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障害福祉事業所を譲り受けると指定はそのまま使える?|株式譲渡・事業譲渡・法人変更の違い

藤原行政書士事務所 行政書士 藤原英明
この記事を書いた行政書士
藤原行政書士事務所 行政書士 藤原英明
障がい福祉・児童福祉事業所の指定申請・運営支援を中心に取り扱っています。

はじめに

障害福祉事業所や障害児通所支援事業所を譲り受ける場面では、

「すでに指定を受けている事業所だから、その指定をそのまま使えるのではないか」

と考えやすいところです。

しかし、障害者総合支援法や児童福祉法に基づく指定は、単に建物や事業所名に付いているものではありません。

重要なのは、どの法人が指定を受けているのかです。

そのため、株式譲渡、事業譲渡、吸収合併、代表者変更では、指定の取扱いが異なります。

今回は、障害福祉事業所・障害児通所支援事業所を譲り受ける際に確認したいポイントを整理します。

1.最初に確認するのは「法人が変わるかどうか」

事業承継を検討するとき、最初に確認したいのは、事業所を運営する法人そのものが変わるのかという点です。

例えば、株式会社Aが生活介護事業所の指定を受けている場合、指定を受けているのは株式会社Aです。

同じ建物、同じ設備、同じ職員で運営を続けるとしても、株式会社Bが事業を引き継ぐのであれば、運営主体となる法人は別になります。

一方で、株式会社Aの株主だけが変わる場合は、株式会社Aという法人自体はそのまま残ります。

この違いによって、新規指定が必要か、変更届等で対応するのかが変わります。

2.株式譲渡では、法人そのものは変わらない

株式譲渡では、会社の株主が変わります。

例えば、株式会社Aの株主Xが、その株式をYへ譲渡した場合です。

この場合、経営者や株主が変わっても、株式会社Aという法人そのものは存続します。

そのため、株式譲渡だけを理由に、新たに指定を取り直すという関係には通常なりません。

ただし、株式譲渡に伴って、

  • 代表取締役
  • 役員
  • 法人所在地
  • 管理者
  • サービス管理責任者
  • 児童発達支援管理責任者
  • 運営規程

などが変更される場合は、それぞれ変更届等の確認が必要です。

したがって株式譲渡では、指定を取り直すかどうかよりも、何が変更されるのかを一つずつ確認することが重要になります。

3.事業譲渡では、新しい法人で新規指定が必要

事業譲渡では考え方が異なります。 例えば、株式会社Aが運営している就労継続支援B型事業所を、株式会社Bが譲り受ける場合です。建物や職員、利用者が同じであっても、運営法人は株式会社Aから株式会社Bへ変わります。

厚生労働省とこども家庭庁は、令和6年6月21日付の事務連絡「障害福祉サービス事業者等の吸収合併等に伴う事務の簡素化について」において、以下の組織再編・事業承継スキームにおける指定の取扱いを整理しています:

  • 吸収合併
  • 吸収分割
  • 新設合併
  • 新設分割
  • 事業譲渡

この事務連絡では、A法人の事業所をB法人が引き継ぐ場合、B法人の事業所として新規に申請し、指定を受ける必要があるとされています。

つまり、事業譲渡等は「指定番号の名義だけ変更する手続き」ではありません。

4.新規指定でも、すべて一からやり直すとは限らない

一方で、事業譲渡や吸収合併等だからといって、すべての手続きを最初からやり直すとは限りません。 令和6年6月21日の事務連絡では、吸収合併等の前後で職員に変更がないなど、事業所が実質的に継続して運営されると指定権者が認める場合には、指定手続きを簡素化できるとされています。

具体的には、旧法人が指定を受けた際に提出している内容から、変更があった部分のみ提出すればよい取扱いが示されています。 例えば法人格以外に変更がなければ、登記事項証明書等を提出し、平面図、運営規程、勤務体制などは、内容に変更がなければ再提出を省略できる例が示されています。

そのため、 新規指定は必要でも、申請書類まで完全にゼロから作り直すとは限らない という整理になります。

【ワンポイント注意点】事前相談で自治体(指定権者)の判断を確認することが必須

書類の簡素化や後述する「実績の通算」が適用されるかどうかは、あくまで「管轄する自治体(指定権者)が『実質的継続性』を認めるかどうかの判断」にかかっています。自治体ごとに確認書類や事前協議のルール・受付スケジュールが異なる場合があるため、譲渡契約を結ぶ前の早い段階で管轄の障害福祉担当部署へ打診・相談しておくことがきわめて重要です。

