はじめに
障害福祉サービスや障害児通所支援の事業所で、国保連から返戻通知が届き、対応に迷われたことはないでしょうか。
処遇改善加算を算定している事業所では、「加算の届出は済ませているのに返戻された」「職員には処遇改善手当を支給済みだが、どう対応すればよいのか」といった疑問も生じます。
返戻の原因は、処遇改善加算の届出や請求内容だけとは限りません。受給者情報や基本報酬の請求に誤りがあり、加算を含む請求明細書が返戻となる場合もあります。
大切なのは、返戻の原因を確認したうえで、再請求後に確定した加算額と、職員への賃金改善額を整理することです。
本記事では、国保連のエラー原因から再請求の手順、実績報告に向けた確認事項まで、順番に解説します。
1.処遇改善加算が返戻されたら、まず何を確認する?

返戻通知が届いたら、まず国保連の「返戻等一覧表」を確認します。
管理者と請求担当者で、次の項目を整理しておくと、その後の対応を進めやすくなります。
- 返戻となった利用者とサービス提供年月
- エラーコードとエラーメッセージ
- 処遇改善加算の届出や請求内容に問題があるのか
- 受給者情報や基本報酬の請求に問題があるのか
返戻とは、請求情報の不備などにより、支払いが行われずに請求が差し戻されることです。返戻されたことだけで、直ちに加算を算定できないと決まるわけではありません。 原因を解消し、正しい内容で再請求することで、支払いにつながる場合があります。
また、審査上の「警告」と「エラー」は区別して確認します。
警告は、国保連の一次審査だけでは判断できず、市町村等の二次審査で支払いの可否が判断されるものです。一方、エラーとして返戻となった請求には、支払いが行われません。
通知を見てすぐに請求データを変更するのではなく、どの情報が一致していないのかを確認することが最初の対応です。
2.処遇改善加算で注意したい国保連のエラーとは?
処遇改善加算で注意したいのが、指定権者への届出内容、国保連の事業所台帳、請求ソフトの設定の不一致です。
事業所台帳とは、国保連のシステムに登録されている、事業所の加算や体制等に関する情報をいいます。
① 処遇改善加算が「なし」と登録されている場合
大阪府国保連のエラーコード対応マニュアルでは、次のコードが示されています。
- PC94:障害福祉サービス
- PK91:障害児支援
いずれも、台帳上は処遇改善加算が「なし」となっているのに、請求明細書では加算を請求している場合のエラーです。
例えば、就労継続支援B型事業所が処遇改善加算を請求したものの、事業所台帳への登録が「加算なし」となっているケースです。
この場合は、まず届出書類の控えと算定開始年月を確認します。届出済みで、請求内容も正しければ、指定権者に台帳の登録状況を問い合わせます。
届出自体が行われていなかった場合は、いつから算定できるのかも含めて確認が必要です。
以前は、これらの不一致が一次審査では警告となり、二次審査で支払いが認められることがありました。しかし、PC94・PK91は、令和7年11月審査から一次審査で返戻となる取扱いに移行しています。
以前は支払われていた場合でも、同じ不一致を残したままでは支払いを受けられない点が重要です。
② 届け出た加算区分と請求区分が異なる場合
例えば、次のようなケースです。
- 指定権者への届出:処遇改善加算Ⅱ
- 国保連の事業所台帳:処遇改善加算Ⅱ
- 請求ソフトの設定:処遇改善加算Ⅰ
この場合は、請求ソフトの設定と、実際に算定できる加算区分が一致していません。
加算の新規算定や区分変更を行った際は、「届出内容」「台帳への反映」「請求ソフトの設定」の3点を照合します。
台帳側に誤りがある場合は、請求ソフトだけを修正しても解決しません。返戻を解消するために、実際の算定内容と異なる区分へ変更しないよう注意が必要です。
3.処遇改善加算以外の請求エラーでも返戻になる?
処遇改善加算の届出や計算が正しくても、利用者情報などに誤りがあれば、請求明細書が返戻となることがあります。
国民健康保険中央会の「請求事務ハンドブック」では、受給者情報に関するエラーとして、次の例が示されています。
| エラーコード | 主な確認事項 |
| EG01・EG02 | サービス提供月に有効な受給者の認定情報が登録されているか。受給者証番号・市町村番号に誤りがないか |
| EG03・EG07 | 支給決定されたサービス種別と請求内容が一致しているか |
| EG13 | サービス提供月が支給決定期間内か |
例えば、放課後等デイサービスで受給者証が更新されているのに、請求ソフトに以前の情報が残っていた場合です。
請求明細書が返戻となれば、その明細書に含まれる処遇改善加算も、予定した時期に入金されないことがあります。
返戻原因を確認するときは、処遇改善加算の設定だけでなく、受給者証、サービス提供実績記録票、請求明細書も照合します。
受給者証と請求内容が一致しているのにエラーが出る場合は、市町村側の受給者台帳への登録状況を確認する必要があります。
4.返戻された請求はどうやって再請求する?

