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はじめに
「1拠点目が軌道に乗ってきた。次はもっと広い物件で、定員を増やしたり多機能型に挑戦したりしたい!」
そう考えて2拠点目の物件探しを始めると、必ずと言っていいほど直面するのが「200平米(約60坪)の壁」です。不動産屋から「用途変更が必要かも」と言われたり、役所から「図面を持ってきて」と言われたりして、戸惑っていませんか?
1拠点目を立ち上げた経験があるオーナー様ほど、「あの時より手続きが複雑になっていないか?」「もし契約した後に事業ができないと判明したら……」と不安になるのは、無理もありません。実際、200平米を超える物件では、1拠点目の時にはなかった厳しい法律のルールが適用され、知らずに進めると数百万円の追加改修や、開所スケジュールの半年以上の遅れを招くリスクがあります。
そこで今回は200平米超の物件で必ず発生する「用途変更」の基本と、失敗しないための物件選びのポイントを分かりやすく解説します。
この記事を読み終える頃には、2拠点目開設に向けた「安全な物件の選び方」と「無駄なコストを抑える手順」が明確になり、自信を持って次のステップへ踏み出せるはずです。
1.そもそも「用途変更」とは?障がい福祉事業で必要な理由

2拠点目の物件探しをしていると、不動産屋から「この物件は用途変更が必要ですね」と言われたり、役所から「用途は児童福祉施設になっていますか?」と聞かれたりすることがあるはずです。
そもそも「用途変更」とは、建物の使い道を、今とは別の種類に書き換える手続きのことを指します。
なぜ勝手に使い道を変えてはいけないのか?
日本の法律(建築基準法)では、建物をその使い道に合わせて「住宅」「事務所」「店舗」「福祉施設」といった具合に分類しています。
ここが重要なポイントなのですが、実は「事務所(オフィス)」として建てる時と、「障がい福祉施設(児童福祉施設等)」として建てる時では、建物に求められる安全基準の厳しさが全く違います。
例えば、一般的な事務所なら元気な大人が働いていますが、福祉施設にはサポートが必要な方や、お子様がいらっしゃいます。万が一、火災が起きたとき、自力で素早く避難することが難しい方も想定しなければなりません。そのため、福祉施設として使うなら「壁を燃えにくい素材にする」「廊下の幅を広くする」といった、より高い安全レベルが求められるのです。
「200平米」が運命の分かれ道
これまでは「少人数の事業所だから大丈夫」と思っていたオーナー様も、2拠点目で少し広めの物件(200平米超)を検討する際は要注意です。
- 200平米(約60坪)以下の場合: 建築基準法のルールに従ってリフォームする必要はありますが、役所へ「用途変更の確認申請」という正式な書類を出して許可を得る工程は、原則として免除されます。
- 200平米を超える場合: 役所に対し、「この建物を福祉施設に作り変えます」という正式な申請を行い、法的に認められなければ、その物件で事業を開始することができません。
1拠点目のときが小規模な物件(例えば100平米程度)だった場合、この手続きを経験せずに済んでいたため、2拠点目で初めてこの「用途変更の壁」に驚かれるオーナー様が非常に多いのです。
「広くて良い物件が見つかった!」と即決する前に、その物件が福祉施設としての安全基準をクリアできるのか、そして200平米を超える手続きが必要なのかを、まずはご確認ください。
2.200平米超の物件で発生する「3つのハードル」
200平米を超える物件で障がい福祉事業を始める場合、単に「内装をきれいにする」だけでは済みません。具体的にどのような壁があるのかを見ていきましょう。
① 建築確認申請の手間とコスト
200平米超の物件を福祉施設に転用する場合、役所に「建築確認申請」という手続きを行う義務が生じます。 これは、建築士に依頼して「この建物は法律に適合しています」という膨大な図面や書類を作成してもらい、役所や検査機関の審査を受けるプロセスです。 建築士への報酬に加え、審査を待つ期間(約1〜2ヶ月)が必要になるため、「家賃は発生しているのに工事に着手できない」というタイムロスが発生します。
② 消防設備の強化(スプリンクラー等の設置)
使い道が「事務所」から「福祉施設(児童福祉施設等)」に変わると、消防法上の区分も変わります。 特に注意が必要なのが、火災報知器だけでなく、「スプリンクラー」の設置が必要になるケースです。 一般的なスプリンクラーは大掛かりな水道工事が必要で高額になりますが、一定の要件を満たせば「パッケージ型自動消火設備」という、比較的設置が容易な設備で代替できる場合もあります。それでも数百万円単位の費用がかかることに変わりはないため、消防署との事前協議で「どの設備ならOKか」を具体的に詰める必要があります。
③ バリアフリー法や自治体独自の条例
広さがある物件ほど、「誰にとっても使いやすい建物」にすることが厳格に求められます。 例えば、車椅子の方が通れる廊下の幅、多目的トイレの設置、入り口のスロープ設置などが必須となる場合があります。また、自治体によっては「福祉のまちづくり条例」といった独自のルールを設けており、200平米を超える建物にはより厳しい基準を課していることが多いため、事前の調査が欠かせません。
ワンポイントアドバイス
200平米超の物件は、定員を増やせたり多機能型にできたりとメリットも大きいですが、上記のような「目に見えないコスト」が隠れています。 物件選定の段階で、建築士や福祉専門の行政書士などがチームを組んで「この物件で本当に予算内に収まるか?」をシミュレーションすることが、2拠点目経営を成功させるカギとなります。
3.「200平米以下」なら何もしなくていい?
