就労継続支援B型

在宅時生活支援サービス加算の基本と実務ポイント

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コロナ禍以降、「就労系サービスを在宅で利用したい」というニーズは確実に増えています。
一方で、在宅利用を認めるためには、市町村の判断や事業所側の体制整備が必要であり、現場では「どこまで支援すればよいのか」「どの加算が使えるのか」が分かりにくいところです。

その代表例の一つが 在宅時生活支援サービス加算 です。
就労移行支援・就労継続支援(A・B型)の在宅利用時に、利用者の生活面を支えるための支援に対して評価する加算ですが、要件を誤解したまま運用してしまうと、後から返還につながるリスクもあります。

今回は在宅時生活支援サービス加算の考え方と、就労系事業所が押さえておきたい実務ポイントを説明します。

目次

  1. 対象サービス名
  2. 算定加算単位
  3. 在宅時生活支援サービス加算の趣旨
  4. 算定対象となる利用者像
  5. 具体的な支援内容と連携の流れ
  6. 届出・運営規程・記録の留意点
  7. まとめ

1.対象サービス名

  • 就労移行支援
  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型

今回は特にご相談の多い 就労継続支援B型 を念頭に置きながら説明しますが、基本的な考え方は就労移行支援・A型も同様です。

2.算定加算単位

  • 算定単位:300単位/日
  • 算定の単位:対象となる利用者ごと・在宅支援を実施した日ごと

つまり、要件を満たす利用者が2名おられ、それぞれ月に8日ずつ在宅での就労支援+生活支援を実施した場合、
「300単位 × 2人 × 8日 = 4,800単位」が加算されるイメージです。

3.在宅時生活支援サービス加算の趣旨

(1)在宅利用時の「生活面の支え」を評価する加算

  • 利用者が 居宅で就労系サービスを利用している同じ時間帯
  • 生活面の支援が必要 であり
  • その生活支援を、就労系事業所の費用負担により提供した場合に評価する

(2)単なる「オンライン訓練加算」ではない

在宅時生活支援サービス加算は、

  • 利用者が在宅で就労訓練を受ける
  • その裏側で、居宅介護・重度訪問介護等の事業所が、生活面を支える

という 二重構造 を前提とした加算です。

「Zoomで訓練メニューを行ったから」「自宅に電話をかけて面談したから」といった理由だけでは加算できません。
あくまで「生活支援が必要であり、その費用を就労系事業所が負担している」という点がポイントです。

4.算定対象となる利用者像

(1)市町村が「当該支援が効果的」と認めた利用者

  • 指定就労継続支援B型事業所が
  • 居宅において支援を受けることを希望し
  • かつ、その支援が効果的であると市町村が認める利用者に対し
  • 利用者の居宅において支援を行った場合に、1日につき300単位を加算する

つまり、事業所側の判断だけで在宅時生活支援サービス加算を算定できるわけではなく、支給決定主体である市町村が「在宅での支援が適当」と判断していること が前提になります。

(2)具体的にはどんなケースか

  • 重度身体障害・難病等により、通所に大きな負担がある
  • 居宅介護や重度訪問介護を日常的に利用しており、生活支援なしでは在宅で就労訓練を受けることが困難
  • 体調の波が大きく、在宅と通所を組み合わせて支援する方が、継続的な就労支援につながる

このように、「通所が全くできない方」だけでなく、「状態に応じて在宅と通所を組み合わせることが合理的な方」も想定されています。

5.具体的な支援内容と連携の流れ

(1)在宅利用時の基本要件(就労系サービス)

  • 在宅でも実施できる作業活動・訓練メニューを確保する
  • 1日2回程度の連絡・助言・進捗確認を行い、日報を作成する
  • 緊急時に対応できる体制を整える
  • 週1回は訪問または通所等により評価・面談を行う
  • 月1回は通所により、事業所内で訓練目標の達成度を評価する 等

これらは 在宅利用そのものの要件 であり、在宅時生活支援サービス加算の算定の有無にかかわらず、押さえておく必要があります。

(2)在宅時生活支援サービス加算に特有のポイント

そのうえで、在宅時生活支援サービス加算を算定する場合には、次のような実務が必要になります。

  1. 生活支援の必要性の確認
    • 個別支援計画のアセスメントで、在宅時間帯における生活面の支援ニーズ(排泄・移乗・食事等)を整理する。
    • 支給決定時の居宅介護・重度訪問介護の利用状況も確認する。
  2. 他事業所との連携と費用負担の取り決め
    • 居宅介護・重度訪問介護事業所と調整し、在宅就労時間帯の生活支援を依頼する。
    • その費用を就労系事業所が負担することを、契約書や覚書等で明確にしておく。
  3. 在宅支援の記録
    • 生活支援を行った日・時間帯、支援内容、担当者、費用負担の有無を記録し、就労系事業所側でも保管する。
    • 個別支援計画でも、在宅利用と生活支援の関連を明記しておく。
  4. 市町村への届出・受給者証の確認
    • 自治体によっては、「在宅利用届」「在宅時生活支援サービス加算開始届出書」等の様式が定められています。
    • 受給者証の特記事項欄に「在宅利用」や「在宅時生活支援サービス加算」の印字が入る運用をとっている自治体もありますので、更新時に確認が必要です。

6.届出・運営規程・記録の留意点

(1)運営規程への位置づけ

在宅利用および在宅時生活支援サービス加算を継続的に算定する場合、運営規程に

  • 在宅での訓練・支援の内容
  • 生活支援との連携方法
  • 利用者負担や事業所負担の考え方

などを明記しておくことが望ましいとされています。

(2)返還リスクを減らすために

在宅時生活支援サービス加算は「就労系サービスの在宅利用+生活支援+費用負担」という複合条件を満たして初めて算定できる加算です。

そのため、

  • 在宅利用が認められているか(受給者証・届出書)
  • 生活支援の実施記録・契約関係が残っているか
  • 個別支援計画に、在宅利用と生活支援の必要性がきちんと書かれているか

といった点を、定期的に自己点検しておくことが、後々の返還リスクを下げることにつながります。

7.まとめ

在宅時生活支援サービス加算は、単に「自宅で訓練するための加算」ではなく、

  • 在宅利用を必要とする利用者の生活面を支えるために
  • 就労系事業所が、居宅介護・重度訪問介護等の費用を負担し
  • その連携・支援体制を整えた場合に評価する

という性格の加算です。

一見すると手間のかかる加算ですが、
通所が難しくなった利用者様の就労継続を支えるうえで、在宅利用+生活支援のセット を制度として位置づけている点は大きな意味があります。

在宅利用のニーズがある利用者がおられる場合には、

  1. まずは市町村・計画相談とよく相談し、在宅利用の可否を確認する
  2. 居宅介護・重度訪問介護事業所との連携方針と費用負担を整理する
  3. 個別支援計画・運営規程・記録の整備を進める

という順番で検討を進めていただくと、制度趣旨に沿った運用がしやすくなります。

制度や運用は自治体ごとの違いもありますので、最終的には所轄自治体の通知やQ&Aをご確認いただきながら、各事業所の実情に合わせてご検討ください。

(参考文献)

障害者総合支援法 事業者ハンドブック〈報酬編〉(中央法規)

障害福祉サービス 報酬の解釈(社会保険研究所)

(参考資料)

就労系サービスの在宅利用に関するQ&A(令和6年4月8日)(神戸市)

就労移行支援及び就労継続支援に係る在宅においてサービスを 利用する場合の支援の取扱いについて(令和3年4月16日)(札幌市)

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