(初回無料)障がい(障害)福祉施設の指定申請・運営は、 当事務所のサポートをご活用ください。
はじめに
障がい福祉事業を運営していると、「サービスの種類を増やしたい」「2拠点目を開設したい」「グループホームを追加したい」といった場面が出てきます。本記事では、サービス追加や多拠点展開等の事業拡大時に必要となる手続きの種類を整理し、実務上の留意点を解説します。自治体ごとの制度や申請の仕組みを正確に把握したうえで、計画を進めるための参考としてご活用ください。
1.障がい福祉事業の拡大とは?まず「拡大の種類」を整理する
「事業拡大」と一言でいっても、その内容は状況によって異なります。必要な手続きも変わるため、まず自社がどのパターンに該当するかを整理することが重要です。

① 既存サービスに新たな加算を追加する
現在運営しているサービスに対して、「福祉・介護職員等処遇改善加算」等を新たに算定するケースです。指定申請そのものは不要ですが、算定区分ごとの要件を満たしているかの確認と、加算の届出が必要になります。
② 新しい障がい福祉サービスを追加する(多機能化)
既存の法人が、新たなサービス種別(例:就労継続支援に加えて生活介護を追加する、あるいは令和7年(2025年)10月に創設される新サービス「就労選択支援」を新たに追加するなど)の指定を受けるケースです。新たに指定申請を行う必要があります。
③ 新拠点・2店舗目を開設する
既存法人が別の場所に新たな事業所を設ける場合です。同じサービス種別であっても、拠点ごとに指定申請が必要です。
④ 法人格を変更・強化する
NPO法人から株式会社への変更、または一般社団法人への移行など、法人形態を変えるケースです。法人設立・変更の手続きに加え、新法人での指定申請が必要になります。
2.新サービスを追加するために必要な「指定申請」の基本とローカルルール

①指定申請とはどんな手続きか
障がい福祉サービスを提供するためには、管轄の自治体から「指定」を受ける必要があります。指定を受けずにサービスを提供した場合、給付費を請求することができません。
②申請先はどこか(都道府県・政令市・中核市の違い)
指定の窓口は、原則として「都道府県」ですが、事業所の所在地によっては「市」が窓口となるため注意が必要です。例えば、大阪市(政令指定都市)や吹田市(中核市)内で事業を行う場合、大半の障がい福祉サービスや障がい児通所支援の指定権者は「市」に一元化されており、市役所の担当部署が申請窓口となります。
③申請に必要な書類の一覧
一般的に以下が求められます。
指定申請書 / 事業計画書 / 運営規程 / 平面図・設備の状況を示す書類 / 従業者の勤務体制および勤務形態一覧表 / 資格証・雇用契約書等 / 法人の登記事項証明書・定款 / 財務諸表 / 誓約書
④申請から指定までにかかる期間の目安と「事前協議」
申請から指定までにかかる期間は、自治体によって大きく異なります。特に留意すべきは「事前協議」のルールです。例えば、大阪市や吹田市において生活介護や就労系、児童発達支援などを新規・追加で申請する場合、指定月の3ヶ月前(の月末)までに事前協議を行うことが義務付けられています。このようなルールがある地域では、物件契約や人員確保は開設の4〜5ヶ月前から逆算して動く必要があります。(※ただし、居宅介護などの訪問系サービスや相談支援事業等については、事前協議が不要とされている自治体も多いため、追加するサービス種別ごとの確認が必要です。)
⑤サービス種別ごとの追加手続きのポイントと「総量規制」
就労継続支援(A型・B型)を追加する場合: A型は労働関係法令の遵守が求められ、収支管理が複雑になります。B型については、自治体によっては新規参入を制限する「総量規制」が敷かれている場合があります(例:大阪市、東大阪市では令和8年8月以降の新規指定が原則停止されます)。
就労移行支援を追加する場合:なお、就労移行支援については、令和6年度の制度改正により利用定員要件が「20人以上」から「10人以上」に緩和されました。これにより、既存事業所の空きスペースを活用した多機能型でのサービス追加が検討しやすくなっています。
放課後等デイサービス・児童発達支援を追加する場合:児童福祉法に基づくサービスのため、児童発達支援管理責任者(児発管)の確保が必須です。また、吹田市などのように、事前に市の計画に基づく必要量に達していないか(総量規制)の確認が必要な自治体もあります。
グループホーム(共同生活援助)を追加する場合:物件の用途(住居系用途地域かどうか)や設備基準(居室の広さ・消防設備等)の事前確認が不可欠です。
3. 2拠点目・多店舗展開に必要な手続きと注意点

