(初回無料)障がい(障害)福祉施設の指定申請・運営は、 当事務所のサポートをご活用ください。
はじめに
2024年度の報酬改定からまだ日が浅い中、次なる「2026年(令和8年)6月の臨時改定」の情報が入り始め、不安や戸惑いを感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
「せっかく工賃が上がってきたのに、報酬の基準が上がってしまうのか?」 「2026年以降に新しく事業所を出すと、最初から報酬が低いというのは本当か?」 「結局、うちの事業所は具体的に何を準備すれば減収を防げるのか?」
こうした疑問や悩みは、制度が複雑化する中で非常に切実なものです。特に今回の臨時改定は、2024年のルール変更による「工賃の上昇」を前提とした調整が行われるため、「工賃額は変わっていないのに、報酬区分だけが下がってしまう」という、これまでにないリスクを抱えています。
今回は、2026年臨時改定の全体像を整理しました。
- 工賃基準額「一律3,000円アップ」が経営に与える実質的な影響
- 新設される「11区分」の仕組みと、激変緩和の考え方
- 2026年6月以降の「新規開設」における報酬減額の注意点
- 今すぐ取り組むべき「報酬減額を防ぐための3つの具体策」
このブログでは、公表された資料に基づき、改定の具体的な数値や適用条件を整理しました。2026年の改定に向けた事業計画の見直しや、リスク管理にお役立てください。
2026年6月施行「障害福祉サービス報酬臨時改定」の全体像
2026年(令和8年)6月、障害福祉サービスにおける報酬体系の「臨時改定」が実施されます。通常、報酬改定は3年ごとに行われますが、今回は2024年度の改定からわずか2年という異例のタイミングでの見直しとなります。この改定がB型事業所の運営にどのような影響を及ぼすのか、その全体像を整理します。
なぜ2026年に“臨時”で改定が行われるのか?

今回の改定の背景には、2024年度に行われた「基本報酬の算定ルールの変更」があります。前回の改定では、平均工賃に応じた報酬区分が見直され、多くの事業所で算出される平均工賃が上昇しました。
厚生労働省の調査によると、新ルール適用後の全国平均工賃は、旧ルール時と比較して約6,000円上昇しています。この上昇は、事業所の努力だけでなく「計算式の変更」による側面が強いため、実態に合わせて報酬の基準ラインを再調整する必要が生じたのです。また、B型事業所の数が急増している現状を受け、サービスの質を維持しながら公費負担を適正化するという、制度の持続可能性を確保する狙いもあります。
今回の改定の2大柱
臨時改定の柱は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、「基本報酬を決定する工賃基準額の引き上げ」です。平均工賃が高いほど報酬単価が高くなる仕組みは変わりませんが、その「高い」と判断される基準(ハードル)が上がります。具体的には、各区分の基準額が一律で3,000円程度引き上げられる見込みです。これにより、これまでと同じ工賃額を維持していても、改定後は「報酬区分が1つ下がる(=減収になる)」事業所が出てくる可能性があります。
2つ目は、「新規参入事業所への基本報酬の見直し」です。2026年6月以降に新しく指定を受ける事業所については、既存の事業所よりも基本報酬が1〜3%程度低く設定される方針が示されています。ただし、重度の障害者を受け入れる体制がある場合や、サービスの提供が不足している地域での開設など、特定の条件を満たす場合はこの減額の対象外となります。
今回の臨時改定は、単なる減額ではなく、工賃向上への取り組みと、過剰な参入を抑制し質の高い支援を促すための「調整」であると捉えるべきでしょう。
【既存・新規共通】基本報酬の算定基準(工賃区分)が引き上げへ

就労継続支援B型事業所の基本報酬は、利用者に支払う「平均工賃月額」に応じて決まります。工賃が高いほど報酬単価も高くなる仕組みですが、2026年6月からは、この報酬を決定する際の「基準となる工賃額(ボーダーライン)」が引き上げられます。
工賃基準額が「一律3,000円」上乗せされる理由
今回の引き上げの背景には、2024年度の報酬改定で行われた「平均工賃の算出ルールの変更」があります。以前よりも工賃が算出しやすくなったことで、全国の事業所の平均工賃が実態として約6,000円上昇しました。
この上昇分を反映させるため、2026年の臨時改定では、報酬区分を分ける境界線が一律で「3,000円」引き上げられる方針です。例えば、これまで「平均工賃1万円以上」で算定できていた区分が、「1万3,000円以上」なければ算定できなくなるといった変化が起こります。つまり、工賃額が変わらなければ、実質的に報酬区分が1つ下がってしまう(=減収になる)可能性があるということです。
現行8区分から「11区分」へ。新設される中間区分の役割
基準額が引き上げられる一方で、報酬の急激な下落を防ぐための措置も取られます。具体的には、現在の「8区分」の間に、新たに「区分A」「区分B」「区分C」といった中間的な区分が3つ設けられ、計11区分となります。例えば、基準引き上げによって「区分2」から「区分3」へ落ちてしまう場合でも、その間に新設される「区分B」に該当すれば、減収幅を3%程度に抑えられる設計となっています。
