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はじめに
「サービス管理責任者(以下、サビ管)から、今月末で退職したいと言われた」 障がい福祉事業所を運営する上で、このような事態は配置基準の欠如や報酬の減算に直結するため、速やかな実務対応が求められます。求人を行っても、要件を満たすサビ管がすぐに採用できるとは限りません。 本記事では、サビ管が退職することになった場合に事業所としてまず何を確認し、どのような手順で対応を進めるべきか、法令のルールに基づいた実務的なステップを整理しました。
1.サビ管が辞めたら事業所はすぐに休止しなければならないのか

サビ管が退職し、必要な人数を満たさなくなれば、人員配置基準を満たさない状態となります。しかし、「退職した翌日から自動的に事業所を休止しなければならない」という単純な仕組みではありません。 報酬算定上は「サービス管理責任者欠如減算」というルールが設けられており、著しい人員欠如が長期間継続する場合には行政から指導(従業者の増員、利用定員の見直し、休止等)の対象となることがあります。 対応にあたっては、欠如が発生する正確な日、後任候補者の有無、特例(みなし配置)の可否、報酬への影響を一つずつ整理していくことが、事業継続の第一歩となります。
2.まず行うべき「事実関係」の整理(退職日と最終出勤日の違い)
最初に確認すべき事項は、対象者の正確な「退職日」と「最終出勤日」です。 「月末で退職する」のか、「有給休暇を消化するため、実際の最終出勤日はさらに早い」のかによって、事業所内で引継ぎ等に使える期間が異なります。 法令上、人員配置基準におけるサビ管の「欠如」が発生するのは、最終出勤日ではなく「退職日の翌日」からとなります。有給休暇の消化等で実際には事業所に出勤していなくても、雇用契約が存続している退職日までは、労働基準法等に基づく休暇の取得として扱われます。厚生労働省のQ&Aにおいても、法定の休暇を取得する期間について、代わりの職員を直ちに配置することまでは求めておらず、制度上は事業所に配置されている常勤職員としてみなされるためです。 これと同時に、現在事業所に勤務している職員の状況を確認します。外部での採用活動と並行して、内部の職員を後任として配置できる可能性を探るためです。職員名簿から、「誰が相談支援や直接支援業務を何年経験しているか」「誰がどの研修を修了しているか」を一人ずつ客観的な資料で整理します。
3.有給消化中の「個別支援計画未作成減算」に関する実務上の注意点

退職日までは人員基準上の欠如にならないとはいえ、最終出勤日を過ぎれば、サビ管としての実務(個別支援計画の作成・更新やモニタリングなど)を現場で行うことは実質的に不可能です。 最終出勤日の翌日から退職日までの期間(有給消化期間など)であることのみをもって、ただちに事業所全体へ「個別支援計画未作成減算」が適用されることはありません。しかし、「個別支援計画未作成減算」は、計画が期限通りに作成・見直しされていない事実そのものに対して適用される減算ルールです。 そのため、この有給消化期間中に個別支援計画の作成や定期的な見直し(モニタリング)の期限が到来する利用者がいる場合、サビ管が出勤していないために実務が行えないと、未作成となった該当の利用者に対して個別に減算が適用されてしまいます。 このような事態を防ぐためには、退職の申し出があった際、全利用者の計画更新・モニタリング時期の一覧表を確認し、後任が配置される(またはみなし配置が認められる)までの間に期限が到来する利用者については、サビ管の最終出勤日までにすべて前倒しで完了させておくよう業務スケジュールを調整することが不可欠です。
4.現在の職員の「実務経験」と「研修履歴」の確認ポイント
実務上留意すべき点は、福祉業界での経験が長い職員であっても、直ちにサビ管として配置できるとは限らないということです。 現在の研修制度では、実務経験(3~8年等)を満たしていることに加え、「基礎研修(相談支援従事者初任者研修の講義部分を含む)」の受講、一定期間の実務経験(OJT)、そして「実践研修」の修了という段階的な要件が求められます。 配置要件の確認においては、単なる社内での役職変更で済ませるのではなく、採用時に提出された実務経験証明書や各種研修の修了証の原本を手元に集め、指定基準に合致しているかを客観的な記録と照らし合わせて確認することが重要です。
5.やむを得ない事由による「サビ管のみなし配置(原則1年間)」とは

