LINEで相談

BCP・虐待防止・感染症対策

【実務解説】障がい福祉施設におけるBCPの机上訓練とは?会議後の15分でできる自然災害・感染症訓練の進め方

【初回相談無料】障害福祉サービスの運営指導対策・加算返還リスクの不安は、障害福祉専門の当事務所へご相談ください。

はじめに|BCP訓練で止まりやすいのは「大がかりに考えすぎること」

障がい福祉サービスや児童福祉事業所では、令和6年度の報酬改定等に伴い、自然災害や感染症に備えたBCP(業務継続計画)の策定だけでなく、定期的な「研修」や「訓練」の実施が完全義務化されました。

しかし、実際の事業所では、日々の利用者様への支援、送迎、記録、請求業務、ご家族対応など、通常業務だけでも決して時間に余裕があるわけではありません。経営者様や管理者様からは、次のようなお悩みの声をよくお聞きします。

「避難訓練のように、利用者様も職員も全員で大きく動く時間が取れない」 「感染症BCPの訓練と言われても、具体的に何をすればよいのか分からない」 「計画書は作ったが、訓練の記録をどう残せば監査(運営指導)で認められるのか迷う」

「BCP訓練」という言葉を聞くと、どうしても大がかりな実地訓練を想像しがちです。もちろん、実際に避難経路を確認したり、備蓄品を動かしたりする訓練も非常に大切です。 しかし、毎回そのような大規模な訓練を行うのは、現場の大きな負担となってしまいます。そこで当事務所が実務上の工夫としておすすめしているのが、会議後の短い時間などを活用して行う「机上訓練(シミュレーション)」です。

1.法令における「訓練」の義務と、机上訓練の有効性

指定基準において、BCPの訓練は「施設入所支援等は年2回以上、通所系・訪問系サービス等は年1回以上」の実施が義務付けられています。これが未実施の場合、運営指導において指導の対象となるほか、要件によっては減算のリスクも生じます。

ここで知っておいていただきたい重要なポイントは、厚生労働省や自治体のガイドラインにおいて、「訓練の実施は、机上(シミュレーション)を含めその実施手法は問わない」と明記されている点です。 つまり、想定場面を決めて、会議室等で職員同士で「その時、誰が、何を、どの順番で確認するか」を話し合う机上訓練も、議事録に残すことで立派な法的な訓練実績として認められます。現場の負担を最小限に抑えつつ、監査対策としても極めて有効な手法なのです。

2. 自然災害BCPと感染症BCPで確認する場面の違い

机上訓練を行う際、自然災害と感染症では確認する場面(テーマ)を少し変えるとうまくいきます。

①自然災害では「発生直後の15分間の動き」を確認する

地震や風水害、それに伴う停電や断水など、自然災害では急な判断が求められます。 例えば、サービス提供中に地震が発生した場合、まず利用者様と職員の安全確認、建物の状況把握、避難の要否、ご家族への連絡、送迎の可否などを順に確認します。 机上訓練では、いきなり全てを網羅しようとせず、「地震発生からの最初の15分間で何をするか」「停電した時、まず何を確認するか」といった発生直後の初動に絞ると、職員の皆様も具体的にイメージしやすくなります。

②感染症では「出勤できない職員が出た後の運営」を確認する

感染症の場合、建物が壊れるわけではありませんが、職員の欠勤や利用者様の体調不良、ゾーニングの実施など、人員体制に大きな影響が出ます。 そのため、「複数名の職員が休んだ場合の勤務調整」や「利用者様・ご家族への連絡フロー」など、人員不足下での業務継続に焦点を当てて確認をご検討ください。

3.会議後15分で行う机上訓練の基本4ステップ

机上訓練は、最初から長時間かける必要はありません。毎月の職員会議のあとの「15分間」を使って、1つの場面を確認するだけでも十分な効果があります。以下の4つのステップで進めてみてはいかがでしょうか。

場面を1つだけ決める

「送迎中に大雨警報が出た」「開所前に職員から発熱の連絡が入った」「管理者が不在の日に緊急事態が起きた」など、日常業務の中で実際に起こりそうな場面を1つだけ選びます。15分で行う場合は、欲張らずに1回1テーマに絞ることが継続のコツです。

