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はじめに
2026年(令和8年)12月25日に施行される「こども性暴力防止法(日本版DBS)」。児童発達支援や放課後等デイサービスを運営する事業者様は、法律上の「義務対象事業者」に含まれており、今後の採用活動や雇用管理の進め方を法令に沿ってアップデートしていくことが求められます。
本記事では、当ホームページをご覧の経営者様や管理者様に向けて、日本版DBSを「採用フローへどのように実務的に組み込むか」という点にフォーカスし、こども家庭庁が公表した最新のガイドライン(令和8年1月策定)に基づく必要な知識を整理しました。 自事業所の状況に合わせたルールの見直しや、社内体制の構築にぜひご活用ください。
1.まず確認しておきたい「義務」の範囲と対象者

制度の対象事業者は、大きく「法定義務の事業者」と「任意認定の事業者」に分かれます。児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援は「法定義務の対象」となります。つまり、認定の有無に関係なく、法令に基づく対応が義務付けられます。
確認の対象となるのは、有資格者だけでなく「こどもと接する業務」に従事するすべてのスタッフです。業務の実態として「支配性・継続性・閉鎖性」の3要件をすべて満たす場合は、雇用形態(パート、アルバイト、ボランティア等)にかかわらず対象となります。送迎ドライバーや事務員などを含め、自事業所のどの職種が該当するか、改めて整理しておくことをおすすめします。
2.採用フローのどこに組み込むか(「いとま特例」の活用)
対象となる求職者について「特定性犯罪前科の有無」を確認するタイミングは、実務上「内定後から就労開始前(従事開始前)まで」に行うことが原則です。
しかし、福祉の現場では「急な退職があり、すぐに人員を補充しなければ事業所が回らない」といった事態も想定されます。これに対応するため、ガイドラインでは「いとま特例(やむを得ない場合の特例)」というルールが設けられています。
- いとま特例とは: 急な欠員補充など、事前の確認がどうしても間に合わない事情がある場合、「従事開始から3か月以内」(法人の合併など一定の要件に該当する場合は6か月以内)に確認を行うことが例外的に認められます。
- 特例利用時の重要ルール: 確認が完了するまでの間、事業者はそのスタッフを「特定性犯罪事実該当者」とみなして、原則としてこどもと1対1にさせない(常に他のスタッフが同席する、研修の時間を優先的に充てる等)といった安全確保措置を講じることが必須となります。
実務においては、原則通り「就労前に確認を終えるスケジュール」を組みつつ、やむを得ない場合にはこの特例を活用し、現場のシフトを調整する運用をご検討ください。
3.採用フロー(改訂案)の具体的なステッ

制度開始後、採用フローに確認プロセスを組み込んだ場合の標準的な流れは以下のようになります。
【STEP 1】求人票・応募書類での明示 :求人票の備考欄等に「当施設はこども性暴力防止法の対象施設であり、採用条件として特定性犯罪前科がないことを定めています」と明示することをおすすめします。これにより、後の工程でのトラブルを未然に防ぎやすくなります。
【STEP 2】面接時の説明と誓約書の取得(重要): 面接の場で制度について説明し、内定時(または内定前)には「特定性犯罪前科がないことの誓約書」を取得することをご検討ください。万が一、採用後に前科が発覚した場合、事前に書面で確認を行っていないと「重要な経歴の詐称」として適法に内定取消しや懲戒処分を行うことが法的に難しくなるためです。
【STEP 3】犯罪事実確認の交付申請(システム利用):こども家庭庁が整備するシステムを通じて確認手続きを行います。この際、戸籍等の情報は事業者を経由せず、求職者本人がマイナンバーカードとスマートフォンのアプリを使って直接システムへ提出する仕組みとなっています。
【STEP 4】結果の受領と就労可否の判断 :こども家庭庁から交付される犯罪事実確認書を受領し、就労の可否を判断します。特定の性犯罪歴がある者をこどもと接する業務に従事させることは禁止されています。
【STEP 5】就労開始と記録の適切な消去: 確認結果は極めて機微な個人情報です。書類は法定の期間内(在籍者は5年ごとの再確認に合わせて古い記録を消去、退職者は退職後30日以内に消去など)に、速やかにシステム上で消去するルールを定めておくことをおすすめします。
4.既存職員への対応(分散申請のスケジュール)
日本版DBSは新規採用者だけでなく、施行時点(2026年12月25日)ですでに在職している職員(施行時現職者)についても確認が義務付けられます。
ここでご注意いただきたいのは、全国の事業者が施行日に一斉に申請するわけではないという点です。システム混雑を防ぐため、「令和9年(2027年)4月以降、都道府県ごとに割り当てられた期間(1ヶ月間)」に順次、分散して申請を行うルールとなっています。
自事業所が何月になるかは、準備期間を踏まえて事前に国からシステム上で通知されます。通知を受けた事業所は、割り当てられた「申請対象月の4ヶ月前」に、改めて現職スタッフへ戸籍提出等の準備をご案内することになります。 なお、提出に用いる戸籍の電子証明書には「3ヶ月」の有効期限があるため、早く取得しすぎて期限切れにならないよう、この「4ヶ月前」という案内のタイミングを守ることが実務上のポイントとなります。まずは自事業所のどのスタッフが対象になるかのリストアップから着手されることをおすすめします。
5.整備をご検討いただきたい書類・規程類
採用フローの変更に合わせて、関連書類や社内規程も見直しが必要になります。最新のガイドラインには各種ひな型も示されていますので、施行前にたたき台を作成しておくことをおすすめします。
- 就業規則: 採用条件に犯罪事実確認を明記する条項や、虚偽申告があった場合の「重要な経歴の詐称」に関する内定取消し・懲戒事由の追加。
- 特定性犯罪前科に関する誓約書: 前科がないことの宣誓と、虚偽があった場合の内定取消しへの同意書。
- 児童対象性暴力等対処規程・情報管理規程: 極めて機微な犯歴情報を「誰が・どう管理し・いつ消去するか」、また相談窓口等の体制を厳格に定めた規程。
6.施行までの手続きとスケジュール感

手続きは原則オンラインで行われるため、以下のスケジュールに沿ったIT環境の準備をご検討ください。
- 〜2026年4月末頃(IT準備期): 法人代表者の「GビズID(プライム)」の取得完了。マイナンバーカードを活用すればオンラインで郵送不要の取得も可能です。
- 2026年4月〜6月頃(事業者登録期): 取得したGビズID等を含む事業者情報を、所轄庁を通じてシステムへ事前登録(一括登録)。
- 2026年11月〜12月上旬(権限設定準備期): 施設内でシステムにアクセスできる担当者(閲覧権限者)を最小限に絞り込み、設定の準備を行います。
- 2026年12月25日(施行日): 新規採用者への確認フロー適用開始。
システム利用の入り口となる「GビズID(プライム)」の取得は、令和8年(2026年)4月末頃までに完了させておくことが国から強く求められています。未取得の場合は、早めのお手続きをご検討ください。
まとめ:法定事業者マーク(こまもろうマーク)の活用で信頼の可視化を
こども家庭庁は、制度に対応している義務対象事業者向けに「法定事業者マーク(こまもろうマーク)」を公表しています。このマークは、事業所のパンフレットやWebサイト、求人票などに表示することが可能です。
法令への対応は実務的な負担を伴いますが、同時に「こどもたちの安全を第一に考え、厳格なコンプライアンス体制を敷いている事業所である」という強力な証明にもなります。採用活動においても、保護者からの信頼獲得においても、この制度への対応を前向きな「事業所のブランディング」として活用していくことをおすすめします。