5.報酬上の実績も通算できる場合がある

令和6年6月21日の事務連絡では、報酬上の取扱いについても整理されています。 指定権者によって事業所が実質的に継続していると認められる場合には、旧法人が運営していた事業所の実績を通算できます。

例えば、

  • 就労移行支援の基本報酬における就職後6か月以上定着率
  • 福祉専門職員配置等加算の職員勤続年数
  • 居宅介護の特定事業所加算等の過去実績
  • 定員超過利用減算の過去3か月平均利用人員

などが例として示されています。処遇改善加算についても、吸収合併等の前後の事業所分を一括して計画書・実績報告書を作成・提出する取扱いが示されています。

したがって、事業譲渡をすると過去の実績がすべてリセットされる、と一律に考える必要はありません。 ただし、繰り返しになりますが「実質的に継続していると指定権者が判断すること」が絶対の前提条件となります。

6.利用者との契約も確認が必要

事業承継では、指定手続だけでなく利用者との契約関係も確認する必要があります。

令和6年6月21日の事務連絡では、会社法に基づいて旧法人の権利義務を承継する場合には、利用契約の再締結を不要とする取扱いが示されています。

また、サービス等利用計画についても変更不要とされています。

一方、単純な事業譲渡では、契約がどのように承継されるのかを別途確認する必要があります。

事業所を譲り受けるときは、指定と契約を別々に整理することが必要です。

7.譲渡日より先に指定スケジュールを確認する

例えば大阪府内の各自治体では、新規指定について事前協議や申請期限が設けられています。

吹田市、豊中市、茨木市、高槻市などでも、指定希望日から逆算して、数か月前から手続きを進める必要があります。

特に就労継続支援A型・B型などでは、通常より早い段階での協議が必要になる場合があります。

そのため、

「12月1日に事業を譲り受ける」

と先に契約日を決め、その後で新規指定の準備を始めると、12月1日の指定に間に合わない可能性があります。

事業譲渡では、

・新法人の指定日
・旧法人の廃止日
・事業譲渡の実行日

をできるだけ整合させて進める必要があります。

この点は、事業譲渡を検討する早い段階で指定権者へ確認しておきたいところです。

8.「法人変更」という言葉だけでは判断できない

実務では「法人を変更します」という表現が使われることがありますが、その内容によって手続きは異なります。

例えば、

  • 商号変更
  • 代表者変更
  • 株主変更

であれば、法人そのものは変わりません。

一方、

  • 事業譲渡
  • 吸収合併
  • 会社分割

などでは、運営主体となる法人が変わる場合があります。

そのため、単に「法人変更」と考えるのではなく、

・同じ法人の中で登記事項が変わるのか
・別法人が事業を引き継ぐのか

を分けて確認する必要があります。

9.譲受け前には、現在の運営状況も確認する

事業所を譲り受ける際は、新規指定が取れるかどうかだけでなく、現在の運営状況も確認しておきたいところです。

例えば、

  • サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者等の配置
  • 常勤換算
  • 加算の算定要件
  • 勤務実績
  • 個別支援計画
  • 運営規程
  • 利用者との契約
  • 建物の賃貸借契約
  • 消防・建築関係
  • 運営指導での指摘事項
  • 過去の返還や過誤調整

などです。

現在も国保連へ請求できていることと、指定基準や加算要件をすべて満たしていることは別の問題です。

また、補助金を使って取得した建物や設備がある場合には、事業承継に伴って財産処分の手続きが必要になる場合もあります。

まとめ

障害福祉事業所や障害児通所支援事業所を譲り受ける場合は、まず、指定を受けている法人が譲受後も同じ法人なのかを確認することが重要です。

株式譲渡で法人そのものが変わらない場合は、新規指定ではなく、代表者や役員、管理者等の変更を確認することになります。

一方、事業譲渡や吸収合併などで運営法人が変わる場合には、譲受側・承継側の法人で新規指定が必要になるのが原則です。

ただし、事業所が実質的に継続していると認められる場合には、指定申請書類の簡素化や報酬実績の通算が認められる場合があります。

事業承継を検討するときは、

・株式譲渡か事業譲渡か
・法人が変わるのか
・新規指定が必要か
・指定日はいつになるのか
・報酬実績や加算をどこまで引き継げるのか

を順番に確認すると、必要な手続きが整理しやすくなります。

藤原行政書士事務所 行政書士 藤原英明
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