グループホーム

共同生活援助の夜勤職員加配加算/要件と実務ポイント

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日中サービス支援型グループホームでは、夜間も入居者の生活を支えるため、夜勤職員の配置が最低基準で義務付けられています。一方で、医療的ケアや行動障害、高齢化などにより、夜間の支援ニーズは年々重くなっています。こうした実情を踏まえ、基準より多く夜勤職員を配置した場合に評価する仕組みが「夜勤職員加配加算」です。
今回は障害者総合支援法に基づく共同生活援助における夜勤職員加配加算の対象サービス・単位数・算定要件を整理し、勤務体制づくりや書類整備のポイントを説明します。

 

目次

  1. 夜勤職員加配加算とは
  2. 対象となるサービス
  3. 算定加算単位
  4. 算定要件の整理
  5. 夜勤体制の組み方イメージ
  6. 他加算との関係と留意点
  7. 算定に向けたチェックリスト

 

対象サービス名

共同生活援助(日中サービス支援型グループホーム)

共同生活援助は、「日中サービス支援型」「介護サービス包括型」「外部サービス利用型」の3類型があります。日中サービス支援型では、日中は通所系サービスを利用し、夜間や早朝・夕方をグループホームで過ごす構成が基本です。

このうち、夜勤職員加配加算の対象となるのは日中サービス支援型のみです。
介護サービス包括型、外部サービス利用型では、夜間支援員の配置を行った場合は「夜間支援等体制加算」で評価され、夜勤職員加配加算は算定できません。

 

算定加算単位

  • 夜勤職員加配加算:149単位/日(利用者1人あたり)

障害支援区分や世話人・生活支援員の配置数にかかわらず、「夜勤職員を基準より1名以上、追加で配置した日」に、当該共同生活住居で支援を受けた全利用者分について一律149単位/日を加算するイメージです。

 

 

  1. 夜勤職員加配加算とは

夜勤職員加配加算は、「指定基準で求められる夜間支援従事者数に上乗せして、夜勤を行う職員を配置した場合に評価する加算」です。

日中サービス支援型グループホームでは、最低基準として共同生活住居ごとに夜勤職員1名以上の配置が必須とされています。

しかし、実際の現場では、

  • 医療的ケアのある利用者
  • 強度行動障害やてんかん発作など夜間リスクが高い利用者
  • 高齢で転倒リスクが高い利用者

などが同居していると、「夜勤1名では不安」というケースが少なくありません。

そこで、基準より多く夜勤職員を配置した事業所を評価する仕組みとして夜勤職員加配加算が設けられています。

 

 

  1. 算定要件の整理

主なポイントは次の4つです。

(1) 日中サービス支援型の指定共同生活援助事業所であること

  • 事業所全体として「日中サービス支援型」の指定を受けていることが前提です。
  • 1つの法人で複数の類型(包括型・日中サービス支援型など)を運営している場合、類型ごとに加算の有無が異なるため、住居ごとの整理が必要です。

 

(2) 指定基準で求められる夜間支援従事者数を満たしていること

  • 日中サービス支援型では、共同生活住居ごとに「夜勤職員1名以上」の配置が基準で求められています。
  • まずはこの最低基準を満たしていることが大前提です。

 

(3) 共同生活住居ごとに「夜勤を行う職員」を1名以上追加配置していること

  • 基準で求められる夜勤職員にプラスして
    • 同じ住居内で夜勤に従事する職員をもう1名以上配置していること

ここでいう「夜勤」とは、通常、夜間(例:22時〜翌5時)を通じて起きて利用者の支援に従事する勤務を指し、単に宿直室で待機しているだけの宿直勤務とは区別して考える必要があります。

 

 

(4) 都道府県等への届出を行っていること

  • 夜勤職員を基準以上に配置していることについて、所轄庁に届出を行っている事業所であることが求められます。
  • 具体的な届出様式や提出先は、各自治体の指定権者の手引きや通知で確認をお願いします。

 

 

