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令和8年6月からの基本報酬引き下げと特例措置:「重度障害者支援加算(Ⅰ)(Ⅱ)」による減額回避の実務

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はじめに

障害者グループホーム運営において、現在最も注視すべきは「令和8年(2026年)6月1日以降の新規指定に対する基本報酬の減額措置」です。しかし、すべての事業所が一律に減額されるわけではなく、「重度障害者への対応力」を持つ事業所は減額対象外(配慮措置)となる仕組みが設けられました。 本記事では、この直近の制度変更による収支への影響と、減額回避の鍵となる「重度障害者支援加算()(」の実務上の要点について解説します。

1.重度障害者支援加算の算定がもたらす実務上のメリットと重要性

1-1.令和8年6月以降の基本報酬減額の回避(配慮措置)

グループホームの急増や障害福祉サービス全体の費用増大を背景に、令和8年6月1日以降に新規指定されるグループホームについては、原則として基本報酬が引き下げられる(応急的な報酬単価の特例)ことが決定しています。 しかし、重度障害者支援加算(Ⅰ)(Ⅱ)等を算定する利用者に係る基本報酬については、配慮措置として減額の対象外(従前の報酬単価を適用)となります。つまり、重度対応体制を整えることは、今後の新規参入における収支悪化を防ぐ有効な対策となります。

1-2.他加算との相乗効果と医療的ケア対応の別評価

重度障害者支援加算の算定体制が整っていることは、地域移行に関連する加算の「算定基盤」があることを意味します。 なお、医療的ケアを必要とする方への支援については、重度障害者支援加算とは別に「医療的ケア対応支援加算(看護職員等を常勤換算で1以上配置することが要件)」として評価される仕組みとなっています。実務上極めて重要なポイントとして、令和8年6月からの減額回避(配慮措置)の対象には、この「医療的ケア対応支援加算」に加え、介護職員等が喀痰吸引等の研修を修了してケアにあたる「医療連携体制加算(」を算定するケースも含まれます。看護職員の採用が難しい事業所であっても、既存スタッフのスキルアップにより減額リスクを回避するルートが残されている点は、経営者様にとって大きなメリットです。

2.【令和6年度版】重度障害者支援加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の定義

令和6年度の報酬改定では、重度障害者支援加算の要件が「常勤換算での追加配置」から「研修修了者の割合と専門的支援」へと大きくシフトし、対象区分も再編されました。加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いと、共通する算定要件は以下の通りです。

区分の違いと加算単位数

項目 重度障害者支援加算(Ⅰ) 重度障害者支援加算(Ⅱ)
主な対象区分 区分6 区分4以上
加算単位数(毎日算定) 360単位/日 180単位/日
初期加算(入居から180日間の上乗せ) 500単位/日 400単位/日

 

加算算定要件

加算(Ⅰ)(Ⅱ)ともに、以下の状態像と人員・支援要件を満たす必要があります。

  • 対象者の状態像:認定調査の「行動関連項目」の合計点数が10点以上であること。
  • 人員配置要件:生活支援員のうち20%以上が「強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)」等の修了者であること。
  • 支援要件:「強度行動障害支援者養成研修(実践研修)」や「行動援護従業者養成研修」などの修了者が作成した支援計画シート等に基づき、専門的な個別支援を行うこと。

(※さらなる上乗せ評価:行動関連項目が18点以上の利用者に対し、中核人材養成研修修了者が計画を作成し支援を行った場合は、上記の基本加算に「+150単位/日」、初期加算に「+200単位/日」が上乗せされます。)

3.重度対応に伴う実務上のリスクと適正な算定に向けた対応策

制度上の適正な評価を受けるため、経営者様には以下の実務的なポイントを押さえることを推奨します。

3-1. 【重要】スプリンクラー設置義務に伴う初期投資リスクの把握

重度のご利用者様を受け入れる上で最大の注意点となるのが、消防設備にかかる経費増です。消防法令では、避難が困難な障がい者等が一定割合(概ね半数以上)を占める場合、建物の面積に関わらず原則としてスプリンクラーの設置が義務付けられます。 重度障害者支援加算を算定する体制を組むということは、この「自力避難困難」の基準に該当する可能性が極めて高くなることを意味します。スプリンクラーの設置には数百万円単位の費用がかかるため、初期投資のシミュレーションに必ず組み込んでおく必要があります。また、この『自力避難困難』の判定方法は自治体によって異なり、障がい支援区分の数字だけで機械的に判断する消防署もあれば、個々の入居者の移動能力や夜勤職員の配置状況を詳細に確認した上で判断する消防署もあります。物件選定の段階で必ず管轄の消防署と事前協議を行うとともに、自治体独自の『スプリンクラー等消防設備設置に対する補助金制度』の有無や最新の募集要綱を確認することが、リスク回避の重要なポイントとなります。