原因が分かったら、必要な修正や台帳の確認を行い、再請求します。
実際の業務では、次の順番で進めます。
- 返戻等一覧表で原因を確認する
- 届出書類、受給者証、請求ソフトの設定等を照合する
- 台帳の確認が必要な場合は、指定権者や市町村へ問い合わせる
- 原因を解消し、翌月以降に正しい内容で再請求する
- 再請求後の審査結果と支払決定額を確認する
ここで区別したいのが、再請求と「過誤申立」です。
返戻された請求は支払いが確定していないため、原則として過誤申立は不要です。 大阪市でも、返戻となった請求は、翌月以降に正しい内容で請求するよう案内しています。
一方、支払決定済みの請求を訂正する場合は、原則として過誤申立により当初の請求を取り下げる手続きが必要です。取下げを行わずに再請求すると、重複請求として返戻される場合があります。
また、再請求のデータを送信しただけでは、対応は完了していません。 再び返戻となっていないか、予定した加算額が認められたかまで確認し、管理表に記録しておきます。
5.職員に処遇改善手当を支給済みの場合はどうする?
国保連から加算収入を受け取る前に、見込額をもとに処遇改善手当を支給している事業所もあります。
国の「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-8-1では、例えば6月に算定する加算について、6月中に見込額で職員へ支払う方法も示されています。
そのため、返戻が生じた場合は、加算収入の入金が一時的に遅れているのか、最終的な加算額そのものが減るのかを分けて確認します。
例えば、6月分の加算見込額が10万円で、職員にも賃金改善額として10万円を支給していたとします。
一部が返戻となっても、再請求によって当初見込んだ10万円が認められれば、入金時期は遅れますが、加算額の総額は変わりません。
一方、請求内容を確認した結果、最終的な加算額が8万円となった場合は、次のように整理できます。
| 項目 | 金額 |
| 職員への賃金改善額 | 100,000円 |
| 最終的な加算額 | 80,000円 |
| 加算額を上回る賃金改善額 | 20,000円 |
※金額は説明用の例です。
加算額が減ったからといって、支給済みの処遇改善手当を直ちに職員から回収するものではありません。
支給済みの手当の回収や、今後の支給額の変更には、雇用契約や賃金規程、労働関係法令上の確認が必要です。給与の取扱いを変更する場合は、社会保険労務士等に相談して進めます。
なお、この例は加算額と賃金改善額の関係を示すものです。実際の要件確認は、設定した賃金改善実施期間全体で行い、月額賃金改善要件なども別に確認します。
国のQ&A問1-8-1は支給時期を示したものであり、返戻後の給与調整方法を直接定めたものではありません。
6.返戻後の加算額は実績報告書でどう確認する?

実績報告に向けては、当初の見込額と、審査で確定した加算額を区別して管理します。
例えば、6月分の加算見込額10万円のうち、当初の審査で8万円が認められ、残り2万円が再請求で認められた場合です。
| 確認項目 | 管理内容の例 |
| サービス提供月 | 6月 |
| 当初の加算見込額 | 100,000円 |
| 当初の審査で確定した加算額 | 80,000円 |
| 返戻となった加算相当額 | 20,000円 |
| 再請求後に確定した加算額 | 20,000円 |
| 最終的な加算額 | 100,000円 |
※事業所内で管理するための整理例であり、国が指定した様式ではありません。
この場合、最終的な加算額は「当初確定した8万円+再請求で確定した2万円=10万円」です。
当初の見込額10万円に再請求分2万円を加えると、二重計上になります。
また、サービス提供月と入金月は異なります。管理表にはサービス提供月のほか、再請求した月、支払決定を確認した月も残しておくと、集計漏れを防ぎやすくなります。
実績報告書を作成するときは、国保連の加算総額に関する通知や支払関係資料と管理表を照合します。利用者負担額が生じる場合は、そのうち加算に対応する部分も含め、様式上の加算額を確認します。
年度をまたぐ再請求や、実績報告の提出時点で未確定の請求がある場合は、対象年度の記入要領と指定権者の案内を確認します。
返戻の経緯と最終的な加算額を説明できるよう、返戻等一覧表、修正内容の記録、再請求後の審査結果をまとめて保存しておくことが大切です。
まとめ
処遇改善加算の請求が返戻された場合は、まず返戻等一覧表を確認し、届出内容、事業所台帳、請求内容のどこに不一致があるのかを調べます。
処遇改善加算の設定に問題がなくても、受給者情報などの誤りによって、加算を含む請求明細書が返戻となることがあります。
対応は、「原因の確認」「必要な修正」「再請求」「支払決定額の確認」「賃金改善額との照合」の順に進めます。
職員に手当を支給済みの場合も、入金の遅れと加算額の減少を分けて整理します。再請求後の金額まで管理表に残しておくことで、日々の請求確認を実績報告書の作成につなげることができます。
(参考資料)
1.「障害福祉サービス・障害児支援 請求事務ハンドブック」(令和6年5月版)(国民健康保険中央会)
・4ページ、7~11ページ、25~27ページ。警告とエラーの違い、受給者情報・事業所台帳と請求内容の整合性、過誤申立の手順等を記載。
2.「障害福祉サービス費等請求に係るエラーコード対応マニュアル」(令和7年11月版)(大阪府国民健康保険団体連合会)
・「はじめに」、A-NO.25、事業所台帳の確認方法等を参照。返戻等一覧表の見方、PC94・PK91の原因と対応方法等を記載。
3.「過誤申立の手続きについて(障がい福祉サービス費等)」(令和8年3月2日更新)(大阪市)
・返戻された請求の再請求と、支払決定済みの請求を訂正する場合の過誤申立について記載。
4.「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年4月9日)問1-8-1、問1-9~問1-11(厚生労働省・こども家庭庁)
・賃金改善の支給時期、加算額に対して賃金改善額が不足した場合の取扱い、労使の合意や賃金水準の変更に関する考え方を記載。