はじめに|保護者からの緊急相談が新たな報酬評価の論点に
放課後等デイサービスでは、保護者から突然、対応が難しい相談を受けることがあります。
「学校でトラブルがあり、家庭でも対応できなくなっている」「こどもの状態が急に変化し、どこに相談すればよいか分からない」といった場面です。
事業所が相談を受け、学校や関係機関との調整を行っても、現行の家族支援加算では算定できない場合があります。
令和9年度報酬改定では、こうした緊急的・突発的で対応が困難な相談への対応を新たに報酬上評価することが検討されています。
今回は、現行制度との違いを確認しながら、管理者・児発管が日常業務で注意したい事項を整理し解説します。
1.令和9年度報酬改定で緊急相談への対応はどう評価される?

厚生労働省・こども家庭庁「障害児支援に係る報酬・基準について≪論点等≫」(令和8年10月5日、第65回障害福祉報酬改定検討チーム資料、86~90ページ)では、「家族支援の更なる充実について」が論点として取り上げられています。
現行の家族支援加算は、保護者等に対する計画的な相談援助を評価する仕組みです。
しかし、実際の事業所運営では、あらかじめ予定していない相談への対応が必要になることもあります。
今回の検討では、緊急的・突発的で対応が困難な相談を受けた際、関係機関との連絡調整や必要な支援の調整・実施につなげる対応について、新たな報酬評価を設ける方向性が示されています。
例えば、保護者からの相談を受けて、学校や障害児相談支援事業所と連絡を取り、今後の支援方法を調整する場面などが考えられます。
ただし、令和8年10月時点では、新たな加算の創設や具体的な算定要件が決定したわけではありません。
加算の名称、単位数、対象となる相談内容などは、今後の正式な改定内容を確認する必要があります。
2.現行の家族支援加算では緊急相談を算定できる?
現行の家族支援加算では、保護者等への相談援助を、あらかじめ通所支援計画に位置付け、計画的に実施することが基本となっています。
こども家庭庁の「報酬算定に関する留意事項通知」(令和8年3月31日改正、31ページ「⑤ 家族支援加算の取扱い」)では、突発的に生じる相談援助は家族支援加算の対象にならないことが示されています。
例えば、保護者から突然電話が入り、職員が相談に対応した場合です。
相談に時間を要したという理由だけで、現行の家族支援加算を算定することはできません。
なお、計画的な相談援助をオンラインで行う際、やむを得ず電話を使用する場合には、一定の条件の下で算定できる取扱いもあります。したがって、電話という手段だけで算定の可否が決まるわけではありません。
また、児発管が個別支援計画のモニタリングとして保護者と面談する場合も、本来業務との区別が必要です。
一方、令和9年度報酬改定では、従来の計画的な相談援助とは異なる、緊急的・突発的で対応困難な相談への新たな報酬評価が検討されています。
なお、放課後等デイサービスについては、同通知53ページ「⑥ 家族支援加算の取扱い」により、児童発達支援の規定が準用されています。
現行の家族支援加算の単位数や算定要件、記録方法については、当事務所の別記事「障がい児通所支援における家族支援加算とは?」で詳しく解説しています。
3.緊急相談を受けた管理者・児発管はどう対応する?

ここでは、事業所の日常業務を例に考えます。
午後3時、放課後等デイサービスの管理者に、利用児童の保護者から電話が入りました。
「学校でトラブルがあり、帰宅後も興奮が続いている。家庭でどう対応すればよいか分からない」という相談です。
このような場合、管理者はどのように対応すればよいのでしょうか。
① こどもと家族の現在の状況を確認する
まず、こどもが現在どこにいるのか、けがや自傷・他害などの危険がないか、保護者がどのような対応を求めているのかを確認します。
差し迫った危険がある場合には、通常の相談援助にとどまらず、救急対応などの必要性を判断します。
② 児発管と情報を共有する
次に、管理者と児発管が情報を共有します。
普段の事業所での様子、過去に同様の行動があったか、個別支援計画ではどのような支援方法を定めているかを確認します。
管理者が児発管を兼務している事業所でも、必要に応じて直接支援を担当する職員と情報を共有することが重要です。
③ 必要な関係機関との連携を検討する
相談内容によっては、学校、障害児相談支援事業所、医療機関、市町村などとの連携が必要になる場合があります。
情報共有に当たっては、本人・保護者の意向や個人情報の取扱いに配慮します。
ただし、児童虐待が疑われる場合には、保護者の同意が得られないことを理由に通告を見送るものではありません。
④ 相談後の支援につなげる
緊急相談への対応が終わった後も、事業所内で情報を共有し、継続的な支援が必要かを確認します。
必要に応じて、児発管がアセスメントを行い、個別支援計画の見直しを検討します。
こども家庭庁「放課後等デイサービスガイドライン」(令和6年7月)でも、家族支援と地域支援・地域連携の重要性が示されています。
緊急相談は、その場の対応だけで終わらせず、その後の支援に結び付けることが大切です。
4.相談対応中の人員配置と関係機関との連携
緊急相談を受ける際には、相談内容だけでなく、職員の配置にも注意が必要です。
① 相談対応中の人員配置
こども家庭庁「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.4」(令和6年5月24日、問4、2ページ)では、家族支援加算の相談援助と人員配置の関係が示されています。
サービス提供時間中に、基準人員として配置されている児童指導員や保育士が家族支援加算に係る相談援助を行う場合、その時間は必要な基準人員に含まれません。
例えば、児童指導員2名で直接支援を行っている時間に、そのうち1名が保護者への相談援助を担当する場合です。
家族支援加算を算定する相談援助として実施するのであれば、必要な人員配置を維持できているか確認する必要があります。
なお、このQ&Aは現行の家族支援加算に関するものです。通常の電話対応や突発的な緊急相談のすべてについて、直ちに同じ取扱いになるという意味ではありません。
② 関係機関との連携
緊急相談の内容によっては、事業所だけで対応することが難しい場合もあります。
例えば、学校でのトラブルが続いている場合には学校との情報共有、家庭での養育に課題がある場合には市町村のこども家庭センター等との連携が考えられます。
また、継続的な支援調整が必要な場合には、障害児相談支援事業所との連携も重要です。
事業所がすべての問題を解決するのではなく、相談内容に応じて適切な関係機関につなぐことが求められます。
5.緊急相談の対応経過をどのように記録する?

