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はじめに
「児童発達支援と放課後等デイサービス、どちらから始めるべきだろう?」 「別々に作るとコストがかさむし、何か効率的な運営方法はないかな……」
新規に障害福祉事業への参入を検討されている事業者様にとって、このような悩みは尽きないものです。特に「多機能型(併設)」という選択肢は、人件費や家賃を抑えられる非常に魅力的な仕組みですが、いざ調べ始めると「結局、基準はどう違うの?」「どっちのルールを優先すればいいの?」と、複雑な制度の壁に突き当たってしまう方も少なくありません。
せっかくの「地域のお子様を支えたい」という素晴らしい想いも、最初のボタンを掛け違えてしまうと、後の運営指導での返還リスクや、経営の圧迫に繋がってしまう恐れがあります。
そこで本記事では、これまで開設支援に携わってきた視点から、多機能型で開設するメリット・デメリット、そして絶対に外せない設置基準のポイントをわかりやすく整理しました。
この記事を読み終える頃には、多機能型の仕組みがすっきりと理解でき、あなたが目指すべき施設の形が明確に見えてくるはずです。理想の施設づくりへの第一歩を、ここから一緒に踏み出してみましょう。
多機能型とは?児童発達支援と放課後等デイサービスを併設する仕組み

障害福祉サービスを検討する際、まず耳にするのが「児童発達支援(児発)」と「放課後等デイサービス(放デイ)」という2つの言葉です。
簡単に言うと、児発は「未就学児(小学校入学前)」、放デイは「就学児(小・中・高校生)」を対象としたサービスです。通常、これらは別々の事業所として運営されますが、この2つを一つの拠点(事業所)でまとめて提供する形態を「多機能型」と呼びます。
ひとつの窓口で、切れ目のない支援を
本来、児発を利用していたお子様は、小学校へ入学すると同時に放デイへと移る必要があります。しかし、別々の事業所だと「環境の変化に馴染めない」「また一から契約し直し」といった保護者様やお子様への負担が生じます。 多機能型であれば、通い慣れた場所で、気心の知れたスタッフに見守られながら成長に合わせた支援を継続できます。この「一貫性」は、ご利用者様にとって最大の安心材料となり、選ばれる施設づくりの強みになります。
「シェア」することで生まれる経営の効率化
事業者側の最大のメリットは、ヒト・モノ・カネの効率化です。 通常、別々に運営する場合はそれぞれに「10名以上」の定員が必要ですが、多機能型なら「児発5名+放デイ5名=合計10名」といった形で、小規模からスタートすることが可能です。
また、本来は事業所ごとに配置しなければならない「管理者」や「児童発達支援管理責任者(児発管)」といった責任者も、多機能型なら一人で兼務することができます。さらに、訓練室やトイレ、相談室などの設備も共有できるため、家賃や内装工事費、備品代などのコストを大幅に抑えることができるのです。
柔軟な受け入れで稼働率を安定させる
「午前中は未就学児(児発)、放課後は小学生以上(放デイ)」といった形で、時間帯によって柔軟に使い分けることも可能です。地域のニーズに合わせて「今は児発の希望者が多いから児発の枠を広げよう」といった柔軟な定員管理ができるのも、多機能型ならではの賢い運営スタイルと言えるでしょう。
多機能型で開設する3つの大きなメリット

人件費を抑え、専門スタッフを有効活用できる
福祉施設の運営で最も大きな経費は「人件費」です。通常、児発と放デイを別々に立ち上げる場合、それぞれに「管理者」や「児童発達支援管理責任者(児発管)」という責任者を置かなければなりません。しかし、多機能型であれば、これらの責任者を一人で兼務させることが可能です。 また、現場スタッフについても、例えば「午前は児発担当、午後は放デイ担当」として一人の職員に辞令を出す(兼務する)ことができます。 もちろん、サービス提供時間中はお子様の人数や安全確保に応じたスタッフ配置(例:それぞれの単位で指導員2名以上など)が必要ですが、 別々の事業所でそれぞれ専任スタッフを雇う場合に比べ、採用人数や人件費の無駄をなくし、効率的なシフトを組むことができるのです。 特に、全体の利用定員が19名以下の小規模な多機能型であれば、職員の配置基準を事業所全体で合算して計算できる『特例』が適用されるケースが多く、採用コストを大幅に最適化できます。
初期投資(家賃・内装費)を賢く節約できる
新しく施設を構える際、物件の広さや設備は悩みの種です。単独事業所であれば、それぞれに十分な広さの「訓練室」や「相談室」が必要になりますが、多機能型ならこれらを「共有スペース」として活用できます。
例えば、一つの広い訓練室を、時間帯によって「午前中は児発、午後は放デイ」と使い分けることで、スペースを有効活用できます。ただし、夏休みなどは午前中から放デイの児童が来るため、時間が重なる可能性があります。大阪市などの一部自治体や特定エリアでは、時間が重なる時間帯の『最大利用人数』に応じた面積を厳格に求められることがあります。物件契約前に、必ず指定権者のルールを確認しましょう。
利用者様が離れない「安定した経営」が叶う
経営面で最も怖いのは、ご利用者様がいなくなることです。児発のみの運営だと、お子様が小学校に入学するタイミングで必ず「退会」が発生し、そのたびに新しいご利用者様を探す営業活動が必要になります。
