成義務の主体」です。しかし、両者は利用者様の支援という共通の目的に向けて、情報の連携を図ることが制度上強く求められています。
4.2つの計画書の「連携」が求められる実務ポイント
① 個別支援計画はサービス等利用計画に「沿って」作成する
省令上、個別支援計画はサービス等利用計画の内容を踏まえて作成することが求められています。サービス等利用計画に記載された「総合的な支援方針」や「解決すべき課題」と、個別支援計画の目標が大きく乖離している場合、運営指導において「計画間の整合性がとれていない」として指導の対象となるリスクが生じます。セルフプランの場合も同様に、プランの内容を把握した上での作成が必要です。
② 会議の共同開催と情報共有(モニタリングの連携)
相談支援専門員が行うモニタリング訪問と、事業所内での個別支援計画の見直しは、それぞれ独立して行われますが、タイミングを合わせて連携することが効果的です。
- 事業所で開催する「サービス担当者会議(多職種での検討)」に、相談支援専門員に参加を依頼する。
- 相談支援専門員が開催する会議に、サビ管・児発管が出席して事業所での支援状況を報告する。 これらの連携の過程(議事録や情報提供の記録)を書類として残しておくことで、運営指導時に「関係機関と適切に連携している」という客観的な証明(エビデンス)となります。
③ 相談支援事業所への計画書交付(令和6年度改定)
令和6年度より、作成・見直しした個別支援計画書は、利用者本人だけでなく担当の相談支援事業所へも交付することが義務付けられました。これにより、双方の計画の進捗を共有しやすくなります。なお、利用者がセルフプランを選択しており、担当の相談支援事業所が存在しない場合は、事業所へ交付しなくても指定基準違反にはなりません。
5.児童福祉系サービス(児発・放デイ)における最新の留意点

児童発達支援や放課後等デイサービスにおいては、以下の点に特にご留意いただくことをおすすめします。
① 「障害児支援利用計画」との連携
児童の場合、サービス等利用計画に相当するものは「障害児支援利用計画」と呼ばれ、障害児相談支援事業所の相談支援専門員が作成します。成人のサービスと同様に、この計画を踏まえた上で事業所ごとの個別支援計画を作成することが求められます。
② 【重要】「5領域」と「インクルージョン」の明記(令和6年度改定以降)
令和6年度の報酬改定により、児童系サービスの個別支援計画には、以下の視点を盛り込むことが必須要件となりました。
- 5領域の明記: 支援内容が「健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性」のどの領域と関連しているかを計画書上に明確に記載すること。
- インクルージョンの観点: 保育所や学校等との連携、同年代の子どもとの関わりなど、地域社会への参加(インクルージョン)の視点を計画に含めること。 現在の運営指導において最重点で確認される項目のため、自施設のフォーマットが最新の基準に対応しているか、改めてご確認いただくことをおすすめします。
③ 保護者の「署名(同意)」と交付の記録 児童の場合、個別支援計画の説明と同意は保護者に対して行います。「口頭で説明した」だけでは記録として認められず、未作成減算の対象となるリスクがあります。必ず書面(または適法な電子署名)で同意日・交付日がわかる記録を残す仕組み作りをご検討ください。
まとめ
- サービス等利用計画は、利用者の生活全体を方向づける「全体計画」。
- 個別支援計画は、自事業所での具体的な支援内容を定める「実行計画」。 事業所には個別支援計画の作成義務があり、サービス等利用計画との「整合性」と「連携のプロセス(会議録など)」を客観的な記録として残すことが求められます。 運営指導における多くの指摘は、意図的な不正というよりも、日々の業務に追われる中での「日付の管理漏れ」や「ルールの確認不足」に起因するケースが多く見受けられます。この機会に、2つの計画書の連携手順と、自施設の個別支援計画の更新フロー(逆算管理など)について、社内で改めて確認されることをおすすめいたします。