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障害福祉サービス全般

障害福祉サービスの開業準備/指定申請をクリアする「4つの基準」完全ガイド

(初回無料)障がい(障害)福祉施設の指定申請・運営は、 当事務所のサポートをご活用ください。

「障害福祉サービスを開業したいけれど、何から手をつければいいのかわからない…」 「役所のホームページを見たけれど、専門用語ばかりで頭に入ってこない」 「もし物件を契約した後に『許可が下りない』と言われたらどうしよう…」

今、このページをご覧の皆様は、そんな不安や焦りを感じているのではないでしょうか。

障害福祉事業のスタートラインである「指定申請」は、数ある行政手続きの中でもトップクラスの難易度と言われています。法人設立、スタッフの確保、物件の消防設備、そして膨大な書類作成……。 残念ながら、「なんとかなるだろう」という甘い見通しで進めた結果、開業が数ヶ月遅れ、数百万円の家賃や人件費を無駄にしてしまう事業者様が後を絶ちません。

しかし、ご安心ください。 指定申請には、必ず押さえるべき「4つの柱」があります。ここさえ正しく理解して順番通りに進めれば、開業への道筋は驚くほどクリアになります。

今回はこの難解な指定基準をどこよりもわかりやすく噛み砕いて解説します。

「この記事を読み終える頃には、事業所様が今すぐ成すべき一歩が明確になっているはずです」

理想の事業所を最短ルートで実現するために、まずは全体像から一緒に見ていきましょう。

指定申請の全体像/許可をもらうための「4つの基準」とは?

障害福祉サービスを始めるにあたって、皆様が最初に目指すべきゴールは、行政から「指定」を受けることです。

飲食店でいう「営業許可証」のようなものですが、障害福祉の指定は、飲食店の許可よりもはるかにハードルが高く、チェックされる項目が膨大です。なぜなら、この事業は皆様の税金や社会保険料で賄われる公的なサービスだからです。

「難しそう…」と身構える必要はありません。複雑に見える要件も、整理すれば以下の「4つの基準」に分類できます。この4つの柱が一つでも欠けると、指定は絶対に下りません。逆に言えば、この4つさえしっかり固めれば、開業への道は開けます。

  1. 法人格の要件(誰がやるのか?)

まず大前提として、個人事業主(フリーランス)ではこの事業はできません。必ず「法人」である必要があります。 株式会社、合同会社、NPO法人、一般社団法人など、形態は問いませんが、会社を作る必要があります。ここで一つ落とし穴なのが、会社の憲法とも言える「定款(ていかん)」の中身です。事業目的に「障害福祉サービスを行う」という趣旨の文言が、行政の指定する正しいルールで記載されていなければなりません。

  1. 人員配置基準(誰が働くのか?)

ここが最大の難関と言われています。「人が足りていればいい」だけではありません。「資格や経験を持った特定の人」が必要です。 特に重要なのが、ご利用者様の支援計画を作る「サービス管理責任者(サビ管)」です。サビ管になるには実務経験と特定の研修受講が必須であり、明日すぐに採用できるような人材ではありません。この「人」が決まらないと、申請書すら出せないのが現実です。

  1. 設備基準(どこでやるのか?)

「空き家があるからそこでやりたい」と思っても、すぐに契約してはいけません。 障害福祉サービスを行う建物には、建築基準法や消防法といった厳しいルールが適用されます。「部屋の広さは十分か」「洗面所の数は足りているか」「鍵付きの書庫はあるか」など、図面レベルでの細かいチェックが必要です。契約後に「ここでは営業できません」と役所に言われてしまう悲劇だけは避けなければなりません。

  1. 運営基準(どうやって運営するのか?)

最後はソフト面のルールです。虐待防止の対策はどうするか、苦情が来たらどう対応するか、個人情報をどう守るか。これらを口約束ではなく、しっかりとした「マニュアル(規程)」として整備し、それ通りに運用できる体制があるかを審査されます。

【ワンポイントアドバイス】

これら4つの基準は、パズルのように全てが噛み合っている必要があります。「人は確保できたけど物件がダメだった」「物件は契約したけどサビ管が見つからない」となると、家賃や人件費だけが出ていくことになります。

まずはこの4つの全体像を頭に入れ、一つひとつ確実にクリアしていくことが、最短での開業への近道です。

  1. 法人格の要件/定款の「目的」に注意

障害福祉事業を立ち上げる際、まず最初にクリアしなければならないのが「法人格(ほうじんかく)」の取得です。

カフェや雑貨店であれば「個人事業主」として開業届一枚でスタートできますが、障害福祉サービスは個人事業主では行えません。必ず「法人(会社)」である必要があります。

これは、障害福祉サービスが公的な資金(税金など)で運営され、利用者様の生活を長期にわたって支える責任ある事業だからです。個人の事情で簡単に「辞めます」とならないよう、永続性のある組織であることが求められるのです。

