グループホーム

グループホーム(共同生活援助)の夜間支援等体制加算の基本と算定実務

(初回無料)障がい(障害)福祉施設の指定申請・運営は、 当事務所のサポートをご活用ください。

共同生活援助(グループホーム)では、夜間の見守りや緊急対応の体制が、そのまま利用者様の安心・安全につながります。こうした夜間の支援体制を評価する仕組みが「夜間支援等体制加算」です。

令和6年度報酬改定でも、夜間の連絡・支援体制の確保は重要なテーマとして位置づけられており、国や自治体も Q&A や集団指導資料を通じて算定ルールの周知・徹底を図っています。

今回は厚生労働省や自治体の公表資料をもとに、夜間支援等体制加算の「対象サービス」と「単位の考え方・仕組み」を中心に説明します。グループホームを運営される事業者様が、過誤請求や返還を防ぎつつ、必要な夜間支援の体制整備に役立てていただくことを目的としています。

 

目次

  1. 夜間支援等体制加算の対象サービス名
  2. 夜間支援等体制加算の算定加算単位の考え方
  3. 夜間支援等体制加算の基本的な算定要件
  4. 夜間支援対象利用者数のカウント方法
  5. 吹田市集団指導資料にみる実地指導での指摘事項
  6. まとめ(実務で押さえておきたいポイント)

 

1.夜間支援等体制加算の対象サービス名

 

(1)基本は「共同生活援助(グループホーム)」

夜間支援等体制加算は、主として次のような共同生活援助事業所を対象とした加算です。

  • 介護サービス包括型共同生活援助
  • 外部サービス利用型共同生活援助

これらの類型は、「主として夜間において、共同生活を営むべき住居における相談その他日常生活上の援助を行う」ことを目的としたサービスであり、報酬体系の中で夜間の人員配置や支援体制を評価する加算として、夜間支援等体制加算が位置づけられています。

一方で、日中サービス支援型のグループホームは、日中活動の提供に重点が置かれており、各都道府県等の基準資料では「夜間支援等体制加算の対象外」と明記されているケースが見られます。

 

(2)宿泊型自立訓練での夜間支援等体制加算

宿泊型自立訓練においても、夜間の連絡体制や見守り体制を評価する同趣旨の加算(夜間支援等体制加算)が設けられています。構造としては共同生活援助の場合と同様、夜間支援に従事する職員の配置と、支援対象となる利用者数に応じて単位数が段階的に設定される仕組みになっています。

 

 

2.夜間支援等体制加算の算定加算単位の考え方

 

夜間支援等体制加算は、類型(Ⅰ〜Ⅵ)と、夜間支援対象利用者数・障害支援区分等に応じて単位が決まる、少し特殊な構造になっています。

 

(1)夜間支援等体制加算(Ⅰ)〔夜勤配置型〕

夜勤を配置し、利用者に対して夜間に介護等を行うための体制等を確保する場合
→ 1日あたり  672単位〜30単位

実際には、

  • 1人の夜間支援従事者が支援を行う「夜間支援対象利用者数」
  • 利用者の障害支援区分(区分2以下/3/4以上 など)

の組み合わせごとに単位数が細かく設定されており、夜間支援対象利用者が少なく支援の重みが高いほど単位が高くなる仕組みです。

 

 

(2)夜間支援等体制加算(Ⅱ)〔宿直配置型〕

宿直を配置し、利用者に対して夜間に居室の巡回や緊急時の支援等を行うための体制を確保する場合
→ 1日あたり  112単位〜15単位

こちらも、夜間支援対象利用者数の区分ごとに単位数が段階的に設定されており、宿直体制による見守り・緊急対応を評価する仕組みです。

 

 

(3)夜間支援等体制加算(Ⅲ)〔常時連絡・防災体制〕

夜間及び深夜の時間帯において、利用者の緊急事態等に対応するための常時の連絡体制又は防災体制を確保する場合
→ 1日あたり 10単位

Ⅰ・Ⅱで評価される「夜勤・宿直」に加え、電話等による常時連絡体制や防災上の体制整備を行っている場合の上乗せ評価と考えていただくとイメージしやすいかと思います。

 

 

(4)夜間支援等体制加算(Ⅳ)〜(Ⅵ)

令和3年度以降の改定では、夜間支援等体制加算(Ⅳ)〜(Ⅵ)として、一定の条件を満たす場合にⅠ・Ⅱ等に上乗せできる加算が追加されています。内容としては、

  • 夜間支援対象利用者が多い場合
  • 高い障害支援区分の利用者が一定割合以上いる場合

など、夜間支援の負荷が特に高いグループホームをより手厚く評価する趣旨で設けられており、単位数はいずれも1日あたり数十単位の範囲で設定されています。具体的な単位数や細かい条件は、必ず最新のサービスコード表・Q&Aで確認することが必要です。

 

 

3.夜間支援等体制加算の基本的な算定要件

(1)「夜間支援従事者」の配置

厚生労働省の Q&A 資料では、夜間支援等体制加算Ⅰ・Ⅱについて、「1人の夜間支援従事者が支援を行う夜間支援対象利用者の数に応じた加算額が設定されている」ことが示されています。

ポイントは、

  • 夜勤(加算Ⅰ)または宿直(加算Ⅱ)に入る「夜間支援従事者」を配置していること
  • 夜間(概ね22時〜翌5時を含む時間帯)における見守り・相談・介護等に対応できる体制を確保していることです。

 

