障がい福祉サービスや児童福祉事業者の皆さまにとって、指定申請や各種報告等の手続は避けて通れない業務です。しかしながら、これまでその様式や内容が都道府県等でバラバラだったことで、準備や確認に多くの労力がかかっていました。
そうした課題を受けて、厚生労働省は「障害福祉分野における手続負担の軽減」に向け、様式の標準化や手続の見直しを進めています。今回は、行政書士の立場から、改正のポイント・施行時期・事業者様への影響などを解説します。
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背景:なぜ「様式標準化」が必要なのか
障がい福祉サービスの指定申請、変更届、加算届出、報酬請求などの手続きにおいて、自治体ごとに求められる書類や記載事項が異なることが事業者様の大きな負担となってきました。
また、押印文化や紙ベースでの手続き、自治体への事前相談など、煩雑で非効率なプロセスが現場の負担を大きくしていたのです。これらを解消するため、厚労省は様式の標準化を中心に以下の2つの段階に分けて見直しを進めています。
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改正の全体像と施行時期
【第1段階】令和7年(2025年)4月1日施行
対象:経営情報に関する事項の報告(従業者、設備、収支状況など)
各事業者が提出する「経営情報報告」について、標準様式が定められ、全国一律の形式で提出する仕組みが導入されます。これにより、情報の比較や分析が可能になり、事業の透明性向上が図られます。
主なポイント:
- 従来の様式は自治体ごとにバラバラだったが、今後は全国共通に。
- 法人単位での報告が基本。運営法人全体の経営状況の可視化を意図。
- 様式の詳細は厚生労働省HPに掲載(参考:厚労省公式ページ)
【第2段階】令和8年(2026年)4月1日施行
対象:指定申請・変更届等の様式の標準化
こちらがより実務に大きな影響を及ぼす改正です。障がい福祉サービスの新規指定申請、加算届、変更届など、あらゆる様式について標準化が行われ、すべての都道府県・指定都市等において共通様式の使用が推奨されます。
主なポイント:
- 押印・署名の廃止(一部例外あり)
- 既存様式との大幅な統一化
- 添付書類も含めて標準化される予定
- 電子申請を見据えたデジタル対応も検討中
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事業者への影響と対応のポイント
(1)業務の効率化が進む
書類準備の工数削減、確認ミスの減少、自治体への問合せ回数の低減など、事業者様にとっては利点となります。
(2)情報公開・ガバナンスの強化
経営情報の報告が法人単位で義務付けられることで、情報公開やガバナンスの強化が求められるようになります。従来よりも内部統制や経営の可視化が重要になります。
(3)自治体の対応状況に注目を
形式上は「標準様式の活用を求める」という通知ですが、自治体ごとの実施状況には差異が生じる可能性があります。各地域の運用実態を注視し、行政書士等の専門家のサポートを活用するのが安心です。
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まとめ
厚労省の取り組みは、障がい福祉分野の手続負担を構造的に軽減し、事業者様の業務効率と制度の透明性を高める重要な一歩です。
- 経営情報に関する標準様式の施行:令和7年4月1日
- 指定申請等の標準様式の施行:令和8年4月1日
これにより、事業者様の実務に大きな変化が訪れることが予想されます。今後のスケジュールを把握し、準備を進めておくことが大切です。
おわりに
障がい福祉サービスや児童福祉事業の運営は、制度改正の影響を大きく受ける分野です。制度や書類の変更に適切に対応することが、円滑な運営と将来の成長に直結します。
行政書士として、今後も改正動向を注視しながら、皆さまの事業運営をご支援してまいります。ご不明な点やご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。
👉 詳細は厚生労働省公式ページをご参照ください:
障害福祉分野における手続負担の軽減等について