多機能型なら、小学校に上がってもそのまま放デイへ移行してもらえるため、ご利用者様が数年間にわたって長く通ってくれます。 保護者の方にとっても、「環境が変わる不安」がなく、信頼しているスタッフに引き続きお願いできることは大きなメリットです。 この「ご利用者様の定着」こそが、広告費をかけずに定員を埋め続け、経営を安定させる最大の鍵となります。
必ず押さえておくべき「多機能型」の設置基準
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人員基準|スタッフの「兼務」と人数の数え方
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設備基準|「広さ」と「使い分け」のルール
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定員設定|「合計10名以上」の考え方
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事務負担の軽減で「減算リスク」を回避
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複雑な「加算」の管理漏れで収益が減る
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自治体の「ローカルルール」を知らずに計画が止まる
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「年齢の差」によるトラブルと支援の質の低下
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【半年前〜】「事前の調査」が成否を分ける
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【4〜3ヶ月前】「法人設立」と「物件の改修」
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【2ヶ月前】「指定申請書」の提出(ここが正念場!)
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【1ヶ月前】「現地確認」と「備品の搬入」
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【オープン当日】いよいよ事業開始!
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多機能型の一番のメリットはスタッフの兼務ですが、誰でも自由に兼務できるわけではありません。 まず、司令塔となる「児童発達支援管理責任者(児発管)」は、多機能型であれば一人で両方の事業を管理できます。しかし、現場のスタッフ(保育士や指導員)については、「その時間に実際に支援しているお子様の数」に合わせて配置する必要があります。
例えば、午前中に児発のお子様が5人、午後に放デイのお子様が10人来る場合、それぞれの時間帯で必要なスタッフの数は変わります。「一人いれば両方使い回せる」というわけではなく、あくまで「お子様の人数に対するスタッフの比率」を守ることが大前提です。
施設全体の広さについてもルールがあります。最も重要なのは、お子様が活動する「指導訓練室」の面積です。 基本的には、「お子様一人あたり2.47㎡以上」という広さを確保しなければなりません。多機能型で児発と放デイを同じ部屋で実施する場合、両方の定員を合わせた人数分(例:定員10名なら24.7㎡以上)の広さが必要になるのが一般的です。
また、相談室や洗面所、トイレなどは共用できますが、感染症対策やプライバシーへの配慮がなされているかなど、自治体ごとに細かいチェックが入ることもあります。
ここが少し勘違いしやすいポイントです。 多機能型の場合、事業所全体の合計定員は「10名以上」でなければなりません。例えば、「児発5名+放デイ5名=合計10名」という設定は可能です。しかし、どちらかの事業を「0名」にすることはできません。最低でも、それぞれの事業に1名以上の定員を割り振る必要があります。
また、自治体によっては「多機能型にするなら、それぞれの事業の定員は最低5名ずつにしてください」といった独自のルール(ローカルルール)を設けている場合もあります。
※全体の定員が20名を超える場合は、それぞれの定員を5名以上にする必要があります。
令和6年度の法改正により、「業務継続計画(BCP)の策定」や「安全計画」に加え、新たに5領域(健康・生活、運動・感覚など)を網羅した「支援プログラムの公表」が義務化されました。 これらを作成・公表していない場合、報酬が減額される(減算)という厳しいペナルティが課せられます。 多機能型であれば、これらの計画書やマニュアルを 事業所全体で一本化して作成・運用することが可能な場合が多く 、別々に運営するよりも事務作業の負担を大幅に減らすことができます。煩雑な事務作業によるミスや漏れを防ぐことは、直結して経営リスクの回避につながります。
ここに注意!多機能型運営でよくある失敗と対策
障害福祉サービスには、基本料金のほかに「加算(オプション料金)」という仕組みがあります。 多機能型の場合、児発と放デイで加算のルールが微妙に異なることが多々あります。例えば、「保育士を多く配置した際にもらえる手当」の計算方法が、児発と放デイで別々に設定されているケースです。