①拠点ごとに指定申請が必要になる理由
障がい福祉サービスの指定は「事業所単位」で行われます。同じ法人が同じサービス種別の事業所を別の場所に開設する場合でも、新たに指定申請が必要です。既存の指定が新拠点に引き継がれることはありません。
②管理者・サービス管理責任者は兼務できるか
サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者は原則として専任ですが、多機能型事業所として指定を受ける場合などは、要件を満たせば兼務が可能となり、人員配置の効率化が図れるメリットがあります。管理者については、令和6年度の報酬改定により要件が大幅に緩和され、緊急時の対応フローを定めて速やかに出勤できるなどの一定条件を満たせば、同一敷地内に限らず別拠点の管理者と兼務することが可能となりました。
③設備基準・人員基準を拠点ごとに満たす必要性
新拠点においても、既存拠点と同様に設備基準・人員基準をすべて満たす必要があります。「既存拠点で実績があるから審査が簡略化される」ということはありません。
④事業拡大前に確認すべき「加算・報酬」への影響
複数のサービスを一体的に運営する場合(多機能型事業所)、加算の算定方法が変わることがあります。特に処遇改善加算の算定基礎となる報酬額の計算などには留意が必要です。
4.事業拡大における実務上の留意点とリスク
事業拡大の計画を進めるにあたり、以下のリスクに特に注意する必要があります。
①【最重要】令和8年6月以降の新規開設に伴う「基本報酬減額」リスク
就労継続支援B型、グループホーム(共同生活援助 ※介護サービス包括型・日中サービス支援型に限る)、児童発達支援、放課後等デイサービスの4サービスにおいて、令和8年(2026年)6月1日以降に新規指定を受ける事業所は、原則として基本報酬が引き下げられる(応急的な報酬単価の特例)ことが決定しています。 新拠点展開を検討する場合は、この減額措置を前提とした厳格な収支シミュレーションを行うか、減額対象外となる特例要件(重度障害者の受け入れや、自治体が不足地域として公募等で設置を認めた場合など)を満たす事業計画づくりが不可欠です。 また、事業拡大の手法として「合併、分割、事業譲渡」等によって新たに指定を受ける場合、実質的に継続して運営されると認められれば既存事業所と同様の扱い(減額対象外)となる点も、経営戦略上押さえておくべき重要なポイントです。
②ローカルルールの見落としリスク
事前協議の期限や必要書類の様式は自治体ごとに異なります。これを把握していないと、申請が数ヶ月単位で遅れる要因となります。
③人員要件を満たせず指定を受けられないリスク
サビ管・児発管の研修は申込から修了まで数か月かかる場合があるため、計画段階から人材確保を並行して進めるスケジュール管理が求められます。
④物件の用途変更・設備基準をクリアできないリスク
確認申請や消防設備の改修が必要になるケースがあり、想定外のコストと時間がかかることがあります。
まとめ|事業拡大は「自治体ルールの確認」と「逆算」がすべて
障がい福祉事業の拡大手続きにおいて最も重要なのは、進出予定の自治体がどのようなローカルルール(申請窓口、事前協議のスケジュール、総量規制の有無など)を設けているかを正確に把握することです。書類が整っていても人員要件が満たせない、物件の設備基準がクリアできないといった理由で開業が遅延するリスクが伴います。加えて、今後の新規指定における基本報酬の減額リスク等も考慮し、計画段階で管轄の窓口へ事前確認を行い、各工程に十分な余裕を持ったスケジュールで進めることが、事業拡大を成功させるための基本となります。