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情報公表制度は「毎年の事務」へ。令和8年8月3日公表の最新Q&A Vol.2から整理する実務の要点

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はじめに|開所時の一時的な登録作業からの脱却

障害福祉サービス等情報公表制度について、「開所時にWAM NET(ワムネット)へ登録した後は、変更届を出すときだけ対応すればよい」と考えている事業所は少なくありません。

しかし現在、この制度は大きくアップデートされています。事業所の「基本情報」や「運営情報」の毎年の定例更新に加え、収益、費用、人件費などの「経営情報」についても、毎年度の報告が義務化されています。

2026年(令和8年)8月3日、厚生労働省から「障害福祉サービス等情報公表制度に関するQ&A VOL.2」が公表されました。このQ&Aからは、情報公表という事務が「案内メールが届いたときだけ対応する臨時の入力作業」ではなく、決算後の定例業務として社内で管理すべき「毎年の恒常的な事務」に移行したことが明確に読み取れます。

本記事では、この最新のQ&A(VOL.2)に基づき、事業所の経営者・管理者が毎年の実務サイクルに本制度をどのように組み込み、対応すべきかについて整理します。

1.経営情報の報告目的とデータの取り扱い

経営者や財務担当者にとって、売上や利益、職員の給与額といったセンシティブなデータを入力するにあたり、最も懸念されるのは「自社の財務情報が事業所名と一緒に一般公開されてしまうのではないか」という点でしょう。

まず、この点に関する制度上の取り扱いを正しく理解しておく必要があります。

①報告されたデータの公表方法

Q&Aでは、事業所が入力した経営情報は個別の法人名や事業所名と結び付けて公表される仕組みではない、と明記されています。 経営情報の公表にあたっては、個別の事業所ごとに公表するのではなく、情報公表システム上の経営情報データベースを活用し、複数の事業所を属性ごとに「グルーピングした分析結果」としてのみ公表されます。そのため、個人や特定の事業所が分かる形で公表されることはありません (Q&A 問2-6-1)

※なお、経営情報の具体的な集計・分析方法については、令和8年7月31日時点において検討中とされています (Q&A 問2-5-1)

②なぜ経営状況を報告するのか(制度の意義)

この経営情報の収集は、3年に1度実施される「経営実態調査」を補完するために導入されたものです。物価上昇や災害、新興感染症などが障害福祉事業所の経営に与えている影響を国が毎年継続的に把握し、実態に即した報酬改定や的確な支援策を検討するための基礎資料(エビデンス)として活用されるという明確な政策目的があります (Q&A 問2-1-1)

一方、利用者や家族が事業所を比較・選択するための情報として活用されるのは、これまで通り「基本情報」および「運営情報」のみであり、こちらはWAM NET上で事業所ごとに一般公開されます。基本情報や運営情報を公表することで、利用者が個々のニーズに合った事業所を選べるようにし、利用者の権利擁護やサービスの質の向上につなげることが目的です (Q&A 問1-1-1)

2.毎年度いつまでに、何を報告するのか

実務の管理体制を整える上で、まず混同しやすい「2つの異なる報告サイクル」を社内で切り分けて認識しておく必要があります。

経営情報の報告(決算後3か月以内)

経営情報の見える化報告は、原則として「毎会計年度終了後3か月以内」に行う必要があります (Q&A 問2-4-1)

  • 例: 3月決算の法人であれば、毎年6月末が提出期限となります。
基本情報・運営情報の定期報告(年1回・定期更新)

これまでの情報公表制度に基づく登録内容についても、年1回の定期更新が義務付けられています。WAM NETが送信する「定期報告のお願い」などの案内に従い、各指定権者(都道府県や市区町村)が定めるスケジュール(例:毎年5月1日から7月31日までの期間内など)に沿ってシステム上で更新・報告を行います。

随時報告(変更時の対応)

