はじめに
サービス管理責任者(サビ管)や児童発達支援管理責任者(児発管)を採用・配置するとき、早めに確認したいのが実務経験の証明です。
本人から「前の事業所で5年以上働いていました」「福祉業界で長く働いています」と聞いていても、履歴書に書かれた年数だけで要件を満たすとは判断できません。勤務先のサービス種別や職種、担当した業務、実際に従事した日数まで確認する必要があります。
配置に関する届出の段階で証明書が集まらない事態を避けるため、事業者がどの順番で職歴を確認し、前職に証明書を依頼するかを見ていきます。
1.履歴書や在職証明書だけでは確認できないこと

履歴書に「2020年4月~2025年3月 〇〇法人勤務(5年間)」とあっても、その記載だけでは、指定権者へ提出する実務経験の証明には足りません。
厚生労働省とこども家庭庁の告示では、対象となる業務を「相談支援業務」「直接支援業務」「資格に基づく業務」などに分け、それぞれ必要な期間を定めています。確認するのは、主に次の事項です。
- 勤務した事業所名とサービス種別(生活介護、就労継続支援B型、児童発達支援、放課後等デイサービスなど)
- 従事した職種(生活支援員、職業指導員、児童指導員、保育士など)
- 担当した業務の内容(利用者・児童への支援、相談支援など)
- 法人内での異動歴や、直接支援を行っていない事務・管理専従期間の有無
履歴書や一般的な在職証明書で分かるのは、主に法人に在籍していた期間です。実務経験証明書では、要件に該当する業務に「いつ、どれだけ従事したか」を確認します。
2.在籍年数とあわせて実従事日数も確認する
職歴を確認するときは、在籍期間だけでなく「実従事日数」も見ます。
実務経験の「1年」は、1年間在籍していれば足りるという意味ではありません。業務に従事した期間が1年以上あり、実際に従事した日数が1年につき180日以上あることが必要です。
たとえば5年の実務経験が必要な場合は、次の両方を確認します。
- 従事期間:通算して5年(60か月)以上
- 実従事日数:通算して900日以上(180日×5年)
【休日・休業期間・有給休暇の扱いに注意】
法定休日や所定休日に休んだ日は、実従事日数に含めません。一方、休日であっても実際に要件の対象となる業務に従事した日は、実従事日数として確認します。「休日かどうか」だけで一律に判断せず、勤務表や出勤記録と業務内容を照らし合わせることが必要です。
産後休業・育児休業、病気療養による長期休職、有給休暇の取得日も、実際に業務へ従事した日数には含めません。また、出勤した日であっても、その日に要件の対象となる業務を行っていなければ、単なる出勤日数をそのまま実従事日数にはできません。
履歴書上は5年間在籍していても、その間に1年間の育児休業があれば、業務に従事した期間は原則として4年間です。実従事日数も900日に達しているか、別に確認が必要です。証明書を依頼するときは、休業期間と実際の従事日数を勤務先に確認しましょう。
3.職歴を事業所・サービス種別・職種ごとに並べる
前職へ証明書を依頼する前に、配置予定者の職歴を時系列で並べます。「法人名」だけでまとめず、事業所、サービス種別、職種まで分けて確認します。
| 期間 | 法人名 | 事業所名・サービス種別 | 実際に従事した職種 | 実日数(概算) |
|---|---|---|---|---|
| 2019年4月~2021年3月 | A法人 | 〇〇園(生活介護) | 生活支援員 | 400日 |
| 2021年4月~2023年6月 | B法人 | △△ワーク(就労継続支援B型) | 職業指導員 | 420日 |
| 2023年7月~現在 | C法人 | ◇◇キッズ(放課後等デイサービス) | 児童指導員 | 380日 |
こうして並べると、どの期間が対象になりそうか、どの法人へ証明書を依頼するかが分かります。
証明書の職種欄も「常勤職員」「従業員」では業務が分かりません。「保育士」「児童指導員」「生活支援員」など、実際に従事した職種を記載する必要があります。
4.複数法人での勤務や管理者との兼務を確認する

