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福祉・介護職員処遇改善加算

処遇改善加算の実績報告で確認することは?加算額・賃金改善額・不足額を解説

藤原行政書士事務所 行政書士 藤原英明
この記事を書いた行政書士
藤原行政書士事務所 行政書士 藤原英明
障がい福祉・児童福祉事業所の指定申請・運営支援を中心に取り扱っています。

はじめに

福祉・介護職員等処遇改善加算を算定する障がい福祉・児童福祉事業所では、年度終了後に実績報告書を提出します。

作成するときに迷いやすいのが、「国保連の通知書のどの金額を集計するのか」「給与のうち何を賃金改善額に含めるのか」「不足が出たらどう対応するのか」という点です。

実績報告の基本は、実際に算定した加算額と、実施した賃金改善額を確認し、その根拠を説明できるようにすることです。

なお、処遇改善に関する3つの加算が一本化されたのは令和6年6月です。令和8年6月からは、加算率の引上げや上乗せ区分の創設、相談支援への対象拡大などが行われています。年度途中で制度が変わるため、4・5月分と6月以降の算定内容を分けて確認しておきます。

本記事では、実績報告に向けて準備する資料から、不足額への対応、根拠資料の保存まで、順番に説明します。

1.まず集計の根拠となる資料をそろえる

実績報告書に入力する前に、次の資料を手元にそろえておくと、確認しやすくなります。

  • 国保連からの通知書:処遇改善加算の実際の算定額を確認する資料
  • 提出した処遇改善計画書の控え:算定区分、賃金改善の方法、実施期間、誓約事項を確認する資料
  • 賃金台帳・給与明細・賞与の支給記録:基本給、手当、一時金などの支給実績を確認する資料
  • 職員別・月別の賃金改善額の集計表:誰に、いつ、いくら支給したかを整理した資料
  • 法定福利費の計算表:賃金改善に伴う事業主負担の増加分を確認する資料
  • 就業規則・賃金規程・研修記録等:賃金体系や各要件への対応を確認する資料

例えば、給与担当者が職員別の支給額を集計し、管理者が計画書の配分方法や実施期間と照合する形にすると、数字と計画の両方を確認できます。

集計表の合計額だけでなく、その数字をどの通知書・給与記録から拾ったのかが分かる状態にしておくことが大切です。

2.年間加算額はサービス提供月ごとに確認する

年間加算額を確認する際は、口座に振り込まれた障害福祉サービス等報酬の総額と、処遇改善加算の金額を区別します。

例えば、年間の報酬総額が2,000万円、そのうち処遇改善加算が150万円であれば、賃金改善額と比較するのは150万円です。

計画書に記載した見込額ではなく、実際に算定した処遇改善加算額を集計します。

国保連の通知書などを使い、サービス提供月ごとに金額を整理します。過誤調整や再請求がある場合は、その増減も確認し、同じ月を二重に集計しないようにします。

また、サービス提供月と入金月は通常2か月ずれます。4月サービス提供分は6月、翌年3月サービス提供分は5月に支払われるのが通常の流れです。

そのため、「4月から3月までに口座へ入った金額」を単純に合計すると、報告対象年度とずれることがあります。

加算額の集計表には「何月サービス提供分か」を記載し、賃金改善額の集計表には、計画書で設定した賃金改善実施期間を明記しておきます。

令和8年度の実績報告は、通常の場合、令和9年7月31日が提出期限です。事業所を所管する指定権者の案内で、提出方法も確認します。

3.賃金改善額は給与総額と区別して集計する

職員に支払った給与の全額が、賃金改善額になるわけではありません。

賃金改善額は、基本的に、処遇改善加算を用いて改善した後の賃金と、加算を算定しない場合の賃金との差額として確認します。

この考え方は、厚生労働省・こども家庭庁「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-1(令和8年4月9日)に示されています。前年度の給与総額との差額を、そのまま賃金改善額にする方法ではありません。

集計する項目は、主に次のとおりです。

  • 基本給の引上げによる改善額
  • 処遇改善手当など、手当による改善額
  • 賞与・一時金への上乗せによる改善額
  • 賃金改善に伴う法定福利費等の事業主負担増加分

