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はじめに
令和8年度(2026年度)を迎え、障害福祉サービス事業所における「虐待防止」「BCP(業務継続計画)」「感染症対策」などの研修・訓練は、猶予期間を終え、完全に義務化された運用フェーズにあります。
日々の支援業務と並行して、法定研修を漏れなく実施し、運営指導(実地指導)の要件を満たす記録を残すことは、事業所運営における重要な課題です。
本記事では、こうした課題に対し、令和8年度現在の最新基準に基づいた法定研修一覧と、実務を効率化するためのポイントを簡潔にまとめました。
1. 【頻度別】障害福祉事業所で実施が求められる法定研修一覧

1-1. 年2回以上(および新規採用時)の実施が必須の項目(感染症対策)
これらは知識の習得にとどまらず、事業所内の委員会やマニュアルと連動した運用が求められる重要な項目です。サービス形態によって発生時の対応が大きく異なるため、それぞれの特性に応じた実技やシミュレーション(訓練)を含める必要があります。
- 感染症対策研修・訓練
- 【入所・居住系】 :施設内での感染拡大を防ぐためのゾーニング(生活空間・動線の区分け)施設内療養、および濃厚接触者への対応手順の確認が重要です。また、感染対応により職員が不足する事態を想定した人員確保のシミュレーションも求められます。
- 【通所・訪問系】: 感染(疑い)者が発生した場合の迅速な利用休止措置や、一時隔離、保護者・関係機関への連絡体制の確認が中心となります。通所系では事業所の休業基準の明確化、訪問系では訪問先で体調不良者を発見した際の対応手順の訓練が含まれます。
1-2. 年1回以上の実施が必須の項目(虐待防止・身体拘束適正化・BCP・非常災害対策・安全計画)
年度計画の中に組み込み、全職員を対象として定期的に実施する基本項目です。
- 虐待防止研修: 従業者全員が対象です。設置が義務付けられている「虐待防止委員会」での検討内容を共有し、身体拘束適正化の視点も含めて実施します。また、運営基準で明記された利用者の「意思決定の支援」や権利擁護の視点を取り入れることが重要です。なお、委員会や研修等の未実施は『虐待防止措置未実施減算(所定単位数の1%減算)』の対象となります。
- 身体拘束適正化研修 :やむを得ず身体拘束を行う場合の3条件(切迫性・非代替性・一時性)の再確認と、解除に向けた検討手順を学びます。未実施の場合は『身体拘束廃止未実施減算(施設・居住系サービスは10%、訪問・通所系サービスは1%の減算)』の対象となるため、確実な実施が求められます。
- BCP(業務継続計画)研修・訓練 :地震等の自然災害および感染症流行時を想定した研修と訓練が必要です。令和6年度から完全義務化されており、サービス形態によって減算の割合や訓練の重点が異なります。
- 【入所・居住系】 :利用者の生活の場であるため、BCP自体の未策定は『業務継続計画未策定減算(所定単位数の3%減算)』という重いペナルティの対象となります。夜間・休日等の職員が少ない時間帯の発災を想定した避難誘導や、ライフライン途絶時の施設機能維持・備蓄品の活用に関する実践的な訓練が求められます。
- 【通所・訪問系】 :BCP自体の未策定は『業務継続計画未策定減算(所定単位数の1%減算)』の対象となります。発災時の利用者の安全確保と保護者への確実な引き渡し手順、また訪問系では訪問中の発災時における利用者支援や安否確認のシミュレーションが重要です。研修・訓練の未実施自体は直接的な減算要件にはならないものの、運営基準上の義務であるため、計画的な実施が求められます。
- 非常災害対策(避難訓練) :消防計画に基づく避難訓練と合わせて実施します。夜間想定や通報訓練など、具体的なシチュエーション設定が重要です。
- 安全計画に基づく研修・訓練(※障害児支援事業所のみ): こどもの安全確保を図るため策定した「安全計画」に基づき、定期的な研修および訓練を実施することが義務付けられています。AEDやエピペンの使用等の救急対応や、不審者対応などの実践的な内容を含める必要があります。
1-3. 実施が推奨される基本項目(個人情報保護・情報セキュリティ)
- 個人情報保護・情報セキュリティ研修: SNS利用時の注意点や、端末の持ち出しルールなど、現場で起こりうる情報漏洩リスクを具体例で共有します。
1-4. 採用時に必ず実施すべき研修
新しく入職した職員に対しては、定例の研修を待たずに以下の内容を周知する必要があります。
- 事業所の基本方針とマニュアルの周知 倫理規定、事故防止、緊急時連絡体制など、その事業所で働く上での最低限のルールを初日にオリエンテーションとして実施し、記録を残します。
2.令和8年度の運営指導で重点的にチェックされる「3つのポイント」

