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障害福祉サービス全般

【実務確認】令和8年度報酬改定から2ヶ月:6月請求前後に見直すべき「加算・減算・記録」の整合性

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はじめに

令和8年(2026年)4月の報酬改定施行から2ヶ月が経過いたしました。改定後の新基準に基づく基本報酬の判定や体制届の提出、処遇改善計画書の作成など、新たな運用が現場でスタートしている時期かと存じます。 制度改正後の運用において、届け出た「体制」や「計画」が、実際の「支援記録」や「請求データ」と整合しているかを確認しやすいのは、運用が一巡したこの6月前後のタイミングです。 本記事では、事業所様が将来的な運営指導(実地指導)における過誤調整(返還)のリスクを防ぐため、自主点検しておきたい「基本報酬・加算・減算・記録」に関する実務上のポイントを5つの視点で整理いたしました。自社の適正な運営体制の点検にご活用ください。

1. 【基本報酬・加算】改定後の新要件と届出内容の照合

現在算定している基本報酬加算が、令和8年度改定後の要件に合致しているか、また最新の算定根拠で届け出が行われているかの確認をおすすめします。 改定前から継続して算定している加算でも、要件や区分が見直されている場合があります。

①就労継続支援B型における平均工賃月額区分の見直し

本改定により、平均工賃月額区分の基準額が引き上げられました。経過措置の対象外となる事業所については、新しい基準での区分判定が必要となります。また、区分が下がる場合も基本報酬の減少額が3%程度に収まるよう、中間的な区分が新設されるなどの配慮措置が講じられています。自事業所の前年度実績に基づく最新の算定根拠と、自治体へ提出した「体制届」の控え、および国保連への「請求データ」が一致しているかのご確認をご検討ください。

②就労移行支援体制加算の新ルール(定員上限等の確認)

一事業所で算定可能となる年間の就職者数に「前年度9月末時点の利用定員数まで」という上限が設定されました。4月以降の請求において、算定人数が上限を超過していないかの確認が実務上有効です。また、同一利用者につき過去3年間の他事業所での算定実績確認も厳格化されているため、利用開始時の聞き取り状況の再点検をおすすめします。

③要件を満たさなくなった加算の取下げ(変更届)

職員の退職等により人員配置要件を満たさなくなった加算について、そのまま請求を続けてしまうと後日全額返還の対象となります。要件未達が判明した際は、速やかに取下げ(減算)の変更届を提出することが求められます。

2. 【新設・拡充加算】届出要否の切り分けと根拠資料の整備

令和8年度改定で新設・拡充された加算について、自事業所で適正に算定する体制が整っているかの確認も有益です。加算には「事前の体制届が必要なもの」と「届出は不要だが要件を満たせば算定できるもの」があります。

①届出が必要な加算の算定開始月

事前の届出が必要な加算は、実態として要件を満たしていても、自治体への届出(毎月15日等の締切)を行わなければ算定開始月に間に合いません。自社で取得可能な加算の見落としや、届出の遅れがないかの確認をご検討ください。

②届出不要加算における「算定根拠」の記録保存

届出不要の加算(初回加算、欠席時対応加算等)は、請求ソフト上で入力するだけで請求が通る場合があります。しかし、制度上適正に算定するためには、後日の運営指導で客観的に説明できるよう、個別支援計画への位置付けや、サービス提供記録への詳細な記載(いつ、誰が、どのような対応を行ったか)といった「算定根拠となる記録」を残しておく仕組みづくりをご検討ください。

3. 【減算要件】必須記録の保管と公表状況の確認

加算の算定と同等に実務上の影響が大きいのが、基本報酬の「減算」適用漏れの確認です。運営指導においては、事業所の運営体制に関する必須要件の履行状況が厳格に確認されます。特に以下の減算項目について、現場での記録やインターネット等での公表状況が最新の状態となっているか、点検をおすすめします。

①身体拘束廃止未実施減算 / 虐待防止措置未実施減算

指針の整備、定期的な委員会の開催、全職員を対象とした研修の実施という3つの要件が必須です。委員会等の「開催議事録」や「研修の参加者名簿」が手元に保管されているかご確認ください。

