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障害福祉サービス全般

【実務確認】令和7年度 処遇改善加算「実績報告書」提出に向けた事前点検と記載ミス対策

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はじめに

処遇改善加算を算定している障害福祉サービス等の事業所において、年度ごとに提出が義務付けられているのが「実績報告書」です。 令和7年度分の実績報告書の提出期限は、原則として「各事業年度における最終の加算の支払いがあった月の翌々月の末日」となります。3月末まで通常どおり加算を算定していた事業所様の場合、3月提供分の加算は5月に国保連から支払われるため、提出期限は「令和8年7月31日」となります。(※自治体によって提出期限が前倒しされる場合がありますので、必ず所管の指定権者の案内をご確認ください。) 計画書の提出に比べ、実績報告書は期限までの期間が長いものの、賃金台帳の集計や配分実績の照合には相応の事務作業が発生します。本記事では、実績報告書の作成において実務上見落としやすいポイントと事前の確認事項を整理いたしました。5月・6月のうちから自社の集計状況を点検する際の実務ガイドとしてご活用ください。

1.実績報告書の作成に向けて事前に準備する書類

実績報告書の作成にあたり、手元に揃えておきたい主な書類は以下の通りです。

(1)国保連からの「処遇改善加算等総額のお知らせ」(年間分)

国保連から毎月送付される通知書で、算定した処遇改善加算の総額が記載されています。令和7年4月サービス提供分から令和8年3月サービス提供分(加算の支払いは令和8年5月まで)の年間分が揃っているかの確認をおすすめします。紛失している場合は国保連へ再発行を依頼する必要があります。

(2)賃金台帳・給与明細等の控え

職員に実際に支払った賃金改善額を客観的に証明する書類です。加算の入金と賃金支払いのタイムラグを考慮し、「賃金改善実施期間」として設定した月数分(通常は12ヶ月分、調整を含める場合は最大13ヶ月分等)の台帳データを手元に準備することをご検討ください。

(3)提出済みの「令和7年度 処遇改善計画書」の控え

年度当初(または途中)に提出した計画書の配分対象者・配分方法と、実際の実績が一致しているかを照合するために重要となります。

2.【重要確認①】「加算総額」の考え方と利用者負担分

実績報告書において最も重要なルールは、「加算として算定した総額以上の金額を、職員の賃金改善に充てる(賃金改善総額 ≧ 加算総額)」ことです。この関係が1円でも満たされていない場合、算定要件違反として加算の返還対象となる可能性があります。

ここで実務上ご注意いただきたいのが、「加算総額」の捉え方です。処遇改善加算は、国保連から事業所へ支払われる「給付費分(原則9割)」と、利用者様からお支払いいただく「利用者負担分(原則1割)」の合計額で構成されています。実績報告書において賃金改善に充てるべき「加算総額」は、給付費分だけでなく、この「利用者負担分も含めた10割全額」となります。 国保連から届く「処遇改善加算等総額のお知らせ」には、原則としてこの10割分の総額が記載されていますので、記載された金額をベースに集計を行うことをおすすめします。(事業所の帳簿上で、国保連からの入金額だけを見て加算総額と誤認しないよう点検をご検討ください。)

3.【重要確認②】「賃金改善総額」の計算と不足時の調整

賃金改善総額とは、「処遇改善加算を算定していなかった場合の賃金水準」と比較して、実際に上乗せして支払った金額の合計です。基本給や毎月支払う手当の増額分、一時金(賞与)としての支給分を合算して算出します。

  • 法定福利費等の事業主負担分の算入:処遇改善加算を原資として給与や手当を引き上げた結果、それに伴って増加した「法定福利費(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など)の事業主負担分」は、賃金改善総額に含めて計算することが認められています。法人の持ち出し(赤字)を防ぐためにも、この増加分が適切に賃金改善額に算入されているかの確認をおすすめします。
  • 年度末に「支払い不足」が見込まれる場合の対応:集計の結果、加算総額に対して実際の賃金改善総額が下回る(不足する)ことが判明した場合、そのまま提出すると要件未達となります。賃金改善実施期間(例:令和7年4月~翌年3月、または支払いの遅れを考慮した期間)の最終月までに、「一時金(賞与等)」の形で職員へ追加支給を行い、必ず加算総額を上回るように調整する実務対応をご検討ください。

4.その他の見落としやすい記載ミスと確認事項

実績報告書の集計において、以下の点にも留意して点検を進めることをおすすめします。

  • 計画書の配分ルールと実態の乖離:令和7年度の計画書で設定した「配分対象となる職種の範囲」や「配分方法(一律配分か、経験等に応じた傾斜配分か)」と、実際の賃金台帳の支給実績が合致しているかの照合をご検討ください。計画書と異なる配分を行っている場合は、実態に合わせた変更届が適切に提出されているかのご確認をおすすめします。
  • 複数事業所を運営している法人の集計単位:複数の事業所を運営する法人の場合、計画書を「法人一括」で作成したか、「事業所単位」で作成したかによって、実績報告書の集計単位も決まります。計画書の提出単位と実績報告の集計単位が一致しているかの確認をおすすめします。
  • 最新様式のダウンロードと自動計算エラーの防止:実績報告書のエクセル様式は、年度や改定のタイミングで数式等の細かな修正が行われる場合があります。前年度の古いファイルを使い回すのではなく、必ず所管の指定権者または厚生労働省のホームページから最新の令和7年度用様式をダウンロードして使用することをおすすめします。

5.令和8年6月施行の新制度(特例要件)との関係

令和8年6月より、処遇改善加算の制度拡充(対象職員の拡大、上位区分の新設等)が施行されておりますが、今回提出する「令和7年度分の実績報告書」は、あくまで令和7年度当時のルールに基づいて作成・報告するものです。 ただし、令和8年6月以降に新設された上位区分(加算Ⅰロ・Ⅱロ等)を「令和8年度中の要件整備を誓約する」形で算定開始した事業所様におかれましては、その誓約に基づく取組(生産性向上や月給への2分の1配分など)の実施状況は、来年度提出する「令和8年度分の実績報告書(令和9年7月末期限)」において厳密に確認されることになります。今年度の実績報告実務と並行して、令和8年度の新しい算定要件を満たすための社内体制づくりや証拠資料の保管が計画通り進んでいるか、改めて定期的な確認の機会を設けることをご検討ください。

まとめ

処遇改善加算の実績報告書は、事業所が加算の全額を適正に職員の待遇向上に充てたことを客観的な数字で証明し、算定の正当性を確定させるための重要な手続きです。 「加算総額 ≦ 賃金改善総額」というルールの確認や、賃金台帳の集計作業には、想定以上の時間を要する場合があります。提出期限直前の慌ただしさや計算漏れによる返還リスクを防ぐため、早い段階で各月の数字の照合に着手し、余裕を持ったスケジュールで書類を整える体制づくりをおすすめします。 本記事で整理した実務上の確認ポイントを、適正かつスムーズな実績報告書の作成と、経営者様が安心して本来の事業運営に専念できる環境整備にぜひご活用ください。

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