法人の種類は問いません。一般的に多い「株式会社」や「合同会社」をはじめ、「NPO法人」や「一般社団法人」でも申請可能です。ご自身の資金状況やイメージに合わせて選んでいただいて構いません。

最大の落とし穴は「定款(ていかん)」の書き方

「よし、会社を作ろう!」と司法書士さんにお願いしたり、ネットの会社設立サービスを使ったりして会社を作る方が多いですが、ここで非常に多くのトラブルが発生しています。

問題になるのは、会社の憲法とも言える「定款(ていかん)」に記載する「事業目的」です。

定款には「この会社は何のビジネスをする会社か」をリストアップする欄がありますが、ここに単に「障害福祉事業」「グループホームの経営」と書いただけでは、指定申請の窓口で「これでは受け付けられません」と突き返されてしまいます。

役所は「法律に基づいた正しい表記」を求めます。 例えば、以下のような長く専門的な文言が一字一句正確に入っていなければなりません。

「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」

これが入っていないと、たとえ会社が登記されていても、行政の指定(許可)は下りません。

「後で直せばいい」では3万円の損!?

「書き忘れていたら、後で追加すればいいのでは?」と思われるかもしれません。確かに修正は可能ですが、定款の目的を変更して法務局に登記し直すには、登録免許税という税金が3万円かかります。 さらに司法書士さんへの報酬も発生すれば、痛い出費となります。

また、賢い事業所様は、将来を見越して「今はやらない事業」も最初から目的に入れておきます。 例えば、「数年後には『移動支援』や『相談支援』もやりたい」と思った時、それらが定款に入っていなければ、その都度3万円を払って書き直すことになります。

「最初はA型事業所だけだけど、将来の可能性も含めて、どんな文言を入れておくべきか?」

会社を作ってしまってからでは手遅れになることもあります。設立の手続きをする前に、ぜひ一度、障害福祉専門の行政書士にご相談ください。「指定申請に通る定款」かつ「将来の無駄な出費を防ぐ定款」をご提案いたします。

  1. 人員配置基準/最もハードルが高い「人」の要件

障害福祉サービスの指定申請において、物件探し以上に難航し、多くの開業予定者を悩ませるのが「人員配置基準(スタッフの確保)」です。

コンビニや飲食店であれば、「明日から働ける元気な人」を採用すればすぐオープンできます。しかし、障害福祉の世界ではそうはいきません。 法律で決められた「資格」や「実務経験」を持つ特定の人を配置しなければ、そもそも申請書を受け取ってもらえないのです。

主な役割は以下の3つです。

サービス管理責任者(通称:サビ管)

ここが最大の難関です。 「サビ管」とは、利用者様一人ひとりの支援計画(個別支援計画)を作成し、現場スタッフをまとめるリーダー役です。 このサビ管になるための条件は非常に厳しく、原則として以下の2つを両方満たす必要があります。

  1. 3年〜8年以上の実務経験(持っている資格によって年数が変わります)
  2. 国や県が指定する「研修」の修了(基礎研修+実践研修など)

単に「やる気がある人」ではなれません。すでに要件を満たしている有資格者を採用市場から探してくる必要がありますが、どの事業所も喉から手が出るほど欲しがっているため、採用は争奪戦です。「物件は決まったのに、サビ管が見つからず家賃だけ払い続けている」というケースも珍しくありません。

管理者

事業所全体の責任者、いわゆる「店長」や「所長」にあたるポジションです。 意外かもしれませんが、管理者には特別な資格要件がないケースがほとんどです(※一部サービスを除く)。実際はサービス管理責任者が管理者を兼務し、管理とサービスを行うことが多いです。

生活支援員・世話人・職業指導員など

実際に現場で利用者様のケアやサポートを行うスタッフです。 ここでややこしいのが「常勤換算(じょうきんかんさん)」という計算ルールです。

例えば「スタッフが2人いればOK」という単純な話ではありません。「週40時間働く人を『1.0人』と数え、合計で〇〇人分以上の労働時間を確保しなさい」といった計算が求められます。 パートタイムの方を組み合わせることも可能ですが、シフト表を組んで計算上の数字(2.5人分など)を満たす必要があり、パズルのような調整が必要です。

【ワンポイントアドバイス】

「人は後でなんとかなる」は禁物です。 指定申請の書類には、採用予定者の名前や資格証の写し、雇用契約書が必要になります。つまり、申請を出す時点ですでに「採用(内定)」を求められています。

