LINEで相談

日本版DBS・児童福祉の安全管理

日本版DBSは保育士だけではない|事務員・送迎運転手等も確認対象になる理由と特定手順

【障がい福祉運営チェック】「この運営で大丈夫だろうか」そんな時は、一緒に確認しませんか。▶ 詳しくはこちらからご相談ください。

はじめに

児童発達支援や放課後等デイサービスにおいて職員を募集する際、求人票には「保育士」「児童指導員」「送迎運転手」「事務員」といった職種名を記載します。 こども性暴力防止法(日本版DBS)の対応にあたり、まず保育士や児童指導員等の直接支援を行うスタッフを確認対象として想定される法人様が多いかと存じます。 しかし、犯罪事実確認の対象となる従事者は、保有資格や雇用契約上の職種名だけで機械的に決まるものではありません。実態として「子どもとどのように接しているか」が法的な判断基準となります。 本記事では、こども家庭庁の最新ガイドラインに基づき、事務員や送迎運転手、さらには「オンラインツールでの連絡担当者」等が確認対象となり得る理由と、事業所内で対象者を客観的かつ網羅的に特定するための実務手順を整理します。

1.日本版DBSにおける「確認対象者」の法的基準(3要件の解釈)

日本版DBSにおいて、教員や保育士など「子どもと常に接する職種」は法律上、一律に対象となります。一方で、事務職員送迎バスの運転手などは、業務内容によって子どもに継続的に接する可能性があるため、「実態に応じて現場で判断する職種(職種の一部が対象になり得るもの)」と位置づけられています。 この現場判断の基準となるのが、以下の「支配性継続性閉鎖性」の3要件です。

  • 支配性: 業務上、子どもに対して指導やコミュニケーション等を通じて優越的立場に立つ機会が想定されること。日々顔を合わせ会話をするだけでも、成人と子どもという関係上、自然と支配性は生じ得ると解釈されます。
  • 継続性: 日常的、定期的、または反復継続して子どもと接する機会が想定されること。
  • 閉鎖性: 他の職員や保護者等が同席しないなど、第三者の目に触れない状況で子どもと接する機会が生じ得ること。(※対象業務従事者1人に対して、子どもが複数の場合も閉鎖性ありとみなされます)。近年見落とされがちですが、物理的な密室だけでなく、LINEZOOM等のオンラインツールを通じた「双方向のやり取り」も、第三者の目が入らなければ「デジタルの密室」として閉鎖性を満たすと解釈される点に十分な留意が必要です。

これらの要件は、雇用形態(正社員、パート、アルバイト、派遣等)や報酬の有無にかかわらず適用されます。

2.職種名ではなく「接触場面」で判断する具体例

自事業所のスタッフが上記の3要件を満たすかどうかは、契約書に記載されたメイン業務だけでなく、日常的な補助業務を含めた「実際の接触場面」から客観的に判断する必要があります。

  • オンライン・SNSでの接触場面(デジタルの密室): ZOOMやLINE等を用いた連絡・相談業務のみを行っているスタッフであっても、子どもと双方向のやり取りが生じる場合は確認対象になり得ます。
    • 対象となる例: 担当者が個人のスマートフォンや業務用アカウントを使い、子どもと1対1でLINEやメールのやり取りを行う、またはZOOM等で個別のオンライン相談を実施する場合。
    • 対象外となる例: YouTube等による「録画配信のみ」で、子どもとの直接のやり取りが一切生じない場合。また、LINE等を使用する際でも、「必ず保護者や複数の職員が含まれるグループチャットのみ」で運用し、業務上1対1のやり取りができない(常に第三者の目が入る)仕組みが徹底されている場合。
  • 事務員の接触場面
    • 対象外となる例: 業務が電話対応や書類整理等に限定され、子どもの活動区域と完全に分けられた事務室で勤務するなど、接触がほとんど想定されない場合。
    • 対象となる例: 保護者と支援者が面談する際に別室で子どもの見守りをする、あるいは他の職員が手薄な時間帯に玄関で子どもを迎えるなど、例外的な場面であっても第三者の目がない状況で子どもと接する業務が予定されている場合。
  • 送迎運転手の接触場面
    • 対象外となる例: 日々送迎を行っているが、必ず他の職員(添乗員等)が同乗する運用が徹底されており、運転手と子どもだけで第三者の目がない状況になることが想定されない場合。
    • 対象となる例: 別の便への対応や急な欠員により、添乗員が乗らず、最後に降りる児童等と運転手が車内で1対1になる場面が生じ得る場合。密室となる車内は閉鎖性を満たします。
  • 管理者・法人代表者の接触場面
    • 「経営者だから」「管理業務専従だから」という肩書きのみで対象外と結論づけることはできません。人員不足時に現場の支援に入ったり定期的に送迎を担当したりする場合は、3要件を満たす業務実態として確認対象に含まれます。

