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はじめに
令和6年度からすべての障害福祉サービス・児童福祉サービス等で義務化された「BCP(業務継続計画)」。 運営指導でも、BCPが適切に運用されているかどうかが厳しく確認されるようになっています。
ここで行政の担当者がチェックするのは、単に「BCPの計画書(マニュアル)が棚にあるかどうか」だけではありません。最も重要視されるのは、「計画に基づいて、スタッフへの研修や訓練をルール通りの回数で行い、その実績が客観的な記録として残っているか」という点です。
忙しい日々の支援の中で、スタッフを集めて研修や訓練を繰り返すのは大変な負担となります。今回は、現場の負担を最小限に抑えながら、運営指導を安心してクリアするための「回数ルールと記録の残し方」を解説します。
1.研修と訓練は年に何回やればいい?「サービス別」の回数ルール

BCPには「自然災害」と「感染症」の2種類がありますが、研修や訓練の実施回数には、自然災害BCPと感染症BCPで違いはありません。どちらも同じ回数を行う必要があります。
ただし、事業所が提供する「サービスの種類」によって、以下のように必要な回数が異なります。
【BCP研修・訓練の必須実施回数】
- 訪問・通所系(生活介護、就労継続A・B、児童発達支援、放課後等デイサービス、訪問介護、相談支援など)
- 自然災害BCP(研修・訓練):それぞれ年1回以上
- 感染症BCP(研修・訓練):それぞれ年1回以上
- 施設・入所系(共同生活援助 [グループホーム]、施設入所支援など)
- 自然災害BCP(研修・訓練):それぞれ年2回以上
- 感染症BCP(研修・訓練):それぞれ年2回以上
このように、共同生活援助(グループホーム)や入所施設においては、自然災害・感染症どちらのBCPについても、年2回以上の研修・訓練が必要となります。
通所系や訪問系などの一般サービスは、どちらも年1回以上で適合となります。
2.これだけは書いておきたい!「研修記録」の5つのポイント
「〇月〇日、BCP研修をやりました」とだけ書いた簡単なメモでは、運営指導で「実施した実態が確認できない」と指摘されてしまうことがあります。 研修を行った客観的な証拠として、記録(議事録)には以下の5つのポイントを必ず含めるようにしましょう。
- いつ、誰が参加したか(休みの人へのフォローも):当日休みのスタッフに対しては、後日「資料を読てもらって受領サインをもらう」ことで、全員に教えた証拠(カバー率)を証明できます。
- どのテーマについて学んだか:単に「BCP研修」と書くのではなく、「自然災害BCP:地震が起きたときの最初の安否確認手順について」など、具体的に書きます。
- 何の資料(テキスト)を使ったか 「自所のBCPマニュアルの〇ページ」や、厚生労働省のパンフレットなどを明記します。
- どの様な方法で行ったか 「定例会議の最初の15分を使って、マニュアルをみんなで読み合わせた」など、実施方法を一行書きます。
- 質問やスタッフから出た意見
- 「夜間に地震が起きたら、管理者とサビ管のどちらに第一報を入れるべきですか?」という質問が出た。
- 「夜間は電話がつながりにくいので、緊急連絡用のLINEグループも作っておいた方がいいと思う」という意見が出た。
このようなスタッフからのリアルな質問や意見、それに対する事業所の回答をメモ程度でも残しておくと、どこかからコピーしただけの書類ではない「本当に開催した生きた証拠」になります。
3.火災の「避難訓練」だけでは不十分?「BCP訓練」で書くべきこと

「消防署に提出する避難訓練を毎年やっているから、BCPの訓練もこれで代わりにできる」と考えてしまいがちですが、これらは目的が異なります。
- 避難訓練(防災訓練):火事や地震のときに、「その場所から安全に逃げること」が目的です。
- BCP訓練(業務継続訓練):災害が起きたあと、停電やスタッフ不足などの制限された状況下で、「どうやってサービスを止めずに続けるか」をシミュレーションするのが目的です。
そのため、いつもの避難訓練に加えて(または同時に行う場合は項目を分けて)、以下のポイントを訓練記録に残す必要があります。
- 具体的な場面の設定:「平日の午前10時、利用者が〇名、スタッフが〇名のときに地震が起き、停電した」という設定。
- 誰が判断するかの確認:「管理者が不在のため、BCP規定に基づき、サービス管理責任者(児童発達支援管理責任者)の〇〇が代わりに指示を出した」という役割分担の検証。
- ライフライン停止時の対応:「備蓄してある飲み水を配る手順を確認した」などの実際の動き。
4.内容が変わらなくても必要!BCPを「見直した」という記録の残し方
BCPは「定期的な見直し」も義務づけられています。しかし、「特に連絡先や内容に変更がなかった」という場合、何も書類を触らないと、行政から「何年も放置している」と見なされる心配があります。
計画内容に特に変更がない場合でも、以下の方法で見直しを行った証拠を残しておきましょう。
- 計画書の表紙や最後のページに「履歴」を書く:計画書の隅に「令和〇年〇月〇日、定期内容確認。変更事項なし(確認者:管理者〇〇)」と手書きやパソコンで追記しておきます。
- 職員会議の議事録に一言残す :「今月の会議で、現行BCPの連絡先が最新であることを全員で確認した」と会議録に書いておくだけで、見直しを行った立派な証拠になります。
5.記録用紙の「見出し」を分ける一体的実施のテクニック
通所系やグループホーム等では、「感染症対策委員会」の定期開催や、それに基づく「感染症予防の研修・訓練」も別途求められます。これらは、BCP研修・訓練と同時に実施することが公式に認めされています。
ただし、記録(議事録)を一緒くたに混ぜて書いてしまうと、運営指導の際、行政の担当者に「BCPの訓練ができていない」と見落とされてしまうリスクがあります。 対策として、1枚の記録用紙の中で、以下のように「見出し」をはっきり分けて書くのがおすすめです。
- 【項目A:感染症予防(手洗い・ガウン着脱など)の記録】 「防護服やマスクを正しく着る手順をスタッフ全員で練習した」
- 【項目B:感染症BCP(業務継続)の記録】 「スタッフの半分が感染症で休んだ場合を想定し、応援スタッフの確保やサービス優先順位を確認した」
このように記録を整理しておけば、余計な会議や訓練を増やすことなく、複数の義務を一度にクリアできます。
6.書類をファイルに閉じるときの「日付の順番」

運営指導で書類を出すとき、日付のつじつまが合っていないと、行政の担当者から確認を求められることがあります。 たとえば、「研修をやった日」よりも「BCPの計画書を作った日(表紙の日付)」の方が後の日付になっていると不自然です。
書類をバインダーに閉じるときは、以下の「自然なストーリー」の順番になっているかを確認しましょう。
-
【まず計画書を作る】 (BCPの表紙の日付)
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【スタッフに伝える】 (研修を行った日付)
-
【実際に動いて練習する】 (訓練を行った日付)
-
【悪かったところを直す】 (見直し・改訂をした日付)
この順番で日付が並んでいれば、運営指導でも自信を持って説明できます。
まとめ
BCPの対策とは、むずかしい書類を新しくたくさん作ることではありません。 今ある職員会議や避難訓練の仕組みを少しだけ工夫して、「やったことが自然に、矛盾なく書類に残る仕組み」を作ることです。
まずは、今年実施した訓練や研修の日付に矛盾がないか、ファイルを並べて確認することをおすすめします。
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