「200平米以下なら用途変更の確認申請は不要」というのは、あくまで「役所へ事前に分厚い書類を出して、審査を受けるステップを省略してもいいですよ」というルールに過ぎません。
建築基準法を守る義務は「そのまま」
たとえ申請が不要であっても、その建物が「福祉施設としての基準(建築基準法)」を満たしていなければならないことに変わりはありません。 例えば、火災を防ぐための壁の構造(防火区画)や、非常用照明の設置、窓の大きさ(採光・換気)などは、申請の有無に関わらず、法律で決められた通りに整える必要があります。
もしこれらを無視して内装工事だけ行い、後から「実は法律違反の状態で運営している」ことが判明した場合、最悪のケースでは建物の改修を命じられたり、事業の継続ができなくなったりするリスクがあります。
消防署のチェックは「面積に関係なく」入る
建築基準法の「用途変更」は不要でも、消防法の手続きは別物です。 物件の面積が100平米でも50平米でも、新しく事業所を開く際は消防署へ「防火対象物使用開始届」などを提出しなければなりません。ここで、「200平米以下だから大丈夫だと思っていたけれど、実はスプリンクラーが必要だった」という事態が発覚することも珍しくありません。
自治体(指定権者)独自のルールに注意
最も気をつけるべきなのが、事業所の指定を出す自治体(県や市)の判断です。 自治体によっては(例:名古屋市など)、指定申請の際に「確認申請は不要だが、建築士が作成・捺印した『建築基準法適合状況報告書』を提出してください」と求めてくることや自治体によっては、指定申請時に『建築基準法・消防法に関する確認書』や、建築士が適法性を調査した報告書の提出を求めてくるケース(例:尼崎市など)があります。 つまり、「申請不要=建築士不要」ではありません。結局は建築士に調査を依頼する費用が発生し、もし基準不適合が見つかれば、是正工事が終わるまで指定が下りないという事態になりかねないのです。
ワンポイントアドバイス
「200平米以下」は、あくまで「手続きのハードルが少し下がる」だけだと捉えてください。 2拠点目こそ、1拠点目以上にコンプライアンス(法令遵守)が厳しくチェックされます。「申請不要」という言葉を「何もしなくていい」と解釈せず、事前に専門家へ「この物件で適法に運営できるか」を確認することが、安全な多店舗展開の鉄則です。
4.失敗しないための物件選定チェックリスト

物件の内覧に行く際、不動産屋さんに必ず次の3点を確認してください。
① 「検査済証(けんさずみしょう)」が手元にあるか
これが最も重要です。建物が完成した際、法律通りに建てられたことを証明する公的な書類が「検査済証」です。 200平米超の物件で用途変更を行う場合、この書類がないと手続きが極めて困難(あるいは不可能)になります。古い物件だとオーナーが紛失していることも多いですが、再発行はできません。代わりとなる調査(12条5項報告など)を行うには多額の費用がかかるため、「検査済証がない物件は、候補から外す」のが賢明な判断です。
② 前のテナントが「何に使っていたか」
いわゆる「居抜き物件」を狙うなら、前に入居していた業種を確認しましょう。 もし前も障がい福祉施設や保育所など「児童福祉施設等」として使われていたなら、用途変更の手続きがすでに終わっているため、初期費用を劇的に抑えられます。逆に、学習塾や一般的な事務所だった場合は、一から安全基準を作り直す必要があるため、見た目がきれいでも要注意です。
③ 賃貸借契約の前に「事前協議」を終えたか
障がい福祉の事業所を開くには、物件を契約する前に自治体(指定権者)や消防署と「この物件で始めてもいいですか?」という事前相談を行う必要があります。 「良い物件は早く押さえなきゃ!」と焦って契約してしまうと、後から「この地域では定員がいっぱいで新設できない」「構造上、消防設備に1,000万円かかる」といった事実が発覚しても、手遅れになってしまいます。
④ そもそも「福祉施設が作れるエリア(用途地域)か」
