障害児通所支援

通所自立支援加算の実務ガイド(放課後等デイサービス)

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「通所自立支援加算」は、こどもの将来の自立につながる“通う力”を計画的に育てる取組を評価する加算です。学校や自宅と事業所のあいだの移動を題材に、公共交通機関の乗り方や移動時の安全配慮などを、職員が付き添いながら段階的に練習します。今回は令和6年度の報酬改定で新設された「通所自立支援加算」について説明します。

目次

  1. 通所自立支援加算とは
  2. 対象サービス名
  3. 算定加算単位
  4. 算定の考え方
  5. 記録・同意・計画の整え方
  6. 算定できないケース
  7. Q&A(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関する Q&A VOL.1 より抜粋)
  8. 導入・運用のコツ

 

  1. 通所自立支援加算とは

 

放課後等デイサービスの利用児について、学校・居宅等と事業所間の移動を「自立して通所が可能」となるよう、職員が付き添って計画的に支援した場合に評価される加算です。

 

 

  1. 対象サービス名

 

放課後等デイサービスのみ(児童発達支援・居宅訪問型児発・保育所等訪問は対象外)。

重症心身障害児は本加算の対象外です。

 

 

  1. 算定加算単位

 

  • 60単位/回(片道)
  • 算定開始から3か月(90日)を限度

90日間のカウントは「当該児の算定を開始した日を起算点」。

 

 

  1. 算定の考え方

  • 放課後等デイサービス職員が付き添い計画的に支援を行う(移動経路の下見・安全確保の体制を含む)。
  • あらかじめ児童および保護者の同意を得て、個別支援計画に位置付ける。
  • 児童の状態に応じ、個別的に支援(必要に応じ職員1名が1児に対応も可)。
  • 支援記録を作成する。
  • 対象は学校・居宅等⇄事業所の移動。同一敷地内極めて近距離は対象外。

 

 

  1. 記録・同意・計画の整え方

 

  • 同意:保護者の書面同意(支援目的・期間・安全配慮・費用負担の範囲を明記)。
  • 計画:個別支援計画に「通所自立」のねらい、段階目標(例:①徒歩で横断歩道を安全に渡る→②公共交通の乗降→③一人での移動へ近づく)を記載。
  • 記録:日時・経路・支援場面(危険予知・声かけ内容)・児の到達度・次回課題を簡潔に。

 

 

  1. 算定できないケース

 

  • 重症心身障害児は対象外
  • 同一敷地内の移動や、学校の目の前に事業所があるケース、徒歩数分等の極めて近距離は、横断歩道などの場面があっても算定不可
  • 自転車の後部座席に乗せて送迎する等、支援の要素が乏しく送迎色が強い場合は算定不可。

 

 

  1. Q&A令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関する Q&A VOL.1 より抜粋)

  • 近距離の扱い(問44)
    同一敷地内、学校の目の前、徒歩数分程度は不可。途中まで別手段(学校送迎バス→最寄バス停)のケースでも、固定経路であればバス停からの通所自立支援部分で算定可。ただし極めて近距離は不可の原則は維持。

 

  • 交通費の扱い(問45)
    職員の乗車料金等を保護者から徴収することはできない。児童本人の運賃は利用者側の準備・負担

 

  • 自転車での通所(問46)
    算定可。地域事情や児の特性に応じ徒歩・公共交通機関以外も選択肢。ただし安全確保が大前提。なお後部座席での送迎のように支援要素が乏しい形態は算定不可

 

  • 付き添う従業者の資格(問47)
    → 指定基準で置くべき従業者に限らないが、趣旨に照らして適切に実施できる従業者を配置すること。

 

  • 90日カウント(当面の取扱い等)
    → 起算は算定開始日

 

 

  1. 導入・運用のコツ

 

安全と段階づくり

  • 事前に経路下見/危険箇所マップ化(横断歩道・交通量・街灯の有無)。
  • 段階目標を小さく設定(例:信号待ち→横断→乗降→乗換→一部区間の単独移動)。

 

合意・可視化

  • 保護者同意に「想定リスクと対応」「費用負担の線引き(職員運賃は徴収不可)」を明記。
  • 個別支援計画に具体的な目標・期間(90日)・評価方法を位置づけ。

 

記録

  • 1回ごとに「日時/区間/支援内容(声かけ・手順の指導)/安全配慮/到達度/次回課題」を簡潔に。

 

線引きの徹底

  • 極めて近距離は算定対象外。送迎色が強い形態は×。固定経路の一部支援は可だが、近距離除外の原則は維持。

 

 

ひとこと実務メモ

  • 「近いけど横断歩道があるから…」はダメというのが公式Q&Aの明確回答。線引きははっきりしています。
  • 固定経路の一部支援は可。ただし「極めて近距離除外」は残る点に注意。
  • 職員の運賃は請求不可。利用者の運賃は利用者側負担。事前同意書と案内文でクリアに。

 

※本稿は、公的資料と実務書に基づき概要を整理したものです。最終判断は最新版の告示・通知・Q&Aおよび各自治体の取扱いにてご確認ください。

 

(参考文献)

障害者総合支援法 事業者ハンドブック〈報酬編〉(中央法規)

障害福祉サービス 報酬の解釈(社会保険研究所)

 

(参考資料)

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(障害児支援関係)の概要(令和6年4月1日)(こども家庭庁)P14

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関する Q&A VOL.1 (令和6年3月29日)(こども家庭庁)P23~P25

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関する Q&A VOL.2 (令和6年4月12日)(こども家庭庁)P6

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