参加者に「その時どう動くか」を問いかける

「この場合、最初に誰へ報告しますか?」「ご家族への連絡は誰が行いますか?」と参加者に問いかけます。 ここで大切なのは、正解を出すことや担当者を責めることではありません。「たぶん管理者に確認する」「連絡先は紙にあるが、最新版か分からない」といった曖昧な部分(小さなズレ)を見つけることが、この訓練の最大の目的です。

既存の書類(連絡網や役割分担)と照らし合わせる

対応の流れを話した後は、実際のBCPファイルや緊急連絡網、シフト表などの書類を確認します。 「BCPに書かれている役割分担は、今日のシフト体制でも機能するか?」「連絡網の番号は古くなっていないか?」など、日々使っている書類とBCPを繋ぎ合わせる作業を行います。

気づいたことを「1つだけ」改善案にする

「緊急連絡網を更新する」「送迎中止時の連絡ルールを1枚にまとめる」など、訓練で見つけた課題に対する改善案を1つだけ決定します。すべてを一度に直そうとせず、次回の会議で「前回の改善案は実施できたか」を確認するサイクルを作ることで、BCPが少しずつ実態に即したものに育っていきます。

4.施設種別に応じた机上訓練のテーマ例

事業所のサービス種別によって、迷いやすいポイントは異なります。以下に使いやすいテーマ例を挙げます。

  • 【通所系】送迎中に大雨警報が出た場合: すでに出発している送迎車に対し、誰がどのように連絡を取り、待機中の利用者様やご家族へどう案内するかを確認します。
  • 【感染症共通】開所前に職員から発熱連絡が入った場合: 代替職員の確保、人員配置基準(加算要件)への影響、提供するサービスの縮小(引き算)などを確認します。
  • 【訪問系・共通】管理者が不在の日に対応が必要になった場合: 管理者が外出・公休の際に緊急事態が起きた場合、誰が一次対応を行い、どのタイミングで管理者へエスカレーションするかの権限を確認します。

5.運営指導(監査)で評価される「記録」の残し方

訓練を実施した後は、必ず「記録(議事録)」を残します。難しく考える必要はなく、以下のポイントを押さえたシンプルな書式で全く問題ありません。

  • 実施日時・参加者・想定場面: 「令和〇年〇月〇日、会議後15分間、送迎中の大雨警報を想定した机上訓練を実施」
  • 出た意見と確認事項: 「送迎車への連絡は管理者が行うと確認」「緊急連絡網の更新が必要との意見が出た」など。
  • 1つの改善点: 「次回会議までに最新の連絡網を配布する」など。

行政の監査担当者が確認したいのは、「完璧に訓練ができたか」ではなく、「自施設の課題を見つけ、それをどう改善しようとしたか(PDCAが回っているか)」という運用プロセスです。改善点が記載された記録は、非常に高く評価されます。

まとめ|小さな訓練の積み重ねが「機能するBCP」を作る

BCPの訓練は、職員の皆様の知識を試すテストではありません。事業所の備えを確認し、迷いやすい場面を平時のうちに見つけておくための安全確認の場です。 「正しい答えを出さなければ」とプレッシャーを感じる必要はありません。まずは次回の職員会議のあとに、15分だけ時間を取って「うちの事業所でこの場面が起きたら、どう動く?」と話し合ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。

BCPは作成して書棚にしまっておくものではなく、日々の連絡体制やシフト表と連動して初めて「現場で使える道具」になります。事業者様の実情に合わせた、無理のない実効性のあるBCP運用の仕組みづくりとして、本記事の内容が少しでもお役に立てば幸いです。

(参考)【5分で要点】BCP訓練の実施記録(議事録)に記載すべき5つの項目と実務ポイント

「うちの施設は運営指導に耐えられる?」「加算の要件は満たせている?」
少しでも不安やお悩みがあれば、障害福祉専門の行政書士にご相談ください。

運営指導・加算返還リスクの不安を無料相談する

関連記事

最近の記事
  1. サービス担当者会議・個別支援会議の記録の確認事項|出席者・検討内容・計画反映の整理
  2. 【実務解説】障がい福祉施設におけるBCPの机上訓練とは?会議後の15分でできる自然災害・感染症訓練の進め方
  3. 個別支援計画と日々の記録の連動|目標・支援内容・モニタリングの確認方法
目次