物件契約のハンコを押す前に、まずは「サビ管になってくれる人のアテはあるか?」を最優先で確認することをおすすめします。ここがクリアできないと、事業はスタートラインにも立てません。

  1. 設備基準/契約前に必ず確認すべき「物件」の要件

障害福祉サービスを開業する際、最も取り返しのつかない失敗が起きやすいのが「物件選び」です。

「家賃が安くて広い一軒家を見つけた!他の人に取られる前に契約しよう!」 この判断が、数百万円の損失を生む最大の落とし穴です。

なぜなら、普通の人が住むための「住宅」と、障害福祉サービスを行うための「施設」では、法律で求められる建物の強さや安全基準が全く異なるからです。 内見(下見)の際に、絶対にチェックすべきポイントは以下の3つです。

「用途変更」の壁(建築基準法)

建物には、法律で決められた「使い道(用途)」が登録されています。一般的な一軒家やマンションは「居宅(住む場所)」として登録されています。 これを「福祉施設」として使う場合、建物の延床面積が200㎡(約60坪)を超える物件だと、役所に「用途変更」という複雑な建築申請を出さなければなりません。 これには建築士への高額な依頼料がかかるほか、そもそも建物の構造上、許可が下りないケースも多々あります。「広いから良い」とは限らないのです。

「消防設備」の壁(消防法)

ここが最もお金がかかるポイントです。 障害をお持ちの方が利用する施設は、一般住宅よりもはるかに厳しい防火対策が求められます。 見た目は普通の一軒家でも、事業所として使うなら「自動火災報知設備」や「誘導灯」、場合によっては「スプリンクラー」の設置が義務付けられることがあります。 これらの工事見積もりをとったら「100万円以上かかると言われた」という話はよくあります。契約後にこの事実を知ると、予算計画が完全に崩壊してしまいます。

「区画・間取り」の壁

「部屋数は足りているか」だけではありません。「プライバシー」と「衛生」がキーワードです。 例えば、グループホームの場合、居室(利用者が過ごす部屋)の広さは収納を除いて7.43㎡(約4.5畳)以上必要という決まりがあります。 また、洗面所とトイレが一緒になっているタイプや、居室を通らないとトイレに行けない間取りなどは、プライバシーの観点からNGが出ることがあります。

【ワンポイントアドバイス】

不動産屋さんは物件のプロですが、障害福祉の設備基準のプロではありません。「福祉での利用も相談可」と図面に書いてあっても、それが行政の指定基準を満たしている保証にはなりません。

賃貸借契約のハンコを押す前に、図面を持って役所に相談に行くか(事前協議)、専門家に判断を仰ぐことをおすすめします。「契約したけど工事ができない(指定が下りない)」という最悪の事態を防ぐタイミングは、契約前の今しかありません。

  1. 運営基準/適切なサービス提供体制

最後にご紹介するのは、「運営基準」です。

ここまで解説した「法人・人員・設備」が、事業を行うための「ハードウェア(器)」だとすれば、運営基準はそこでどのようにサービスを動かすかという「ソフトウェア(中身)」のルールです。

役所は申請の段階で、「この事業所は、開業初日からトラブルなく、安全にサービスを提供できる準備ができているか?」を厳しく審査します。具体的には、以下の体制が整っていることが求められます。

マニュアル(規程)の整備

「利用者の安全をどう守るか」「台風や地震が来たらどうするか」「感染症が流行ったらどうするか」。これらを口約束や「その場の判断」で行うことは許されません。 すべて文章化された「マニュアル(指針)」として整備しておく必要があります。 特に近年は、以下の項目について非常に厳しくチェックされます。

  • 虐待防止措置: 研修の実施計画や、虐待防止委員会の設置など。
  • BCP(業務継続計画): 災害時や感染症発生時でも事業を止めないための計画書。
  • ハラスメント対策: 職員を守るための窓口設置など。

サービスの質の確保(PDCAサイクル)

障害福祉サービスは、なんとなくお世話をするものではありません。 「どんな目標のために、どんな支援をするか」という「個別支援計画」を作成し、計画通りに支援を行い、定期的に見直す(モニタリングする)というサイクルが義務付けられています。 この一連の流れを記録として残すための様式(フォーマット)が準備されているかも確認されます。

苦情対応と事故対応

「利用者様からクレームがあったとき、誰がどう対応し、どう記録に残すか」「怪我や事故が起きたとき、どこの病院や家族に連絡するか」。 これらが明確に決まっており、緊急連絡網などが整備されている必要があります。また、利用者にサービスの重要事項を説明するための「重要事項説明書」の作成も必須です。

