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はじめに
重度障害者支援加算は、強度行動障害を有するなど、特別な支援を必要とする利用者様への受け入れ体制を整えた事業所に対して算定できる加算です。今回は、共同生活援助(グループホーム)と生活介護における本加算の要件について整理します。
この加算は、「対象となる利用者様の状態に関する要件」と、「職員の配置と研修修了に関する要件」の両方を満たす必要があります。「どの利用者様が対象になるのか」「どの研修を修了した職員が何名必要なのか」など、複層的な要件を紐解きながら日々の管理に落とし込む作業は、管理者様や事務担当者様にとって悩ましい業務の一つかと思います。
支援の具体的内容や支援計画シートの作成等については、現場で日々利用者様と向き合われている専門職の皆様の知見が最も重要です。そのため本記事では、皆様の施設運営を後方から支えるための「制度上の算定要件の骨格」と「事務手続きの整理」に特化してお伝えいたします。自治体によって運用や解釈に違いがある場合もありますので、詳細は管轄の指定権者へご確認いただく際のヒントとしてご活用ください。
1.対象となる利用者様の要件

まず、どのような状態の利用者様が加算の対象となるのかを確認します。サービス種別や加算の区分(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲなど)によって要件が異なる点にご注意ください。
①生活介護の場合
生活介護における重度障害者支援加算は、区分(Ⅰ〜Ⅲ)によって「施設全体の体制に対する評価」か「個別の利用者様に対する評価」かが大きく異なります。
- 加算(Ⅰ): 人員配置体制加算(ⅠまたはⅡ)および常勤看護職員等配置加算(3名以上)を算定した上で、さらに生活支援員または看護職員を加配しているなど、極めて手厚い人員体制を敷いている事業所において、当該単位内の「全ての利用者様」を対象として算定されます。
- 加算(Ⅱ): 障害支援区分6に該当し、かつ、行動関連項目合計点数が10点以上である方
- 加算(Ⅲ): 障害支援区分4以上に該当し、かつ、行動関連項目合計点数が10点以上である方
※加算(Ⅰ)は算定ハードルが非常に高く、また加算(Ⅰ)を算定している場合は加算(Ⅱ)(Ⅲ)を同時に算定することはできません。そのため本記事では、多くの事業所様で日々の管理の課題となりやすい「加算(Ⅱ)および(Ⅲ)」の要件を中心に、以降の解説を進めます。
②共同生活援助(グループホーム)の場合
- 加算(Ⅰ): 重度障害者等包括支援の対象となる支援の度合いにある方
- 加算(Ⅱ): 障害支援区分4以上に該当し、かつ、行動関連項目合計点数が10点以上である方
2.確認に必要な資料
これらの要件を満たしているかは、「受給者証」で確認します。もし受給者証に「行動関連項目10点以上」等の記載がない場合は、市町村が発行する「認定調査票(強度行動障害判定基準表)」の写し等を確認するか、直接市町村へ照会を行う必要があります。
3.職員の配置要件と注意点
利用者様の要件を満たしていても、事業所の職員体制が要件を満たしていなければ算定はできません。ここでは大きく「加配」と「研修修了」の2つのハードルがあります。
①人員の加配(常勤換算での確認)
基本となる人員配置基準(および人員配置体制加算等)を満たしたうえで、対象となる利用者様の支援のために必要と認められる人数の職員を「常勤換算で加配」していることが大前提となります。シフト表(勤務形態一覧表)を用いて、基本配置分と加配分がしっかり区分して計算されているかを確認してください。
②研修修了者の配置(実人数での確認)
さらに、配置されているサービス管理責任者や生活支援員のうち、特定の研修を修了した職員を配置する必要があります。
- 実践レベルの職員: サービス管理責任者または生活支援員のうち1名以上が、強度行動障害支援者養成研修(実践研修)等を修了していること。
- 基礎レベルの職員: 配置されている生活支援員のうち「20%以上」が、強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)等を修了していること。
③共同生活援助における特例と「実人数」の計算の罠

共同生活援助においては、基礎研修や実践研修だけでなく、「行動援護従業者養成研修」や、医療的ケアが必要な方のために「喀痰吸引等研修」を修了している職員を要件に含めることができるケースがあります。 また、この「20%以上」の計算は、常勤換算ではなく「実人数(頭数)」で計算します。たとえば、共同生活援助で「世話人」と「生活支援員」を兼務している職員がいる場合、その職員も生活支援員の実人数に含めて計算します。 (例:生活支援員として従事する実人数が12名の場合、12名×20%=2.4名となり、切り上げて「3名以上」の研修修了者が必要となります)
4.初期加算の算定に関する留意点
重度障害者支援加算の算定を開始した日から起算して180日以内の期間については、生活介護・共同生活援助ともに、初期段階の環境変化等に対する手厚い支援を評価するため、所定単位数が追加で算定されます(初期加算)。
ここでの「180日」とは、営業日数ではなく「カレンダー通りの暦日での日数」を指します。つまり、算定開始日から180日間経過するまでの期間のうち、事業所が営業しており、かつ当該利用者が実際に通所・利用した日数分だけ初期加算を請求できる仕組みです。土日や祝日などの休業日もカウントは進行していくため、実質的に加算が取れる日数は180日よりも少なくなる点にご留意ください。
また、この初期加算の算定において最も気をつけたいのが「1利用者につき、同一事業所において1度までの算定」というルールです。過去に当該加算を算定した状態で退所された方が、再び同じ事業所を利用することになった場合、この初期加算は再度算定することはできません。 「加算の算定を開始した日」を台帳等で正確に記録・共有し、180日の終了日をシステムやカレンダーで管理しておくことが不可欠です。
5.研修修了者が退職・異動した場合の管理

重度障害者支援加算は、人の出入りによって要件から外れてしまうリスクが高い加算です。実践研修修了者または基礎研修修了者が退職や異動、配置変更等によって要件の人数(20%など)を下回った場合、ただちに体制変更届の提出が必要になります。
この届出が遅れたまま加算を請求し続けてしまうと、要件を満たしていない期間の加算額がすべて「過誤調整(返還)」の対象となってしまいます。返還金は事業所の経営計画に想定外の負担を強いることになります。
6.対策として準備したいこと
職員の研修修了状況と在籍状況を定期的に照合できる「修了証の管理台帳」を作成しておくことをお勧めします。法令上も「修了証を交付された者が配置されていること」が求められており、運営指導(実地指導)の際にも修了証の原本または写しの保管状況は必ず確認されます。
まとめ
この記事では、共同生活援助・生活介護における重度障害者支援加算について、日々の施設運営で確認しておきたい算定要件の全体像を整理しました。
- 利用者様の要件確認: サービスや区分によって「区分6」または「区分4以上」と異なり、行動関連項目の点数を受給者証や認定調査票で確認する。
- 職員要件の計算: 加配(常勤換算)を満たしたうえで、研修修了者(実人数)を配置する。兼務職員のカウント方法や「20%」の計算に注意する。
- 期限と変更の管理: 初期加算の180日の期日管理、および研修修了者の退職・異動時の速やかな体制変更届を徹底する。
算定要件の詳細や、届出に必要な添付書類(シフト表の書き方など)については、指定権者である都道府県・市区町村のローカルルールが存在することが多々あります。書類の整備や届出手続きにおいて判断に迷われる際は、指定権者への事前確認を丁寧に行うほか、実務をサポートする外部の専門家等を活用して管理負担を軽減することも、安心で円滑な事業運営の選択肢となります。 本記事が、日々現場でご尽力されている皆様の施設運営の一助となれば幸いです。