②業務継続計画(BCP)未策定減算

BCPの策定だけでなく、計画に基づく全職員への周知、および定期的な訓練(シミュレーション)の実施とその記録の保存が求められます。

③情報公表未報告減算

障害福祉サービス等情報公表システム(WAM NET等)への事業所情報の登録・更新が行われていない場合、減算の対象となります。年1回の更新手続きが完了しているかの確認をご検討ください。

4.【処遇改善加算】令和8年6月施行「新制度」の要件確認と配分実績

令和8年6月より新・処遇改善加算が施行されています。要件や配分ルールの変更に伴い、以下の点をご確認いただくことをおすすめします。

①対象職種の拡大と配分対象者の見直し

加算の対象職種が「障害福祉従事者全般」に正式に拡大されました。現場の支援に入る経営者(役員)やサービス管理責任者、事務員等も賃金改善の配分対象に含めることが可能となっています。対象者を拡大して配分を行う場合、就業規則や賃金規程に定める支給対象者の範囲と矛盾が生じないよう、規程の改定漏れがないかご確認をご検討ください。

②上位区分(ロ区分)算定時の「月給配分」特例ルール

上位の「ロ区分(加算Ⅰロ・Ⅱロ)」を算定する場合、「処遇改善加算ロの加算額の2分の1以上(一部のサービスでは加算ロの加算額の2分の1以上)」を月給(基本給または毎月支払う手当)で配分するという厳格な特例要件が適用されます。この要件を満たす賃金設計になっているかの再点検をおすすめします。

③生産性向上(ICT導入等)の取組と「誓約」による算定

「ロ区分」の算定には、ICT機器導入等の「生産性向上」の取組が必須となります。令和8年度中は「年度内に対応する」という誓約による算定開始が認められていますが、次年度の実績報告の際に客観的に証明できるよう、導入システムの領収書や研修の参加名簿など、根拠資料の保管体制の整備をご検討ください。

④「賃金改善内訳表」の作成による予実管理

加算として受け取った額は、全額を職員の賃金改善に充てることが絶対のルールです。毎月の給与計算の段階で、既存の手当等に含めて支給する場合は、エクセル等で「賃金改善内訳表」を作成し、どの手当のいくら分が処遇改善によるものか、客観的な算定根拠を別途整理しておくことをおすすめします。

5. 【記録の整合性】「区分・計画・実績」の一致と過誤申立の活用

加算を適正に算定するうえで、実務上見落とされがちなのが「書類間の整合性」です。具体的には、以下の3つの記録が論理的に繋がっているかを確認する手順をご検討ください。

① 利用者の区分や状態像(アセスメントによる必要性の確認)

② 個別支援計画書への「具体的な支援内容」としての位置付け

③ 日々のサービス提供記録(いつ・誰が・どのような支援を実施したかの事実記録)

例えば、専門的支援関係の加算送迎加算などを算定する場合、実際に現場で支援を行っていても、②の「個別支援計画」にその必要性が明記されていなければ、算定根拠として不十分と判断される場合があります。逆に、計画に記載があっても、③の「日々の実施記録」がなければ、請求日数や算定回数との照合ができません。 万が一、6月の請求前後の自主点検において、過去の請求内容と記録に食い違い(加算の誤請求や減算の適用漏れ等)が判明した場合は、そのままにせず、指定権者(自治体)へ速やかに相談の上、正しい内容に修正する「過誤申立(かごもうしたて)」の手続きを行うことをおすすめします。速やかに自浄作用を働かせて正しい状態へ戻す実務対応が、適正な事業運営に繋がります。

まとめ

本記事で整理した実務上のチェックポイントを活用し、自社の「体制届」「個別支援計画」「サービス提供記録」「請求データ」の整合性を点検いただくことをおすすめします。客観的な記録に基づく運用体制を定期的に見直すことが、複雑化する制度に対応し、適正かつ安定した事業基盤を構築するための一助となりましたら幸いです。

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