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加算・減算・報酬改定

処遇改善加算の計画書、数字を入れるだけで大丈夫?|賃金改善・配分・実績報告までの考え方

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はじめに

年度が替わり、処遇改善計画書を作成する時期になると、前年のExcelファイルを開き、今年度の職員数や給与額を入力する作業が始まります。

しかし、計画書を指定権者へ提出できたことと、処遇改善加算を適切に運用できていることは同じではありません。

処遇改善加算は、次の流れで1年間運用する制度です。

計画を立てる

実際に賃金を改善する

職場環境の改善に取り組む

実績報告書を提出する

令和6年度には従来の3つの加算が一本化され、令和8年6月からは、対象職種の拡大や「Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ」といった区分の見直しも行われました。生産性向上協働化の取組も、これまで以上に重要になっています。

大切なのは、計画書だけを完成させるのではなく、計画した賃金改善と職場環境の取組を、日常業務の中で確実に実施することです。

1.最初に確認するのは「今年度の職員構成」

前年の計画書へ数字を上書きする前に、まず今年度の職員一覧を確認します。

・昨年度から継続して在籍している職員は誰か

 

・新しく採用した職員や退職予定者はいるか

 

・常勤・非常勤などの勤務形態に変更はないか

 

・昇給や賞与の変更を予定しているか

 

・管理者、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者などへの配分をどうするか

 

処遇改善加算は、年度末に残った加算額をまとめて配ればよい制度ではありません。

職員構成、給与体系、昇給予定、賞与の支給方針を先に整理し、その内容を計画書へ反映させる方が、年度途中の計算のずれを防ぎやすくなります。

2.「加算見込額」と「賃金改善額」を分けて管理する

実務で混乱しやすいのが、事業所が受け取る加算額と、職員の賃金改善に充てた金額の管理です。

事業所は、処遇改善加算の算定額以上の賃金改善を実施しなければなりません。賃金改善の方法には、基本給の引上げ、手当の新設・増額、賞与や一時金による支給などがあります。一定の範囲では、賃金改善に伴って増加した法定福利費等の事業主負担分を含めることもできます。

ここで重要なのは、毎月の給与計算の段階で「処遇改善による支給額」を切り分けて把握することです。

年度末になってから12か月分の給与台帳を並べ、「この手当は処遇改善分だったか」「この昇給分を賃金改善額に含められるか」と確認するのは大きな負担になります。

毎月、または3か月ごとに、次の数字を確認しておくと実績報告が進めやすくなります。

・実際に算定した加算額

 

・処遇改善として支給した金額

 

・年度末までの加算見込額

 

・年度末までに必要となる賃金改善額

 

月ごとの金額だけで判断するのではなく、年間の累計額と見込額を確認することがポイントです。

3.配分は全員一律でなくてもよい

「パート職員にも配分する必要があるのか」「全員同じ金額にしなければならないのか」という質問もよくあります。

令和8年度以降は、賃金改善の対象に福祉・介護職員以外の全職種を含めることができ、管理者、サビ管、児発管、看護職員、事務員などへの柔軟な配分が認められています。

ただし、必ず全員へ同額を配るという意味ではありません。

職種、職責、経験、資格、勤務時間、現在の給与水準などに応じて配分額に差を設けることは可能です。一方で、職務内容や勤務実態に見合わない著しく偏った配分は避けなければなりません。

重要なのは、次の点を説明できる状態にしておくことです。

・誰を賃金改善の対象とするのか

 

・どのような基準で金額を決めたのか

 

・基本給、手当、賞与のどの項目で支給するのか

 

・その内容を職員へどのように周知したのか

 

就業規則や賃金規程の変更が必要な場合は、社会保険労務士へ相談し、継続できる賃金制度として整備する必要があります。

4.計画書にチェックした要件を実際に行っているか

キャリアパス要件や職場環境等要件は、計画書の該当欄にチェックを入れれば完了するものではありません。

例えば、キャリアパス要件については、次の内容を確認します。

・職位、職責、職務内容に応じた任用要件と賃金体系が定められているか

 

・資質向上の目標と具体的な研修計画があるか

 

・研修の実施記録や参加記録が残っているか

 

・経験、資格、人事評価などに基づく昇給の仕組みがあるか

 

・制度の内容を職員へ周知しているか

 

キャリアパス要件Ⅳでは、原則として、経験・技能のある福祉・介護職員のうち1人以上について、賃金改善後の賃金見込額を年額460万円以上とすることが求められます。

ただし、職場環境等要件について全体で14以上の取組を実施している場合は、この年額460万円以上の要件を満たしたものとして取り扱う仕組みがあります。

ここで注意したいのは、「14項目」という数字が、職場環境等要件そのものの最低取組数と同じではないことです。

令和8年6月以降にⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロを算定する場合は、原則として、最初の5区分から各2項目以上、生産性向上の区分から3項目以上の取組が必要です。最低数は合計13項目になります。

