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運営指導・書類整備

【実務解説】職員の兼務が指定基準違反になるケース|勤務表と実績、支援記録の正しい残し方

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はじめに

障がい福祉サービスや児童福祉サービスの事業所において、限られた人員体制の中で職員が管理者やサービス管理責任者(児童発達支援管理責任者)、直接支援職員といった複数の役割を兼務することは、指定基準上認められた範囲において適法かつ一般的な対応です。 しかし、行政による運営指導においては、「当該職員が、どの日に、どの時間帯で、どの立場の業務に従事していたか」が極めて厳密に確認されます。特に近年は、各種加算の要件と実際の勤務実態との不一致が厳しく指導されており、指定基準違反や多額の過誤請求(返還金)に発展するケースが後を絶ちません。 本記事では、職員の兼務状況の実態を正確に記録し、人員配置基準の充足や加算の適正な算定を客観的に証明するための実務ポイントについて、勤務表と支援記録の連動という視点から解説いたします。

1.指定基準における「兼務」の基本的な考え方

各サービスの指定基準において、事業所の管理者やサービス管理責任者等は、原則として「専ら当該事業所の職務に従事する(専従)」ことが求められています。 ただし、一定の条件を満たす場合に限り、例外的に兼務が認められています。例えば管理者については、令和6年度の報酬改定Q&A等で示された通り、兼務先の事業所等で従事する時間帯も「利用者の事象を適時・適切に把握し、業務の一元的な管理・指揮命令に支障がないこと」、および「事故発生時等の緊急時に、管理者自身が速やかに出勤できる対応の流れをあらかじめ定めていること」を満たすことが求められます。また、サービス管理責任者等についても、個別支援計画の作成やモニタリングといった本来業務に支障がない範囲であれば、他職種との兼務が認められるケースがあります。 兼務を行うこと自体は違法ではありませんが、事業所には「それぞれの業務が支障なく遂行されていること」を、事後的に第三者へ客観的な記録をもって証明する役割が生じます。特定の職員に業務が過度に集中し、本来果たすべき役割(ケアマネジメント・プロセス等)が形骸化していると判断された場合、人員欠如減算だけでなく、猶予なく当該月から直ちに適用される「個別支援計画未作成減算」など、大きな減算の対象となる可能性があるためご留意ください。

2.運営指導で突合される「3つの帳票」の整合性

運営指導において、監査担当者は職員の勤務実態を確認するため、以下の3つの帳票を必ず「横串(クロスチェック)」で確認します。

勤務予定・実績一覧表(シフト表)
タイムカードや出勤簿等の客観的な労働時間記録
業務日誌、サービス提供記録、ケース記録等の支援記録

これら3つの記録間に矛盾がある状態は、重大な指導対象となります。例えば、「勤務予定・実績一覧表では管理者の専従日となっているのに、ケース記録の支援者欄にはその管理者の名前が記載されている」「タイムカードの退勤時刻よりも後に、サービス提供記録の支援時間が記録されている」といった不整合です。各帳票間で、誰が・いつ・どの立場で業務に当たったかが矛盾なく連動している状態を構築することが実務の基本となります。

3.「勤務予定」と「勤務実績」の乖離に伴う事実の記録

日々の現場においては、利用者の急な欠席や状態変化、あるいは職員の体調不良等により、事前のシフト(勤務予定)と実際の勤務実績に乖離が生じることは避けられません。 運営指導において、予定と実績の差異が生じること自体が直ちに法令違反となるわけではありません。最も問題視されるのは、「変更が生じた客観的な理由が記録されていないこと」と、「監査対策として事後的に勤務表を書き換え、帳尻を合わせること」です。事後的な記録の改ざんは、指定の取消し要件である「虚偽の報告」に該当する極めて重大な違反行為です。 予定外の兼務や支援への配置換えが生じた際は、業務日誌等に「〇〇職員欠勤のため、〇時~〇時まで管理者が直接支援の業務を兼務」といった変更の事実と理由をその都度、客観的に記録する運用プロセスの徹底が求められます。

