就労選択支援とは、障害者が自分に合った働き方を選択し、適切な職場環境で働けるように支援する新たな制度です。この支援では、障害者が一般企業での雇用や福祉的就労など、さまざまな選択肢から自分に最適な就労スタイルを選ぶことができるようにサポートします。
具体的には、職業相談やスキルアップのための研修、職場見学や実習の機会提供、就職後の定着支援などが含まれます。従来の就労支援よりも、より個々のニーズに合わせた支援が特徴です。
今回は令和4年に創設され、令和7年10月より利用が開始される就労選択支援について説明します。
1.就労選択支援の人員基準は?
就労選択支援事業を運営するためには、以下のような人員基準が求められます。
- 管理者:事業全体を統括する責任者。管理業務に支障がない場合はほかの職務と兼務可
- 就労選択支援員:利用者15人つき1名必要
2.設備基準
事業所を運営するには、以下の設備基準を満たす必要があります。
- 訓練・作業室:訓練、作業に支障がない広さを有し、必要な機械器具等が必要
- 相談室:間仕切り等を設けること
- 洗面所・便所:利用者の特性に応じたものであること
- その他多目的室等
3.就労移行支援との違い
就労移行支援は、障害者が一般企業への就職を目指すための支援を提供する制度です。一定期間(原則2年間)、職業訓練や就職活動の支援を行い、最終的には一般企業での雇用を目指します。
一方、就労選択支援は「就職するかどうか」「どのような形で働くか」といった選択肢を幅広く提供し、利用者が自分に合った働き方を選べるようサポートするものです。必ずしも一般企業での雇用をゴールとするわけではなく、福祉的就労や在宅ワークなど、多様な選択肢を支援する点が大きな違いです。
項目 | 就労選択支援 | 就労移行支援 |
目的 | 自分に合った働き方を選択 | 一般就労を目指す |
支援内容 | 職業相談、スキルアップ、実習機会提供 | 職業訓練、履歴書作成支援、面接対策 |
期間 | 原則1か月(必要時は2か月) | 最長2年間 |
ゴール | 就職・福祉的就労・在宅ワークなど多様な選択肢 | 一般企業への就職 |
4.既存の福祉事業者が参入する際の注意点
既存の福祉事業者(就労移行支援、就労継続支援A型・B型など)が就労選択支援に参入する場合、以下の点に注意が必要です。
① サービスの柔軟性の確保
就労選択支援では、利用者が自分に合った働き方を選べることが重要です。そのため、特定の雇用形態への誘導ではなく、多様な選択肢を提供できる体制を整える必要があります。
② 既存サービスとの連携
就労移行支援や就労継続支援A/B型と併用しながら運営する場合、それぞれの制度の違いを明確にし、利用者が適切な支援を受けられるような仕組みを構築することが求められます。
③ 専門スタッフの確保と研修
利用者のニーズに合わせた就労支援を提供するため、専門性の高いスタッフの確保と継続的な研修が不可欠です。特に、在宅ワーク支援やデジタルスキル向上のための研修体制を整えることが求められるでしょう。
④ 企業とのネットワーク構築
一般企業や在宅ワーク支援企業との連携を強化し、多様な就労の選択肢を提供できるようにすることが重要です。企業とのネットワークを広げることで、利用者の希望に沿った就職先を確保しやすくなります。
5.今後の参入が予想される事業者
就労選択支援の導入により、今後以下のような事業者がこの分野に参入すると予測されます。
① 既存の福祉事業者
既存の就労支援事業者が、新たな支援の選択肢として就労選択支援を提供する可能性が高いです。特に、利用者のニーズに柔軟に対応できる法人は積極的に参入するでしょう。
② 民間企業・人材紹介会社
人材紹介会社やキャリア支援企業も、障害者雇用の促進を目的として就労選択支援に参入する可能性があります。企業と障害者のマッチングを強化し、就職後の定着支援にも力を入れる事業モデルが考えられます。
③ 在宅ワーク支援企業
コロナ禍以降、在宅ワークのニーズが高まっており、障害者向けに在宅就労を支援する企業の参入も見込まれます。特にIT業界やクリエイティブ業界において、リモートワークの研修や仕事の提供を行う事業者が増えるでしょう。
まとめ
就労選択支援は、障害者が自分に合った働き方を選べるようサポートする新たな制度です。既存の福祉事業者が参入する際は、柔軟な支援体制の確保、専門スタッフの研修、企業ネットワークの構築などが重要になります。