一方、年額460万円以上の要件に代える場合は、全体で14項目以上の取組が必要です。両者を混同しないよう注意が必要です。

また、職場環境等要件は、次の6区分に整理されています。

(1)入職促進に向けた取組

 

(2)資質の向上やキャリアアップに向けた支援

 

(3)両立支援・多様な働き方の推進

 

(4)腰痛を含む心身の健康管理

 

(5)やりがい・働きがいの醸成

 

(6)生産性向上のための取組

 

選択した取組については、研修記録会議の議事録業務改善の検討記録システム導入後の運用記録など、実施したことを確認できる資料を残します。

Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロでは、取組内容を障害福祉サービス等情報公表制度や事業所のホームページなどで公表する「見える化」への対応も必要です。

5.「年度末までに実施する」と誓約した項目を放置しない

令和8年度には、一定の要件を満たす事業所について、申請時点で一部の整備や取組が完了していなくても、令和9年3月末までに実施することを誓約し、申請時点から要件を満たしたものとして取り扱う特例があります。

ただし、誓約できる範囲や条件は、加算区分と要件によって異なります。

また、これは要件が免除される制度ではありません。期限までに実施できなければ、要件未達成となり、加算の返還につながる可能性があります。

誓約した項目は、計画書を提出した時点で「未対応事項一覧」として整理し、例えば次の時期に進捗を確認します。

・9月 上半期の進捗確認
・12月 賞与決定時の確認
・2月 年度末と次年度計画に向けた最終確認

「年度末までに行えばよい」を「年度末まで確認しなくてよい」と考えないことが大切です。

6.採用・退職があったら支給計画を見直す

1年間事業を運営していれば、採用、退職、勤務時間の変更、昇給などにより、当初の職員構成や給与額が変わることがあります。

このとき最初に確認するのは、賃金改善額の見込額が、加算の算定見込額を下回っていないかという点です。

職員が1人退職したからといって、その都度、処遇改善計画書の変更届が必要になるわけではありません。まずは事業所内で支給計画を見直し、別の職員への配分や賞与による調整などを検討します。

一方、次のような場合には、指定権者への変更届が必要になることがあります。

・合併などにより計画書の作成単位が変わる

 

・一括申請の対象事業所が増減する

 

・キャリアパス要件の変更により加算区分が変わる

 

・算定する加算区分を変更する

 

・処遇に関する就業規則を改定する

 

「事業所内部で支給計画を見直すこと」と「指定権者へ変更届を提出すること」を分けて考え、具体的な提出時期や方法は指定権者の案内を確認しましょう。

7.実績報告書は1年間の運用結果をまとめる書類

実績報告書は、提出時期になってから数字を作る書類ではありません。

毎月の加算額と賃金改善額を記録し、職場環境等要件の取組資料を保管していれば、実績報告は1年間の記録を集計する作業になります。

令和8年度分の実績報告書は、通常、令和9年7月31日が提出期限です。ただし、年度途中で事業を廃止した場合などは期限が異なるため、指定権者への確認が必要です。

次の資料をまとめて保管しておくと、実績報告や運営指導にも対応しやすくなります。

・提出した処遇改善計画書と実績報告書の控え

 

・就業規則、賃金規程、給与規程

 

・給与台帳、給与明細、賞与明細

 

・賃金改善額の管理表

 

・研修計画、参加記録、研修報告書

 

・職場環境等要件の実施記録

 

・職員への周知資料

 

処遇改善加算の通知上、実績報告書と根拠資料の保存期間は2年間です。ただし、自治体の条例や他の運営関係書類の保存期間も確認し、より長い保存期間に統一して管理する方法も考えられます。

まとめ

処遇改善計画書は、前年のExcelファイルを開き、今年度の数字へ置き換えれば、形式上は作成できてしまいます。

しかし、事業所が本当に管理しなければならないのは、計画書の作成そのものではありません。

・今年度の職員構成と給与額を確認する

 

・賃金改善の対象者と配分基準を決める

 

・基本給、手当、賞与などの支給方法を決める

 

・毎月または数か月ごとに加算額と賃金改善額を確認する

 

・キャリアパス要件と職場環境等要件を実際に運用する

 

・取組の記録や証拠資料を残す

 

・誓約した項目の進捗を管理する

 

・採用や退職があれば支給計画を見直す

 

・1年間の結果を実績報告書にまとめる

 

処遇改善加算は「計画書を作成するための制度」ではなく、「計画した賃金改善と職場環境の改善を1年間実施し、その結果を報告する制度」です。

前年の様式をそのまま流用するのではなく、職員構成、給与、配分方法、職場環境の取組を一度並べて整理することが、無理のない運用と返還リスクの防止につながります。

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