はじめに:介護タクシーは許可後も営業開始までの準備が必要
介護タクシー(一般乗用旅客自動車運送事業・福祉輸送限定)の許可を取得しても、すぐに営業を開始できるわけではありません。
許可後には、登録免許税の納付、運転者の適性診断や健康診断、車両の事業用登録、営業所の帳簿整備などが必要です。
特に運転者については、65歳以上の方は「適齢診断」の対象になるなど、年齢や運転経験によって受診する診断が異なります。
また、適性診断とは別に、事業者が運転者に対して行う法定指導・監督もあります。
近畿運輸局の取扱いでは、原則として許可日から6か月以内に運輸を開始する必要があります。
本記事では、介護タクシーの許可取得後から運輸開始届の提出まで、事業者様が確認すべき内容を説明します。
1.介護タクシーの許可後は登録免許税の納付から始める

一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)の許可を受けたら、まず登録免許税を納付します。
登録免許税は30,000円です。
近畿運輸局が指定する期限までに納付し、領収証書を所定の届出書に添付して提出します。
同時に、運輸開始までの準備を次の4つに分けて確認します。
- 運転者: 二種免許、適性診断、健康診断、法定指導・監督
- 車両: 事業用登録、メーター検査、車体表示
- 営業所: 法定帳簿、運行管理体制、運賃・料金の掲示
- 届出: 運輸開始届と必要な添付書類
適性診断の予約や車両登録には日数がかかる場合があります。
営業開始予定日から逆算して、準備を進めることが大切です。
2.介護タクシー運転者の適性診断・適齢診断・法定指導監督
介護タクシーの運転者については、二種免許や必要な資格等に加え、適性診断、健康診断、法定指導・監督を確認します。
ここで注意したいのは、適性診断と、事業者が運転者に行う法定指導・監督は別のものという点です。
① 適性診断には初任診断・適齢診断などがある
適性診断は、NASVA(自動車事故対策機構)など、国土交通大臣の認定を受けた機関で受診します。
適性診断には、次の種類があります。
- 初任診断: 新たに雇い入れた運転者など、所定の要件に該当する方
- 適齢診断: 65歳以上の運転者
- 特定診断: 一定の事故を起こした運転者
つまり、初任診断と適齢診断は、どちらも適性診断の一種類です。
65歳以上の運転者を新たに雇い入れた場合は、適齢診断を受診すれば、初任診断を別途受診する必要はありません。
これはNASVAの「適性診断Q&A」にも明記されています。
一方、過去に初任診断を受診していても、65歳になれば適齢診断の対象になります。
適齢診断の受診時期は、次のとおりです。
- 65歳に達した日以後1年以内に1回
- その後、75歳に達するまでは3年以内ごとに1回
- 75歳に達した日以後1年以内に1回
- その後は1年以内ごとに1回
例えば、60歳で初任診断を受診し、その後も継続して運転している方であっても、65歳になれば適齢診断を受診する必要があります。
なお、近畿運輸局の「一般乗用旅客自動車運送事業の新規許可後の手続きについて(福祉限定)」では、運輸開始までに初任診断または適齢診断を受診させることとされています。
65歳以上の運転者については、運輸開始前に適齢診断の受診状況を確認する必要があります。
② 適齢診断を受けた後にも指導が必要
適齢診断を受診すれば、すべての対応が完了するわけではありません。
事業者は、診断結果を踏まえて、運転者本人に安全運転に関する特別な指導を行います。
例えば、次のような内容です。
- 加齢による視力や判断能力などの変化
- 診断結果から確認できる運転上の特性
- 事故を防止するための具体的な注意事項
適齢診断の結果が判明してから1か月以内に特別な指導を行い、その記録を残す必要があります。
診断の受診と、診断結果に基づく指導は、分けて確認することが重要です。
③ 法定指導・監督は誰が実施する?
法定指導・監督とは、事業者が運転者に対して行う安全運転教育です。
通常は、事業者の運行管理者等が運転者に対して指導を行います。
例えば、次のような内容です。
- 事業用自動車の安全運転
- 乗降時の安全確認
- 車いすの固定方法
- 日常点検と点呼
- 事故発生時の対応
- 営業区域内の交通状況
- 利用者への接遇
これらの法定指導・監督は、必ず外部の研修機関に申し込んで受講するものではありません。
事業者が法令に沿った内容で実施し、指導日時、内容、担当者、対象運転者などを記録する方法があります。
ただし、上記の項目だけで法定指導・監督のすべてを満たすという意味ではありません。
必要な指導内容や実施方法は、国土交通省の指導・監督指針に基づいて確認します。
④ 初任運転者には特別な指導が必要
初任運転者に該当する場合は、通常の指導・監督に加えて特別な指導が必要です。
国土交通省の指導・監督指針では、初任運転者に対して、所定の項目について合計6時間以上の指導を行うことなどが定められています。
また、一般乗用旅客自動車運送事業では、旅客自動車運送事業運輸規則第36条第2項により、新たに雇い入れた運転者に対する原則10日間以上の指導・監督等についても定められています。
そのため、「6時間の研修を行えば、必要な運転者教育がすべて完了する」というわけではありません。
なお、すでに特定旅客自動車運送事業で乗務していた運転者が、同じ法人の一般乗用旅客自動車運送事業でも乗務する場合があります。
この場合には、過去の指導・監督記録や運転者の経歴を確認し、一般乗用で新たに必要となる指導内容を整理します。
同一人物であることだけを理由に、すべての初任教育が免除されると判断しないことが重要です。
⑤ 健康診断も忘れずに確認する
運転者の健康状態を把握するため、健康診断も必要です。
すでに別の事業で雇用している職員であれば、過去の健康診断結果が残っている場合があります。
その場合も、受診日や検査内容を確認し、必要な健康診断が実施されているかを確認します。
3.福祉車両を事業用自動車(緑ナンバー)として登録する