サビ管が退職した場合、「やむを得ない事由によるみなし配置」という特例を活用できる可能性があります。これは、やむを得ない事由によりサビ管が欠けた場合、必要な実務経験を満たす職員を、欠如した日から起算して1年間「サビ管の研修修了要件を満たしているものとみなす」制度です。 ここで実務上問われるのが、「やむを得ない事由に該当するかどうか」です。急死や事故、法人が予見できなかった急な自己都合退職などが該当する可能性があります。一方で、法人内の定期的な「人事異動」や「定年退職」、退職予定日の1ヶ月以上前の申告などは、法人が予見し準備できたとして「やむを得ない事由」とは認められないケースが大半です。自社の判断のみで「みなし配置」とするのではなく、退職の経緯や後任確保の状況を書類として整理し、指定権者(自治体)へ協議して進めることが確実な対応となります。
6.【特例】最長2年間のみなし配置が認められるケース
令和5年の制度改正により、みなし配置の期間が最長2年間となる特例が設けられました。以下の3つの条件をすべて満たす職員がいる場合に適用を検討できます。
① 実務経験要件(相談支援業務または直接支援業務3~8年)を満たしている。
② サビ管が欠如した時点で、既に「基礎研修」を修了している。
③ サビ管が欠如する以前から、引き続きその事業所に配置されている。
サビ管が辞めた後に基礎研修を修了した職員は、この2年特例の対象外(原則の1年みなし)となるため、欠如発生日と基礎研修修了日の時系列を正確に照らし合わせることが求められます。
7.【育成の短縮】OJT期間「6ヶ月」で実践研修を受講できる特例の活用
上記の「みなし配置」の要件に合致しない場合でも、内部の職員を早期に育成する選択肢があります。 基礎研修受講開始時に既に実務経験要件を満たしている職員が、事業所で個別支援計画作成の一連の業務に「6ヶ月以上」従事し、指定権者に届け出を行えば、通常「2年以上」求められるOJT期間が「6ヶ月以上」に短縮され、実践研修を受講することが可能になります。 例えば、現在在籍している生活支援員がこの要件を満たしている場合、サビ管不在の間、あるいは2人目のサビ管的ポジションとして計画作成の業務(OJT)を積むことで、最短半年で正規のサビ管として配置できる要件が整います。
8.みなし配置が適用できない場合の「欠如減算」と「未作成減算」
後任のサビ管を配置できず、みなし配置の要件にも該当しない場合は、「 サービス管理責任者欠如減算 」が適用されます。原則として、人員欠如が発生した月の「翌々月」から所定単位数の30%が減算され、連続して「5ヶ月目」以降になると50%減算となります。
さらに注意が必要なのが、直ちに併発する「 個別支援計画未作成減算 」です。こちらは猶予がなく、「当該月から」30%減算となり、連続して「3ヶ月目」以降には早くも50%減算へとペナルティが重くなります。
なお、厚生労働省のQ&A(平成30年5月23日付「平成30年度報酬改定Q&A VOL.3」等)において、サビ管欠如減算と個別支援計画未作成減算の両方に該当した場合は、二重に減算されるのではなく「 減算となる単位数が大きい方についてのみ適用される 」というルールが明確に示されています。しかし、これは「ペナルティが軽くなる」という意味ではありません。未作成減算の方が先に始まり、かつ早く50%減算に切り替わるため、結果として事業所に甚大なダメージを与えます。減算の事実を正確に把握し、利用者全員の計画見直し時期を一覧表等で管理しておくことが、事業収支への影響を最小限に抑えるための確実な対策となります。
9.指定権者への相談・届出をスムーズに進めるための準備
サビ管の退職が決まったら、指定権者への変更届の提出や協議が必要です。その際、以下の事実関係を事前に書類として整理しておくことで、行政との協議がスムーズに行えます。
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退職日と欠如発生日
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退職の理由や詳細な経緯(やむを得ない事由であることの客観的な説明等)
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後任候補者の氏名、現在の職種、実務経験年数
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後任候補者の基礎研修・実践研修の修了状況
自治体への確認や協議を行った際は、「確認日時」「担当部署・担当者名」「回答内容」を必ず記録に残し、後々の届出や報酬請求時の齟齬を防ぐことが重要です。
おわりに:客観的な記録による日常からの備え
サービス管理責任者の退職は、事業所の人員配置基準の欠如や報酬減算に直結する重大な事象です。退職の事実が発生した際、後任の配置や「みなし配置」の特例を速やかに検討・適用するためには、日頃から在籍職員の「職種」「実務経験年数」「各種研修の修了状況」を一覧表などで客観的に管理しておくことが不可欠となります。 また、人員基準やみなし配置の特例ルールは複雑であり、自治体ごとに「やむを得ない事由」の判断基準等の運用が異なる場合があります。退職が判明した際は、自社の判断のみで進めるのではなく、職員の研修履歴や退職の経緯などの事実関係を書類として整理したうえで、速やかに指定権者(自治体)や専門家へ協議・確認を行うことが、適法な事業継続の第一歩となります。 本記事で整理した確認手順を事業所内の管理体制に組み込み、適正で安定した運営の維持にお役立てください。
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