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はじめに
障害福祉や児童福祉サービスを適正に運営するうえで、最も間違いが起きやすいのが「人員配置基準(スタッフを何人置くかというルール)」の管理です。
毎月のシフト表(勤務形態一覧表)を作るとき、「常勤専従」や「常勤兼務」といった言葉をよく目にします。しかし、これらの定義があいまいなままシフトを組んでいるケースは少なくありません。
もしルールを誤って解釈したまま運用していると、運営指導で不備を指摘され、最悪の場合は過去に遡って給付費の返還(過誤調整)を求められるなどの重大なペナルティを受けることになります。
今回は、指定基準を正しく理解するために欠かせない「常勤」「専従」「専任」「兼務」の4つの基本用語について、分かりやすく整理して解説します。
1. 「働く時間」と「担当する仕事」の2軸で整理する

人員配置ルールをスッキリ理解するコツは、「働く時間の長さ(時間軸)」の話なのか、「担当する仕事の範囲(職務軸)」の話なのか、という2つの独立した視点に分けて考えることです。
「常勤(フルタイム)だから、他の仕事と兼務してはいけない(専従)」と混同しがちですが、これらはそれぞれ別々のルールです。
【働く時間(常勤・非常勤)× 担当する仕事(専従・兼務)の整理表】
| 区分 | 専従(仕事は1つだけ) | 兼務(複数の仕事を掛け持ち) |
| 常勤 (フルタイム) |
【常勤専従】例:フルタイムの生活支援員(支援業務だけを担当) | 【常勤兼務】例:フルタイムの管理者 兼 生活支援員(時間を分けて両方を担当) |
| 非常勤 (パートタイム) |
【非常勤専従】例:パートの生活支援員(勤務時間内は支援だけを担当) | 【非常勤兼務】例:パートの指導員 兼 送迎ドライバー(時間帯を分けて両方を担当) |
パート(非常勤)であっても、その時間内に1つの仕事だけをしていれば「専従」になります。働く時間の長さと、担当する仕事は別々に考えるのが基本です。
2. 「常勤」のルール:短時間でも正社員扱いになる「特例」
障害福祉の「常勤」とは、単に正社員契約かどうかだけでは決まりません。原則として、その事業所の就業規則で定めた「フルタイムの勤務時間」に達しているかで判断します。
ただし、国のルール上「週32時間」が下限となるため、就業規則が「週30時間」であっても、週30時間勤務の人は原則として「非常勤」扱いになります。
一方で、スタッフの働きやすさを支えるため、例外的に「週30時間以上」の勤務で常勤(1.0人分)として認めてもらえる以下の特例があります。
- 育児・介護の短時間勤務特例:育児・介護のために短時間勤務措置が講じられている場合、週30時間以上で常勤とみなされます。
- 治療と仕事の両立特例:がんや難病等の治療を行う職員にガイドラインに沿った短時間勤務制度を適用する場合、週30時間以上で常勤とみなされます。
- 産休・育休の代替特例:常勤スタッフが産休・育休中の代わりに、複数のパート(非常勤)スタッフを組み合わせて同じ時間数(常勤換算)を確保すれば、常勤を置いているものとみなされます。
3. 個人の契約「常勤」と、みんなの合計時間「常勤換算」の違い

