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目次
はじめに
「いよいよ福祉事業で独立!でも、定款の『事業目的』ってどう書けばいいの?」 「適当に書いて、もし役所の審査に落ちてしまったら……」
法人設立の準備を進める中で、そんな不安を感じていませんか?
介護や障がい福祉の事業を始めるには、会社を作った後に役所から「指定(許可)」をもらう必要があります。実はこのとき、最もミスが起きやすく、かつ致命的なのが*『定款の事業目的』の書き方です。
一言一句、法律に基づいた正しい文言で書かれていなければ、せっかく設立した会社であっても、「このままでは受理できません」と突き返され、最悪の場合は数百万円かけて準備した開業日が延期になってしまうことも珍しくありません。
「じゃあ、何を、どう書けばいいの?」 「将来のために他の事業も書いておきたいけど、大丈夫?」
そんな疑問を解決するために、この記事では福祉事業に特化した定款目的の書き方を、初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。
- 役所の審査を1回でパスする「正しいフレーズ」の具体例
- 特にルールが厳しい「就労継続支援A型」の注意点
- 後で直すと「3万円以上」損をする変更手続きのリスク
この記事を読み終える頃には、あなたの事業計画に合わせた「完璧な定款目的」のイメージができあがっているはずです。スムーズな開業への第一歩として、ぜひ最後までチェックしてください。
1.なぜ福祉事業では「定款の目的」が重要なのか?

会社を作る際、必ず作成しなければならない「定款(ていかん)」。これは、いわば「会社の憲法」や「ルールブック」のようなものです。この中に、その会社が何をするのかを書く「事業の目的」という項目があります。
一般的なビジネス、例えばカフェや雑貨屋さんを始める場合、ここは比較的自由に書いても大きな問題にはなりません。しかし、介護や障がい福祉などの「福祉事業」を始める場合、この「目的」の書き方を間違えると、開業そのものができなくなる致命的なミスにつながります。
なぜ、そこまで重要なのでしょうか? 大きな理由は3つあります。
1-1.行政からの「許可」が下りなくなるから
福祉事業を始めるには、会社を作った後に役所へ申請を出し、「指定(許可)」をもらう必要があります。 この審査の際、役所の担当者は「会社のルールブック(定款)に、正しい法律用語で事業内容が書かれているか」を真っ先にチェックします。
例えば、単に「老人ホームの運営」や「障害者の手助け」といった曖昧な書き方では、許可は下りません。「介護保険法に基づく〜」といった、法律で決められた一言一句正しいフレーズが入っていないと、申請書すら受け取ってもらえないのです。これは、福祉事業が皆様の税金や保険料を使う公的な仕事であるため、非常に厳格なルールが適用されるからです。
1-2.銀行からの「信用」に関わるから
福祉施設の開設には、設備資金などの融資が必要になることが多いでしょう。銀行の担当者もまた、定款を確認します。 もし、福祉をやると言っているのに、定款の目的が「不動産業」や「飲食業」ばかりで、肝心の福祉事業の記載が曖昧だったらどうでしょうか?「本当にこの事業をやる気があるのか?」「事業の準備が不十分ではないか?」と疑われ、融資審査で不利になる可能性があります。
1-3.後から直すと「無駄な出費」になるから
「間違っていたら、後で直せばいい」と思うかもしれません。しかし、会社を作った後に定款の目的を書き換えるには、法務局での手続きが必要になり、最低でも3万円の税金(登録免許税)がかかります。さらに専門家に依頼すれば追加の報酬も発生します。 何より、書き換えの手続きをしている間は役所への申請がストップしてしまうため、開業予定日が1ヶ月以上遅れてしまうリスクもあります。
家賃や人件費が発生している中での開業遅れは、経営にとって大きな痛手です。だからこそ、福祉事業の定款は「最初の一回で完璧に仕上げる」ことが、最短ルートでの開業に不可欠なのです。
2.指定申請で引っかからない!目的記載の3つの鉄則

いざ定款を作ろうとすると、「自分の言葉で情熱を書きたい!」と思うかもしれません。しかし、福祉事業の定款においてオリジナリティは一切不要です。むしろ、個性的な表現は審査で不利になることさえあります。
役所の審査をスムーズに通過し、確実に事業をスタートさせるために守るべき「3つの鉄則」をご紹介します。
2-1.法律に基づいた「正しい用語」を一言一句そのまま使う
これが最大の鉄則です。役所の担当者は、「あなたがやりたいこと」と「法律上の定義」が合致しているかをチェックします。 例えば、「高齢者のお世話をする事業」や「障がい者の生活サポート」といった一般的な言葉では、申請は通りません。
× 老人ホームの経営
〇 介護保険法に基づく有料老人ホームの設置及び運営