(1)複数の法人で勤務した場合
複数の法人で勤務していた場合は、原則として各法人に、その法人での勤務期間を証明してもらいます。現在の勤務先が、別法人での過去の勤務をまとめて証明することはできません。
(2)同じ法人内で異動・兼務があった場合
同じ法人に勤め続けていても、異動によって事業所やサービス種別が変わった場合は、事業所ごとに証明書を分けるよう求められることがあります。
管理者を務めた期間も、職名だけで判断しないようにします。管理業務だけを行っていた期間は、直接支援等の実務経験に含まれません。一方、児童指導員や生活支援員として兼務配置され、実際に直接支援を行ったことを確認できる場合は、その期間を実務経験に算入できることがあります。届出や勤務記録も確認しましょう。
5.押印・証明者・旧姓の扱いを確認する
証明書を依頼するときは、勤務内容に加えて、提出先の様式や証明方法も確認します。
(1)押印と写しの提出
多くの行政手続で押印が廃止されていますが、実務経験証明書には証明者(代表者等)の押印を求める自治体があります。押印した原本の写しを提出できるかどうかも、提出先の取扱いを確認してください。
(2)本人が自分の勤務を証明する場合
証明を受ける本人と証明者が同じ個人となる自己証明は認められません。当時の勤務を証明できる役員や管理者など、第三者による証明が必要です。法人代表者が自社で積んだ実務経験を法人名義で証明する場合の取扱いもあるため、該当するときは指定権者の様式・説明を確認しましょう。
(3)旧姓の資格証・証明書がある場合
資格証や過去の実務経験証明書が旧姓の場合は、現在の氏名と同一人物であることを示す資料が必要になります。旧姓の確認資料や戸籍抄本、資格証への追記など、何を添付するかは提出先へ確認してください。
6.前職の事業所が廃止されている場合

前の事業所がすでに廃止されている場合、まず運営法人が存続しているかを確認します。
- 事業所のみ廃止、法人は存続:法人に人事・勤務記録が残っていれば、法人へ証明書の発行を依頼できます。
- 法人も解散・消滅:通常の方法では、その法人から証明書を取得できません。
代替資料を用意して指定権者へ相談する
法人の解散などで証明書を取得できない場合は、当時の勤務と従事日数を確認できる資料を集め、指定権者へ個別に相談します。用意する資料の例は次のとおりです。
- 雇用保険・社会保険の加入履歴(被保険者資格取得回答書・年金記録など)
- 当時の雇用契約書、労働条件通知書、辞令
- 給与明細書、源泉徴収票、当時の勤務シフト表
これらの資料があれば必ず実務経験として認められるわけではありません。手元の資料で何を確認できるかを示し、配置予定事業所を所管する自治体に早めに相談しましょう。
7.提出先の自治体の様式を確認する
障害福祉サービスや障害児通所支援の指定権者は、事業所の所在地によって異なります。都道府県のほか、政令指定都市、中核市、権限移譲を受けた市町村が所管する場合があります。
大阪府内でも、大阪市、堺市、吹田市、豊中市などに所在する事業所では、それぞれ所管する市の様式と提出方法を確認する必要があります。
記載項目、原本と写しの扱い、事前相談の方法なども自治体ごとに異なります。証明書を前職へ依頼する前に、配置予定事業所を所管する自治体の手引きと最新の様式を確認してください。
まとめ|証明書を依頼する前に確認したい5つのこと
サビ管・児発管の採用・配置では、研修修了証に加え、必要な実務経験を証明できるかどうかを早めに確認します。
採用後に証明書が集まらず、配置が遅れることのないよう、次の順番で進めましょう。
- 履歴書から事業所、サービス種別、職種を確認する
- 勤務期間に加え、実従事日数と休業期間を確認する
- 証明を依頼する過去の法人・事業所を特定する
- 提出先の様式を確認し、各勤務先へ証明書の発行を依頼する
- 廃止事業所や兼務期間など判断が難しい経歴は指定権者へ相談する
前職への依頼に時間がかかる場合もあります。採用や配置の日程が決まったら、まず職歴と証明書の取得先を確認しておきましょう。