はじめに
専門的支援実施加算の算定に向けて、計画書の様式を用意したものの、「個別支援計画と何が違うのか」「誰が作成するのか」「各欄に何を書くのか」と迷うことはないでしょうか。
まず、個別支援計画は児童発達支援管理責任者(児発管)が作成し、専門的支援実施計画書は、その計画を踏まえて、専門的支援を担当する理学療法士等が別に作成します。
個別支援計画の作成では、児発管が支援担当者の意見を踏まえて内容を検討します。書類は別でも、支援の方向性はつながっています。
本記事では、児童発達支援・放課後等デイサービスの専門的支援実施計画書について、架空の幼児の状況を例に、各欄の書き方を順番に説明します。
1.作成する担当者と、個別支援計画との関係を確認する

個別支援計画には、本人・家族の意向やアセスメントを踏まえ、事業所として取り組む支援の方針、目標、内容などを記載します。
専門的支援実施計画書では、支援を提供する専門職が、自身の専門性に基づいて評価し、5領域のうち、特定または複数の領域に重点を置いた支援を具体化します。
ここでいう「理学療法士等」には、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のほか、所定の経験要件を満たす保育士・児童指導員、心理担当職員、視覚障害児支援担当職員が含まれます。
例えば、個別支援計画の目標が「自分に合う方法で気持ちや要求を伝える」であれば、専門的支援では「遊びの中で困ったときに、カード・身振り・言葉で援助を求める」という場面に焦点を当てます。
国のQ&A問16では、計画の記載事項として、次の項目などが示されています。
- 専門職によるアセスメントの結果
- 5領域との関係の中で、特に支援を要する領域
- 専門的な支援によって目指す達成目標
- 目標を達成するための具体的な支援内容
- 支援の実施方法
児童の状況に応じて、配慮事項や個別支援計画との関連なども記載します。各欄を別々に埋めるのではなく、一人の児童への支援として内容がつながるように書くことがポイントです。
2.アセスメント欄には、意向と現在の状況を書く
アセスメント欄では、本人・家族の意向を確認したうえで、専門職が把握した現在の状況を記載します。
「できること」「難しい場面」「どのような援助があると取り組めるか」まで整理すると、目標や支援内容につなげやすくなります。
ここからは、困ったときに援助を求めることに難しさがある、架空の5歳の幼児を例に考えます。
本人には好きな遊びを選びたいという意向があり、保護者は「困ったときに援助を求めてほしい」と希望しています。担当する言語聴覚士が観察した結果を、例えば次のように記載します。
「写真2枚から好きな遊びを選べる。援助が必要なときは、大人の手を引くことが多い。観察した5場面のうち2場面で、声かけ後に『手伝って』のカードを渡せた。」
このように書くと、現在できることと、必要な援助が分かります。
「言葉が苦手」「コミュニケーションに課題がある」という表現だけで終わらず、実際の行動と、声かけや見本などの援助の程度を記載しましょう。
回数などの数値を使う場合は、実際の観察結果に基づいて記載します。数字を入れること自体ではなく、支援前後の変化を確認できる情報を残すことが目的です。
3.重点を置く領域と達成目標をつなげる

