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令和6年度報酬改定で新設された「集中的支援加算」は、強度行動障害を有するお子様の状態が悪化したときに、都道府県が選定した専門家(広域的支援人材)と連携して、
短期間に集中的な支援を行った場合に評価される加算です。
日々、児童発達支援・放課後等デイサービスを運営されている事業者様の中には、
- 「対象になるケースはどんなときか」
- 「算定の単位数・期間は?」
- 「自治体への申請手続きはどう進むのか」
といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回は、障害児通所支援における集中的支援加算(Ⅰ)について、できるだけ条文用語をかみ砕きながら説明します。
目次
- 対象サービス名
- 算定加算単位
- 集中的支援加算とは
- 対象となる児童(強度行動障害児)
- 主な算定要件と支援内容
- 手続きの流れ(自治体・広域的支援人材との連携)
- 事業所として準備しておきたいポイント
- まとめ
1.対象サービス名
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
※成人向けの障害福祉サービス(生活介護、共同生活援助など)にも別枠で集中的支援加算(Ⅰ)(Ⅱ)が整備されていますが、今回は児童発達支援・放課後等デイサービスに絞って説明します。
2.算定加算単位
- 集中的支援加算(Ⅰ)
- 1回あたり:1,000単位
- 算定期間:3か月以内
- 月4回を上限(広域的支援人材による支援を実施した日ごとに算定)
単位数だけをみると決して小さな加算ではありませんが、後述のとおり要件はかなり限定的です。「いつでも取れる加算」というよりも、特に支援が困難な局面で外部専門家と連携するための“緊急対応枠”と考えていただくとイメージしやすいと思います。
3.集中的支援加算とは

強度行動障害を有する児者の状態が悪化した場合に高度な専門性を持つ「広域的支援人材」が事業所等を訪問またはオンラインで支援しアセスメント・支援方法の整理・環境調整等を集中的に行うことを評価する加算つまり、「普段の支援では対応しきれないほど行動問題が悪化したとき」に地域内外の専門家の力を借りて、短期間に集中的なテコ入れを行う仕組みです。
4.対象となる児童(強度行動障害児)
4-1 強度行動障害の基準
集中的支援加算の対象となるのは、「別にこども家庭庁長官が定める基準に適合する強度の行動障害を有する児童」とされています。
具体的には、強度行動障害判定のチェックリスト等を用いて、自治体が“強度行動障害に該当”と確認した児童が前提となります。
4-2 さらに「状態が悪化した」場合が前提
加算の趣旨は、通常の支援で対応している強度行動障害児の“さらに悪化した状態”
への対応にあります。
例えば、
- 自傷・他害行為の頻度や強度が急激に増えている
- 通常の個別支援計画に基づく支援では、学習や集団参加がほとんど成り立たない
- 家庭内でも著しい混乱が続き、保護者支援を含めて専門的な介入が必要
といったケースが想定されています。
「行動問題があるから強度行動障害=すぐ集中的支援加算」というわけではなく、
自治体による状態悪化の確認と、広域的支援人材による支援の必要性の判断が必須です。
5.主な算定要件と支援内容
5-1 広域的支援人材による支援
- 都道府県知事が、「高度な専門性を有する者」として認めた者(強度行動障害支援者養成研修修了者等が想定)を「広域的支援人材」として登録。
- 事業所は自治体を通じてこの広域的支援人材の派遣を要請し、訪問またはオンラインによる支援を受ける。
5-2 集中的支援の内容
- 広域的支援人材が、対象児童の行動や環境のアセスメントを行う。
- 事業所の職員と協働で、集中的支援計画(支援計画シート)を作成する。
- 支援計画に基づき、一定期間集中的な支援・環境調整を実施する。
- 概ね月1回程度、計画の見直しを行う。
5-3 算定日と記録
- 広域的支援人材による相談・助言を受けた日に加算を算定する。
- 支援内容・所要時間・関わった職種等を記録し、支援計画シートや個別支援計画と紐づけて保管することが重要です。
6.手続きの流れ(自治体・広域的支援人材との連携)

6-1 おおまかなステップ
- 事業所から市町村(障害福祉担当)へ相談
- 強度行動障害児の状態悪化の状況や、既存の支援で困っている点を共有
- 市町村による基準適合・必要性の検討
- 強度行動障害の基準に該当するか、集中的支援が妥当かを確認
- 都道府県等による広域的支援人材の選定・調整
- 名簿から適切な支援者を選び、事業所・家庭との日程調整
- 広域的支援人材と事業所による集中的支援実施計画(案)の作成
- 計画に基づく支援の実施・見直し
- サービス提供実績に基づき、集中的支援加算(Ⅰ)を請求
6-2 「すぐには取れない」点に注意
当加算の算定には、都道府県等との調整に時間を要することが特徴とされています。
- 事業所が「必要だ」と感じてから、実際に広域的支援人材が支援を開始するまで、数週間~数か月程度かかることも想定されます。
- 強度行動障害児が在籍している場合は、状態悪化が見られた段階で早めに自治体へ相談しておくことが重要です。
7.事業所として準備しておきたいポイント
最後に、集中的支援加算を無理なく活用するために、日ごろから意識しておきたいポイントをまとめます。
7-1 行動記録・支援経過の整理
- 強度行動障害児の 行動記録(ABC記録など) を残しておく。
- 状態悪化の前後で、頻度・強度・持続時間 がどう変化したかを示せると、自治体側の判断もしやすくなります。
7-2 家族との情報共有と同意
- 集中的支援実施にあたっては、児童・保護者の個人情報や支援記録を
自治体・広域的支援人材と共有する必要があります。 - 事前に、支援の目的や想定される流れを丁寧に説明し、同意を得ることが大切です。
7-3 職員体制と役割分担
- 広域的支援人材からの助言を、日々の支援に落とし込むキーパーソン(児童発達支援管理責任者など)を明確にしておきましょう。
- 支援計画シートや記録の作成・見直しの時間をシフト上で確保しておくとスムーズです。
8.まとめ
- 集中的支援加算(Ⅰ)は、児童発達支援・放課後等デイサービスにおいて、
状態が悪化した強度行動障害児に対する、広域的支援人材による短期集中的な支援を評価する加算です。 - 単位数は 1,000単位/日、3か月以内・月4回までと高めですが、算定には自治体・広域的支援人材との綿密な連携が不可欠です。
- 日常的な行動記録や支援記録の整理、早めの自治体相談、保護者への丁寧な説明と同意取得が、円滑な活用の鍵となります。
制度のハードルは決して低くありませんが、支援が極めて困難な状況に置かれた児童・ご家族・事業所にとっては、大きな支えになり得る仕組みです。
この記事が、皆さまの事業所で「どのようなケースで集中的支援加算を検討すべきか」を考える際のヒントになれば幸いです。
(参考文献)
障害者総合支援法 事業者ハンドブック〈報酬編〉(中央法規)
障害福祉サービス 報酬の解釈(社会保険研究所)
(参考資料)