許可を受けた車両については、事業用自動車として登録する必要があります。
① 事業用自動車等連絡書を提出する
まず、管轄の運輸支局の輸送部門に「事業用自動車等連絡書」を提出し、確認を受けます。
その際には、車検証や車両の諸元が分かる資料などが必要です。
輸送部門で確認を受けた連絡書は、その後の車両登録手続きに使用します。
② 事業用ナンバーを取得する
確認を受けた事業用自動車等連絡書を使用し、登録部門で事業用自動車の登録を行います。
登録方法は、新車か中古車かによって異なります。
- 新車: 新車新規登録
- 中古車: 現在の登録状況に応じた新規登録・変更登録等
新車の場合は、最初から事業用自動車として登録することもできます。
登録後は、車検証の情報と緑ナンバーが正しく交付されているか確認します。
4.メーター検査・車体表示・乗務員証を整備する
① 距離制運賃の場合はメーター検査
距離制運賃を採用する場合は、タクシーメーターの装着と所定の装置検査が必要です。
大阪府の場合は、大阪府計量検定所で手続きを確認します。
なお、時間制運賃など、認可された運賃制度によって必要な対応は異なります。
② 車体表示と乗務員証

事業用車両には、事業者名など、必要な表示を行います。
また、車内には所定の表示や乗務員証を備え付ける必要があります。
車体表示の文字サイズや表示位置は、近畿運輸局の取扱いに沿って確認します。
必要な表示は、運輸開始前に整備しておくことが重要です。
5.営業所に必要な帳簿と運行管理体制を整備する
介護タクシーは、利用者から依頼があったときだけ運行する場合でも、事業者として必要な管理体制を整える必要があります。
① 営業所で管理する主な書類
- 点呼記録簿
- 乗務記録(日報)
- 乗務員台帳
- 指導・監督の記録
- 適性診断・健康診断の記録
- 日常点検・定期点検整備の記録
- 事故記録簿・苦情処理簿
- 車両台帳・任意保険関係書類
依頼が少ないことを理由に、必要な点呼や記録を省略することはできません。
また、一般乗用旅客自動車運送事業では、指導要領の作成と指導主任者の選任も確認します。
② 運賃・料金と運送約款を確認する
営業所には、認可された運賃・料金や運送約款を備え、法令に従って公示する必要があります。
ホームページでの公示についても、事業者の規模などに応じた取扱いを確認します。
営業開始前には、実際に適用する運賃制度と掲示内容が一致しているかを確認しましょう。
6.運輸開始後は遅滞なく運輸開始届を提出する
必要な準備が整い、運輸を開始した後は、管轄の運輸支局に「運輸開始届」を提出します。
近畿運輸局の案内では、原則として運輸開始後、遅滞なく提出することとされています。
主な添付書類には、次のものがあります。
- 自主点検表
- 車検証または自動車検査証記録事項
- 任意保険の確認書類
- 指導主任者選任届
- 就業規則(該当する事業場)
- 労働保険の加入確認書類
- 健康保険・厚生年金保険の加入確認書類
具体的な添付書類は、提出先の運輸支局が示す一覧で確認します。
運輸開始後も、点呼、乗務記録、車両点検、運転者への指導・監督など、法令に基づく管理業務を継続する必要があります。
まとめ:適性診断と法定指導・監督を分けて確認する
介護タクシーの許可取得後は、運転者、車両、営業所、届出の各手続きを整える必要があります。
特に運転者については、次の3点を区別することが重要です。
- 初任診断: 新たに雇い入れた運転者などが対象となる適性診断
- 適齢診断: 65歳以上の運転者が対象となる適性診断
- 法定指導・監督: 事業者が運転者に実施し、その記録を保存する安全運転教育
65歳以上の運転者を新たに雇い入れる場合、適齢診断を受診すれば、初任診断を別途受診する必要はありません。
また、過去に初任診断を受診していても、65歳到達後は適齢診断の対象になります。
適性診断の受診と、事業者による法定指導・監督は別の手続きです。
運輸開始までの流れを整理し、必要な診断や指導・監督に漏れがないよう準備を進めましょう。
(参考資料)
1.「旅客自動車運送事業運輸規則」(昭和31年運輸省令第44号)(国土交通省)
※第36条、第38条~第40条を参照。運転者の選任、指導・監督、指導要領の作成、指導主任者の選任等に関する規定を確認。
2.「旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(平成13年国土交通省告示第1676号)(国土交通省)
※初任運転者に対する特別な指導、適齢診断受診後の指導、指導記録等に関する規定を参照。
3.「一般乗用旅客自動車運送事業の新規許可後の手続きについて(福祉限定)」(令和3年2月現在)(近畿運輸局)
※登録免許税の納付、適性診断・健康診断、事業用自動車の登録、運輸開始届の提出等に関する手続きを参照。
4.「運転者適性診断の種類」(独立行政法人自動車事故対策機構・NASVA)
※初任診断、適齢診断、特定診断の対象者と診断内容を確認。
5.「適性診断Q&A」(独立行政法人自動車事故対策機構・NASVA)
※65歳以上の運転者を新たに雇い入れた場合、適齢診断の受診により初任診断を別途受診する必要がない取扱いを参照。
6.「適齢診断」(独立行政法人自動車事故対策機構・NASVA)
※65歳・75歳到達時の受診期限と、その後の受診周期を確認。