(2)複数住居を巡回する場合の取扱い

名古屋市の資料では、1人の夜間支援従事者が複数の共同生活住居を巡回する場合の取り扱いについて、次のような考え方が示されています。

  • 1人の夜間支援従事者が支援する夜間支援対象利用者の合計人数で単位区分を判断する
  • 1人の夜間支援従事者が1か所の住居内で夜間支援を行う場合の上限は30人
  • 複数住居を担当する場合、住居間の移動時間は概ね10分以内、対象住居は最大5か所まで 等

共同生活援助では1人の夜間支援従事者に対して何人まで支援対象とできるのかが重要な論点となりますので、自治体の整理を確認し、自事業所の勤務体制と整合をとることが必要です。

 

 

4.夜間支援対象利用者数のカウント方法

名古屋市の同資料では、夜間支援対象利用者数について、「前年度の平均利用者数」を用いて算定することが明記されています。

ポイントは次のとおりです。

  • 夜間支援対象利用者数は「利用定員」や「現在入居している人数」ではなく、前年度の平均利用者数で決める
  • 複数の夜間支援従事者が同じ住居で夜間支援を行う場合、それぞれが実際に支援を行う利用者数に応じて按分する
  • 共同生活援助事業所全体ではなく、**住居ごと(ホームごと)**に人数をカウントする

吹田市の集団指導資料でも、

「加算の算定にあたって用いる単位区分は、夜間支援従業者が支援を行う共同生活住居毎の前年度平均利用者数で算定すること(事業所全体の平均ではない)」
との趣旨が示されており、住居単位でのカウントが徹底されるよう注意喚起がなされています。

 

 

5.吹田市集団指導資料にみる運営指導での指摘事項

吹田市「令和6年度 障がい福祉サービス 集団指導(報酬算定版)」では、夜間支援等体制加算(共同生活援助)について、実地指導での具体的な指摘例と留意事項が整理されています。

(1)巡回・状況確認が行われていない

  • 1人の夜間支援員が複数の共同生活住居の夜間支援を行う場合、
    少なくとも一晩につき1回以上は各住居を巡回すること(サテライト型住居で巡回不要と判断した住居は除く)。
  • 巡回せず、電話連絡等のみで実態として夜間支援が行われていないケースは、Ⅰ型・Ⅱ型の算定要件を満たさない可能性があります。

 

(2)サービス提供記録の不備

  • 夜間支援に関するサービス提供記録(支援内容、利用者の状況、特記事項など)が整備されていない
  • 記録がない場合、実績が確認できず返還指導につながり得る

 

(3)個別支援計画への位置付け不足(加算Ⅰ)

  • 夜間支援等体制加算(Ⅰ)の算定にあたっては、
    夜間支援の内容を利用者ごとに個別支援計画に位置付けることが求められています。
  • 「なぜ夜間支援が必要なのか」「夜間にどのような支援を行うのか」を計画上で明確にしておくことが重要です。

 

(4)単位区分の誤り

  • 単位区分を、共同生活援助事業所全体の前年度平均利用者数で計算している
  • 実際の夜間支援従事者ごとの対象利用者数に応じた区分になっていない

こうした点は、どの自治体でも共通して指摘されやすい部分ですので、体制届・勤務シフト表・記録類を一度整理しておくと安心です。

 

 

6.まとめ(実務で押さえておきたいポイント)

最後に、夜間支援等体制加算を安定して算定していくうえで、押さえておきたいポイントを整理します。

  1. どの類型が対象かを確認する
    • 共同生活援助のうち、介護サービス包括型・外部サービス利用型が中心(自治体資料で日中サービス支援型は対象外とされることが多い)。
  2. 「夜間支援従事者」と「夜間支援対象利用者数」の関係を理解する
    • 加算Ⅰ・Ⅱは、1人の夜間支援従事者が支援を行う利用者数に応じて単位数が変動する。
    • 人数は「前年度平均利用者数」でカウントし、住居ごとに算定する。
  3. 最新の単位数は必ずサービスコード表で確認する
    • 令和6年度改定後の単位数は、厚生労働省の「介護給付費等単位数サービスコード(令和6年4月施行版)」等で確認する。
  4. 夜間支援の内容を個別支援計画と記録で残す
    • 特に加算Ⅰは、個別支援計画に夜間支援の内容を位置付けることが必須。
    • サービス提供記録には、支援を行った時間、具体的な支援内容、利用者の状況等を残す。
  5. 実地指導・監査を意識した体制づくりを行う
    • 巡回記録、夜間の連絡体制、防災体制、勤務シフト表、体制届など、説明資料をセットで整理しておくと安心です。

夜間支援等体制加算は、単に「算定できるかどうか」だけでなく、夜間の安全・安心をどう確保するかというサービスの根幹に関わる加算です。

本記事が、貴事業所の夜間支援体制の見直しや、令和6年度改定後の算定チェックの一助になれば幸いです。実際の届出や請求にあたっては、必ず最新の厚生労働省通知・自治体資料をご確認ください。

 

(参考資料)

共同生活援助 (介護サービス包括型・外部サービス利用 型・日中サービス支援型) に係る報酬・基準について ≪論点等≫(令和2年9月11日)(厚生労働省)

グループホームにおける夜間支援等体制加算の対象者数について(令和元年9月14日)(名古屋市)

平成26年度障害福祉サービス等制度改正に関するQ&A(平成26年4月9日)(厚生労働省)P6~P11

令和6年度集団指導 障がい福祉サービス (報酬算定版)(吹田市)P13

 

関連記事

最近の記事
  1. グループホーム(共同生活援助)の夜間支援等体制加算の基本と算定実務
  2. 児童発達支援・放課後等デイサービスで活用したい「集中的支援加算」の実務ポイント
  3. 栄養士配置加算をやさしく整理(令和6年度版)