LINEで相談

訪問系サービス

令和9年度報酬改定で訪問系にも?|ピアサポート体制加算・実施加算と「100単位/月」を確認

はじめに

令和9年度の障害福祉サービス等報酬改定に向けて、訪問系サービスでもピアサポートの専門性を評価することが検討されています。

令和8年9月24日の障害福祉報酬改定検討チームでは、居宅介護や重度訪問介護などに共通する論点として取り上げられました。ただし、現時点で訪問系サービスへの加算の新設や、具体的な算定要件が決まったわけではありません。

事業所としては、「現在あるピアサポート体制加算と実施加算は何が違うのか」「100単位/月とは、誰について算定する数字なのか」が気になるところでしょう。現行制度の仕組みを確認したうえで、訪問系サービスについて今後見るべき点を整理します。

1.ピアサポートは、障害当事者の経験を支援に生かすもの

ピアサポートは、障害のある人や障害の経験がある人が、自らの経験を生かし、利用者と同じ目線で相談や助言を行う支援です。

例えば、一人暮らしを始めた利用者が、日々の生活や支援者との関わり方について不安を抱えている場合があります。そのとき、似た経験を持つ人の話が、本人の不安を和らげたり、これからの暮らしを考える手がかりになったりします。

国の資料でも、自立に向けた意欲の向上、地域生活を続けるうえでの不安の解消、当事者であることによる安心感などが、ピアサポートの効果として挙げられています。障害のある職員を雇用しているという事実だけでなく、その経験を支援にどう生かすかが、この制度の中心です。

2.体制加算と実施加算は、何を評価するのか

現行制度には、「ピアサポート体制加算」と「ピアサポート実施加算」があります。名称は似ていますが、評価する対象が異なります。

ピアサポート体制加算は、主に計画相談支援、障害児相談支援、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援などで設けられています。研修を修了した職員を配置し、事業所としてピアサポートを提供できる体制を評価する加算です。

一方、ピアサポート実施加算は、就労継続支援B型、自立訓練、共同生活援助などで設けられています。研修を修了した障害当事者等が、対象となる利用者に実際に相談援助を行うことを評価します。

両者は「体制加算を算定してから、実施加算を上乗せする」という関係ではありません。対象サービスごとに定められた、別の加算として確認する必要があります。

3.体制加算は、研修修了者が一人いればよいのか

ピアサポート体制加算では、障害者ピアサポート研修の基礎研修・専門研修を修了した障害当事者等と、同じく研修を修了した管理者等その他の従業者を、それぞれ常勤換算で0.5人以上配置することなどが求められます。

さらに、事業所内で障害者への配慮等に関する研修を年1回以上行う体制を整え、研修修了者を配置していることを公表する必要があります。

したがって、「研修を修了した障害当事者が一人在籍している」というだけでは、要件を満たしません。当事者と、その人と協働する職員の双方を配置し、事業所として支援できる体制を整えることが必要です。常勤換算0.5人以上という配置量も、職員名簿だけでなく勤務時間から確認します。

4.実施加算は、実際の相談援助を確認する

ピアサポート実施加算では、研修を修了した障害当事者等である従業者が、自らの経験に基づき、利用者へ相談援助を行います。

例えば、自立訓練や共同生活援助では、要件を満たす相談援助を受けた利用者について、1月につき100単位を算定する仕組みです。研修修了者を配置したことと、対象となる利用者へ実際に支援を行ったことは、分けて確認する必要があります。

なお、実施加算の細かな要件はサービスによって異なります。自事業所で算定を検討する場合は、該当サービスの報酬告示や留意事項を確認してください。

5.「100単位/月」は事業所全体の金額ではない

「100単位/月」と聞くと、事業所全体で月100単位だけを算定するように見えるかもしれません。しかし、現行の加算はそのような意味ではありません。

仮に1単位を10円として、対象となる利用者10人について、それぞれ月100単位を算定できる場合を考えると、単純計算は次のとおりです。

100単位 × 10人 × 10円 = 月約1万円

対象者が20人なら、同じ仮定では月約2万円です。実際の金額は地域区分に応じた単価などで変わります。また、利用者全員に自動的に算定できるわけではなく、各加算の要件を満たす人を確認することが前提です。

体制加算と実施加算の違いは、「事業所に100単位か、利用者一人に100単位か」という点ではありません。その利用者について算定できる根拠が、事業所の体制なのか、実際に行った相談援助なのかという点にあります。

6.訪問系サービスでは、何が検討されているのか

現在、訪問系サービスはピアサポート加算の対象ではありません。一方、国の資料では、訪問系事業所のピアサポーターが相談支援に当たる事例が紹介されています。在宅で一人暮らしをする障害者に同じ目線で相談支援を行うことは、サービスの質の向上につながるとして、訪問系でも専門性を評価することが検討課題とされました。

関係団体からは、ピアサポートを通じた利用者の自立や社会参加への期待に加え、利用者と支援者との関係に関する意見も示されています。ただし、団体の意見と、国が決定した加算要件は別のものです。現段階で、特定の課題への対策として加算を設けることが決まったわけではありません。

では、訪問系に導入されるとしたら、体制加算と実施加算のどちらになるのでしょうか。

居宅介護や重度訪問介護は、利用者に直接支援を提供するサービスです。そのため、現行制度との比較では、実施加算に近い仕組みも考えられます。一方、体制加算の方式を採るなら、当事者と協働する職員をそれぞれ常勤換算0.5人以上配置する現在の要件を、訪問系の働き方にどう当てはめるかが課題になります。

どちらの方式になるか、単位数はいくつか、誰を対象に算定するかは、まだ示されていません。「訪問系にも月100単位の加算ができる」と現時点で見込むことはできません。

訪問系ならではの検討点もあります。例えば、車いすを使用するピアサポーターが利用者宅へ出向く場合、移動手段や建物の段差、室内に入れるかどうかを確認する必要があります。本人に移動時の支援が必要な場合もあるでしょう。

国の資料は訪問系で評価する意義を示していますが、こうした訪問先の環境やピアサポーター自身の働き方について、具体的な取扱いまで定めたものではありません。専門性を評価する制度と、その専門性を持つ人が無理なく働ける環境の両方を考える必要があります。

まとめ|これから確認したいのは「誰に、何を行ったら算定できるか」

現行のピアサポート体制加算は、研修を修了した障害当事者等と協働する職員を配置するなど、事業所の体制を評価します。ピアサポート実施加算は、対象となる利用者に行った実際の相談援助を評価します。

令和9年度改定に向けて、訪問系サービスにもピアサポートの専門性を広げることが検討されています。ただし、加算方式も算定要件も、今後の検討事項です。

事業所としては、今から「100単位の収入が増える」と試算するよりも、誰が研修を受け、誰に、どのような支援を行った場合に評価される制度になるのかを、今後の資料で確認することが大切です。

(参考資料)

「訪問系サービスに係る報酬・基準について≪論点等≫」(厚生労働省・こども家庭庁)(令和8年9月24日)

指定申請・運営サポートをご検討中の方へ
サービス内容や進め方についてご案内いたします。

▶ 初回相談はこちら(30分・無料)

関連記事

最近の記事
  1. 令和9年度報酬改定で訪問系にも?|ピアサポート体制加算・実施加算と「100単位/月」を確認
  2. 指定申請中に開所予定日を延期したくなったらどうする?|物件・採用・消防が間に合わない場合の手続き
  3. 就労継続支援B型の収支予算書の作り方|指定申請で利用者数・工賃・給付費をどう見積もる?
目次