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はじめに|「福祉事業だからNPO法人」とは限らない
障害福祉事業所の開設を考える際、NPO法人を候補にする方もおられます。生活介護、就労継続支援B型、共同生活援助などは地域との関わりが深く、NPO法人の仕組みが事業の方向性に合う場合があります。
ただし、障害福祉事業所の開設に必要なのは原則として法人格であり、NPO法人に限られるわけではありません。株式会社、合同会社、一般社団法人なども、人員・設備・運営に関する指定基準を満たせば、障害福祉サービス事業を行うことができます。
まず1事業所を開設し、少人数で迅速に意思決定したい場合は、株式会社や合同会社の方が運営に適していることもあります。
この記事では、NPO法人が向いている場合と、他の法人格も検討した方がよい場合を分けたうえで、法人設立から指定申請までの進め方を整理します。
1.障害福祉事業を行うためだけならNPO法人である必要はない

障害福祉サービスの指定を受けるには、定款の事業目的を整え、人員基準・設備基準・運営基準を満たす必要があります。これらは法人の種類にかかわらず確認される事項です。
そのため、「就労継続支援B型を1事業所から始めたい」「共同生活援助を1棟から開設したい」「経営者を中心に少人数で判断したい」という場合は、株式会社や合同会社も有力な選択肢になります。
NPO法人の設立には、10人以上の社員が必要です。ここでいう社員とは従業員ではなく、総会で議決権を持つ法人の構成員を指します。また、役員を置き、定款、設立趣旨書、事業計画書、活動予算書などを作成して、所轄庁の設立認証を受けなければなりません。設立後も、社員総会の開催、事業報告書等の作成・提出、情報公開などが必要です。
一方、株式会社と合同会社は1人でも設立できます。株式会社には公証人による定款認証が必要ですが、合同会社には不要です。いずれもNPO法人のような所轄庁による設立認証はありません。
| 項目 | NPO法人 | 株式会社 | 合同会社 |
| 設立人数 | 社員10人以上 | 1人から | 1人から |
| 所轄庁の設立認証 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 公証人による定款認証 | 不要 | 必要 | 不要 |
| 利益の構成員への分配 | できない | できる | できる |
| 主な意思決定 | 社員総会 | 株主総会等 | 定款により柔軟に設計 |
| 毎年度の所轄庁への事業報告 | 必要 | 原則不要 | 原則不要 |
設立までの期間や少人数での意思決定を重視する場合、NPO法人が必ずしも最適とは限りません。
法人格を決める前に、事業内容だけでなく、設立人数や意思決定の方法、設立後の事務負担も確認する必要があります。
2.NPO法人が事業の方向性に合う場合
NPO法人が選択肢になりやすいのは、指定障害福祉サービスだけで法人の活動を完結させない場合です。
例えば、生活介護や就労継続支援B型を中心にしながら、相談支援、介護保険事業、地域交流、家族支援、子どもの居場所づくり、ボランティア活動などへ活動を広げる計画がある場合です。
このような場合は、単に「障害福祉事業所を経営する法人」ではなく、地域の福祉課題に関する複数の活動を行い、その一つとして障害福祉サービスを運営する法人としてNPO法人を検討できます。
なお、NPO法人は利益を出してはいけない法人ではありません。障害福祉サービスの報酬を受け取り、職員給与、家賃、設備費などの事業経費に充てることができます。
ただし、事業で生じた利益を社員などの構成員へ配当することはできません。利益は法人の目的に沿った次の事業や活動に使用します。
また、寄附、助成金、企業協賛、ボランティア参加などを組み合わせた活動を予定している場合も、NPO法人は検討しやすい法人格です。
ただし、NPO法人になれば寄附者が自動的に税制優遇を受けられるわけではありません。寄附に関する税制優遇には、認定NPO法人等の要件を別に満たす必要があります。
複数の社員が総会を通じて意思決定し、代表者の交代後も一定の目的のもとで活動を続ける運営を想定している場合にも、NPO法人は合いやすいでしょう。
反対に、経営者が責任と権限を持ち、少人数で事業判断を行うのであれば、株式会社や合同会社の方が運営しやすい場合があります。
3.NPO法人の設立手続きと指定申請は別の手続き

