生活介護

生活介護の「栄養改善加算」を実務目線で解説(令和6年度版)

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令和6年度報酬改定で、生活介護に「栄養スクリーニング加算」と「栄養改善加算」が新設されました。これにより、全利用者の栄養状態を定期的に把握し(スクリーニング)、低栄養・過栄養など栄養リスクがある方に対しては、管理栄養士が中心となる個別的な栄養ケア・マネジメント(栄養改善)を評価できる仕組みが整いました。今回は特に現場運用で問い合わせの多い「栄養改善加算」の基本・算定要件・実務手順を説明します。

 

目次

  1. 栄養改善加算の位置づけと趣旨
  2. 対象サービス名
  3. 算定加算単位
  4. 算定要件
  5. 実務手順
  6. 栄養スクリーニング加算との違い
  7. よくあるつまずきと対応のヒント

 

 

  1. 栄養改善加算の位置づけと趣旨

生活介護において、低栄養・過栄養など栄養状態に課題のある利用者に、個別の栄養食事相談等(栄養改善サービス)を提供した場合に評価される加算です。通所系で栄養ケア・マネジメントを強化する流れの中で創設され、栄養リスクの把握(スクリーニング)と、その後の個別介入(改善)を一体的に促す設計になっています。

 

 

  1. 対象サービス名

 

・生活介護

 

 

  1. 算定加算単位

 

  • 単位数:200単位
  • 算定期間・回数:開始月から起算して3月以内に限り、1月あたり2回まで
  • ただし:3月ごとの評価で改善せず継続が必要と認められる場合は、引き続き算定可能

 

 

  1. 算定要件

 

栄養改善加算の主な要件は次のとおりです。
(1) 体制:事業所の従業者として、または外部連携により管理栄養士を1名以上配置(栄養ケア・ステーション等との連携可)

(2) 初期把握・計画利用開始時に栄養状態を把握し、管理栄養士が中心となって摂食・嚥下や食形態にも配慮した栄養ケア計画を作成(生活介護計画への記載で代替可)

(3) 介入と記録:計画に基づく栄養改善サービス(必要に応じ居宅訪問で食事状況・環境の課題把握、家族等への栄養食事相談を含む)と定期的記録

(4) 評価・情報提供おおむね3月ごとに体重測定等で評価し、相談支援専門員や主治医へ情報提供

 

 

  1. 実務手順

 

  1. 栄養リスクの把握(利用開始時):BMI、体重変化割合、食事摂取量、その他の栄養リスクを確認。摂食嚥下・生活機能・褥瘡・食欲等の問題も併せて確認。
  2. 栄養ケア計画:管理栄養士が中心となり、多職種で課題・目標と介入内容を明確化。本人・家族へ説明し同意取得。生活介護計画内での記載代替も可。
  3. 栄養改善サービスの実施:事業所内アセスメントや居宅での食事状況・環境の具体的課題を把握し、作る人(家族等)への相談・調整を含めて個別支援。介入過程・所見を記録。
  4. 定期評価・情報提供:概ね3月ごとに体重等で評価し、結果を相談支援専門員・主治医へ情報提供。改善が不十分なら要件に沿い継続算定も可能。

 

  1. 栄養スクリーニング加算との違い

 

目的

  • 栄養スクリーニング加算:全利用者の栄養状態を定期把握し、リスクを抽出・共有する仕組み(利用開始時と6月ごと)。
  • 栄養改善加算:リスクがある利用者に対し、管理栄養士を中心とした「個別の栄養管理」を評価。

 

単位・頻度

  • スクリーニング:5単位/回(利用開始時・6月ごと)。
  • 改善:200単位原則3月以内に月2回まで(評価により継続可)。

 

実務上の関係

  • スクリーニングで栄養改善が必要と判断された場合、同じ月でも栄養改善加算を算定可

 

 

  1. よくあるつまずきと対応のヒント

  • 管理栄養士の確保:自前採用が難しい場合は、栄養ケア・ステーション等との外部連携を検討。契約形態・従事時間・記録様式を事前に取り決める。
  • 「計画の置き場所」問題:生活介護では栄養ケア計画を生活介護計画へ内包しても可。
  • 情報提供の抜け漏れ相談支援専門員・主治医へのフィードバックは評価・連携の要。厚労省の様式例に合わせて運用するとスムーズ。
  • スクリーニングから改善へ:スクリーニング実施月に改善加算も算定可能

 

 

まとめ

「栄養改善加算」は、管理栄養士を核にした個別介入を正面から評価する加算です。まずはスクリーニング体制で全体把握を固め、リスクのある方に対し計画→介入→居宅支援→定期評価→情報提供を一連の流れとして運用することが鍵になります。

 

付記|栄養スクリーニング加算との“一体運用”ポイント

  • 全員把握(スクリーニング)→必要者に個別介入(改善)の順。
  • スクリーニング実施月でも、改善加算は要件を満たせば算定可
  • 月内の段取り表(評価→計画→介入→記録→情報提供)を作り、様式と記録の整合を常に担保しておく。

 

※本稿は、公的資料と実務書に基づき概要を整理したものです。最終判断は最新版の告示・通知・Q&Aおよび各自治体の取扱いにてご確認ください。

 

(参考文献)

障害者総合支援法 事業者ハンドブック〈報酬編〉(中央法規)

障害福祉サービス 報酬の解釈(社会保険研究所)

(参考資料)

 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(令和6年2月6日)(厚生労働省)P33

 指定生活介護事業所等における栄養ケア・マネジメント等に関する 事務処理手順及び様式例の提示について(令和6年3月29日)(厚生労働省)

【別紙】栄養スクリーニング・栄養改善様式(令和6年3月29日)(厚生労働省)

栄養・給食に関する事例集(横浜市)第7編

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