「個別支援計画未作成減算」は、個別支援計画が作成されていない、または作成・見直し・交付など一連の手続が適切でない場合に適用される減算です。契約後は遅滞なく計画を整備し、原則1か月以内の作成と、利用者等・相談支援事業所への速やかな交付が求められます。今回は「個別支援計画未作成減算」について説明します。
個別支援計画とは?
個別支援計画(障害児通所では通所支援計画 等)は、本人の意向・アセスメントに基づく目標、支援内容、提供時間(頻度)、役割分担、評価と見直し方法を明文化した「支援の設計図」です。
作成の基本線は、契約後遅滞なく・当初は原則1か月以内に作成、その後は見直しの都度、速やかに利用者等と相談支援事業所へ交付(セルフプランで担当相談支援がいない場合は、相談支援への交付は不要)と整理されています。
参考資料 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1 (令和6年3月29日)(厚生労働省)問82
減算がかかるのはどんな時?
- 初回計画を契約後1か月以内に整備していない
- 必要な見直し(例:計画上の提供時間と実態の乖離など)が行われていない/記録がない
- 交付・共有が遅延し、同意や説明の手続が不備
上記のように、「作成→見直し→交付」という一連のサイクルが適切に回っていないと判断された場合に、未作成減算の対象となり得ます。
① 対象となるサービス
個別支援計画の整備が基準で求められる多くのサービスが対象です(例:生活介護、自立訓練、就労系、短期入所、共同生活援助 等の成人サービス、児童発達支援・放課後等デイサービス 等の児童サービス)。
② 減算となる単位数
多くの類型で、段階的に重くなる設計です。
- 適用開始~2か月目まで:所定単位数から30%減算(=×70/100)
- 3か月目以降:所定単位数から50%減算(=×50/100)
代表例:放課後等デイサービス
公式の「障害福祉サービス費等の報酬算定構造報酬算定構造」(放課後等デイサービス給付費)のページに、「通所支援計画が作成されない場合」として上記の30%→50%の段階が示されています(表内右側の減算欄)。
代表例:共同生活援助(グループホーム)
「共同生活援助計画が作成されていない場合」として、当月~2月目まで30%減算/3か月以上連続で50%減算が明記されています。
※どのサービスで、どこに(基本部分か、別欄か)未作成減算が載っているかは、各サービスの「障害福祉サービス費等の報酬算定構造報酬算定構造」を直接確認するのが一番確実です。
「所定単位数」はどこに掛かる?
実務で混同しがちなポイントです。
未作成減算は、原則「基本報酬(基本部分)」に掛かります。 共同生活援助の算定構造図では、基本部分の欄に「計画が作成されていない場合」の減算率が並びます。加算の合計にまで機械的に乗じる趣旨ではありません(「所定単位数」の説明は後段)。
作成・見直し・交付のタイムライン
- 初回(当初)作成:契約後、原則1か月以内に作成(遅滞なく整備)。
- 交付:作成・見直しの都度、速やかに利用者等・指定(障害児)相談支援事業所へ交付。セルフプランの場合は、担当相談支援がいないため相談支援への交付は不要(利用者等への交付は必要)。
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1問82 (令和6年3月29日)(厚生労働省)
- 児童分野:相談支援事業所への交付は「更新毎」でよいと、こども家庭庁のQ&Aに記載されています。
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関する Q&A VOL.1 (令和6年3月29日)問39
サビ管(児発管)欠如減算との「二重減算」になるの?
なりません。 厚労省のQ&A(平成30年度改定・Vol.3 問2)は、
「両者はいずれも事業所の体制に係るもので相互に連動して二重に減算される関係にあることから、減算となる単位数が大きい方のみ適用する」
と明記しています。この扱いは現在も参照されています(自治体の二次審査での判断に留意)。
平成30年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.3 問2(平成30年5月23日)(厚生労働省)
つまずきを防ぐ運用のコツ
- “見直し=変更必須”ではない:変更なしでも見直しの実施記録(面接・評価・結論・日付)は必要。
- 交付の証跡:交付日・交付先・説明者を計画台帳に残す。相談支援への送付は発信記録まで管理。
- 提供時間の整合(児童):計画の時間区分と請求の時間区分が恒常的に乖離しないよう、早めの改訂でリスク回避。
- 自事業の図表を“しおり化”:報酬算定構造の該当ページに付箋(電子でも可)を付け、未作成減算の欄・段階(30→50%)・起算を一枚にまとめて共有。
まとめ
- 未作成・未見直し・未交付は、基本報酬の所定単位数から30%→50%の段階的減算につながります(例:放課後等デイ、共同生活援助)。
- 初回1か月以内の作成と見直しの都度の速やかな交付(児童は更新毎の交付)を徹底し、サービス管理責任者欠如減算(児童発達支援管理責任者欠如減算)との二重適用は「大きい方のみ」という原則も押さえておきましょう。