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就労継続支援B型

【実務情報】就労継続支援B型における工賃向上の具体例と確認ポイント

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はじめに

就労継続支援B型において、工賃水準の向上は利用者の処遇に関する大切な要素であり、報酬体系や各種加算にも連動する実務上のテーマです。本記事では、多忙な経営者様に向けて、工賃向上のための具体的な手段と事例、および最新の制度動向(令和8年改定等)を踏まえた注意点を客観的に整理して解説します。

1. 工賃向上が求められる背景と最新の制度動向

令和6年度の報酬改定で平均工賃月額の算定方式が見直され、工賃実績が基本報酬に直接影響する仕組みとなりました。新方式が適用された令和6年度のデータによれば、全国の平均工賃月額は24,141円と上昇傾向にあります。これを受け、令和8年(2026年)6月からは、基本報酬区分の基準額が3,000円引き上げられることが決定しています(※令和6年度改定で区分が上がっていない事業所や、一部の下位区分の基準据え置き等の配慮措置あり)。現状の工賃水準を維持するだけでは報酬区分が下がるリスクがあるため、事業所にはさらなる工賃向上の取り組みが求められます。

2. 工賃向上に向けた取り組みの方向性(3つの軸)

工賃を上げるための手段は、大きく「単価を上げる」「生産量を増やす」「コストを見直す」の3軸に整理されます。自事業所の課題がどこにあるのかを以下の視点から見直すことをおすすめします。

  • 単価を上げる: 発注元の言い値になりがちな下請け作業から、自社で価格設定が可能な自主製品やサービスへの転換を図ることが有効です。また、既存の下請け作業であっても、納品の正確性や納期遵守の実績といった客観的なデータを提示し、発注元へ単価引き上げの交渉を行うことも一つの手段です。
  • 生産量を増やす: 利用者ごとの特性(手先の器用さ、集中力、パソコン作業への適性など)に合わせて作業工程を細分化し、それぞれが無理なく能力を発揮できる工程を担当する(マッチング)ことで、全体の生産効率を高めます。また、作業を補助する治具の導入や、作業動線の見直しといった環境整備(合理的配慮)を行うことも、ミスの削減と生産量の増加に直結します。
  • コストを見直す: 生産活動に係る支出の適正化です。原材料の仕入れルートの再検討や、まとめ買いによる単価の引き下げ、作業工程の見直しによる廃棄ロスの削減など、日々の細かなコスト管理の積み重ねが、最終的に利用者に還元できる工賃額の増加につながります。

3. 販路の多様化と新規業態の導入

どれだけ良い製品を作っても、売れなければ工賃には反映されません。販路の確保・拡大の実例として以下が挙げられます。

  • インターネット販売の活用: ECプラットフォーム等を活用したオンライン販売。ただし、撮影や発送業務、在庫管理などの業務フローの整備が必要です。
  • 企業や自治体との連携: 地域の企業からの継続的な受注や、自治体の障害者優先調達推進法に基づく登録制度の活用などが考えられます。
  • 飲食・カフェ業態の導入: 単価が高く地域との接点も生まれますが、食品衛生法に基づく営業許可の取得や衛生管理の徹底が必要です。事前に保健所への確認をおすすめします。

4. 在宅支援・施設外就労の活用における実務上の注意点

通所が難しい利用者等に向けた「在宅支援」や、企業等の外部で作業を行う「施設外就労」の選択肢があります。 ただし、これらの実施には厳格な要件が定められています。厚生労働省のガイドライン等により、在宅支援は「重度障害等で通所が困難であることなどを理由に、オンラインによる在宅での就労を希望する者であって、市区町村が支援効果を認めた場合」等に限定され、実態の伴わない活動は不適切とみなされます。施設外就労についても、職員の常時同行や人員配置基準の遵守が求められます。単なる工賃向上の手段としてではなく、自事業所の体制で要件を満たせるか、指定権者への事前確認も含めた慎重な検討をおすすめします。

5. 具体的な取り組み事例

  • 事例① 農福連携による農産物の生産・販売: 農地を借り受けて生産から販売までを行い、市場に流通させる仕組みの構築。
  • 事例② 企業からのデータ入力・軽作業の単価交渉: 作業の正確性や納期遵守の実績データを提示し、発注元と単価引き上げの交渉を実施。
  • 事例③ オリジナル雑貨のEC販売への移行: 下請け作業から、自社で価格設定が可能な自主製品の製造・販売へのシフト。
  • 事例④ 福祉施設間での共同受注・共同販売: 複数の事業所が連携し、個々の事業所では受けきれない大口受注への対応や販路開拓コストを分担。

6. 工賃向上計画の策定と行政の実態把握(生産活動シート)への対応

都道府県に提出する「工賃向上計画」は、現状の工賃水準と目標の差を数値で把握する整理ツールとして活用できます。令和6年度に新設された「目標工賃達成加算(10単位/日)」を算定するためには、以下の要件等を満たす必要があります。

  • 工賃向上計画に掲げた各年度の目標工賃額(前年度実績に全国平均の伸び幅を加味した額以上)を設定し、達成していること。
  • 対象年度の平均工賃月額が、前年度の平均工賃月額を上回っていること。

日々の生産活動実績の積み重ねが加算の取得に直結するため、月単位で工賃実績と計画との差異を分析し、事業運営を見直すサイクルの構築をご検討ください。 また、今後は行政による運営指導等において、「生産活動シート」を用いた生産活動収支の実態把握が厳格化されます。自立支援給付費等から工賃への不適切な補填が行われていないか等、材料費等の原価管理を徹底し、事業所の会計状況を客観的に説明できる体制の整備をおすすめします。

まとめ

就労継続支援B型における工賃向上は、作業単価生産量販路コストといった複数の要素から成り立ちます。自事業所の人員体制や利用者の特性に合わせて取り得る手段を洗い出し、現状と照らし合わせながら一つずつ整理していくことをおすすめします。令和8年の基準額引き上げや「生産活動シート」の導入など、行政の実態把握の厳格化を見据え、適正な事業運営の参考としてご活用ください。

 

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