4.管理者・サービス管理責任者等の「本来業務」の証明と人員カウントの注意点

管理者やサービス管理責任者(児童発達支援管理責任者)が直接支援職員の業務に入る場合、それぞれの「本来業務」の時間が確保されていることを客観的に証明しておくことが大切です。「勤務予定・実績一覧表」においては、勤務区分を「兼務」とした上で、それぞれの従事時間を正確に記載します。 ここで実務上ご注意いただきたいのが、サビ管・児発管が現場の直接支援に入ったとしても、「その時間を、人員配置基準上必要な直接支援員(児童指導員等)の人数として算定(カウント)することは原則としてできない」というルールです(一部の特例を除く)。 その上で、日々の直接支援に入りつつも、アセスメント、個別支援計画の原案作成、担当者会議の実施、モニタリングといった法定のケアマネジメント・プロセスが適正に機能していることを、支援会議録や面談記録等の客観的な書面として別途分離して記録し、いつでも提示できるように整えておくことが、適正な運営の証明につながります。

5.加算要件に係る加配人員と兼務の厳格な区分(二重計上の禁止)

人員配置に係る各種加算を取得している事業所においては、要件と勤務実態の合致がより厳格に確認されます。 例えば、児童発達支援や放課後等デイサービスにおける「児童指導員等加配加算」は、人員基準で求められる従業員数に「加えて(プラスして)」配置することが算定要件です。したがって、人員基準上の配置となっている管理者や児童発達支援管理責任者、あるいは基準上の直接支援職員と時間を重複させて(兼務して)、同時に加配人員として算定することは制度上認められません。 兼務による同時間帯での「二重カウント(二重計上)」は、明白な過誤請求として多額の返還金が生じる原因となります。加算ごとに求められる「専従要件」や「プラス配置要件」を正確に把握し、シフト作成時及び月末の実績確定時に、要件を満たす実働時間が確保されているかを検証する仕組みが必要です。

6.複数事業所(多機能型等)における時間管理と按分のルール

多機能型事業所や、同一法人内の複数事業所(例えば就労継続支援B型と共同生活援助など)を行き来して兼務する職員がいる場合、それぞれの事業所の勤務予定・実績一覧表において、当該事業所で勤務した実時間を正確に切り分けて記録する義務があります。 移動時間を含め、曖昧な時間管理のまま複数の事業所で配置人員として計上することは人員欠如に直結します。また、常勤換算により人員基準を満たしている事業所においては、兼務する職員の労働時間を事業所間や職種間で適正に按分し、それぞれの事業所ごとに小数点第1位までの常勤換算数を正確に算出・記録しておくことが、指定基準を満たしていることのエビデンスとなります。

7.サービス提供の都度記録と利用者確認の義務(真正性の担保)

職員がどの時間に支援に入ったかを証明する最も基本的な根拠となるのが、日々の「サービス提供記録(実績記録票等)」です。 各サービスの指定基準において、事業所はサービス提供の都度、その提供日、内容、提供した時間等を記録し、サービスを提供した従業者が署名等を行うとともに、利用者(または保護者)から確認(受領印やサイン等)を受けることが法令で義務付けられています。これを週末や月末にまとめて作成・押印するような運用は、記録の真正性(正確性)を著しく損なう法令違反となります。

8.法定の「5年間保存義務」と即時提示体制の構築

法令上、勤務予定・実績一覧表や出勤簿、サービス提供記録、個別支援計画等の運営に係る諸記録は、「当該サービスを提供した日から5年間」保存することが義務付けられています。 兼務状況を整理し正確な記録を作成したとしても、担当者の退職等により過去の書類がどこにあるか分からず、運営指導等の際に即座に提示できなければ、適正な運営を証明することはできません。書類ごとに保管場所や管理責任者を定め、法定保存期間が満了するまで確実に保管する組織的な文書管理ルールを定着させることが不可欠です。

まとめ|勤務実態の可視化による指定基準違反の防止

職員の兼務状況の整理は、事業所が人員配置基準を満たしていること、及び各種加算の算定が適正であること(過誤請求ではないこと)を証明するための事業運営の根幹となる実務です。 「勤務予定・実績一覧表」「出勤簿等の客観的記録」「日々の支援記録」の3つの帳票において、誰が、いつ、どの立場で業務に当たったかを明確に分離し、それらが相互に矛盾なく連動している状態を維持すること。この日々の客観的な記録プロセスを、属人的な記憶や慣習に依存せず、組織の「仕組み」として定着・保存させることが、運営指導等において適正な事業運営を客観的に証明するための必須要件となります。

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