はじめに
令和9年度の障害福祉サービス報酬改定に向けて、生活介護では、医療的ケアが必要な利用者への支援体制を充実させるため、常勤看護職員等配置加算の見直しと、欠席時対応加算の拡充が検討されています。
令和8年10月22日に開催された厚生労働省の第66回障害福祉報酬改定検討チームでは、看護職員の確保や、医療的ケア者の欠席時に生じる事業所の負担などが課題として取り上げられました。
今回は、現行の算定要件と令和9年度改定に向けた検討事項を区別しながら、生活介護事業者様が確認しておきたい事項を説明します。
1.令和9年度障害福祉サービス報酬改定で生活介護はどう変わる?

生活介護では、利用者の重度化・高齢化が進み、医療的ケアを必要とする方への対応が課題となっています。
厚生労働省の資料によると、令和7年12月時点で、生活介護利用者の約74%が障害支援区分5・6に該当しています。
医療的ケア者を受け入れる事業所では、利用者の健康状態を確認し、必要な医療的ケアを安全に提供するため、看護職員を中心とした支援体制が求められます。
一方で、看護職員の確保が難しいことや、利用者が欠席した日も一定の看護体制を維持する必要があることから、事業所の経営負担が指摘されています。
こうした状況を踏まえ、令和9年度改定では、次の2項目が検討されています。
- 常勤看護職員等配置加算の見直し
- 医療的ケア者等に対する欠席時対応加算の拡充
ただし、令和8年10月23日時点では、いずれも検討段階です。新たな単位数や具体的な算定要件は決定していません。
2.生活介護の常勤看護職員等配置加算とは?現行の算定要件と単位数
常勤看護職員等配置加算は、生活介護事業所において、一定の看護職員を配置している場合に算定できる加算です。
現行制度では、看護職員を常勤換算方法で1人以上配置し、必要な届出を行うことが基本となります。
加算単位数は、利用定員によって異なります。
| 利用定員 | 1日当たりの単位数 |
| 5人以下 | 32単位 |
| 6~10人 | 30単位 |
| 11~20人 | 28単位 |
| 21~30人 | 24単位 |
| 31~40人 | 19単位 |
| 41~50人 | 15単位 |
| 51~60人 | 11単位 |
| 61~70人 | 10単位 |
| 71~80人 | 8単位 |
| 81人以上 | 6単位 |
この単位数に、常勤換算方法で算出した看護職員数の整数部分を乗じて算定します。
例えば、定員20人の生活介護事業所で、看護職員の常勤換算員数が2.5人の場合、端数を切り捨てた2人で計算します。
28単位 × 2人 = 56単位/日
なお、加算は生活介護の単位ごとの看護職員配置に応じて算定するため、配置要件を満たしていない単位では算定できません。
また、厚生労働省の令和6年度報酬改定Q&A(Vol.1・問32)では、主に重症心身障害児者を通わせる多機能型事業所について、事業所全体の看護職員の常勤換算員数で算定できることが示されています。
一方、同Q&A(Vol.4・問1)では、定員超過利用減算、サービス提供職員欠如減算、サービス管理責任者欠如減算に該当する事業所では算定できないとされています。
看護職員の配置人数だけでなく、事業所全体の人員配置基準や減算の該当状況も確認する必要があります。
3.令和9年度改定で常勤看護職員等配置加算はどう見直される?