3-2. 延べ床面積200平米超の物件における「寄宿舎への用途変更」リスク

重度対応を見据えてゆとりのある戸建住宅等を活用する場合、建築基準法上の用途は原則として『寄宿舎』という扱いになります。特に延べ床面積が200平米を超える物件では、住宅から寄宿舎への『用途変更』の手続きが必要となり、耐火構造への改修など多額のコストが発生する可能性があります。一方で、自治体によっては既存建物の活用を促すため、一定の防火安全要件を満たせば『寄宿舎への用途変更を不要とする(緩和する)独自の特例措置』を設けている場合があります。例えば大阪府の場合、既存戸建てであれば「定員7人以下」、既存共同住宅(マンション等)であれば「共同生活住居を全て同一階(同一フロア)に設置する」などの条件を満たせば、特例の対象となり得ます。こうした特例を適用できれば初期投資を大幅に抑えることが可能なため、物件契約前には必ず図面を持参し、建築指導課へ特例適用の可否を事前相談することが極めて重要です。

3-3. 重度・車いす対応物件に潜む「廊下幅1.5メートル」の壁(指定基準)

重度対応を見据え、車いす利用者の受け入れを想定する際に最も注意すべきなのが「福祉の指定基準(設備基準)」です。例えば大阪府など多くの自治体では、車いす利用者がいる場合、「片廊下で1.5メートル以上」の廊下幅を確保するよう指導されます。一般的な戸建て住宅の廊下幅は90cm前後であり、これを1.5mに拡幅するのは構造上極めて困難で多額の費用を伴います。安易に「広い既存戸建て」を契約する前に、車いす対応を前提とするなら、図面段階で必ず障がい福祉課(指定担当)と設備基準の事前協議を行う必要があります。

3-4. ハザードマップ等の立地制限と「総量規制」による指定不可リスク

重度のご利用者様を受け入れる場合、避難の難易度が高まるため、自治体の独自基準(ローカルルール)がさらに厳格化される傾向にあります。特に近年は、土砂災害警戒区域や浸水想定区域内での新規開設を原則として認めない自治体が増加しています。また、物件がすべての基準を満たしていても、自治体の障がい福祉計画に基づく定員枠の上限(総量規制)により、新規の指定申請自体が受理されないケースも存在します。物件を契約する前に、具体的な所在地や図面を持参し、管轄の障がい福祉課等へ事前相談を行うことが事業の停滞を防ぐために不可欠です。

3-5. 自所の支援実態の再定義と算定の「伸び代」把握

直近の利用者様の区分構成と、現場職員様の資格・研修状況を照らし合わせ、算定の「伸び代」を把握することが有効です。自所の設備や職員のスキルでどの程度の支援まで対応可能かを明確にし、自治体や相談支援事業所に正しく伝えることで、安定した稼働率と適正な報酬管理を両立できます。

3-6. 状態変化に合わせた適正な「区分変更申請」に向けたサポートと連携

区分と支援実態の整合性」も重要です。支援の手間が増大しているにもかかわらず、区分認定が実態よりも低く出ている場合、適正な報酬評価が得られません。状態変化に合わせて、日々の客観的な支援記録を相談支援専門員と共有し、ご本人・ご家族による適正な「区分変更申請」を事業所としてサポートしていくことが重要です。

3-7. ICT活用によるエビデンスの自動蓄積

運営指導では「加算に見合う支援が客観的に行われていたか」が厳格に問われます。加算の要件となる支援内容を記録ソフトの選択項目に組み込むなど、ICTツールの活用によるエビデンスの定型化・自動蓄積体制を整えることで、事務的なミスや算定漏れを未然に防げます。

3-8. 職員の研修受講体制の計画的構築

加算算定の要件である「強度行動障害支援者養成研修(基礎研修・実践研修)」の受講を計画的に進めることが不可欠です。研修受講履歴はデータ化し、即座に提示できるよう整理しておきます。

3-9.令和7年度義務化「地域連携推進会議」を見据えた地域関係の構築

令和6年度の報酬改定により、グループホームにおける『地域連携推進会議』の開催が新たに定められ、令和7年度(2025年度)から完全義務化されます。 これは利用者やその家族、地域住民の代表者や市町村の担当者などを構成員として集め、事業運営の状況を報告し外部の目を入れる仕組みです。さらに、会議での報告内容や構成員からの要望等の記録は、「5年間保存」するとともにインターネット等で「公表」することが義務付けられています。 重度のご利用者様を受け入れるにあたっては、開設前から近隣住民へ丁寧な説明を行い、日頃から地域行事に参加するなどの関係構築を進めておくことが、事業の円滑な継続とコンプライアンス遵守の観点から不可欠となります。

まとめ

令和8年6月以降の基本報酬減額を見据えると、重度障害者への対応力強化は今後の安定した事業運営に不可欠なテーマです。スプリンクラー等の初期投資リスクを正確に把握し、適正な区分変更や計画的な研修受講を進めましょう。 また、実際の指定要件や運用(ローカルルール)は管轄自治体によって異なります。物件契約前に必ず最新の「指定申請の手引き」を確認し、行政の各窓口と事前協議を行うことが、確実な開設への第一歩となります。

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