はじめに
児童発達支援や放課後等デイサービスでは、人員基準を超える職員の配置や、専門的な支援体制を評価する仕組みとして、「児童指導員等加配加算」と「専門的支援体制加算」が設けられています。
令和8年10月5日に開催された第65回障害福祉サービス等報酬改定検討チームでは、令和9年度の報酬改定に向けて、両加算を整理・統合した新たな加算の創設を検討する案が示されました。
ただし、現時点では検討段階であり、統合の実施や新加算の名称・単位数・算定要件が決まったわけではありません。
本記事では、現行制度との違いを整理しながら、見直しの方向性と、事業所で確認しておきたい点を説明します。
1.現行の2つの加算は、何を評価するものか

【児童指導員等加配加算】
人員基準等で必要となる職員に加えて、児童指導員や保育士等を配置し、子どもや家族への支援を強化することを評価する加算です。
常勤専従・常勤換算という配置形態や、児童福祉事業等での経験年数が5年以上か5年未満かなどによって、評価区分が分かれています。
【専門的支援体制加算】
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理担当職員、一定の経験を持つ保育士・児童指導員等を加配し、専門的な支援体制を整えることを評価する加算です。
保育士・児童指導員については、それぞれの職種として5年以上、児童福祉事業に従事した経験が求められます。
また、専門的支援体制加算とは別に、計画に基づいて専門人材が個別・集中的な支援を行った実績を評価する「専門的支援実施加算」があります。
「専門的な支援を提供する体制」と「計画に基づく支援の実施」は、別の加算として整理されています。
2.なぜ、見直しが検討されているのか
令和8年10月5日の検討資料では、令和8年3月サービス提供分の国保連実績として、次の算定率が示されています。
- 児童指導員等加配加算:児童発達支援84.7%、放課後等デイサービス91.6%
- 専門的支援体制加算:児童発達支援52.5%、放課後等デイサービス46.7%
職員の加配や専門人材の配置を評価する仕組みは、一定程度定着しています。一方、財務省の令和8年度予算執行調査では、児童指導員等加配加算を約9割の事業所が算定している実態から、支援強化を促す仕組みとしての役割について指摘がありました。
また、検討資料では、個々の職員の資格や配置状況に着目した評価だけでは、事業所全体の支援体制を十分に評価しにくいという課題が示されています。
専門職等の確保が難しいことや、職員配置に対する評価が、地域の人材確保の状況に影響されやすいことも背景にあります。
例えば、経験豊富な職員が勤務している場合でも、その知識や支援方法が他の職員に共有されているかどうかで、事業所全体の支援の進め方は変わります。
誰を配置しているかに加えて、その職員の専門性や経験が、日々の支援にどのように活かされているかを確認する視点が大切になります。
3.見直し案の中心は、事業所全体のチーム支援

今回の検討案では、専門人材や経験のある人材の配置を引き続き評価しながら、チームでの支援や、支援ニーズの高い子どもの受け入れ状況、それに応じた支援体制を総合的に評価する方向が示されています。
主な視点は、次の3つです。
- 専門人材や経験のある職員を、支援にどう活用しているか
- 多職種や複数の職員が、どのように協働しているか
- 支援ニーズの高い子どもを受け入れ、必要な支援体制を整えているか
職員の資格や経験年数を評価する方向性を維持しつつ、事業所全体の支援体制も評価しようとしている点が、今回の見直し案の特徴です。
日々の業務に置き換えると、例えば次のような取組が、自事業所の支援体制を振り返る手がかりになります。
- 専門職が子どもの状態を確認し、他の職員へ支援方法を伝えている
- 経験豊富な職員が、対応に迷う場面について助言している
- ケース会議で支援方法を共有し、担当者以外も対応できるようにしている
- 保護者から得た情報を職員間で共有し、支援に反映している
これらは、見直しの方向性を踏まえた実務上の例です。個々の取組が新加算の算定要件になると決まっているわけではありません。
4.整理・統合によって、何が変わる可能性があるか
現行制度では、児童指導員等の加配と専門人材の配置を、それぞれの加算で評価しています。
検討資料では、この評価体系を見直し、両加算を整理・統合した新たな加算において、複数の評価項目を組み合わせ、取組や体制整備の状況を総合的に評価することが提案されています。
事業所が検討案を読み解く際には、次のように整理すると分かりやすくなります。
- 配置:どのような資格や経験を持つ職員がいるか
- 活用:その職員がチームの中で、どのような役割を担っているか
- 支援体制:子どもの支援ニーズに、事業所全体でどう対応しているか
ただし、具体的な評価項目や必須要件、評価区分、単位数、移行時の取扱いなどは、今後の検討を確認する必要があります。
現段階で、加算収入が増えるか減るか、現在の配置で新加算を算定できるかを判断することはできません。
5.まずは、現行の算定要件を確認する