上記2つの定例報告とは別に、法人名、事業所名、所在地、電話番号、メールアドレスなど、事業所の基本となる情報に変更が生じた場合は、次回の定期報告を待たずに*「その都度、随時報告」を行う必要があります。吹田市などの案内でも、これらの事項に変更がある場合は随時報告するよう示されています。

3.「必須マーク」だけに囚われない入力実務

WAM NETのシステム画面上で入力を行う際、システム上の「必須」マークの有無だけを基準に入力を進めると、法令上の要件を満たせないリスクがあります。

①システム仕様と省令の不整合

省令上、事業所の財務状況については報告が義務付けられています。しかし、法人形態(社会福祉法人、NPO、合同会社など)によって作成していない財務諸表があるため、システムの仕様上は必ずしもこれらすべての入力が「必須項目」としてロックされていない場合があります。

これに対し、Q&Aでは以下のように明示されています。

  • 「システム上は必須となっていない場合であっても、法人が作成している必要な財務諸表については、すべて報告の対象である(Q&A 問1-2-1)」

WAM NET側のシステムガイダンスにおいても、「必須」マークはシステム上の最低限のエラーチェック(送信できるかどうか)のための表示に過ぎず、回答できない場合を除き、該当する項目はすべて適切に入力する必要があるとされています。

②申請後の「差戻し」と期限の取り扱い

期限内に報告を送信した後、指定権者の審査や「差戻し」となったことで、実際の承認処理が期限を超えてしまった場合については、「事業者が迅速に必要な修正・再申請等を行っている限り、事業者の事務処理の遅れとして不利益が生じないよう対応する(Q&A 問2-3-4)」という柔軟な方針が示されています。申請を終えた後も、システム内のステータスや登録メールアドレス宛ての通知を定期的に確認することが重要です。

4.兼務職員の整理と人件費の入力方法

経営情報における「職種別の人員数および職員給与(人件費)」の登録は、実務担当者が最も按分計算に悩む部分です。しかし、Q&Aでは事務負担を軽減するための合理的なルールが示されています。

多機能型等の「サービス間の兼務職員」

多機能型事業所などで、職員が複数のサービスを兼務している場合であっても、職員数や給料をサービス別に換算・按分(時間で細かく分割)して入力する必要はありません。 回答を行う会計単位(報告の単位)に所属している職員の「実人数」と「給与総額」を、そのまま所属先に報告します (Q&A 問2-3-2)

「職種間の兼務職員」

同一のサービス内において、複数の職種(例:生活支援員とサービス管理責任者)を兼務している場合は、職種間での按分は行わず、その職員の「主たる職種」にまとめて入力します (Q&A 問2-3-2)

これは、運営指導対策や人員配置基準を算出する際に行う「常勤換算(勤務時間に応じた按分)」とは、まったく異なる考え方です。実務上は、このQ&Aの特例を適用して、極めてシンプルな数値整理を行うことができます。

なお、費用として計上する職員全体の給与(人件費)は必須報告ですが、「職種別の給与情報」の入力については、任意項目とされています (Q&A 問2-3-1)。事業所内の給与体系の管理負荷に応じて、入力を選択して差し支えありません。

5.外部専門家との適切な役割分担

決算数値の入力や人件費の整理にあたり、税理士や行政書士などの外部専門家に業務を依頼する際の注意点があります。

情報公表システムの仕様およびセキュリティ上の観点から、「外部の専門家がアカウントIDやパスワードを預かって事業者に代わりシステムにログインし、登録から最後の報告ボタンまでをすべて一括して行う(代理入力)」は原則として前提にできません。登録と最後の報告申請ボタンの押下は、事業者自身が主体的に行う役割分担が基本となります。

ただし、専門家のサポートを実務に組み込むことで、担当者の作業負担を大幅に削減することは十分に可能です。実務における現実的な連携パターンは以下のようになります。

  • 税理士等との連携: 決算書類に基づき、システムに入力すべき「経営情報(収益・費用・職員給与総額)」の元データの抽出・整理や、自社の会計基準に応じた勘定科目のマッピングについて助言を得る。
  • 行政書士等との連携: 入力前に、手元の資料と入力項目に漏れや誤りがないかの「事前チェック(画面の確認)」や、自治体から差戻しが発生した際の「指示内容の解釈と修正方法の確認」の支援を受け、手戻りを防止する。