3.スポットワーク・ボランティア・実習生の取り扱い

短期のアルバイトやボランティアスタッフについても、業務内容が3要件を満たせば例外なく対象となります。

  • 対象となる例: 居場所づくりの事業などで、定期的に学習支援や交流を行うボランティア。月に数回の参加であっても反復継続が見込まれれば継続性が認められます。
  • 対象外となる例: 年に1回のイベントに参加する保護者ボランティアや、1日のみのゲスト講師など、継続性がない場合。
  • 実習生について: 大学等が作成する実習計画において「原則として子どもと1対1にさせない」ことが位置づけられており、事業所において指導教員等の監督下で接することが担保されている場合は、対象外(犯罪事実確認は求められない)と法的に整理されています。

4.対象者を特定し、社内規程に落とし込むための「業務整理」4ステップ

求人票の作成やシステムへのまとめ登録を適法かつスムーズに進めるため、事前に事業所内で以下の手順による業務整理を行うことが実務上有効です。

ステップ①:職員名簿と募集予定職種の洗い出し

現在在籍している全スタッフ(役員、派遣、業務委託等を含む)と、今後募集する職種をリストアップします。法人全体で一括りにせず、送迎体制や施設構造が異なる「事業所ごと」に作成することで、正確な実態把握が可能になります。

ステップ②:時間と場所に沿った「1日の接触場面」の検証

職種名にとらわれず、開所前から閉所後までの1日の流れと、各場所(玄関、廊下、車内、駐車場等)において、「誰が・どこで・どのように」子どもと接し、第三者が同席しない場面が生じ得るかを検証します。この際、施設内という「物理的な空間」だけでなく、LINEやメール等を通じた「オンライン上のやり取り」において1対1の密室が生じていないかも重要な検証対象となります。

ステップ③:業務別の整理表(リスト)作成

役職・職種」「主な業務」「接触する場所・頻度」「第三者の同席の有無」「なぜ対象(または対象外)としたかの根拠」をまとめた客観的な一覧表を作成します。これにより、後日行政からの照会があった際などに法的根拠を明確に示すことができます。

ステップ④:就業規則等への「対象業務従事者の範囲」の明記

こども家庭庁のガイドラインにおいて、事業者は法の対象となる従事者の職種を、あらかじめ就業規則等で定めておくことが求められています。 具体的には、ステップ③で作成した整理表に基づき、就業規則に新たな条文を追加します。国が示している参考例では、「当法人の職員のうち、以下の者は法の対象とする。①管理者 ②保育士 … ④事務員 ⑤送迎バス運転手(ただし、④⑤について、業務を通してこどもと接する機会のない者を除く)」といったように、全対象の職種と、条件付きで対象となる職種を分けて記載する形が推奨されています。 この就業規則の改定は、万が一の際の内定取消しや懲戒処分を適法に行うための重要な法的根拠となります。実際の改定作業においては、社会保険労務士や弁護士といった労務の専門家へ確認を取りながら進めていただくことをお勧めいたします。

5.対象業務の特定が、採用フローと労務リスク回避の起点となる

この業務実態の整理は、単に対象者を数え上げるための作業ではなく、今後の採用活動や現職者の人事管理における労務リスクを回避するための「起点」となります。 日本版DBSの運用において、万が一内定後に特定性犯罪前科が判明した場合、事業者は内定取消し等の厳しい対応を迫られます。この内定取消しを適法に行うためには、あらかじめ求人票に「特定性犯罪前科がないこと」を明示し、就業規則や内定通知書に「重要な経歴の詐称」を懲戒・解約事由として定めておく等の法的な事前準備が不可欠です。 求人サイト等にこれらの文言を追加しても、面接担当者が「なぜこの職種が対象になるのか」を求職者に客観的に説明できず、認識の齟齬が生じれば、入職後のトラブルの原因となります。 作成した「業務別の整理表」と「就業規則」をもとに、求人票の記載、面接での説明、内定時の誓約書取得、そして入職後の実際の配置までを一貫した根拠に基づいて運用することが、事業所とスタッフ双方を守る強固な体制構築に繋がります。

まとめ

日本版DBSにおける犯罪事実確認の対象は、「保育士だから対象」「事務員だから対象外」と職種名だけで切り分けられるものではありません。 事業所内の一日の動きを丁寧に検証し、「誰が、どこで、どのように子どもと接しているか」という実態に基づいて3要件を評価することが、全ての対応の第一歩となります。 まずは自事業所の対象者を客観的に整理する作業から着手していただき、無理のない採用・労務フローの再構築や就業規則の改定を進めていただくことをご検討ください。本記事が、貴法人の適法で円滑な制度対応の一助となれば幸いです。

(参考)【5分で要点】「日本版DBS」何が変わる?児童発達支援・放デイの現場で準備を進めたい3つの柱

指定申請・運営サポートをご検討中の方へ
サービス内容や進め方についてご案内いたします。

▶ 初回相談はこちら(30分・無料)

関連記事

最近の記事
  1. 勤務予定・実績表の正しい作り方と人員基準・常勤換算の確認ポイント
  2. 運営指導(実地指導)で確認されやすい掲示・備付書類の整理|重要事項説明書・運営規程・苦情窓口の見直し
  3. 日本版DBSは保育士だけではない|事務員・送迎運転手等も確認対象になる理由と特定手順
目次