今回は、事業者様にとって悩みの種となる**運営指導(いわゆる実地指導)**について、2024年度の報酬改定を踏まえたチェックポイントをまとめました。
「書類の準備が大変そう…」「どこまで整備しておけば安心なのか分からない」といった不安を抱える事業者様にとって、指導内容の“傾向”と“備え方”を知っておくことが、余計なトラブルを防ぐ最大のカギとなります。
-
運営指導とは? 目的と基本的な流れ
運営指導(実地指導)は、都道府県や指定都市などの行政が実施する、法令遵守状況の確認を目的とした指導です。
主な目的
- 障害福祉サービスの質の確保
- 不正・不適切な請求の防止
- 利用者の権利擁護
実施の流れ
- 事前通知(通常1~2週間前)
- 現地調査(半日〜1日程度)
- 指導結果通知書の送付
- 是正報告の提出(必要に応じて)
-
【2025年版】運営指導で特に指摘されやすいポイント
① 個別支援計画の整合性と実施記録
✔ 要チェック
- サービス提供前の計画策定
- 利用者本人・家族・相談支援専門員との合意取得
- モニタリング記録(最低3ヶ月ごと)
🔍 傾向と注意点
2024年報酬改定では「個別支援の質」が強く求められるようになり、“形式だけの計画”が厳しくチェックされる傾向が強まりました。計画書と日々の記録がかけ離れていないか、目標に沿った支援が実施されているかの整合性が問われます。
② 加算の算定根拠
✔ 要チェック
- 加算届出の控えと提出日
- 算定基準に合致する職員体制や記録
- 対象者リスト(入浴支援加算など)
🔍 傾向と注意点
特に2024年改定では「入浴支援加算」が基本報酬に包括化されない形で再構成され、根拠の記録が必須となっています。「入浴した記録があるが、介助が必要だったことが分からない」といった記録漏れがよく指摘されます。
③ 職員配置と資格要件
✔ 要チェック
- 従業者の勤務表と出勤簿の整合
- 有資格者の配置(生活支援員、看護職員など)
- 管理者・サービス管理責任者の要件
🔍 傾向と注意点
常勤換算の考え方を誤って算定しているケースや、シフト上では常勤が配置されているが実際の勤務実績が不足しているケースがよく問題になります。
また、サービス管理責任者についても、兼務届の不備や実務経験要件の誤認が指摘されがちです。
④ 利用者負担額の徴収・減免の適正性
✔ 要チェック
- 利用者負担額の徴収記録と領収書
- 減免申請の記録と根拠資料
- 領収日と通所日数との整合性
🔍 傾向と注意点
意外と見落としがちなポイントですが、自治体補助などによる減免制度を使っている場合の根拠書類の保存が求められます。特に請求システム上の処理と帳簿が一致していない場合、誤請求と見なされる可能性があります。
⑤ 事故報告・苦情対応の体制
✔ 要チェック
- 事故発生時の記録と報告フロー
- 苦情受付簿・対応記録
- 第三者委員との連携記録
🔍 傾向と注意点
「ヒヤリ・ハット」など軽微な事案の扱いも含めて記録しているかが問われます。最近では「事故がまったくないのは逆に不自然」という考えから、小さな出来事をどう共有・改善しているかが評価対象になります。
⑥ 防災・避難訓練の実施状況
✔ 要チェック
- 年2回の避難訓練の記録
- 消防計画・マニュアルの整備
- 利用者特性に配慮した内容かどうか
🔍 傾向と注意点
利用者の中に医療的ケアや車椅子利用の方がいる場合、それに配慮した訓練内容になっているかどうかも確認されます。消防署の立会いがある場合は、その報告書の写しも保管しておきましょう。
-
書類の保存期間とチェック体制の整備
運営指導では、最低でも直近の2年度分の書類が対象になります(場合によっては3~5年分)。加算関連、個別支援、勤務実績などのファイル化・デジタル管理を進めておくと、指導当日の負担が軽減されます。
また、月1回の内部点検(自主チェックリスト)を習慣化しておくことが、長期的に見て大きな安心材料となります。
-
おわりに|運営指導は“見直しのチャンス”
運営指導は確かに負担が大きいイベントではありますが、見方を変えると「運営の質を見直すチャンス」でもあります。
書類や制度への対応ばかりが注目されがちですが、本来は「利用者にとってより良いサービスになっているか」を振り返る機会です。運営指導の結果通知に記載される“指摘事項”は、今後のサービス向上にもつながる大事なヒントです。
当事務所では、必要に応じて運営指導に備えた内部点検支援や加算届出のサポートも行っていますが、まずはご自身の事業所でできる準備・整備を一歩ずつ進めていただければと思います。