建物の条件以前の問題として、その土地が「都市計画法」で福祉施設の設置が認められているエリアかどうかも確認が必要です。 大阪府の手引きなどでも注意喚起されていますが、例えば、工場が多い「工業専用地域」や、開発が制限されている「市街化調整区域」などでは、どんなに立派な建物があっても原則として開業できません。 不動産屋の図面にある「用途地域」の欄を必ずチェックし、役所の都市計画課や建築指導課で「ここで障がい福祉事業をやっても良いか」を確認してください。
ワンポイントアドバイス
物件探しの段階で「少しでも不安」を感じたら、不動産屋さんの「大丈夫ですよ」という言葉だけで判断せず、図面(平面図)で専門家や役所に確認してください。
「用途変更が必要な面積か」「検査済証は有効か」「消防設備にいくらかかりそうか」を契約前にジャッジすることが、経営を成功させる最大の防衛策です。
5.2拠点目は「自力でやらない」という経営判断が必要な理由
1拠点目の立ち上げ時とは異なり、2拠点目の展開では「既存事業の維持」と「新規事業の準備」を同時に進めなければなりません。ここで外部の専門リソースを活用することは、単なる「書類作成の外注」ではなく、「事業撤退リスクの回避」と「本業への集中」のための投資と言えます。
① 「採用」と「集客」に経営資源を集中させる
2拠点目の成否を分けるのは、手続きの早さではなく「良い人材の確保」と「利用者獲得」です。オーナー様が慣れない図面の確認や消防署との協議に時間を奪われ、肝心の採用面接や営業回りが疎かになっては本末転倒です。手続きはプロに任せ、オーナー様は「売上を作る活動」に専念する体制を作ることが、最短での黒字化につながります。
② 「建築士×行政書士」の連携で手戻りを防ぐ

200平米超の物件では、建築基準法と福祉法(指定基準)の両方をクリアしなければなりません。しかし、建築士は「福祉の基準」に詳しくないことが多く、逆もまた然りです。 福祉に特化した行政書士などが間に入ることで、「建物としてはOKだが、福祉の運営指導でNGが出る」といった縦割り行政の弊害によるトラブルを未然に防ぐことができます。
③ 2拠点一括の「経営最適化」のアドバイス
専門家に依頼するメリットは、新しい事業所の申請だけではありません。 「1拠点目と2拠点目で、処遇改善加算をまとめて申請した方が効率的か?」「管理者の兼務は可能か?」といった、複数拠点を持つからこそ発生する経営判断についても、法的な観点からアドバイスが得られます。
まとめ:理想の2拠点目開設に向けて
ここまで、2拠点目の物件選びで避けては通れない「200平米」の壁と、用途変更の重要性についてお伝えしてきました。
「200平米」という数字は、単に広さを表すだけではなく、「事業のステージが一段階上がるサイン」でもあります。1拠点目の時には意識しなかったような厳しい法律や、数百万円単位のコストが発生する可能性があるため、少し驚かれたかもしれません。
失敗しないための3つのポイント
2拠点目の開設を成功させるために、以下の3点を意識することをおすすめします。
①「広さ」の裏にある「ルール」を確認する
200平米を超えると、役所への正式な申請(用途変更)が必要になり、時間も費用もかかります。「広くていいな」と思ったら、まずは法律の壁を疑ってみましょう。
②物件を契約する前に、必ず「書類」をチェックする
特に「検査済証」の有無は、その後の運命を左右します。不動産屋さんに「大丈夫」と言われても、必ず現物を確認するか、専門家に図面を見せてください。
③「自分一人で抱え込まない」こと
2拠点目の準備は、1拠点目の運営と並行して進めることになります。オーナー様が最も力を入れるべきは、現場のマネジメントや優秀なスタッフの採用です。手続きや役所との交渉は、その道のプロに頼るのが、結局は一番の近道になります。
2拠点目は「攻め」と「守り」のバランスが大切
事業を拡大する「攻め」の姿勢は非常に大切ですが、同時にコンプライアンスという「守り」を固めることが、長く愛される事業所作りの秘訣です。
もし今、物件選びや法規制の確認で少しでも「判断に迷う」と感じることがあれば、契約のハンコを押す前に立ち止まってください。そして、建築士や、福祉事業に詳しい行政書士などの専門家へセカンドオピニオンを求めることを強くお勧めします。
適切な専門家のサポートを得て、リスクをコントロールしながら、オーナー様の「2つめの理想の場所」が実現することを願っています。