  1. 夜勤体制の組み方イメージ

具体的なイメージを持っていただくため、シンプルな例で考えてみます。

例:1住居 定員6名 の日中サービス支援型

  • 基準上の夜勤職員:1名
  • 夜勤職員加配加算を取りたい場合:夜勤2名体制にする

このとき、

  • 22:00〜翌7:00の時間帯に支援員A・支援員Bの2名が夜勤
  • 2名とも実際に巡回・トイレ介助・服薬確認等の支援に従事

という体制であれば、

「基準1名+追加1名」
と整理でき、その住居に入居する6名分について、1日あたり149単位/人を算定できます。

 

2住居以上ある場合

1棟に2住居(A棟101号室・201号室)のような構造の場合でも、

  • 住居ごとに基準1名+追加1名が確保できているか
    が判断ポイントになります。

例:

  • A住居:夜勤2名(うち1名はB住居と兼務)
  • B住居:夜勤1名

このようなケースでは、「A住居は加算対象だがB住居は対象外」と判断され得ます。実際の取扱いは、勤務実態や自治体の解釈によって異なる部分もあるため、シフト表と照らしながら指定権者にご確認いただくと安心です。

 

 

  1. 他加算との関係と留意点

(1) 夜間支援等体制加算との関係

  • 介護サービス包括型・外部サービス利用型では、夜勤・宿直の配置に応じて「夜間支援等体制加算」が算定されます。
  • 日中サービス支援型で夜勤職員加配加算を算定する場合、同じ住居で夜間支援等体制加算を併算することは想定されていません(類型が異なるため)。

 

(2) 重度障害者支援加算との併算

重度障害者支援加算(Ⅰ:360単位/日、Ⅱ:180単位/日)とは、対象や趣旨が異なります。

  • 重度障害者支援加算
    • 重度の肢体不自由や重度重複障害がある利用者を受け入れ、日中も含めた支援体制を強化した場合の評価
  • 夜勤職員加配加算
    • 夜間の人員配置を基準より増やしたことへの評価

条件を満たせば、同一の利用者について両方の加算を算定することも可能です。

 

 

(3) シフト表・勤務実績との整合

  • シフト表上だけ「2名夜勤」となっていても、実際には片方が22時で退勤しているようなケースは、後の運営指導で問題となる可能性があります。
  • 夜勤時間帯(自治体の手引きにおける定義時間)を通じて、2名が夜勤として配置されていたことが勤務実績で説明できるかが大切です。

 

 

  1. 算定に向けたチェックリスト

最後に、夜勤職員加配加算を検討する際の簡易チェックリストです。

  1. 事業所の類型は「日中サービス支援型」か?
  2. 共同生活住居ごとに夜勤職員1名以上の最低基準を満たしているか?
  3. 基準に加えて、夜勤を行う職員を1名以上追加で配置しているか?
  4. 追加配置の内容について、指定権者へ届出を行っているか?
  5. 勤務表・タイムカード等で、夜勤2名体制が一貫して確認できるか?
  6. 夜勤の実態が「宿直」ではなく、利用者への見守り・介助等を行う夜勤勤務になっているか?
  7. 他の加算(夜間支援等体制加算など)との関係を整理し、誤算定がないか?

 

 

おわりに

夜勤職員加配加算は、夜間の安全確保に踏み込んで投資しているグループホームをきちんと評価する加算です。一方で、人員配置や勤務実態の裏付けが曖昧なまま算定すると、運営指導で指摘を受けやすい項目でもあります。

「夜勤職員を増やしたいが、加算の考え方がよく分からない」「2住居あるが、どこまでを『住居ごと』と見るのか不安」といった場合は、まず所轄自治体の担当窓口や、厚生労働省・自治体が公表している通知・Q&Aを確認しておくと安心です。

現場の負担軽減と利用者の安心・安全の両立を目指しつつ、自事業所の体制に合った夜勤職員加配加算の活用をご検討いただければと思います。

 

(参考文献)

障害者総合支援法 事業者ハンドブック〈報酬編〉(中央法規)

障害福祉サービス 報酬の解釈(社会保険研究所)

 

(参考資料)

障害者の居住支援について(令和3年6月28日)(厚生労働省)

共同生活援助 (介護サービス包括型・外部サービス利用 型・日中サービス支援型) に係る報酬・基準について ≪論点等②≫(令和2年11月18日)(厚生労働省)

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