例えば、職員5人に毎月1万円の処遇改善手当を12か月支給した場合、手当による改善額は60万円です。別に処遇改善の一時金を支給していれば、その額も集計します。

基本給に改善分を組み込んでいる場合は、給与明細だけでは金額が分かりにくいため、賃金表や計算表に改善前後の金額を残しておきます。

【法定福利費は「増加分」を確認する】

賃金改善に伴って増加した社会保険料・労働保険料等の事業主負担分は、賃金改善額に含めることができます。

事業所が年間に負担した保険料の全額ではなく、処遇改善による賃金の増加に対応する部分が対象です。

同Q&A問1-7では、合理的な方法による概算も認められています。一方、退職手当共済制度など、任意加入制度の掛金増加分は含められません。使用した保険料率や計算方法も残しておきます。

4.加算額と比較し、不足があれば順番に対応する

集計が終わったら、加算額と賃金改善額を比較します。

例えば、加算額150万円に対して賃金改善額が155万円であれば、総額については加算額以上の改善が行われています。賃金改善額が145万円なら、不足額は5万円です。

不足が見つかった場合は、次の順番で確認します。

  1. 基本給に組み込んだ改善分や、賞与・一時金の集計漏れを確認する
  2. 法定福利費の増加分や、対象期間の取り違えを確認する
  3. 不足が残る場合は、追加支給の方法・時期を検討する
  4. 指定権者に報告上の取扱いを確認し、支給記録を残す

令和8年4月9日の同Q&A問1-9では、賃金改善額が加算額を下回った場合は返還対象となる一方、不足分を賞与等の一時金として追加配分することで、返還を求めない取扱いも可能とされています。

ただし、「実績報告の提出前なら、いつ支給してもよい」と一律に示されているわけではありません。設定した実施期間を過ぎて不足が判明した場合は、支給時期や報告方法を指定権者に確認します。

年度途中に不足の見込みが分かれば、今後の手当や賞与の配分を検討できます。例えば10月に中間集計を行い、年度末までの加算見込額と支給予定額を比較しておくと、対応する時間を確保できます。

5.総額だけでなく、月額配分と誓約事項も確認する

賃金改善額が加算額以上になっていても、それだけで確認が終わるわけではありません。

既存の障害福祉サービス等では、月額賃金改善要件として、加算Ⅳ相当額の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当の改善に充てることが求められます。算定している加算額全体の2分の1という意味ではありません。

また、令和8年度に加算率の引上げや上位区分への移行等で増加した加算額については、それに相当する新たな賃金改善が必要です。過去の賃上げ実績だけで済ませることはできません。

不足分を一時金で補う場合も、月額賃金改善要件を別に確認します。

要件の整備・取組を誓約して申請した事業所では、誓約内容の実施状況も点検します。対象となる特例はサービスや要件によって異なるため、自事業所の計画書で確認します。

令和9年3月末までの対応を誓約した場合は、規程の整備、研修の実施・機会の確保、職場環境改善の取組などが期限までに行われているかを確認し、実績報告に反映します。

6.報告書と根拠資料をまとめて保存する

提出後は、実績報告書の控えと、国保連通知、賃金改善額の集計表、給与・賞与の記録、法定福利費の計算表などを、年度ごとにまとめて保存します。

令和8年度の国通知では、処遇改善計画書・実績報告書は、根拠資料と併せて2年間保存することとされています。

ただし、賃金台帳などには別の法令による保存義務があります。労働基準法上の保存期間は原則5年ですが、当分の間は3年とされています。加算の通知が2年保存だからといって、給与関係資料まで2年で廃棄してよいわけではありません。

保存期間は書類ごとに確認し、複数のルールが適用される場合は、長い期間に合わせて管理します。保管場所と担当者を決めておくと、運営指導などで確認を求められたときにも資料を取り出しやすくなります。

まとめ

処遇改善加算の実績報告は、加算額と賃金改善額を集計し、その内容を根拠資料で確認する手続きです。

「加算額の確定」「賃金改善額の集計」「不足額への対応」「月額配分・誓約事項の確認」「資料の保存」の順に進めると、確認事項を整理しやすくなります。

まずは、国保連の通知書と賃金台帳を使い、これまでの加算額と賃金改善額を一度並べてみます。年度途中から確認を続けておくことで、集計漏れや不足の見込みに早めに気づき、今後の支給に反映できます。

(参考資料)

1.「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年度分)(令和8年3月31日)(厚生労働省・こども家庭庁)
・賃金改善、月額賃金改善要件、実績報告、資料保存等を記載。

2.「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年4月9日)問1-1、問1-7、問1-8-1、問1-9等(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課・こども家庭庁支援局障害児支援課)

3.「未払賃金が請求できる期間などが延長されます」(厚生労働省)
・賃金台帳等の記録の保存期間を記載。

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