このように、「どの法律に基づく、何という事業か」を正確に書く必要があります。 また、要注意なのが自治体ごとの「ローカルルール」です。「~等」という曖昧な表現を禁止している自治体や、法律名の記載方法を細かく指定している自治体もあります。ネットのひな形をそのまま使う前に、必ず管轄の役所(都道府県や市町村の障害福祉課・介護保険課など)の手引きを確認しましょう。
2-2.将来やるかもしれない事業は「今のうちに」書いておく
会社設立時は「訪問介護」だけでスタートする予定でも、1年後には「デイサービスもやりたい」、3年後には「障がい福祉も始めたい」となるケースは非常によくあります。
定款の目的には、「今すぐやらない事業」を書いても全く問題ありません。 逆に、後から事業を追加しようとすると、定款の変更手続きが必要になり、登録免許税(3万円)や司法書士報酬などのコストがかかります。「もしかしたらやるかも?」と思う事業は、設立時の定款に最初から盛り込んでおくのが、賢い経営者の節約術です。
2-3.会社のタイプ(営利・非営利)に合わせた書き方にする
設立する法人の種類によって、求められる書き方が少し異なります。
- 株式会社・合同会社の場合: 比較的自由ですが、許認可事業であることを明確にするため、目的の先頭付近に福祉事業を記載し、何をする会社か一目で分かるようにしましょう。
- NPO法人・一般社団法人(非営利型)の場合: より審査が厳格です。事業の目的が「法人の設立趣旨(ミッション)」と合致しているか、営利目的の事業がメインになっていないか等が問われます。
特にNPO法人の場合は、定款認証のプロセス自体に時間がかかるため、記載ミスによる修正は数ヶ月の遅れに繋がります。「株式会社のマネ」で書かず、必ずその法人格に合ったひな形を参考にしてください。
3.【そのまま使える】サービス種別ごとの定款目的・記載例
定款の目的を書く際の最大のコツは、「法律の名前」と「事業の正式名称」をセットで書くことです。ここでは、福祉事業の中でも特にお問い合わせの多い3つのカテゴリーについて、そのまま使える記載例をご紹介します。
3-1.障がい福祉サービス(グループホーム・就労支援など)
障がい者向けのサービスを行う場合は、「障がい者総合支援法」という法律に基づいた表現を使います。
「障がい福祉サービス事業」という一文だけでは、相談支援や移動支援の指定を受けることはできません。これらを併設する場合は、以下の文言を一文ずつ、すべて定款に記載する必要があります。
【記載例】
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障がい福祉サービス事業
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく特定相談支援事業
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく一般相談支援事業
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく移動支援事業(もしくは地域生活支援事業)
「就労継続支援」や「共同生活援助(グループホーム)」など、具体的なサービス名まで細かく書く必要はありません。
3-2.児童福祉(児童発達支援、放課後等デイサービスなど)
子ども向け事業を行う場合は、別途「児童福祉法」に基づいた表現にします。
【記載例】
- 児童福祉法に基づく障がい児通所支援事業
- 児童福祉法に基づく障がい児相談支援事業
3-3.介護保険サービス(訪問介護・デイサービスなど)
高齢者向けの介護サービスを行う場合は、「介護保険法」に基づいた表現にします。
【記載例】
- 介護保険法に基づく居宅サービス事業
- 介護保険法に基づく地域密着型サービス事業
- 介護保険法に基づく居宅介護支援事業
訪問介護やデイサービスは「居宅サービス」に含まれますが、自治体が窓口となる「地域密着型」や、ケアプランを作成する「居宅介護支援」は別物として扱われます。将来の拡張性を考えて、この3セットをまとめて書いておくのが一般的です。
3-4.訪問看護ステーション
訪問看護は、介護保険だけでなく医療保険(健康保険)も使うため、両方の法律をカバーする書き方が求められます。
【記載例】
- 介護保険法に基づく指定訪問看護事業
- 健康保険法に基づく指定訪問看護事業
このように、一つの事業所であっても複数の法律が絡むのが福祉事業の難しいところです。
迷ったら「欲張り」に書いておくのが正解 「今は訪問介護しかやらないから、1行だけでいいや」と絞りすぎるのはおすすめしません。福祉の現場では、サービスを組み合わせることで利用者様をトータルサポートすることが多いため、関連する法律の事業はひと通り記載しておきましょう。
もし自分のやりたい事業がどれに当てはまるか不安な場合は、自治体のホームページで公開されている「指定申請の手引き」を確認してみてください。そこに「定款にはこう書いてください」という見本が必ず載っています。
4.福祉事業以外も書いていい?よくある疑問と対処法
会社を設立する際、「将来はカフェや雑貨屋さんもやってみたい」「不動産の賃貸管理もついでにやりたい」と夢が広がる方も多いはずです。結論から言うと、一般的な福祉事業(訪問介護や放デイなど)であれば、福祉以外の事業を定款に書くことは自由です。