あなたの事業所は対象?「前回区分が上がらなかった」場合は対象外

この基準引き上げ(+3,000円)は、すべての事業所に一律適用されるわけではありません。厚生労働省は、以下の配慮措置を講じる方針を示しています。
- 前回(2024年)改定で区分が上がらなかった事業所は対象外
2024年度の報酬改定(計算式の変更)によって、「報酬区分が上がった(ランクアップした)」事業所のみが、今回の基準引き上げの対象となります。逆に言えば、前回の改定前後で区分が変わらなかった事業所については、今回の見直しは適用されず、現在の基準額が維持される見込みです。
- 下位区分(区分7・8)の境界線は据え置き
区分7(1万円以上)と区分8(1万円未満)を分けるラインについては、引き上げを行わず据え置かれる方針です。
【新規開設】2026年6月以降の指定事業所は「基本報酬減額」の対象に
今回の臨時改定では、2026年6月1日以降に新しく指定(開業)を受ける就労継続支援B型事業所に対し、基本報酬を一定割合引き下げる措置が導入されます。これは、近年のB型事業所の急増に伴う給付費の増大を抑制し、質の高いサービス提供を促すための「参入障壁の調整」としての側面を持っています。
新規事業所限定で基本報酬が1〜3%程度引き下げられる仕組み
具体的には、新規に開設された事業所の基本報酬単価が、既存の事業所に比べて「1%強から3%弱程度」低く設定される方針です。 これは、近年のB型事業所の収支差率(利益率)が高い傾向にあることを踏まえた措置です。
この減額措置は、一定期間(例えば指定から3年間など)継続される見込みであり、新規開設時の収支シミュレーションにダイレクトに影響します。わずか数パーセントの差であっても、固定費の比率が高い福祉経営においては、損益分岐点に到達するまでの期間が長くなるリスクを含んでいます。
減額対象外となるケース(重度障害者支援・不足地域での開設など)
ただし、すべての新規事業所が一律に減額されるわけではありません。国は「必要な地域に必要なサービスを届ける」ことを重視しており、以下のようなケースでは減額の対象外、あるいは緩和される見通しです。
- 重度障害者の受け入れ体制: 強度行動障害のある方や、医療的ケアが必要な方、あるいは視覚・聴覚・言語機能障害や高次脳機能障害のある方を受け入れ、それらに関連する報酬上の評価(加算など)を受けている場合。
- サービスの不足地域: 自治体が作成する「障害福祉計画」において、B型事業所の整備が不足していると認められる地域での開設。
- 特定の専門性: 医療的ケアが必要な方への対応や、就労移行への高い実績が見込まれる独自のプログラムを持っている場合。
これから開設を検討している経営者が「今」すべき判断
この改定を前提にすると、新規参入を検討している方は「時期」と「コンセプト」の再検討が必要です。
2026年5月末までに指定を受けることができれば、現行の報酬体系が適用されます。一方で、それ以降の開設になる場合は、単に「場所を確保して人を集める」だけでなく、前述した「減額対象外となる要件」をあらかじめ事業計画に組み込めるかどうかが、経営の安定性を左右します。
制度の運用ルールが確定するのを待つだけでなく、自治体の公募状況や地域のニーズを精査し、減額リスクを織り込んだ保守的な資金計画を立てることが、長期的な信頼を得る経営の第一歩となります。
基本報酬の減額を防ぐ!B型経営者が今すぐ取り組むべき3つの対策
2026年6月の改定により、報酬算定のハードル(工賃基準額)が約3,000円引き上げられる見込みです。何もしなければ、現在の工賃実績のままでは「報酬区分が下がる」というリスクに直面します。この減額を回避し、経営の安定を図るために必要な具体的な対策を解説します。
対策1:平均工賃月額の再シミュレーションと工賃向上計画の改定
まず行うべきは、現在の平均工賃に「プラス3,000円」をした数値が、新設される11区分のどこに該当するかを確認することです。
2024年度のルール変更により、積立金の取り崩しや、開所日数の調整など、工賃算出の計算式には一定の柔軟性が持たせられています。現在の「工賃向上計画」が古い基準のままであれば、2026年を見据えて「どの作業単価をいくら上げる必要があるか」「開所日数をどう設定するか」を再設計し、計画書を更新しておく必要があります。
対策2:人員配置基準の見直し(7.5:1から6:1への移行検討)
基本報酬の区分が工賃基準の引き上げによって下がってしまう場合、それを補填する手段として「人員配置基準」の見直しが挙げられます。
例えば、現在「利用者7.5人に対してスタッフ1人(7.5:1)」の体制で運営している場合、スタッフを増員して「6:1」の体制へ移行することで、基本報酬の単価自体を上げることが可能です。工賃を急激に上げることが物理的に難しい事業所にとっては、スタッフの配置を手厚くすることで報酬を維持・向上させるという選択肢が、より現実的な経営判断となるケースがあります。
