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障がい者グループホーム(共同生活援助)では、高齢化や合併症のある利用者様が増え、入院を伴う場面が決して珍しくなくなっています。
ところが、入院している期間はグループホームの基本報酬は算定できず、「それでも職員はご家族・病院との連絡調整や、被服の準備、退院後の生活調整など、結構動いている…」という現場の声もよく聞きます。
こうした入院中の見えにくい支援を評価するための仕組みが「入院時支援特別加算」と「長期入院時支援特別加算」です。
今回は、そのうち 「入院時支援特別加算」 に焦点を当てて、対象サービス・単位数・基本的な算定イメージを説明します。
目次
- 入院時支援特別加算とは
- 対象サービス名
- 算定加算単位(イ・ロの違い)
- 算定要件の基本的な考え方
- 長期入院時支援特別加算との関係
- 実務でよくあるつまずきポイント
- まとめ
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入院時支援特別加算とは
入院時支援特別加算は、共同生活援助の利用者様が入院した際に、
- 事業所の職員が病院・診療所を訪問する
- 入院中の被服等の準備や相談支援など、日常生活上の支援を行う
- 退院後に元の生活へスムーズに戻れるよう、医療機関と連絡調整を行う
といった支援を行った場合に、その入院期間に応じて月1回まで算定できる加算です。
令和6年度改定でも、入院時支援特別加算そのものの位置付けは維持されており、居住系サービスにおける「医療と福祉の連携」「地域生活の継続」の一つの柱として扱われています。
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対象サービス名
入院時支援特別加算の対象となるサービスは、令和6年度時点では、次のとおりです。
- 共同生活援助(グループホーム)
※生活介護や短期入所など、日中サービスでは入院時支援特別加算は算定されません。
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算定加算単位(イ・ロの違い)
入院時支援特別加算には、入院日数に応じて 「イ」「ロ」2つの区分があります。
3-1. 入院時支援特別加算(イ)
- 入院期間の日数の合計が「3日以上7日未満」の場合
- 利用者1人あたり 561単位/月(1か月につき1回を限度)
ここでいう「入院期間の日数」は、原則として入院初日と退院日(最終日)を除いた日数でカウントします。
3-2. 入院時支援特別加算(ロ)
- 入院期間の日数の合計が「7日以上」の場合
- 利用者1人あたり 1,122単位/月(1か月につき1回を限度)
同様に、入院初日と退院日は除いてカウントします。
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算定要件の基本的な考え方
4-1. 個別支援計画への位置付け
- 入院時に行う支援(病院訪問・連絡調整・退院後の生活調整など)が、あらかじめ共同生活援助計画(個別支援計画)に位置付けられていること
- 短期の入院が想定される利用者さんについては、日頃から「入院が必要になったときの支援内容」を計画に書き込んでおくとスムーズです。
4-2. 病院・診療所への訪問と連絡調整
- 事業所の職員(世話人・生活支援員等)が、病院又は診療所を実際に訪問していること
- 被服の準備、日用品の持ち込み・補充、本人への相談支援、主治医・看護師との連絡調整など、「生活支援+退院後の生活に関する調整」を行っていること
- 行った支援内容・日時・訪問者を、記録として残していること
4-3. 入院日数のカウント方法
- 入院初日と退院日はカウントから除外する(その分は、原則として共同生活援助の基本報酬が算定可能)
- 月をまたぐ入院では、「各月ごとの日数」で判定する
- 例:7月29日入院、8月10日退院の場合
- 7月分の入院日数:7/30・31 → 2日(※イ・ロいずれの要件にも満たず算定不可)
- 8月分の入院日数:8/1~9 → 9日 → ロの要件(7日以上)を満たす可能性
- 例:7月29日入院、8月10日退院の場合
4-4. 月1回の算定に限られる
- イ・ロいずれも、同一利用者につき1か月に1回までの算定
- 同じ月に複数回の入院があっても、日数を合算して「その月として1回」の算定になります。
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長期入院時支援特別加算との関係

入院関連の加算には、「入院時支援特別加算」と「長期入院時支援特別加算」があり、いずれも入院中の支援を評価する仕組みです。
- 入院時支援特別加算
- 入院日数に応じて、月1回まとめて「561単位」または「1,122単位」
- 長期入院時支援特別加算
- 一定の日数を超える長期入院時に、1日あたり一定単位(例:122単位/日)を算定(1月8日を上限 など)
厚労省や自治体のQ&Aでは、
「同じ月の同じ入院期間については、入院時支援特別加算と長期入院時支援特別加算は併算定できず、どちらかを選択する」
といった趣旨が示されています。
実務では、
- 比較的短い入院 → 入院時支援特別加算(イ・ロ)
- 長期にわたる入院 → 長期入院時支援特別加算
のどちらを選択した方が事業所にとって有利か、シミュレーションしつつ運用方針を決めておくことが多いです。
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実務でよくあるつまずきポイント

最後に、私が障がい福祉事業者さまのご相談をお受けする中で、入院時支援特別加算で特に多いポイントを簡単にまとめます。
6-1. 入院初日・退院日のカウントミス
- 入院初日と退院日を含めて日数を数えてしまい、「7日以上」と誤解 → 本当は「イ」が正しいケース
- 逆に、月またぎ入院で「前月分の2日」を見落としてしまうケースもあります。
6-2. 個別支援計画への記載不足
- 支援内容自体は丁寧に行っているのに、計画上の位置付けが弱く、算定根拠として説明しづらい
- 日常の支援と同様、「入院時の支援方針」も計画に一言入れておくと安心です。
6-3. 訪問・支援の記録が薄い
- 「病院に行った」「連絡した」というメモだけで、支援の中身が分からない
- 監査・運営指導では、
- いつ
- 誰が
- どこへ(どの病院・病棟など)
- どんな目的で
- どのような支援・調整をしたのか
を示せる記録が重要になります。
6-4. 長期入院時支援特別加算との選択整理がない
- 日数計算をしないまま、なんとなく毎回「入院時支援特別加算(ロ)」を選んでいる
- 実は「長期入院時支援特別加算」を選んだ方が総単位数が多くなるケースもあるため、社内ルールと簡易シミュレーション表を作っておくと安心です。
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まとめ
入院時支援特別加算は、
- 入院中もグループホームとして利用者さんの生活と退院後の暮らしを支える役割を評価する加算
- 入院日数(3日以上7日未満/7日以上)に応じて「イ・ロ」に分かれ、月1回限りの算定
- 個別支援計画への位置付け・医療機関への訪問と連絡調整・記録の残し方がポイント
という位置づけの加算です。
「実際に自事業所のケースで算定できるのか」「長期入院時支援特別加算との選択はどちらがよいか」などは、厚生労働省のQ&Aや所轄自治体の集団指導資料を照らし合わせながら、一つひとつ事例ベースで確認していくことになります。
(参考文献)
障害者総合支援法 事業者ハンドブック〈報酬編〉(中央法規)
障害福祉サービス 報酬の解釈(社会保険研究所)
(参考資料)
共同生活援助、自立訓練、 地域相談支援に係る報酬について <基礎データ等>(平成26年10月27日)(厚生労働省)P6 P9 P27