これらを正しく理解して請求しないと、本来もらえるはずの報酬をもらい損ねたり、逆に間違えて多く受け取ってしまい、後の「運営指導(監査)」で多額の返金を命じられたりするリスクがあります。
【対策】 開設時から、児発・放デイそれぞれの報酬体系を整理した「独自の管理表」を作成し、事務作業のミスを防ぐ体制を整えましょう。
実は、福祉のルールは全国一律ではありません。厚生労働省のガイドラインとは別に、各自治体が独自の判断基準(ローカルルール)を持っていることがあります。 「他の市では多機能型が認められたのに、この市では『今は児発のニーズが足りているから、多機能型は認めない』と言われた」というケースは珍しくありません。
【対策】 物件を契約する前に、必ず管轄の役所へ「事前相談」に行くことが鉄則です。経験者に同行を依頼し、その地域特有のルールを早めに聞き出すのが最も安全です。
多機能型では、同じ空間に「3歳の未就学児」と「18歳の高校生」が共存する可能性があります。体の大きさも動きも全く異なるため、小さなお子様が怪我をしてしまったり、逆に大きなお子様が窮屈な思いをしてストレスを溜めてしまったりすることがあります。
【対策】 完全に部屋を分けられなくても、パーテーションで区切る、または「午前中は児発、放課後は放デイ」と時間を分けるなどの工夫が必要です。また、スタッフがそれぞれの年齢層に合わせた関わり方を学べるよう、内部研修の時間を確保しましょう。
多機能型開設までの最短スケジュール

まずは、どのような施設にしたいかのコンセプトを固め、同時に「物件探し」と「役所への事前相談」を並行して行います。 多機能型の場合、その物件で「児発と放デイ、両方の面積基準を満たせるか」を厳しくチェックされます。物件を借りてしまった後に「この広さでは許可が下りない」と言われるのが最大の悲劇です。契約前に、必ず図面を持って役所の担当窓口へ足を運び、多機能型としての開設が可能か確認を取りましょう。
障害福祉サービスは個人事業主では行えません。法人(株式会社や合同会社、一般社団法人など)を持っていない場合は、このタイミングで設立登記を行います。 並行して、物件の内装工事(バリアフリー化や消防設備の設置)を進めます。多機能型は消防法上の基準も厳しいため、消防署との協議も欠かせません。
役所に対して「事業の許可(指定)」をもらうための膨大な書類を提出します。多機能型では、児発と放デイの2つの申請書を同時に作成するイメージです。運営規程や従業員の給与体系、支援プログラムの内容など、数百枚に及ぶ書類を不備なく揃える必要があります。
書類が受理されると、役所の担当者が実際に施設を見に来る「現地確認」が行われます。図面通りに壁が作られているか、手すりがついているかなどを細かくチェックされます。この時期に、机や椅子、おもちゃ、パソコンなどの備品を揃え、スタッフの研修もスタートさせます。
無事に「指定通知書」が届けば、いよいよオープンです。しかし、オープンして終わりではありません。並行して利用希望者様への見学会や、相談支援専門員への営業活動を行い、定員を埋めていく作業が始まります。
まとめ:多機能型での開設に迷ったら経験者に相談を
ここまで、児童発達支援と放課後等デイサービスを併設する「多機能型」の魅力や、守るべきルールについてお伝えしてきました。
多機能型は、お子様の成長に長く寄り添えるという「支援のやりがい」と、コストを抑えて運営を安定させるという「経営の合理性」を両立できる、非常に優れた仕組みです。しかし、いざ具体的に準備を始めようとすると、「自分の地域ではどうなのか?」「この物件で本当に大丈夫か?」といった、言葉にできない不安が次々と湧いてくるかもしれません。
ひとりで抱え込まず、客観的な視点を取り入れる
福祉事業の開設準備は、経営・法律・現場運営という、全く異なる3つの視点を同時に持つ必要があります。オーナー様お一人で、複雑な法律の条文を読み解き、自治体との細かな調整をすべてこなすのは、想像以上に体力と時間を消耗する作業です。
もし、少しでも「自分の判断に自信が持てない」と感じる部分があれば、まずは自治体の指定担当窓口へ相談するか、障害福祉に詳しい専門家の意見を聞くことをお勧めします。 特に、物件の要件や加算の算定可否は、契約後・採用後では取り返しがつかないことがあります。指定申請の手続きはゴールではなく、スタートに過ぎません。
最近の自治体の運営指導では、
「書類の不備」や「加算算定のミス」による多額の報酬返還事例も報告されています。 私たち行政書士のような専門家は、単に手続きを代行するだけでなく、「この自治体はここを厳しく見る傾向にある」「この加算を取るには、日々の記録こう残すべき」といった、事業所指定後の「運営リスク」まで見据えた実務的な視点を提供し、皆様の大切な事業とスタッフを守る役割も担っています。
「理想の施設」への第一歩を確実なものに
一番もったいないのは、制度の解釈に迷って立ち止まってしまったり、間違った知識で進めて後から大きな修正を迫られたりすることです。
こんなことを聞いてもいいのかな?」と思うような小さな疑問でも構いません。まずは頭の中にある不安を外に出してみることで、やるべきことが整理され、理想とする施設づくりへの道筋が見えてくるはずです。 お子様や保護者様が安心して通える場所を、一日も早く、そして確実な形で作り上げられるよう、この記事が皆様の「想い」を形にする一助となれば幸いです。