対策3:収益を補完する「加算」の再点検
基本報酬(本体)の減額リスクに対し、特定の支援実績を評価する「加算」を漏れなく算定できているかを確認することも重要です。
特に、2024年に一本化された「福祉・介護職員等処遇改善加算」の区分アップや、利用者の就職実績に応じた「就労移行支援体制加算」(※今回の改定で算定人数の上限設定など適正化が行われるため要確認)、さらには「ピアサポート実施加算」など、自所の支援体制で取得可能な加算がないかを再点検してください。基本報酬が制度改定という外部要因で変動する以上、個別の支援努力が反映される加算項目を積み上げることが、経営の多重構造化につながります。
これらの対策は、改定直前の2026年5月になってから動いたのでは間に合いません。現在の収支構造を正確に把握し、新基準(+3,000円)に基づいた中長期的なシミュレーションを今から開始することが、減額リスクを最小限に抑えるための唯一の方法です。
運営指導対策にも直結!「健全経営」のための実務ポイント
運営指導において行政が最も重点的に確認するのは、「報酬に見合った支援が実際に行われ、それが正しく記録されているか」という点です。2026年以降、11区分に細分化される報酬体系下では、わずかな記録の不備が「報酬区分の誤算定」とみなされ、過誤調整(返還)のリスクに直面する可能性があります。
書類の整合性が鍵:個別支援計画と工賃支払実績の連動
もっとも基本的なポイントは、「個別支援計画書」と「日々の支援記録」、そして「工賃の支払い」に一貫性があることです。
例えば、基本報酬を維持するために「工賃向上」を目標に掲げている場合、個別支援計画の中に「工賃向上のための具体的な作業支援内容」が具体的に記載されていなければなりません。単に工賃を支払っているだけでは不十分で、その工賃を支払うに至った「支援のプロセス」が記録として残っている必要があります。運営指導では、この「計画→実施→記録」のサイクルが、報酬区分の根拠となる平均工賃額と整合しているかが厳格にチェックされます。
虐待防止・身体拘束廃止の未実施減算への対応
現在、虐待防止委員会の設置や指針の整備、定期的な研修の実施は完全義務化されています。これらが未実施の場合、基本報酬が大幅にカットされる「未実施減算」が適用されます。
運営指導では、単にマニュアルが棚に置かれているだけではなく、「いつ、誰が、どのような内容の研修を受けたか」「委員会の議事録が実態を反映しているか」といった運用実績が問われます。これらは一朝一夕で準備できるものではなく、日々の業務ルーチンとして組み込まれていることが、結果として運営指導対策の最短ルートとなります。
まとめ:2026年改定は「質の高い支援」への選別が加速する
2026年6月に施行される障害福祉サービス報酬の臨時改定は、これまでの報酬体系の「微調整」にとどまらず、就労継続支援B型事業所のあり方そのものを問う大きな転換点となります。今回の改定は、報酬区分の細分化や新規参入要件の厳格化など、事業所の『実績』や『地域ニーズへの適合』をより精緻に評価する方向へシフトしています。
報酬区分の細分化が意味する「実績評価」の厳格化
現行の8区分から11区分へと報酬体系が細分化され、かつ工賃の基準額が一律で引き上げられることは、事業所間の格差をより鮮明にします。
これまでは、ある程度の工賃実績があれば一定の報酬を維持できていましたが、新体系では「わずかな工賃の差」がダイレクトに報酬単価の差となって現れます。これは、効率的な生産活動の確保や、利用者の特性に応じた適切な職域開拓ができている事業所が、より適正に評価される仕組みへの移行と言えます。一方で、旧来の運営体制を維持するだけでは、相対的に報酬が下落していく仕組みが組み込まれています。
新規参入抑制と「地域ニーズ」への適合
新規開設事業所に対する報酬の引き下げ措置は、単なるコスト削減ではなく、供給過剰な地域での安易な参入を抑制するフィルターの役割を果たします。
今後は、「ただ場所を作る」のではなく、重度障害者の受け入れや、不足している専門的な支援など、地域の課題解決に寄与する事業計画を持っているかどうかが、経営のスタートラインを左右することになります。これは、事業所が「地域の中でどのような役割を果たすべきか」を、公的なデータ(障害福祉計画など)に基づいて客観的に分析し、戦略を立てる必要があることを示唆しています。
制度の持続可能性と経営の透明性
今回の臨時改定の背景には、膨らみ続ける障害福祉予算をいかに適正に配分するかという、制度全体の持続可能性の問題があります。そのため、運営指導におけるチェック体制も、今後さらにデータに基づいた客観的なものへとシフトしていくことが予想されます。
2026年の改定を乗り越えるために必要なのは、一時的な収益の確保ではなく、ルールの変更を正確に把握し、それに基づいた「根拠のある運営」を積み重ねることです。工賃向上計画の精度を高め、人員配置を最適化し、地域連携を形式的なものではなく実態のあるものにしていく。正確な情報に基づき、工賃向上計画の精度を高め、人員配置を最適化していくこと。こうした法令遵守に基づいた具体的な経営判断が、改定による減収リスクを回避する鍵となります。