しかし、特定のサービスを目指す場合には「絶対に守らなければならないルール」があります。
4-1.「作業内容」と「定款の目的」は別物と考える
ここで多くの方が混乱するのが、「ご利用者様にしてもらう仕事(パン屋や清掃など)を定款に書くべきか?」という点です。 結論から言うと、ご利用者様が行う「作業内容」を、わざわざ定款の目的欄に一つずつ書く必要はありません。
福祉事業(特に就労支援など)では、収益を上げるために一般のビジネス(飲食・製造・軽作業など)を行いますが、これらはすべて「障がい福祉サービス事業」という大きな枠組みの中の活動として認められています。
4-2.【重要】就労継続支援A型だけは「福祉専業」が条件
特に注意が必要なのが、「就労継続支援A型」を行う場合です。A型の指定を受ける法人は、原則として「その法人は、福祉事業(社会福祉事業)だけを専門に行う会社でなければならない」という厳しいルール(専ら社会福祉事業を行う者)があります。
- 定款の書き方: 「飲食店経営」や「中古車販売」といった福祉に関係のない項目が入っていると、指定が下りません。
- 実際の仕事: 定款には「福祉事業」としか書いていなくても、その事業の中でカフェを運営したり、ネットショップを運営したりして、ご利用者様の給料を稼ぐことは全く問題ありません。
つまり、A型の場合は「見た目(定款)は100%福祉の会社」でありながら、「中身(活動)は一般ビジネス」という形を作る必要があるのです。
4-3.最後に必ず入れるべき「魔法の一文」
A型以外の事業(訪問介護やグループホームなど)であれば、将来のために「不動産業」などを併記しても構いませんが、その場合でも最後に必ず次の一文を入れておきましょう。
【記載例】 前各号に附帯又は関連する一切の事業
これを入れておくことで、メインの事業に関連する細かな業務が発生した際にも、柔軟に対応できるようになります。
迷ったら「窓口への事前相談」を
特に就労支援事業は、自治体によって「どこまで定款に書いてよいか」の判断が微妙に異なることがあります。定款を法務局へ提出する前に、作成した文案を持って役所の窓口へ「この内容で指定申請に支障はありませんか?」と一言確認するのが、最も確実で失敗しない方法です。
5.もし定款の目的を変更したくなったら?(設立後の変更手続き)

「会社を作った後で、別の福祉事業も始めたくなった」「A型事業に切り替えることになった」というように、設立後に定款の目的を変更したくなるケースは珍しくありません。もちろん変更は可能ですが、そこには「お金」と「時間」、そして「厳しい審査」というハードルが待ち構えています。
5-1.定款変更には「決議」と「登記」が必要
会社のルールブックである定款を書き換えるには、まず株主総会(合同会社なら総社員の同意)を開いて、「目的を変更します」という決定を下さなければなりません。
さらに、決定しただけでは不十分です。法務局へ行き、会社の公的なデータ(登記)を書き換える「変更登記」という手続きが必要です。この際、登録免許税とし て3万円の税金がかかります。自分で行う場合はこれだけで済みますが、司法書士などの専門家に依頼すれば、別途数万円の報酬が発生します。
5-2.【要注意】就労継続支援A型への変更は特に厳しい
もし、今ある会社で新しく「就労継続支援A型」を始めようとするなら、特に慎重な準備が必要です。 繰り返しになりますが、A型には「専ら社会福祉事業を行う」というルールがあります。もし今の会社が「建設業」や「コンサルティング業」など、福祉以外の事業を一つでも目的に掲げているなら、それらをすべて削除する定款変更を行わなければなりません。
役所は「A型の指定申請をする時点」で、定款が福祉専門になっているかを厳しくチェックします。一つでも余計な項目が残っていれば申請は受理されません。この「項目の削除」にも前述の費用と時間がかかるため、A型への参入は「会社の作り直し」に近い労力が必要になることを覚悟しておきましょう。
5-3.「変更」が完了するまで事業は進められない
定款の変更には、法務局での手続きだけでも1週間から10日ほどかかります。役所への指定申請は、この変更が完全に終わって「新しい目的が載った証明書」が手元に届いてからでなければ受け付けてもらえません。本申請(指定日の2ヶ月前の月末など)までに、登記まで完了した履歴事項全部証明書(原本)が手元に必要です。 「来月から新しい事業を始めたい」と思っても、定款変更の手間を忘れていると、開業スケジュールが大幅に後ろ倒しになってしまいます。
まとめ:最初の一歩を慎重に
定款の目的変更は、決して不可能なことではありません。しかし、福祉事業、特にA型のような特殊なルールがある事業においては、後からの修正は経営上の大きなロスに繋がります。
「とりあえず作る」のではなく、将来のビジョンをしっかりと描き、できれば設立前に専門家や役所の窓口で「この目的内容で将来も困らないか」を確認しておくことが、スムーズな経営への一番の近道です。