【ワンポイントアドバイス】

「マニュアルなんて、ネットに落ちている雛形(ひながた)をコピーすればいいんでしょ?」 そう思っているなら、非常に危険です。

役所は「マニュアルを持っていること」だけでなく、「その内容を管理者が理解し、実際に運用できるか」を見ています。 ネットで拾った他社の名前が入ったままのマニュアルを提出してしまい、審査官の心証を悪くするケースも少なくありません。 また、運営基準は「守っていないと、開業後の監査(運営指導)で報酬を返還させられる」リスクに直結します。

開業はゴールではなくスタートです。自分たちが無理なく守れる、実態に即したルール作りを最初に行うことが、息の長い経営の秘訣です。

要注意!自治体ごとの「ローカルルール」の存在

ここまで解説した3つの基準(法人・人員・設備)を完璧に守っていても、最後に立ちはだかる見えない壁があります。それが、自治体ごとの独自の決まり=「ローカルルール」です。

「法律は日本全国どこでも同じじゃないの?」 そう思われるのが普通ですが、障害福祉の世界では少し事情が違います。 国の法律(厚生労働省令)は大枠のルールを決めていますが、細かい運用の判断は、許可を出す権限を持つ自治体(都道府県や中核市など)に任されています。

その結果、「隣のA市ではOKだったことが、B市ではNG」という現象が頻繁に起こります。

ネットの情報や「知人の話」を鵜呑みにするのは危険

よくある失敗例をご紹介します。

  • 設備のルールの違い 「鍵付きのロッカーが必要か?」「パーティションの高さは何センチ必要か?」 ある市では「カラーボックスでOK」と言われたのに、別の市では「鍵付きの強固なロッカーでないと認めない」と言われることがあります。
  • スケジュールの違い 「申請書類はいつまでに提出すべきか?」 多くの自治体は「指定日の1ヶ月前」ですが、中には「2ヶ月前までに事前協議を完了させること」という厳しいスケジュールを組んでいる自治体もあります。これを知らずに進めると、開業が1ヶ月、2ヶ月と後ろ倒しになり、その分の空家賃が発生します。
  • 人員の研修要件の違い 「サビ管の研修修了証、他県で取ったものは有効か?」 原則は有効ですが、自治体によっては追加の講習を求められるケースがあります。

ネット検索で出てきた記事や、他のエリアで開業している知人の「ウチの時はこうだったよ」というアドバイスは、あなたのエリアでは通用しないかもしれません。

必須のアクション:「事前協議(じぜんきょうぎ)」

こうしたローカルルールの罠にはまらない唯一の方法は、「事前協議(事前相談)」です。

物件を契約したり内装工事を始めたりする前に、図面と事業計画を持って、管轄の役所の窓口へ「この内容で申請を出しても大丈夫ですか?」と聞きに行くのです。 多くの自治体では、この事前協議を義務付けています。

【ワンポイントアドバイス】

役所の担当者は「申請の手引き」に書いていないことでも、窓口では「当市ではこういう指導をしています」と口頭で伝えてくることがあります。

私たち専門家は、普段から複数の自治体とやり取りをしているため、「あの市は設備に厳しい」「この市は書類の期限が早い」といった「肌感覚」や「最新の傾向」を把握しています。 「自分のエリアのルールがよくわからない」という方は、役所への事前協議への同行や代行も含めて、ぜひ専門家を頼ってください。それが最短ルートでの開業につながります。

まとめ|指定申請は段取りが命

ここまで、障害福祉サービスの指定申請に必要な「4つの基準(法人・人員・設備・運営)」について解説してきました。 「想像以上にやることが多いな…」「自分だけで全部できるだろうか…」と、少し不安に感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

その危機感は、決して間違いではありません。 指定申請の本当の難しさは、単に書類が多いことではなく、これら4つの要素が「すべて同時に、完璧に揃っていないといけない」という点にあります。

「良い物件は見つかったけれど、サビ管の採用が難航している」 「人は集まったけれど、消防署の検査予約が取れず工事が終わらない」

このように、どれか一つの歯車が狂うだけで、申請は受け付けてもらえません。 障害福祉サービスの指定は、原則として「毎月1日」付でのスタートとなります。もし準備が数日でも遅れて役所の締切に間に合わなければ、開業は丸々1ヶ月後ろ倒しになります。 たった数日の遅れが、1ヶ月分の「空家賃」や「スタッフの給与(売上ゼロでの支払い)」という数百万円単位の損失になって跳ね返ってくるのです。

だからこそ、この事業の立ち上げは「段取りが命」なのです。

この記事が地域福祉に貢献したいという皆様の熱い想いに少しでもお役に立てれば幸いです。

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