緊急相談では、その場で対応することに意識が向き、相談後の記録が十分に残らない場合があります。
しかし、後日、管理者や児発管が対応内容を振り返るためには、相談から支援までの経過を確認できる記録が必要です。
大阪府が公開している「事業者様式ライブラリー」には、「苦情(相談)対応記録」のモデル様式があります。
また、大阪市の障害児支援事業者向け集団指導資料でも、現行の家族支援加算における相談記録の重要性が示されています。
これらを参考に、緊急相談への対応記録では、次の事項を整理しておくことが考えられます。
- 相談日時、相談者、対応した職員
- 相談内容と、こども・家族の状況
- 緊急性について確認した事項
- 管理者・児発管による対応方針
- 関係機関への連絡日時、連絡先、調整内容
- 対応結果と、その後に必要な支援
例えば、学校との連携が必要と判断した場合には、「学校へ連絡した」という記載だけでなく、どのような情報を共有し、今後の対応をどう決めたのかを残します。
また、個別支援計画の見直しが必要となった場合には、その判断に至った経緯も記録しておくと、支援内容とのつながりを確認しやすくなります。
相談記録は、加算算定のためだけでなく、職員間の情報共有や継続的な支援にも役立つ資料です。
ただし、これらは現行の運営管理における実務上の整理であり、令和9年度の新たな報酬評価について確定した記録要件を示すものではありません。
6.新たな加算の創設に向けて確認したいこと
令和9年度報酬改定では、緊急相談への対応を新たに評価することが検討されていますが、具体的な算定要件は今後の議論によります。
事業者様が確認しておきたいのは、主に次の事項です。
① どのような相談が評価対象になるのか
通常の相談と、緊急的・突発的で対応困難な相談を、どのような基準で区別するのか。
② 関係機関との連携が必要になるのか
相談援助だけで評価されるのか、学校や市町村等との連絡調整、支援の実施に向けた対応まで求められるのか。
③ 現行の家族支援加算との関係
同じ日に両方を算定できるのか、算定回数や相談時間に条件が設けられるのか。
④ 人員配置と記録の取扱い
相談を担当する職員の要件、人員配置への影響、必要な記録事項などが、どのように定められるのか。
これらは現時点で確定していません。
新たな報酬評価が検討されていることと、現在すでに算定できることは別です。
今後、国から正式な報酬告示、留意事項通知、Q&A等が示された段階で、具体的な要件を確認する必要があります。
まとめ|緊急相談への対応と報酬算定は分けて考える
現行の家族支援加算では、通所支援計画に位置付けた計画的な相談援助が基本となっており、突発的な電話相談などは算定対象になりません。
令和9年度報酬改定では、こうした緊急的・突発的な相談への対応や、関係機関との調整を新たに評価する方向性が示されています。
ただし、具体的な制度内容は今後の検討事項です。
事業者様にとって重要なのは、報酬算定の可否とは別に、こどもと家族の状況を把握し、必要な支援につなげることです。
管理者・児発管の役割分担、人員配置、関係機関との連携、対応記録を整理しておくことが、適切な事業所運営につながります。
※本記事は、令和8年10月17日時点で公表されている資料に基づいています。令和9年度報酬改定に関する記載には検討段階の内容が含まれ、今後変更される可能性があります。
(参考資料)
1.「障害児支援に係る報酬・基準について≪論点等≫」(厚生労働省・こども家庭庁)(令和8年10月5日、第65回障害福祉報酬改定検討チーム資料)
86~90ページ「論点10 家族支援の更なる充実について」。緊急的・突発的で対応困難な相談と、新たな報酬評価の検討内容を参照。
2.「放課後等デイサービスガイドライン」(こども家庭庁)(令和6年7月)
家族支援、地域支援・地域連携に関する記載を参照。
3.「児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(こども家庭庁)(平成24年3月30日、障発0330第16号、令和8年3月31日最終改正)
31~32ページ「⑤ 家族支援加算の取扱い」、特に32ページ「(一)家族支援加算(Ⅰ)」の「オ」、53ページ「⑥ 家族支援加算の取扱い」を参照。
4.「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.4」(こども家庭庁)(令和6年5月24日、問4、2ページ)
家族支援加算に係る相談援助中の人員配置の取扱いを参照。