今回の報酬改定では、医療的ケア者の受入れを促進するため、常勤看護職員等配置加算の見直しが検討されています。
背景には、次のような事業所の負担があります。
- 看護職員の採用や確保が難しい。
- 看護職員の人件費が経営上の負担となっている。
- 医療的ケア者の利用が少ない日でも、看護体制を維持する必要がある。
- 利用者の障害特性や医療的ケアの内容によって、必要な支援体制が異なる。
例えば、医療的ケア者を3人受け入れている事業所で、当日2人が体調不良により欠席した場合を考えます。
利用者が1人になっても、安全に医療的ケアを提供するため、予定していた看護職員の配置を維持する場合があります。
このように、利用者数が減少しても、看護職員の人件費が同じ割合で減少するわけではありません。
厚生労働省は、こうした事情を踏まえて加算の見直しを検討しています。
ただし、加算単位数の引上げや新たな配置区分の設定など、具体的な改定方法については、現時点で決定していません。
4.生活介護の欠席時対応加算とは?現行の算定要件と記録の注意点
欠席時対応加算は、利用予定者が急病等により利用を中止した際に、事業所が連絡調整や相談援助を行った場合に算定できる加算です。
現行の単位数は、1回94単位、1か月につき4回までです。
算定に当たっては、主に次の要件があります。
- 利用予定日の前々日、前日または当日に欠席の連絡がある。
- 利用者または家族等と連絡調整や相談援助を行う。
- 利用者の状況や相談援助の内容等を記録する。
例えば、月曜日に利用予定の方から、前週金曜日に欠席連絡があった場合、原則として加算の対象にはなりません。
また、欠席の連絡を受けただけではなく、利用者の状況確認や相談援助を行うことが必要です。
岡山県の令和7年度集団指導資料では、欠席時対応加算について、次のような指摘事例が紹介されています。
- 欠席連絡の日付が記録されていない。
- 相談援助の記録が不足している。
- 複数の利用者で相談援助内容が全く同じになっている。
- 1回の電話連絡で、複数日分の加算を算定している。
例えば、利用者の家族から「発熱したため、月曜日と火曜日は休みます」と1回の連絡を受けた場合、その連絡だけで2回分の加算を算定することはできません。
管理者は、欠席の連絡日時、利用者の状況、相談援助の内容などを確認できるよう、記録を整備しておく必要があります。
5.令和9年度改定で医療的ケア者の欠席時対応加算はどう変わる?
令和9年度改定では、医療的ケア者等が欠席した場合の欠席時対応加算について、評価の拡充が検討されています。
医療的ケア者の場合、欠席時の対応が通常の連絡調整だけでは終わらないことがあります。
例えば、人工呼吸器を使用する利用者が体調不良で欠席した場合、事業所では次のような対応が考えられます。
- 家族から現在の健康状態を確認する。
- 必要に応じて医療機関と連絡調整を行う。
- 利用再開時に必要な医療的ケアの内容を確認する。
- 看護職員や生活支援員に情報を共有する。
厚生労働省の検討資料でも、医療的ケア者は体調不良、受診、入院等による欠席が生じやすく、欠席時や利用再開時に追加的な準備・調整が必要になることが指摘されています。
今回の見直しでは、医療的ケア者の欠席に伴う事業所の追加的な対応や、看護体制を維持する負担を報酬上どのように評価するかが論点となっています。
ただし、現行の94単位が引き上げられるのか、算定回数が拡大されるのか、別の評価方法となるのかについては、現時点で決定していません。
事業者様は、今後の改定内容を確認するとともに、現行の欠席時対応加算に必要な相談援助や記録の要件を引き続き満たすことが重要です。
6.生活介護事業者が報酬改定前に確認しておきたい5つのポイント

令和9年度改定に向けて、事業者様が現時点で確認しておきたい事項は、次の5点です。
① 看護職員の勤務実績と常勤換算員数
勤務形態一覧表や勤務実績を確認し、届出上の常勤換算員数と実際の配置状況に相違がないか確認します。
② 加算の届出内容と人員配置基準
現在算定している加算の届出内容を確認します。特に、人員配置基準を満たしているか、減算に該当する状況がないかも重要です。
③ 医療的ケア者の受入状況
医療的ケア者の人数、必要な医療的ケアの内容、看護職員の配置状況を整理します。
④ 欠席時の相談援助記録
欠席連絡の日時、利用者の状況、相談援助の内容が確認できるか、記録を点検します。
⑤ 利用再開時の情報共有
医療的ケア者が欠席後に利用を再開する場合、健康状態や必要な支援について、家族・看護職員・生活支援員等の間で情報共有できる体制を確認します。
これらは、新たな加算要件として決定したものではありません。
現在の運営状況を整理し、今後公表される改定内容と照合するための実務上の確認事項です。
7.まとめ|令和9年度の生活介護報酬改定に向けて
令和9年度の障害福祉サービス報酬改定では、生活介護における常勤看護職員等配置加算の見直しと、医療的ケア者等の欠席時対応加算の拡充が検討されています。
今回の見直しは、看護職員の確保や医療的ケア者の欠席時対応など、事業所が負担している業務を報酬上どのように評価するかというものです。
ただし、具体的な単位数や算定要件は、今後の正式な改定内容を確認する必要があります。
事業者様においては、現行の算定要件を確認するとともに、看護職員の配置状況や欠席時の相談援助記録を整理しておくことが重要です。
(参考資料)
1.「施設入所支援、生活介護、短期入所、療養介護に係る報酬・基準について《論点等》」(令和8年10月22日、第66回障害福祉報酬改定検討チーム)(厚生労働省)
主にP47~50を参照。令和9年度報酬改定に向けた生活介護の常勤看護職員等配置加算の見直し、医療的ケア者等の欠席時対応加算の拡充について、検討事項を示した資料です。
2.「指定障害福祉サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号)(厚生労働省)
生活介護の基本報酬や常勤看護職員等配置加算、欠席時対応加算などの算定単位数を定めた告示です。
3.「介護給付費等の算定に関する実施上の留意事項について」(平成18年10月31日、障発第1031001号)(厚生労働省)
生活介護における各種加算の算定要件や、報酬算定上の具体的な取扱いを示した通知です。
4.「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A Vol.1」
「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A Vol.4」(厚生労働省)
本記事では、主にVol.1・問32、Vol.4・問1を参照しています。常勤看護職員等配置加算の算定方法や、減算に該当する事業所での取扱いについて示されています。
5.「令和7年度障害福祉サービス事業者等集団指導資料」(岡山県)
欠席時対応加算について、欠席連絡の日時、相談援助内容の記録、複数日分の算定など、運営指導における主な指摘事項を参照しています(54ページ)。
※本記事は令和8年10月23日時点で公表されている資料に基づいています。令和9年度報酬改定に関する事項は検討段階の内容を含み、今後変更される可能性があります。