はじめに|今回示されたのは「検討の方向性」
令和8年9月28日の障害福祉報酬改定検討チームで、令和9年度改定に向けた就労系サービスの論点が示されました。就労移行支援、就労継続支援A型・B型に関わる項目のうち、本記事では在宅支援と施設外就労を取り上げます。
どちらも利用者の働く機会を広げる支援方法です。一方、事業所の外で行われるため、「どのような支援が行われたか」を確認しにくい面があります。今回の資料には、その実態を確認するための見直し案が盛り込まれました。
以下は令和8年9月28日時点の検討案であり、令和9年度から適用される要件として確定したものではありません。 現行の取扱いと区別しながら確認しましょう。
1.在宅支援は、利用者ごとの必要性をどう判断する?

現行の取扱いでは、在宅での利用を希望する方について、市町村が在宅利用による支援効果を認めた場合、所定の要件を満たして支援を提供します。
今回示された案では、対象を単に「在宅でも支援効果がある方」ではなく、「通所を上回る支援効果が認められる方」としてはどうかとされています。想定されているのは、主に次のような方です。
- 重度の障害や離島・豪雪地帯などの事情で、通所が困難な方
- ひきこもり状態などにあり、通所につなげる前段階として在宅支援が必要な方
- 在宅での一般就労を希望し、そのための訓練が必要な方
「本人が在宅を希望している」という理由だけでなく、その方にとって、なぜ通所より在宅での支援が適しているのかを説明できるかが論点です。たとえば、通所が難しい事情、在宅で取り組む作業、目指す能力の向上を、アセスメントと個別支援計画に結び付けて整理することが考えられます。
また、通所に向けてまず在宅支援を必要とする方については、在宅の支給決定上限を3か月とし、市町村が3か月ごとに支援効果等を踏まえて更新を判断する案が示されています。これは、すべての在宅利用者に一律に3か月の上限を設けるという案ではありません。
2.在宅支援を行う事業所の体制と報酬案
利用者側の要件に加え、事業所の支援体制も見直しの対象です。資料には、利用者と随時連絡を取れる環境、緊急時の対応、本人のアセスメントなどが挙げられています。対象者の状況に応じた在宅支援プログラムも必要とする案です。
訓練状況や支援状況を音声・動画・静止画像等で確認できるようにする取扱いについては、現行の努力義務を必須条件とする案が示されています。資料は、本人の同意など適切な手続きを経て、安全な状態で保存し、指定権者から求められた際には個人情報に配慮して提出できるようにすることを想定しています。単に利用者の作業画面を撮影しておけばよい、という内容ではありません。
報酬については、在宅支援の基本報酬を一定程度引き下げ、定員に対する在宅利用者の割合に上限を設ける案があります。一方、一定の要件を満たす積極的な在宅支援には、従前どおりの単価とし、割合の上限も設けない案が示されました。
その要件のイメージには、在宅の利点を生かした生産活動、在宅環境だからこそできる訓練、動画やバーチャル環境で利用者と常に連絡を取れる体制などが含まれます。動画作成、ホームページ作成、プログラミング等は、資料に記された生産活動の例です。これらの仕事を行えば自動的に従前どおりの単価になる、という意味ではありません。
さらに、在宅支援を希望する事業所が、支援内容等のチェックリストをあらかじめ指定権者へ提出する案もあります。運営規程への記載、作業内容、報酬算定要件、ガイドラインに沿った支援などが確認項目として想定されています。
自宅以外の場所での在宅支援についても、対象を極めて限定的な場合に絞る案が示されました。資料では、離島等で通所できる範囲に事業所がなく、自宅に設置できない設備が必要な場合などを例示し、カフェ等での利用は認めない案としています。
3.施設外就労は、就労先での支援をどう示す?

施設外就労については、工賃・賃金の向上や一般就労への移行につながる一方、就労先で適切な支援が行われているかを指定権者が確認しにくいことが課題とされています。
見直し案では、請負期間や請負金額が小規模な場合を除き、施設外就労先の企業名、代表者名、所在地、生産活動の内容、利用人数の規模、実施予定期間などを運営規程等に明記することが提案されています。また、就労先の場所を指定権者が定める範囲内に限る案もあります。資料にある「県内」「事業所から2時間以内」は範囲の例であり、全国共通の確定基準ではありません。
事業所内では、原則として月2日、訓練目標の達成度を評価する案も示されました。施設外での作業日数や出来高だけでなく、利用者が何を経験し、どのような知識や能力を身に付けたかを振り返る趣旨です。
たとえば、企業での清掃作業を行う場合、作業を終えた事実に加え、手順を覚えられたか、報告や相談ができたか、次にどの工程へ取り組むかを確認します。施設外就労で行う仕事と、個別支援計画の目標がつながっているかを、日々の記録から説明できることが大切です。
4.就労先ごとの収支を示す「生産活動シート」

施設外就労については、一定の小規模な請負を除き、就労先ごとの収支状況を示す「生産活動シート」を作成し、指定権者へ提出するとともに、事業所のホームページで公表する案も示されています。
背景にあるのは、就労先が事業所へ安価に作業を発注していないか、給付費が実質的に利用者の賃金・工賃の原資となっていないか、という問題意識です。受注額だけを見ても収支は分かりません。就労先ごとに契約内容や売上、必要な経費を把握できるかが、確認の出発点になります。
また、指定権者が必要に応じて施設外就労先を実地確認できるよう、法令上の位置付けを明確にする案もあります。就労先で誰が作業をしているかだけでなく、そこで事業所がどのような支援を提供しているかが問われています。
まとめ:今、事業所で確認しておきたいこと
今回の資料だけを根拠に、直ちに新しい様式を作ったり、案の内容に合わせて運営規程を変更したりする段階ではありません。ただし、現在の支援を整理することはできます。
在宅支援については、利用者ごとの必要性、個別支援計画上の目標、実際に行った支援、その結果を続けて説明できるか確認します。施設外就労については、就労先との契約、作業内容、利用者への支援記録、目標の評価、就労先ごとの収支を確認しておくと、現在の運営状況を把握しやすくなります。
在宅支援も施設外就労も、場所が事業所の外にあるという共通点があります。今回の見直し案からは、「どこで作業したか」に加え、「誰に、何のために、どのような支援を行い、どう評価したか」を確かめようとする方向が読み取れます。
今後の議論で要件や報酬の内容は変わる可能性があります。まずは現在の支援と記録を照らし合わせ、利用者ごとの支援の必要性と成果を説明できる状態にしておきましょう。
(参考資料)
「第64回障害福祉報酬改定検討チーム資料 就労系サービスに係る報酬・基準について≪論点等≫」(令和8年9月28日)(厚生労働省)
※在宅支援は資料16~19ページ、施設外就労は29~30ページを参照。
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