見直しの検討が進んでいても、現在の加算は現行の要件に沿って確認します。
こども家庭庁の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.1」(令和6年3月29日)には、次の取扱いが示されています。
(加配職員の勤務実態:問10)
児童指導員等加配加算の加配職員は、サービス提供時間帯を通じて事業所に配置する必要があります。
また、事務作業だけを行い、直接支援や家族支援に一切あたらない状態は想定されていません。
(実務経験の確認:問11~13・15)
経験年数は、勤務した事業や業務内容、勤務日数等を根拠資料で確認します。
児童指導員等加配加算と専門的支援体制加算では、経験として認められる範囲に違いがあります。同じ職員について確認する場合でも、加算ごとの取扱いに沿って整理する必要があります。
(常勤の専門職員が不在の場合:問14)
専門的支援体制加算では、常勤の専門職員が病気や有給休暇で一時的に不在となっても、配置要件を満たす取扱いです。
ただし、欠勤等が1か月以上続く場合には、配置要件を満たさなくなります。
6.事業所で整理しておきたい3つのこと
検討案だけを理由に、急いで採用や配置変更を決める必要はありません。まずは、現在の職員配置と支援の実態を整理しておくと、今後の制度変更を確認しやすくなります。
① 誰を、どの加算の対象として配置しているか
勤務形態一覧表や届出内容を確認し、対象職員の資格、配置形態、経験年数を整理します。
実務経験証明書等の根拠資料と、届出内容・勤務実態が合っているかも確認しておきたいところです。
② 専門性や経験を、どう活用しているか
専門職や経験豊富な職員が、直接支援、ケース会議、支援方法の検討、他の職員への助言、保護者対応等にどう関わっているかを振り返ります。
例えば、会議録に助言の内容が残っているか、その助言が支援記録や計画の見直しにつながっているかを確認すると、活用状況が分かりやすくなります。
③ 職員間で、支援方法を共有できているか
特定の職員だけが対応方法を知っている状態になっていないか、担当者が不在でも必要な情報を確認できるかを点検します。
支援上の注意点や対応方法を職員間で共有することは、日々の支援を継続するうえでも役立ちます。
ここで挙げた確認事項は、現状を整理するための実務上の提案です。新加算のために、これらの記録を新たに作成する義務が決まったという意味ではありません。
まとめ
児童指導員等加配加算と専門的支援体制加算については、専門人材や経験のある職員の配置評価を維持しつつ、チーム支援や事業所全体の支援体制を総合的に評価する方向で、整理・統合が検討されています。
まずは現行の算定要件を確認し、誰を配置しているか、その職員の知識や経験をどう活かしているか、職員間で支援方法をどう共有しているかを整理しておくことが、今後の検討内容を理解する手がかりになります。
※本記事は、令和8年10月6日時点で公表されている資料に基づいています。
参考資料
1. 「障害児支援に係る報酬・基準について≪論点等≫」(令和8年10月5日)(厚生労働省・こども家庭庁)
第65回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料、30~32ページ「論点1 チーム支援の推進に向けた事業所全体の支援体制の評価について」
2.「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.1」(こども家庭庁)(令和6年3月29日)
問10~13:児童指導員等加配加算、11~13ページ
問14・15:専門的支援体制加算、13ページ
3. 「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(障害児支援関係)の改定事項の概要について」(こども家庭庁)(令和6年4月1日)
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(障害児支援関係)の改定事項の概要について、専門的支援体制加算・専門的支援実施加算の説明箇所、8~9ページ