【初回相談無料】障害福祉サービスの運営指導対策・加算返還リスクの不安は、障害福祉専門の当事務所へご相談ください。
はじめに
就労継続支援A型・B型において、利用者の自宅等で訓練や生産活動を実施する「在宅支援」を取り入れる事業所が増加しています。在宅支援は、制度上認められたサービス提供の一形態ですが、実施にあたっては厚生労働省の留意事項通知等で厳格な要件が定められています。
「利用者が自宅で作業していれば在宅支援になる」「在宅支援を実施している日は事業所を閉めてもよい」といった独自の解釈で運営を進めた場合、運営指導等で指定基準違反と見なされ、報酬の返還等のリスクが生じます。 本記事では、各種法令や国・自治体のガイドラインに基づき、在宅支援を適法に実施するための要件と、事業者様が知らずに陥りやすい実務上の注意点を整理します。
1.在宅支援の対象者と「支給決定」の実務要件

在宅支援は、事業所や利用者の独自の判断のみで開始できるものではありません。 法令上の対象者は、「在宅でのサービス利用を希望する者であって、在宅でのサービス利用による支援効果が認められると市町村が判断した利用者」と定義されています。
事業所都合による一律の在宅支援への切り替えは認められていません。実務上は、以下のフローに沿った対応が求められます。
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利用者本人の希望と同意を事前に得る。
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個別支援計画に、在宅での支援内容、目的、支援効果を明確に位置付ける。
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事前に市町村へ手続きを行い、在宅利用についての支給決定(受給者証への記載等)を受ける。
なお、利用者の自宅ではなく、利用者の希望によりサテライトオフィス等の類似する形態で支援を行う場合であっても、本記事で解説する在宅支援と同様の厳格な要件をすべて満たす必要がある点には留意が必要です。
2.運営規程と重要事項説明書に関する盲点

在宅支援を実施する際、書類整備の不備が指摘されるケースが多く見られます。 在宅支援を提供する場合、運営規程において「在宅で実施する訓練内容及び支援内容」を明記し、指定権者へ変更届を提出する必要があります。
また、運営規程だけでなく、利用者と取り交わすサービス利用契約書や重要事項説明書においても、在宅での訓練・支援を実施する旨を明記しておくことが求められます。これらの書類上の整備が漏れていると、契約の範囲外でのサービス提供と見なされるリスクがあるため、事前の点検および書類の改訂が必要となります。さらに注意が必要なのは自治体ごとの独自ルールです。事前の変更届だけでなく、自治体独自の「在宅利用に関する申立書」や「チェックリスト」の事前提出、さらには毎月の「在宅利用の実績報告書」の提出を義務付けている自治体も少なくありません。国が定める基本要件を満たした上で、指定権者(自治体)の運用ルールを必ず確認することが、意図せぬ指導を防ぐ防衛策となります。なお、A型事業所においては、就業規則や雇用契約において在宅勤務時の労働時間管理や費用負担について定めておく等、労働法規への対応も必須です。
3.定員と設備基準に関する誤解(事業所のスペース縮小は不可)
在宅支援に関して事業者様が陥りやすいミスの一つが、設備要件の解釈です。 「在宅で作業する利用者が増えたため、通所スペースを縮小できる」という認識は法令と齟齬があります。
在宅支援であっても、原則として月1回の通所評価が求められるなど、定期的な通所を前提としています。また、利用者同士の集まりも有意義であることから、常時来所を受け入れられる空間の確保が重要とされています。したがって、在宅支援の実施を理由に設備面積等を減少させることは認められず、各サービス種別に求められる通常の定員にあわせた設備基準を確保・維持し続ける必要があります。
4.日常業務に組み込むべき「支援・評価・記録」のルール

