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高齢化・障がい福祉環境の進展に伴い、「介護タクシー」を新たに立ち上げたいというご相談が増えています。大阪・北大阪エリアにおいて、事業所が“誰でも依頼できる福祉輸送サービス”を提供するには、法的には 道路運送法 第4条に基づく「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)」の許可取得が必要です。
一方で、類似の制度として、同法第4条の2に基づく「特定旅客自動車運送事業(特定許可)」もあり、双方を理解した上で“一般許可”を目指すことが重要です。
今回は介護タクシーを開設検討中の事業者様を想定し、特定許可との違いを整理した上で、一般許可の手続きの流れ・要件・注意点を分かりやすく説明いたします。
目次
- 対象サービス名と制度の位置づけ
- 特定許可と一般許可の違い
- 一般許可取得のための必要手続き(大阪エリア)
3-1. 申請書提出から法令試験まで
3-2. 審査基準・要件整理(人的・物的・財務)
3-3. 許可後の運賃認可・運輸開始届・運行開始 - 介護タクシー開設時の実務ポイント
- まとめ
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対象サービス名
今回説明する「介護タクシー」とは、福祉車両(リフト・スロープ等装備)を用い、車いす・ストレッチャー利用者や移動が困難な高齢者・障がい者に対して、有償でドア-ツー-ドアの移送サービスを提供するものを指します。制度としては「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)」が該当します。
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特定許可と一般許可の違い
「特定旅客自動車運送事業(特定許可)」と一般許可(福祉輸送限定)との主な違いを整理します。
- 対象利用者の範囲:
特定許可は「特定の契約先(企業・施設など)とその関係者」のみに対する輸送を前提としています。
一般許可は「不特定多数の福祉輸送ニーズ」に対応可能です。 - 運賃の制度:
特定許可では契約運賃を当事者間で設定可能。
一般許可では運賃・料金を運輸局の認可を受けなければなりません。 - 許可の根拠法とナンバー・免許:
一般許可:道路運送法第4条(福祉輸送限定)/緑ナンバー・二種免許が基本。
特定許可:同法第4条の2。
このように、既に特定許可を取得している事業所でも、「一般許可を目指す」場合には、対象・運賃・許可基準が異なりますので、それらを正しく理解することが不可欠です。
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一般許可取得のための必要手続き(大阪エリア)

以下では、北大阪エリア(大阪府)で介護タクシーを開設するにあたって、一般許可を取得する主な手続きの流れと要件を整理します。
3-1. 申請書提出から法令試験まで
- 申請書類一式を、営業所所在地を管轄する支局(大阪運輸支局)に提出します。
- 提出後、申請者または専従役員に対して「法令試験」および事情聴取が行われます。
- 審査基準に合致すれば許可書交付へ。審査期間は原則2か月程度が目安です。
3-2. 審査基準・要件整理
- 人的要件:代表者・役員などに欠格事由がなく、運転者に二種免許を有する者を確保。
- 物的要件:営業所・車庫・休憩施設を営業区域内に設置し、車庫は原則営業所併設または直線2km以内。車両は車いす・ストレッチャー対応仕様など福祉設備を備えること。
- 財務要件:必要な自己資金・運転資金の裏付け、資金計画書・残高証明書の提出が求められます。
- 安全管理体制:運行管理者・整備管理者の選任、安全管理規程・点呼・教育体制の整備が必要です。
- 運賃認可:提出後、運賃・約款を審査、認可を受けて掲示・運用開始となります。
3-3. 許可後の運賃認可・運輸開始届・運行開始
- 許可取得後、緑ナンバー登録、自動車保険加入、タクシーメーター検査(距離制の場合)などを実施します。
- 運賃・料金表・運送約款の掲示、指導主任者選任届出等の準備をします。
- 事業開始後、1か月以内に「運輸開始届」を運輸支局に提出します。
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介護タクシー開設時の実務ポイント
- 既に施設送迎などを行っておられる福祉事業所様の場合、営業所・車庫・人員体制が既に整っていれば、一般許可取得の手続きは比較的スムーズです。
- ただし、「運賃認可」「安全管理規程」「財務要件」は特定許可から変更されるため、専門的な書類準備が必要です。
- 書類提出後に補正を命じられるケースも少なくありませんので、提出前にチェックリストを活用してください。
- 北大阪という地域特性では、福祉車両の手配や車庫確保、利用者ニーズの把握が早期事業化の鍵となります。
- また、許可が下りて事業開始後も、記録(走行キロ・運送回数など)の保存や、定期的な報告義務があるため、事業運営体制を早めに整えておくことをおすすめします。
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まとめ

介護タクシー(「一般許可=福祉輸送限定」)の開設には、制度理解と手続きの段取りが不可欠です。既に福祉施設として送迎サービスを行っておられる事業者様でも、一般許可を得て“誰でも利用できる福祉輸送サービス”を展開するには、人的・物的・財務・運賃・安全管理の各面で改めて準備が必要です。書類提出・法令試験・審査など一定の時間を要しますので、早めの計画・準備をおすすめします。
(参考資料)
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定) 経営許可申請書作成の手引き(国土交通省地方運輸局)
一般乗用旅客自動車運送事業の許可に関するフロー(近畿運輸局)