アセスメントを踏まえ、5領域との関係の中で、特にどの領域への支援が必要かを整理します。
5領域とは、「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」です。
先ほどの幼児であれば、援助を求める方法を増やすため、「言語・コミュニケーション」に重点を置きます。相手に働きかける点では「人間関係・社会性」、場面を理解して伝え方を選ぶ点では「認知・行動」とも関係します。
領域名を並べるだけでなく、アセスメントのどの内容から、その領域への支援が必要と判断したのかを示します。
国の「個別支援計画の記載のポイント」でも、課題や支援内容を単に5領域へ当てはめるだけの計画にしないよう注意が示されています。個別支援計画用の資料ですが、支援のつながりを考える参考になります。
達成目標は、後から変化を確認できる表現にします。「コミュニケーション力を高める」だけでは、何をもって達成とするかが分かりにくくなります。
例えば、次のように具体化できます。
「2026年12月末までに、遊びの中で援助が必要な5場面中3場面以上、声かけなしで、カード・身振り・言葉のいずれかにより援助を求める。直近3回の支援で確認する。」
場面、目指す行動、援助の程度、評価時期が分かる目標にすると、支援後の確認もしやすくなります。
この期限や回数は説明のための例であり、制度上の一律の基準ではありません。児童の状況に合わせて設定します。
4.「支援内容」と「実施方法」を書き分ける
支援内容には「何をするか」、実施方法には「誰が、どのような形で行うか」を書くと整理しやすくなります。
先ほどの幼児への支援内容は、例えば次のように記載します。
「好きな玩具を使い、箱を開ける・道具を扱う場面で、援助を求める方法を練習する。『手伝って』のカードを手元に置き、本人の反応を待つ。必要に応じて使い方の見本を示し、要求が伝えられたら速やかに援助する。」
教材名だけでなく、どの場面で、専門職がどのように働きかけるかまで記載します。
実施方法は、例えば次のように書けます。
「担当する言語聴覚士が、週1回、1回30分の個別支援を行う。遊びの選択と伝え方の確認に5分、援助を求める練習に20分、遊びを振り返りながら伝え方を確認する支援に5分を予定する。」
令和6年度Q&A VOL.1の問17では、専門的支援の提供時間について、同日の支援時間すべてとする必要はないものの、少なくとも30分以上を確保することとされています。
上記は時間配分の一例です。導入や振り返りも、目標に沿った専門的支援として実施することを想定しています。計画上30分と記載するだけでなく、実際に専門的支援を提供した内容と時間を確認します。
配慮事項も具体的に記載します。この例では、発語だけに限定せず、カードや身振りによる表現も尊重します。拒否や疲労が見られた場合は活動を調整するなど、本人の意思や状態に応じた対応を示しておきます。
なお、今回は個別支援の例ですが、個々のニーズを踏まえた支援を確保したうえで、5名程度までの小集団で実施することも可能とされています。
5.説明・同意、実施記録、見直しまでつなげる

計画書ができたら、本人の年齢や発達の程度に応じた説明を行い、保護者にも目的、支援内容、実施方法などを伝えます。
国のQ&A問16では、専門的支援実施計画を個別支援計画とは別に作成し、あらかじめ給付決定保護者の同意を得ることが必要とされています。
また、留意事項通知では、計画の作成時だけでなく、見直し時にも対象児及び保護者への説明と同意が必要とされています。説明日、説明者、同意を確認した経過などを記録し、後から確認できるようにしておきます。
支援後は、児童ごとに実施日時と支援内容の要点を記録します。児童の反応も残しておくと、次の支援や評価に役立ちます。
先ほどの幼児であれば、援助が必要だった場面数、自発的に援助を求めた回数、声かけや見本の有無などを記録します。これにより、目標に近づいているか、支援方法の調整が必要かを確認できます。
留意事項通知では、実施状況や生活全般の質を向上させるための課題を把握し、必要に応じて計画を見直すことも求められています。個別支援計画の見直し時にも両計画の整合性を確認しつつ、児童の変化や課題に応じて、必要な時点で見直しましょう。
まとめ
個別支援計画は児発管が作成し、専門的支援実施計画書は、その計画を踏まえて、専門的支援を担当する理学療法士等が別に作成します。
書く順番は、「本人・家族の意向と専門職の評価→重点を置く領域と達成目標→支援内容と実施方法」と考えると整理しやすくなります。
さらに、説明・同意、実施記録、評価・見直しまでつなげることで、計画を日々の支援に活用できます。作成後は、アセスメントから目標、支援内容まで、一人の児童への支援としてつながっているかを確認しましょう。
(参考資料)
1.「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.1」(令和6年3月29日)(こども家庭庁)問16・問17
※専門的支援実施計画の記載事項、個別支援計画との関係、実施形態、提供時間について参照。
2.「児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月31日最終改正)(厚生労働省通知こども家庭庁掲載)P36、37
※専門的支援実施加算の取扱い、計画の作成、担当職員の要件、実施記録、説明・同意、見直しについて参照。
3.「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に伴う個別支援計画作成にあたっての留意点及び記載例について」別紙1「個別支援計画の記載のポイント」(令和6年5月17日)(こども家庭庁)
※本人・家族の意向、アセスメント、目標、支援内容、5領域の関連を考えるための参考資料。
専門的支援実施計画書の記載例と、空欄の参考様式を2枚にまとめた資料があります。
事業所内での作成・確認用として、ご希望の方にPDFでお送りします。
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