在宅支援は、事業所からの関与が明確に記録されていることが前提です。以下の要件を日々の業務フローに落とし込む必要があります。
- 1日2回の連絡と日報作成: 1日2回、利用者に対する連絡、助言、または進捗状況の確認を行い、その内容を日報として記録することが必須です。
- 週1回の評価: 事業所職員による訪問、利用者の通所、またはICT機器を活用し、1週間につき1回は評価を行う必要があります。電話(音声通話)でも要件は満たせますが、声だけでは伝わりにくい細かな体調の変化や不安を把握するため、リモート会議ツール等を活用し、双方の顔が見える状態で行うことが国から推奨されています。
- 月1回の通所または訪問による評価: 原則として月の利用日数のうち1日は、職員による訪問または利用者による通所により、訓練目標の達成度を直接評価する必要があります。
- 客観的な記録の保存: 訓練状況や支援状況について、本人の同意を得た上で、動画ファイルや静止画像等をセキュリティを施した状態で保存し、行政から求められた際に提出できる状態にしておくことが強く推奨されています。また、これを行政から求められて提出する際には、他の利用者が映り込まないようにするなど、個人情報に配慮した状態で提出できるようにしておくことが求められます。
「電話で連絡した」という事実だけでなく、どのような作業を指示し、どのような助言を行い、成果物をどう確認したかを記録に残すオペレーションの構築が求められます。
5.生産活動の妥当性と不適切な事例
在宅で提供する生産活動や訓練メニューは、一般就労に必要な知識及び能力の向上に寄与するものである必要があります。 国や自治体のガイドライン等では、公費による就労支援の生産活動として不適切となる可能性がある事例が明示されています。
- eスポーツの実施
- 植物の水やりを1日数回行うだけの活動
- 卓球教室や麻雀教室での手伝いに相当するような活動
- 所定の場所に居ればよいというような活動
- 就労に必要な能力向上に寄与しない単なる自習
これらの活動を在宅支援として提供している場合、就労支援の実態が認められないとして指定基準違反に問われる可能性があります。提供メニューが法令の趣旨に合致しているか、社内で精査しておくことが推奨されます。なお、在宅であっても、通所時と同様に適切な(工賃・賃金)支払いの仕組みと、その根拠となる作業実績の記録が必要です。
6.在宅支援と「事業所を開けない運営」は別の問題
最後に、事業所の開所状況と緊急時対応について整理します。 在宅支援を行っている日であっても、営業時間中に事業所を閉鎖してよいわけではありません。就労継続支援は、指定事業所として人員体制や連絡体制を維持する義務を負っています。
在宅支援の要件には以下の項目が含まれています。
- 緊急時の対応ができること: 利用者の状態急変時等に、事業所の職員が速やかに利用者の元へ駆けつけられる体制の整備。したがって、職員が速やかに駆けつけることができない遠方(他都道府県など)の利用者に対する在宅支援は、原則として認められない点に注意が必要です。
- 随時対応できる体制の確保: 利用者からの疑義や照会に対し、営業時間中は随時、連絡や訪問による支援を提供できる体制の確保。
したがって、営業時間中に事業所が開いていない、管理者が不在である、電話等での連絡が取れないといった状態は、在宅支援の要件を満たさないばかりか、事業所としての管理機能が喪失しているとみなされます。職員の勤務実績と事業所の開所実態は、現地確認においても厳格にチェックされる項目です。
まとめ
就労継続支援A型・B型における在宅支援は、「利用者の作業場所を自宅にする」という単なる場所の変更ではありません。
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市町村の判断に基づく事前の支給決定
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運営規程および重要事項説明書への明記
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定員要件を満たす通常設備の維持
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規定回数の連絡、日報作成、定期評価の実施
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営業時間中の事業所の開所と、緊急時対応体制の維持
これらの法定要件を事業所の日常業務や書類管理のオペレーションに正確に組み込むことが求められます。各要件と自事業所の運営実態を定期的に照らし合わせることで、意図せぬ制度違反を防ぎ、コンプライアンスを遵守した安定的な事業運営を行うことが可能となります。
(参考資料)就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における在宅支援の要件遵守の徹底について(令和8年4月13日)(厚生労働省)
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