2-1. 研修の「計画」と「実績」の整合性
年度当初に作成した「年間研修計画書」と、実際に実施した「報告書」が一致しているかが確認されます。
- チェックの視点: 計画にはあるが実施されていない研修はないか。もし中止や延期をした場合、その理由と代替案が記録に残っているか。
- 対策: 計画された研修の未実施は、運営指導での指摘や減算のリスクとなります。年度当初の計画段階で無理のないスケジュールを組み、着実に実施することが重要です。
2-2. 欠席者へのフォローアップ(個別伝達研修)
全員参加が原則ですが、シフト制の現場では欠席者が生じる場合があります。運営基準上、シフト等で欠席した職員も含め、対象となる全職員への周知徹底が求められます。
- チェックの視点: 欠席者に対して、後日資料を渡して説明した記録があるか。または、録画視聴やeラーニング等で補完しているか。
- 対策: 研修報告書に「欠席者への対応欄」を設け、いつ、誰が、どの方法でフォローしたかを氏名とともに記録に残します。
2-3. 委員会・指針・研修の「三位一体」の運用
これらは令和8年度の運営指導における重要な確認事項の一つです。研修を単独で実施するのではなく、事業所の組織体制と連動した運用が求められます。
- チェックの視点: 虐待防止委員会で話し合われた「自施設でのリスク」が、その後の研修内容に反映されているか。また、事業所の「指針(マニュアル)」の内容と研修で教えている内容に矛盾がないか。
- 対策: 委員会の議事録に「次回の研修でこの事例を共有する」と記載し、実際にそのテーマで研修を行うといった、組織としての連動性をエビデンス(証拠)として残します。
3.効率的に研修を実施するための「実務の合理化」
3-1. 外部研修・eラーニングの有効活用
すべての研修資料を事業所で独自に作成し、講義形式で実施する必要はありません。厚生労働省や自治体が公開している動画教材、あるいは専門機関のeラーニングを積極的に活用することをおすすめします。
- 実務のコツ: 全員で集まって視聴する時間が取れない場合は、「各自で動画を視聴し、確認テストやアンケートを提出する」形式でも研修として成立します。
- ポイント: 単に視聴して終わりではなく、「自事業所のマニュアルではどうなっているか」という一言を添えた資料を配布することで、事業所独自の研修としての質が担保されます。
3-2. 複数の研修をセットで実施するスケジュール例
関連性の高い項目を組み合わせて実施することで、開催回数を集約できます。
- セット実施の例: 「虐待防止研修」+「身体拘束適正化研修」 「感染症対策研修」+「BCP(業務継続計画)の初初動訓練」
- メリット: 例えば、虐待防止と身体拘束は相互に関連性の高い項目であるため、まとめて学習したほうが職員の理解も深まり、会議体の時間も短縮できます。
3-3. 記録フォーマットの標準化
運営指導で最も時間がかかるのは「記録の整理」です。あらかじめ、どの研修でも使える「標準フォーマット」を用意しておきます。
- 必須項目: ①実施日時、②場所(オンライン含む)、③講師名、④参加者氏名、⑤研修テーマ、⑥使用資料名、⑦研修内容の要旨(アジェンダ)、⑧参加者の感想・理解度確認。
- 効率化のヒント: 研修資料を毎回作り込むのではなく、使用したスライドのコピーや自治体のパンフレットを「別添資料」としてファイリングするだけで、報告書本文は簡潔な要旨のみで十分です。
まとめ:法令遵守は「質の高い支援」の土台

事故防止と法的保護の両立
法定研修(虐待防止、感染症、BCPなど)の内容は、万が一事故やトラブルが発生した際、事業所が「適切な注意義務を果たしていたか」を判断する重要な客観的証拠となります。
- リスク管理: 定期的な研修記録が整備されていることは、組織として標準的な対応手順を職員に周知していた証明となり、職員一人ひとりを守ることにも繋がります。
- 実務上のメリット: 指針(マニュアル)に基づいた研修を継続することで、スタッフ間の判断基準が統一され、現場での迷いや対応のバラつきが減少します。
運営指導(実地指導)への平時からの備え
令和8年度現在、運営指導は「事後の確認」から「日常的なプロセスの確認」へと重点が移っています。年度末に集中的に記録を作成・整備する状況を避け、日々の業務フローの中に研修と記録を組み込む仕組みづくりが不可欠です。
- 効率化の視点: 研修の計画・実施・記録のサイクルを標準化することで、管理者やサビ管・児発管の皆様の心理的・時間的負担を大幅に軽減できます。
次年度に向けたスケジュールの確定
次年度(令和8年度4月以降)の年間研修計画をこの時期に確定させることで、現場のシフト調整や外部講師の選定、eラーニング教材の準備に余裕を持って取り組めます。
- アクション: まずは本記事のチェックリストを活用し、自事業所の現在の実施状況と、次年度に必要な項目を照らし合わせてみてください。
法定研修の適切な運用は、結果として事業所の信頼性を高め、安定した経営基盤を築くことになります。まずは「記録のフォーマットを一つ決める」といった小さなステップから、実務の効率化を進めてみることをおすすめします。