【初回相談無料】障害福祉サービスの運営指導対策・加算返還リスクの不安は、障害福祉専門の当事務所へご相談ください。
はじめに
令和6年度の報酬改定により、障がい福祉・児童福祉の事業所において業務継続計画(BCP)の策定と定期的な研修・訓練が完全義務化されました。これらが未実施の場合には、「業務継続計画未策定減算」が適用されるリスクが生じます。
多くの事業所様ですでに自然災害BCPの書類は作成されているかと思います。しかし、現場の経営者様や管理者様からは次のようなお悩みの声もよくお聞きします。
「立派な計画書を作ったが、いざ地震が起きた直後に『誰が何をするか』が曖昧なままで不安だ」 「全員が利用者対応に入ってしまい、建物確認や連絡に手が回らなくなりそうだ」
自然災害BCPは、非常時でも必要なサービスを継続し、早期に業務を再開するための計画です。しかし、計画書に文章として記載されているだけでは、実際の地震直後の初動にはつながりにくい場合があります。実務上とても大切なのは、発災直後の「数分から数十分」について、職員様の役割を具体的に整理しておくことです。
この記事では、地震発生直後の初動について、「安全確認」「避難判断」「連絡」「記録」の視点から事業所内で確認しておきたい役割分担のポイントと、それを運営指導対策としての「机上訓練」に落とし込むコツについて、解説いたします。
1.地震直後は、複数の対応が同時に発生する

地震が発生すると、まず強い揺れから利用者様と職員の身を守る対応が必要になります。揺れが収まった後も、室内の転倒物、ガラスの破損、出入口の確保、火気や電気設備の確認、利用者様の不安やパニックへの対応などが同時に押し寄せます。
このとき、職員全員が利用者対応に入ってしまうと、建物や設備の確認が遅れてしまいます。反対に、複数の職員が建物確認に動くと、利用者様の見守りが手薄になるリスクがあります。 そのため、地震発生直後の初動では、次のような役割をあらかじめ分けておくことをおすすめします。
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利用者様の安全確認を行う職員
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建物、設備、避難経路を確認する職員
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管理者や法人本部へ状況を報告する職員
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家族、保護者、関係機関への連絡を行う職員
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対応経過を記録する職員
小規模な事業所様では、これらをすべて別々の職員が担うことは難しいかもしれません。その場合でも、「一番最初に誰が利用者を見るか」「誰が外周を確認するか」「誰が情報を集約するか」の優先順位を決めておくだけで、初動の迷いを大幅に減らすことができます。
2.最初に確認するのは、利用者様と職員の安全
地震直後の最優先は、利用者様と職員の安全確認です。 室内で転倒していないか、車いすや歩行器の利用者様が動ける状態か、医療的ケアが必要な方に異常がないかを確認します。児童通所支援ではお子様が驚いて走り出す場面も想定されますし、生活介護や共同生活援助では、意思表示が難しい方や強い不安が出やすい方への配慮も必要です。
ここで実務上のポイントとなるのは、「安否確認をする人」と「確認結果を集約する人」を分けて考えることです。 例えば、現場職員が利用者様一人ひとりの状態を確認し、その結果を管理者または当日のリーダーに報告(集約)する形をご検討してみてはいかがでしょうか。
3.建物・設備の確認は、避難判断の材料になる

利用者様の安全確認と並行して、出入口が開くか、避難経路に物が倒れていないか、火気や電気設備に危険がないかといった建物確認も必要です。 建物確認の担当が決まっていないと、職員が利用者対応をしながら危険箇所を見に行くことになり、どちらも中途半端になる可能性があります。そのため、利用者対応を行う職員とは別に「建物・設備確認を行う担当者」を決めておくことが実効性を高める鍵となります。
4.避難するか、事業所内で待機するか(代替者の決定)
地震が起きた後、必ずしもすぐに屋外へ避難するとは限りません。屋外に出ることで落下物や道路状況の危険が高まる場合もあります。 ここで事前に決めておきたいのが、「管理者が不在の場合に、誰が一時判断を行うか(代替者)」です。厚生労働省のガイドラインでも、統括責任者が不在の場合の代替者を決めておくことが推奨されています。 管理者が送迎中や公休の場合、現場にいる職員が避難の判断をせざるを得ない場面があります。BCP上の役職名だけでなく、「その時間帯に実際に判断できる人」をシフト表と照らし合わせて確認しておくことが大切です。
5.家族・保護者への連絡は、情報を集約してから行う

地震発生後は、ご家族や保護者から事業所へ電話が集中することが予想されます。 しかし、揺れの直後から現場職員が電話対応に追われると、一番重要な利用者対応や建物確認が手薄になってしまいます。そのため、「事業所内で利用者様の安否情報を集約してから、連絡担当者が順番に連絡する」というフローをあらかじめ整理しておくことをおすすめします。
6.送迎中の地震は、車両側と事業所側の役割を分ける
児童通所支援や生活介護などでは、送迎中の発災も想定しておく必要があります。 送迎車両では、運転者は車両の安全確保を優先し、事業所内の連絡担当者が保護者への連絡を担うなど、車両側と事業所側で役割を分けておくと、現場の混乱を防ぐことができます。
7.初動の役割整理を「机上訓練」として監査対策に活かす
ここまでお伝えしてきた「初動の役割分担」ですが、このような初動の役割分担について話し合うことも、法令上認められた「BCPの机上訓練(シミュレーション)」として位置づけることができます。 指定基準において、BCPの訓練はサービス種別により年1回または2回以上の実施が義務付けられていますが、必ずしも大がかりな避難訓練である必要はありません。
例えば、毎月の職員会議の最後の15分間を使って、「もし今日のこのシフトの時に震度6の地震が起きたら、誰が情報集約のリーダーになりますか?」「保護者への連絡は誰が担当しますか?」と話し合う「机上訓練(シミュレーション)」も法令上認められています。 そして、その話し合いの中で出た「送迎中の連絡ルールが曖昧だった」といった課題を1つ見つけ、「次回までに連絡網を更新する」と議事録に残しておくことで、運営指導において「実効性のある訓練を行っている」と非常に高く評価されます。加えて、この机上訓練で見つかった課題を「災害時マニュアル」に反映させるプロセスは、BCPの要件を満たすと同時に、令和6年度から完全義務化された「安全計画」におけるマニュアルの定期的な見直し要件を満たすことにも直結します。BCPと安全計画を別々の業務と捉えるのではなく、日々の会議の中で一体的に見直す仕組みづくりが、現場の実務負担を大きく軽減します。
まとめ
地震発生直後は、予定通りにすべてを進めることが極めて難しい時間帯です。完璧な対応を目指すのではなく、できないことを「引き算」し、最低限の「誰が・何を・どの順番で確認するか」を決めておくことが、現場の負担軽減につながります。
BCPの見直しは、分厚い計画書を一度に作り替える作業ではありません。まずは次回の会議で「発災直後の15分間の動き」について、職員の皆様と少しだけ意見交換をするところから始めてみてはいかがでしょうか。事業所様の実情に合わせた、無理のない効率的な体制構築の一助となれば幸いです。
「うちの施設は運営指導に耐えられる?」「加算の要件は満たせている?」
少しでも不安やお悩みがあれば、障害福祉専門の行政書士にご相談ください。