実務では、特定の1人が必要な「常勤」と、みんなの時間を足し算する「常勤換算」をはっきり区別する必要があります。
- 「常勤の者を1人以上置くこと」というルール :フルタイム(原則週32時間以上)で働く特定のスタッフが、実際に1人以上いなければいけないという条件です。どれだけパート(非常勤)スタッフの時間をかき集めても、この要件の代わりにはなりません。
- 「常勤換算方法で〇人以上置くこと」というルール: パートスタッフも含めた「みんなの働く時間の合計」を、フルタイムの勤務時間(週32時間等)で割ることで、「全員でフルタイム何人分になるか」を計算する方法です。 たとえば、週16時間働くパートスタッフが2人いる場合、「16時間 × 2人 ÷ 32時間 = 1.0人分」となり、人員配置上「1人分」としてカウントできます。
4. 「専従」と「専任」の違い:兼務ができるかどうかの境界線
もっとも混同しやすいのが「専従」と「専任」の違いです。これらは言葉は似ていますが、意味は大きく異なります。
① 専従(もっぱら従事する)
「働いている時間帯は、その仕事以外のことは一切やらない」という意味です。パートスタッフであっても、勤務時間中に送迎や管理業務などを手伝っていなければ「非常勤専従」となります。
② 専任
「その役割の担当者として正式に配置されている」という意味です。「専任」と書かれている役割は、一定の条件を満たせば、例外的に他の仕事と兼務することが認められています。 たとえば、サービス管理責任者(サビ管)や児童発達支援管理責任者(児発管)は、ルール上「常勤・専任」で置く必要がありますが、「利用者の支援に支障がない場合」は、同じ事業所の「管理者」などを兼務することが公式に認めされています。
※なお、サビ管や児発管が退職して不在(欠如)になった場合、すぐに減算になるわけではなく、退職した月とその翌月の2ヶ月間は猶予期間となります。後任が見つからないまま3ヶ月目(欠如した翌々月)に入ると、基本報酬が30%カットされる「人員欠如減算」が適用されるため、期日管理には注意が必要です。
5. 令和6年度の法改正と「重複カウント(重複算入)の罠」
令和6年度の法改正により、事業所の「管理者」が他事業所と兼務できるルールが緩和され、同一法人であれば敷地が離れていても兼務が可能になりました。
ここで実務上、最も多くの事業所が陥りやすいのが「重複カウント(重複算入)の罠」です。これは、1人のスタッフの勤務時間を都合よく2倍にカウントしてしまう、入力上の誤りを指します。
⚠️ 実務で多発する「入力ミス」の例
例えば、1人のフルタイム(週40時間)のスタッフが、「管理者」と「生活支援員」を兼務しているとします。 生活支援員の人数(常勤換算)を計算する際、このスタッフの時間を「週40時間フルで支援に入っている(1.0人分)」と、管理者と重複して丸々カウントすることは認められません。
兼務する場合は、実際にそれぞれの仕事を行った時間で分けて計算する(按分する)のが鉄則です。 週40時間のうち、半分(20時間)を管理業務、残り半分(20時間)を支援業務に使っている場合、生活支援員としてカウントできるのは「20時間(常勤換算0.5人分)」だけになります。これをごちゃ混ぜにして、支援員として1.0人分とカウントしてしまうと、運営指導で「人員基準を満たしていない」と判断され、過去に遡って報酬を返還することになります。
6. 運営指導でチェックされる「5つの書類」

シフト表(勤務形態一覧表)の数字が本当に正しいかどうかを証明するため、運営指導では以下の「5つの書類」を並べて厳密にチェックされます。
- 就業規則(賃金規程):フルタイム(常勤)の時間設定の確認。
- 雇用契約書(労働条件通知書):スタッフごとの契約時間や、兼務の取り決めの確認。
- タイムカード(出勤簿):シフト表の実績と、実際の打刻データが完全に一致しているか。
- 日々の支援記録(日誌等):その日にいたスタッフの名前が、日誌や記録と矛盾していないか。
- 組織体制図:法人内の他の事業所と兼務している場合、全体の連絡体制がハッキリしているか。
まとめ
人員配置のミスは、運営指導の当日に過去に遡って修正することが一切できません。不備が見つかった場合は、その期間の報酬返還に直結する非常にシビアな項目です。
「常勤」「専従」「専任」「兼務」の正しいルールをしっかり理解し、「契約書」「タイムカード」「シフト表」「日々の記録」のつじつまがいつでも合っている状態を作ること。この当たり前の整合性を守ることこそが、事業所とスタッフを守り、長く安定した経営を続けるための何よりの土台となります。
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