6.未報告減算のリスクと管理体制

万が一、期日までに情報公表や経営情報の報告を怠り、自治体からの指導や是正命令に対しても対応しなかった場合、非常に厳しいペナルティが科されます。それが「情報公表未報告減算」です。

①減算ペナルティの仕様

減算される割合は一律ではなく、提供しているサービスの種類に応じて「5%または10%」が適用されます。

  • 10%減算の対象サービス: 共同生活援助(グループホーム)、施設入所支援、療養介護など
  • 5%減算の対象サービス: 居宅介護、生活介護、自立訓練、就労継続支援(A型・B型)、放課後等デイサービス、計画相談支援など

初回の経営情報の報告(令和6年度決算情報の報告)がなされなかった場合は、指導に従わない限り「未報告の時点(令和8年4月1日)に遡って減算」が適用されます。また、令和8年度以降の更新についても、報告を怠ると「報告期限の翌月から」直接減算の対象となります (Q&A 問1-3-1)

②自動リマインド機能の不在

実務上最も警戒すべき点は、現行のWAM NETシステム上には、未申請の事業所に対して督促や警告メールを自動で発出するような「リマインド機能」が備わっていない点です(Q&A 問3-1-1)。 「通知メールが来たら入力する」という受け身の姿勢では、申請忘れによる未報告減算のリスクに直結します。そのため、事業所自ら決算スケジュールの中に本制度の報告業務をあらかじめ組み込んでおく自己管理が必須となります。

7.事業所内で管理するための実務チェックリスト

情報公表制度への適切な対応を属人化させず、組織として毎年スムーズに完了させるために、事業所内で以下の「定例実務チェックリスト」を作成し、年間スケジュールに登録して運用することをお勧めします。

自法人の会計年度と報告期限の把握
    • 毎年の決算月から「3か月後」の期日を年間カレンダーに登録しているか
  • 2つの報告サイクルの峻別
    • 「5月〜7月の基本情報・運営情報の定期更新」と「決算後3か月以内の経営情報報告」を別個のタスクとして切り分けているか
アカウントの管理体制
    • WAM NETのログインID・パスワードの保管場所を定め、システムからの連絡用メールアドレスが最新(稼働しているアドレス)になっているか
  • 入力担当者と最終確認者の決定
    • システムに数値を打ち込む担当者と、送信前に決算書等との照合を行う最終確認者(責任者)を明確に決めているか
専門家との連携時期の決定
    • 決算確定後、税理士から決算書データを受け取ってからシステム入力へ入るまでのスケジュールと役割が決定しているか
申請後のステータス確認のルール化
    • 申請送信後、ステータスが「承認」になるまで定期的に画面を確認し、差戻し(修正指示)が発生した場合は放置せず、迅速に再申請を行える体制が整っているか

まとめ|決算後の定例実務として内製化する

情報公表制度および経営情報の報告は、突発的な事務処理ではなく、「毎年の決算・申告業務と地続きの定例事務」です。

兼務職員の按分不要ルールを正しく活用し、作成済みの決算資料をシステムに確実に反映させる管理フローさえ構築できれば、決して現場の過度な事務負担となるものではありません。

実務上の疑問点を公式Q&Aに沿って正しく整理し、チェックリストを活用した確実な運用体制を構築することで、ペナルティリスクを完全に防ぎつつ、健全な組織運営を維持していきましょう。

(参考資料)厚生労働省「障害福祉サービス等情報公表制度に関するQ&A VOL.2」(令和8年8月3日)

※本文中の「問○-○-○」は、「障害福祉サービス等情報公表制度に関するQ&A VOL.2」の問い番号を示しています。

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