NPO法人の設立は、一般に次の流れで進みます。
- 法人の目的と事業内容を決める
- 社員と役員を決める
- 定款、設立趣旨書、事業計画書、活動予算書等を作成する
- 設立総会を開催する
- 所轄庁へ設立認証を申請する
- 認証後、法務局で設立登記を行う
吹田市内のみに事務所を置くNPO法人の場合、設立認証の窓口は吹田市です。
一方、障害福祉事業所の指定申請では、予定するサービスごとに、人員、設備、運営方法、物件、消防・建築関係、管理者やサービス管理責任者等の配置を確認します。
NPO法人の設立認証を受けても、それだけで障害福祉事業所を開設できるわけではありません。
法人設立と事業所指定は別の手続きであり、それぞれの要件を満たす必要があります。
4.法人設立と開設準備を並行して進める
実際の準備を「法人設立後に物件を探し、その後に人員を確保して指定申請をする」という一本道で考えると、開設希望日に間に合わないことがあります。
NPO法人の定款や事業計画を作成する段階から、予定する障害福祉サービスの指定基準と申請日程を確認することが重要です。生活介護、就労継続支援B型、共同生活援助では、必要な職種、配置人数、設備が異なります。
定款の事業目的も指定申請に関係します。将来、生活介護に加えて相談支援、居宅介護、介護保険事業などを行う予定がある場合は、設立時にどこまで事業目的へ盛り込むかを検討します。
ただし、予定が具体化していない事業を無制限に並べるのではなく、法人の活動方針と事業計画に沿って整理する必要があります。
物件は、賃料、広さ、立地だけで判断できません。設備基準のほか、建築上の用途、消防設備、避難経路などの条件を満たさなければ、予定していた場所で指定を受けられない場合があります。
物件の賃貸借契約や改修工事を確定する前に、平面図等を用いて指定権者、消防署、建築担当部署へ確認することが重要です。
したがって、法人設立、人員確保、物件選定、設備基準の確認、関係部署との協議、指定申請は、互いの進捗を確認しながら並行して進めます。
5.指定権者と申請期限は開設地によって異なる

障害福祉事業所の指定権者や事前協議の方法、申請期限は、開設予定地によって異なります。
北大阪では、吹田市、豊中市、茨木市、高槻市などが、それぞれ障害福祉サービスの指定事務を担当しています。一方、摂津市では、サービスによって大阪府が指定権者となります。
「大阪府内であれば申請方法は同じ」とは限りません。
開設予定地が決まった段階で、指定権者、事前協議の要否、提出期限、必要書類を確認し、開設希望日から逆算して準備する必要があります。
まとめ|法人格は事業内容と運営方法から選ぶ
障害福祉事業所を開設するためだけに、NPO法人を選ぶ必要はありません。まず1事業所を開設し、少人数で迅速に判断しながら運営するのであれば、株式会社や合同会社の方が目的に合う場合があります。
一方、障害福祉サービスを中心に、相談支援、介護、地域交流、家族支援、ボランティア活動などへ活動を広げ、複数の社員が法人運営に参加する形を予定しているのであれば、NPO法人を検討する意味があります。
法人格を選ぶ際は、障害福祉事業を実施できるかという点だけでなく、誰が意思決定を行い、どのような活動を継続する法人にするのかを整理することが重要です。
NPO法人を選ぶ場合も、法人設立だけを先に進めるのではなく、予定するサービス、社員・役員、定款、人員、物件、指定基準、開設希望日を一つの工程として確認します。
法人設立と指定申請を同じスケジュール上で管理することで、手続きの順序や準備漏れを防ぎやすくなります。
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